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私とファミチキ
ニ十歳にして初めてファミチキを食べた。
感動するほど美味しかった。
思わず写真を撮って親友に送った。
あまりの美味しさに三日間連続でファミチキを食べた。
私とファミチキの出会い、それは急な訪れだった。
たまたま目的地にはやく着いてしまい、そこにたまたまファミリーマートがあった。
一緒にいた友人が「肉まん食べたい、でもファミチキも食べたいな」と言った。
彼女が肉まんを、私がファミチキを買って分け合うことにした。
あまりにも自然な流れだった。
これが運命か、と思った。
レジで肉まんとファミチキを買う彼女の横顔は眩しかった。
寒い中ベンチで食べたはじめてのファミチキの味を、私は一生忘れない。
本当に忘れられなくて、次の日学校帰りに1人でファミマへ向かった。
歩いている時、すごくドキドキした。
昨日の彼女をお手本にして、口の中で何度も練習した。
ファミマにはいり、ホットスナックをチラリと確認すると、ファミチキが並んでいた。よし。
しかし、私の無駄に強い自意識が邪魔をしてレジに直行することができず、少しうろつく。
買う気のない菓子パンや弁当を物色し、あたたかコーナーにある飲めもしないコーヒーを指先に少しだけ感じ、背の高い不味そうな酒を眺めた。おろす必要のないお金をおろし、何も出ないのにトイレに入り、全く必要のないコピーをとっている最中に、牛乳も買わないといけないのを思い出した。
牛乳を手に、レジへ向かう。
同年代くらいのかわいいお姉さんだった。
「あっ、あの、ファミチキも、ひとつください」
すごく勇気が必要だったが、もう二十歳なので百戦錬磨の表情で、まるで牛乳のついでかのように言うことができた。と、信じたい。
こうして私は1人で買うことにも成功し、1月19日をファミチキ記念日としたのである。
次の日は、バイト帰りだったが、もう成功体験があるから平気だった。
ついでにコロッケを買うことさえできた。
しかし、まだ「ナナチキください」だけは言えない。
響きがなんだか恥ずかしいと思ってしまうのである。
普通の人のファミチキデビューというのは、一体何歳くらいなのだろう。
平然とした顔でファミチキを買うみんなは、一体どのタイミングでファミチキの買い方を学んだのだろう。
私が知らないだけで、実は説明会とかあったのでしょうか。
友人が、当たり前のように「ファミチキください」を言うのを見ると、カーッ。あなた……高い教育受けてますね。と思ってしまう。
そもそも、コンビニで何か買うときにホットスナックという選択肢が私の中にはなくて、なんとなく私には買えない、関係のないものだと思い込んでいた気がする。
これからは積極的にホットスナックと関わっていきたい。
いつか、「ナナチキください」とも言ってみたい。
それはもしかしたら今日かもしれないし、来週かもしれないし、三十歳になってからかもしれない。
それはきっと突然に、くるだろう。