野生のハムスターっているの!?
ハムスターを飼っている人なら一度は誰でも思うこと?
かどうかは知らんけど…
ハムスターって野生にいるの?って声をたまに聞く
一部の改良品種を除いてペットとして飼育されているハムスターは皆、元々野生動物である
生息地で捕獲した個体を研究室で実験動物として繁殖した一部がペットとして飼育される様になった
細かい話になるが、ハムスターと言ってもそれぞれ種類があり生息地や生息環境もかなり異なり、生態もそれぞれ違う
それ故に飼育の話をするときは、全体的な話以外は必ず種の名前で話す事にしているのはこの為だ
では、ハムスターとはなんなのか?と言うところから少々解説をしていく
ハムスターとは
齧歯目(ネズミ目)Rodentia
キヌゲネズミ科Cricetidae
キヌゲネズミ亜科Cricetinaeの総称で
7属約19種ほどいるとされ、
Cricetinaeは850~1220万年前に誕生したとされる
ペットとして流通しているのは5種類
ゴールデン(シリアン)ハムスター(Mesocricetus Auratus)
ジャンガリアンハムスター(Phodopus sungorus)
別名ウィンターホワイト、シベリアハムスターキャンベルハムスター(Phodopus Campbelli)
ロボロフスキーハムスター(Phodopus Roborovskii)
チャイニーズハムスター(Cricetulus Griseus)
ハイブリッド、改良品種
ペットショップでキンクマやカラーハムスターと呼ばれている個体は、ゴールデンハムスターの改良品種と言われている
他にも様々なカラーを作出するために、ジャンガリアンとキャンベルのハイブリッドがいる
代表種はブラックジャンガリアンやロシアンブルーなど
ゴールデンハムスター属の中でもハイブリッドが可能な種もいる事から流通していないとも言い切れない
ハイブリッドについてのうんちくは長くなるのでまた別の機会に…
野生のハムスターの生息地
ハムスター生息地エリアマップ
では飼育されているハムスターが野生種である事がわかったところで、住んでいるところはどこなのか?という疑問に応えていこう
下図は4種の生息地エリアを記した自作の生息地マップである
この生息地マップは、IUCNレッドリスト、調査論文、論文等による捕獲地情報、ロシアの地元調査情報や自然保護区の生息生物調査などによる情報から、現時点でのジャンガリアン飼育研究所調べによるエリア情報で、まだ完全ではない事に注意
ゴールデンハムスター属(Mesocricetus)
ゴールデンハムスターは別名シリアンハムスターと呼ばれるだけあって、シリアとトルコの国境付近のごく狭い地域に生息している
気候区分はCsa地中海性気候で、砂漠には生息しない
草原や畑、牧草地などに生息している
ゴールデンハムスター属(Mesocricetus)には
・Mesocricetus auratus ゴールデンハムスター
・Mesocricetus brandti ブラント又はトルコハムスター
・Mesocricetus newtoni ニュートン又はルーマニアンハムスター
・Mesocricetus raddei シスコーカシアン又はジョージアハムスター
の4種おり、どれも似ているために混同されている恐れがある
特にゴールデンハムスターがステップ地域に生息するという証拠はなく、ステップ地域の個体に関する文献報告はトルコハムスターとの混同と思われる
Mesoとはギリシア語で中間と言う意味で、最大級のハムスターであるクロハラハムスター(cricetus cricetus)や、小型のドワーフハムスターの中間、中位という意味
ゴールデンハムスターはシリアとトルコの国境付近に生息しているが、紛争によって調査が不十分な事もあり詳細はよくわかっていないが、畑を荒らす害獣扱いされており駆除等でその生息数は減少して絶滅危惧種に指定されている
IUCN B1ab(iii) 絶滅危惧種 危急
ゴールデンハムスターの生息環境は、地中海性気候で畑や草原、牧草地などに生息している
特にマメ科の畑の区画に多いのは好みを反映している可能性がある
土壌はテラロッサ(赤土)で40~60%は粘土質である
年間を通して気温は東京や大阪とほぼ同じ
雨は冬季に多い
ヒメキヌゲネズミ属(Phodopus)
・ジャンガリアン (Phodopus Sungorus)
・キャンベル (Phodopus Campbelli)
・ロボロフスキー (Phodopus Roborovskii)
この3種はドワーフハムスターと呼ばれ、小型と言う意味で小さいハムスターを指す
この3種はヒメキヌゲネズミ属(Phodopus)で、キャンベルとロボロフスキーは一部生息地が重複する地域がある
ジャンガリアンはキャンベルとは生息地が重ならないが、2種は非常に似ており交雑ができる事、過去には同種の亜種であるとされていた経緯もあり現在でも混同され混乱する場合がある
1984年、1987年に別種であるとの論文で発表されている
ジャンガリアンハムスターの生息地
■ロシア連邦
・ハカシア(ハカス)共和国 shira,アバカン草原,コイバル草原,ミヌシンスク盆地
・ノヴォシビルスク州オビ川より西側、カラスク(現在の実験動物であるおおもとの捕獲地)
・アルタイ地方、オムスク州
・チャリビンスク州、チュメニ州、クルガン州、ウラル山脈の麓まで
■カザフスタン パブロダール州、アクモラ州、アバイ州、カラガンダ州、北カザフスタン州、コスタナイ州等の草原地帯
生息地のジュンガル盆地に由来した名前ではあるが、実際にはキャンベルの生息地でありジュンガル盆地にはジャンガリアンは生息していない(前述の亜種で混同されている)
西シベリヤ平原南部の草原地帯
気候区分はDfb 亜寒帯湿潤気候、ごく一部分でBSkコールドステップ
夏は夕暮れから明け方まで屋外で活動する薄明薄暮性
冬は-20℃にもなり雪が積もり、昼間雪原の上で活動する
ハカシア共和国だけ飛び地で生息しているが、ミヌシンスク系統(ハカシア地域)は22~32万年前に分岐した様です
ジャンガリアン生息地カラスクと東京の年間気温の比較
日本で一番近い気候の富良野で地温を計算
巣穴の深さは季節により異なり、夏は30cm冬は1mの深さに巣穴がある
キャンベル生息地
■モンゴル ドノルド県チョイバルサン,スフバータル県タルガンガ高原,シャボルテ,バヤンホンゴル県ソモンウルジット,ウブス県
■トゥバ サイリュゲムスキー,テレホリ(tere-khol)湖,チュイサヤ草原,カルギ川,トゥヴァにおける北の境界はハンダガイティ-サマガルタイ線である
■ブリヤート共和国 タルバガタイ
■中国 大興安山脈の斜面に広がる草原、河北省の内モンゴル国境付近、黒竜江省(具体的な地域は不明)
■内モンゴル
気候区分はDwc亜寒帯冬季少雨気候、Dwa、BSkコールドステップ、BWk寒冷砂漠
標高1500~2000m以上の高原で、礫が広がる草原~モンゴルの大草原
ロボロフスキーと生息域は重複する
冬は-40℃にもなるほどの極寒で、一日の気温差も激しい
ロボロフスキー生息地
■トゥバ テレホリ(tere-khol)湖(実験用個体の採種地)
■モンゴル ドルノゴビ県ソモン・ウランバトラ
■内モンゴル オルドス砂漠(この地域のロボはおとなしく飼いやすい)
■カザフスタン ザイサン盆地、ジェティス州カラタル、アルマトイ州ウリケン
■新疆ウイグル アルタイ地区吉木乃県
■中国 甘粛省(詳細不明)、陝西省(楡林周辺の砂漠の砂丘とオルドス砂漠の砂丘)、山西省(詳細不明)、遼寧省(孟新の東部(阜新?)草原地帯の砂地)
■インド ラダック(生息域最南端、標高4000m級チベット高原)
キャンベルよりもより砂漠に生息するが砂状の砂漠ではなく部分的に植物が育つ環境で生息している
生息域は広範囲にわたり、近年インドのラダックで発見されている
バラブキヌゲネズミ属(Cricetulus)
チャイニーズハムスター生息地
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)は、学名や亜種などの関係で情報が不確かなため、わかり次第追記したいと思う
終わりに
ハムスターの生息地は現時点での情報源によるもので、今後新たな情報が見つかり次第順次追記していく