フィルムでの映画制作について
弊社では劇場公開映画「賭場あらし」の制作に取り組みました。(12月20日現時点では情報公開前にて一部情報を制限しています)
「賭場あらし」はフィルムでの時代劇撮影というまず、なくなってしまった手法の作品作りに挑戦しました。
弊社が主催しているFilm Salvage Japan主体の企画というのもあり16㎜フィルムでのモノクロ、サイレント(活弁付)というコンセプトでした。
自分自身フィルムで仕事をしたことがありません。学生時代8mmや16㎜の現場に参加していたものの、仕事で35とか16とかに関わる事はなかったし、デジタルシネマがこれほど進化した現在、フィルムなんてノスタルジックなもの、昔の映画の媒体である・・・
そんな日常からどっぷりフィルム作品のプロデューサーになるレア体験をnoteでちょこちょこ書いていきます。
企画がスタートし、たまたま紹介してもらったSさんが本当にすごい方で(良い意味で)フィルムモンスター!
アリフレックス16SRを中心にそれに合う魅力的なシネマレンズで武装し映画に備えました。
16㎜フィルムは戦えるフォーマットか?
映画フィルムを解像度などでデジタルと比較する節があります。
35㎜は4k以上16㎜でも2K以上とか・・
フィルム信棒者などは解像度は無限大みたいな論調があったりフィルムはすべてデジタルを超えるみたいな強気な発言があったり
個人的にはフィルム万能感はないです。皆さん見落としがちな「上映ロス」というものがあり、フィルム自体の品質から昔の映写機から光を通し銀幕へ投射する時点でだいぶ画質が落ちている。
あと最新のデジタルシネマの解像感は完璧でフィルムはやはり像は甘いです。
とはいえ、昭和の時代テレビやビデオがSD画質(640*480PX)に対し映画館では4K以上のクオリティで上映されていたのだから、映像フォーマットとしてはモンスターです。
2003年の邦画で「スパイゾルゲ」という作品がありました。日本初の本格デジタル24P撮影された映画の完パケは4TBという当時としては途方もない情報量、でも35㎜フィルムはその作品よりもっともっと情報が多いわけで今でも35㎜フィルムは数十TB以上に相当すると思われます。
今回16㎜フィルムで撮影し東京現像所さんで現像し弊社Film Salvage Japanにてデジタイズを行いました。
想像以上の味わいでした。
最新のフィルム映像は唯一無二の質感でこれはREDやVeniceなどではだせないルックでした。
(実際の映像はここにはだせないので、本編公開をお楽しみに)
最近フィルムとデジタルシネマを比べる機会あるので
個人的意見を書きます。
正直、最新のデジタルシネマとフィルムと比較するとスペック的な見地からするとデジタルシネマには勝てません。
ちょっと違う例えで自動車レースで最新のF1と1970年代のF1カーが勝負したら赤子をひねるようなタイム差が出ます。
フィルムはスペック的には現在のデジタル技術には劣ります。ただ、映画はモータースポーツと違う。
自分が最近思うのが
「なぜ、フィルムはここまで人の琴線にふれるのだろう」
ノスタルジックとか味とか単純な話でなく映画でなく昔の日常とかでもフィルムは観るものの感情を動かす、これが昔のビデオだとただの古さしか感じない。
フィルムがなぜ人の心を動かすのか、自分は科学的な説明ができない。
きっと光と影のシンプルな構造だから人の視覚から脳にダイレクトに伝わるのでしょう。音楽も生演奏を聴いた方がより心に響くようなものかな
しかし、映画という文化は人を感動させる事が重要なわけで
そうなるとフィルムというのは大きな武器である。
まだまだ戦えるフォーマットと考える。
実際ヨーロッパの映画祭ではスーパー16㎜作品が増えているらしい
(撮影はスーパー16㎜で行い35㎜にブローアップする為でしょう)
「賭場あらし」すでにクランクアップしましたが、
現役で闘える16㎜でスタッフ一同もがいて7巻のフィルムに収めてきました。
フィルム撮影のコストはどれくらい?
フィルムで撮影するのは敷居高いです。
しかし、作品作りでフィルムは有効ですし、MVやCMでももっとフィルム使ってほしいと思うので、生生しいお金事情書きます。
まず16㎜のカラーネガフィルム
KODAK JAPANの通販サイトから普通に買えます。
今回使ったのはVISION3 250D カラーネガティブ フィルム 7207
400フィート(11分ほど)でざっくり3万
賭場あらしは30分強の短編映画 完成尺に対する使用尺は2倍ちょっと
(ピンク映画では1.2~1.3もあるというから驚き、NGないのか!)
今回7巻使ったので(実際はもっと購入)
・フィルム代21万
・現像代は100フィート1万円・・・今回でいうと2800フィート28万くらい
・デジタイズ代 これも100フィート1万円と現像と同額、最近のフィルム現像はデジタイズがセットらしいです。弊社は自社でできるのでこれはかからず。
もし16㎜で短編映画(30分)を作ったらメディア代で
77万円でてしまうということですね。
うーん、これはやはり贅沢な試みかも
ただ、考えようでハイエンドの映像を作るならREDやCineAltaあたりを長期レンタルすると50万くらいいってしまう
一方16㎜は中古市場で買ってしまえば、意外といい勝負にもっていけるかもです。(メンテや運用が大変だけど)
話が長くなりまとまりませんが
映画界もデジタル化で進化していますが、我々Film Salvage Japanは今後も
フィルムでの作品作りや過去フィルムのデジタイズに挑んでいきたいと思います。