塀の中の美容室
先日本屋で好きな漫画の新巻を買う際、なんとなく目について買った漫画「塀の中の美容室」。
小説が原作らしく、原作者の名前が書いてあった。
大方、本屋さんで目についたからと買った本は当たりなことが多い。これは読書が好きな私の経験から学んだことである。
例に漏れず、とても素敵な漫画であった。
ポロポロ、気づいたら涙が溢れていた。
主人公?の美容師さんは服役中の殺人未遂を犯した女の人。数人のお客さん達目線で話が進む。
私が一番泣いてしまったシーンは、パーツモデルの女の子が抗がん剤治療をするからと髪を切りに来た場面。
女の子は、「ここに来る前、いつも通り朝起きて、顔を洗って、ていねいに髪をとかして、トリートメントをつけて、いつもどおり…私何やってるんだろうって。どうせ抜けるのに…」 そう言って俯きます。
美容師さんはこう返します。「…過去を、忘れようとして髪を切る人がいます。過去を………忘れないようにと、髪を伸ばし続ける人もいます。だとしたら、過去を大切にしようと、そばに置いておく人がいてもいいと思うんです」と。 最後、美容師さんは女の子に「未練であっても?」と聞かれ、「大切に積み上げてきたものまで捨てることはないと思います」と伝えます。
優しい選択肢が、この女の子の前に今現れた。
過去というものは消せない。だけど、消せないからこそ大切にしていたい人と、消せないからこそ出来るだけ消し去りたいと思うような人がいると私は思う。そばに置いておきたいというのも、それが「過去」というこの女の子にとって大切なものなら、それはただの髪の毛ではなく、宝石なんかよりずっと価値のあるものなのではないかと思う。
他の話もとても素敵だった。
私も行ってみたいなぁなんて思ったりして。
そういえば、小さい頃は美容師になりたいだなんて思っていたことを思い出す。美容室ってまるで魔法がかかるような場所だったから、美容師さんは私にとって魔法使いだった。
魔法使いって現実にいるんだよ。
またそんな風に感じることができた、不思議な作品の話。