第8回 LDHは「MOON CHILD」の商標登録を出願中!
第5回でもご紹介しましたが、LDHは「MOON CHILD」の商標登録を出願中です。そこで、「商標」という制度について説明したいと思います。
商標とはどういう制度か
商標とは、事業者が、自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマーク(識別標識)のことです。
そしてこのような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。
商標権を取得するためは、特許庁へ出願して商標登録を受けなければなりません。
では、商標が登録されると、どのような効果が生じるのでしょうか。
はい、指定した商品・サービスにおいて独占的な使用が認められます。原則、他人はその商標を使うことができなくなります。
さらに、他人が似ている商標を使用することもできなくなります。
もし、その商標を未登録のまま先に使用していた人がいたとしても基本的には同じです。先に使用していた人より、先に出願した人が優先されます。早い者勝ち、抜け駆け上等の世界なのです。
すなわち、本件でいうならば、LDHが「MOON CHILD」の商標を登録すると、他人はLDHが指定した分野(「指定商品・役務」といいます。)及びそれに類似する分野で「MOON CHILD」という名称を使うことができなくなります。もし、このような名称を使う者が現れたら、LDHはその者に対して、名称使用の差し止めや損害賠償等を請求することができます。
また「MOON CHILD」だけでなく、「MOON CHILDREN」とか、「MOON's child」など、紛らわしい名称はぜーんぶ、使えなくなります。MOONとCHILDの間が1文字空いていようが空いてなかろうが、紛らわしい名称はぜーんぶ使えません!
先に名称を使用して有名になっていれば先使用権がある
ただし、バンドのMOON CHILDや海外のネオソウルバンドMoonchildは、ガールズグループより先に日本国内でこの名称を使用し、すでに有名になっているといえますから、仮にLDHが商標を登録しても、一応は名称を使用する権利が認められるであろうと考えます。これは「先使用権」(商標法32条1項)といわれる権利です。
しかしそれでも先に登録した商標権者の方が優先なので、バンドのMOON CHILDや海外のネオソウルバンドMoonchildは、自分たちが先にこの名称を使用していたことや、商標登録がされた時にすでに有名になっていたことを自ら主張、立証しなくてはならないという負担を負うことになります。
さらに、商標法32条2項には、商標権者は、先に商標を使用していた者に対し、混同を防ぐための表示をつけるよう請求することができると規定されています。例えば、LDHはバンド側に対し、「MOON CHILD(バンド)」と記述したり、名乗ったりしろなどと請求できるわけです。
なんだよ(バンド)ってさぁ。
区別のためのマークは後から出た方がつけるのが道理だと思いますけどね。そもそも、商標登録するんだったら、きちんと「MOONCHILD 登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号」って逐一記述すべきだよね。CDのジャケットにもちゃんとそう書いてね! あ、これはマジで商標法73条に定められている義務ですよ。法律はちゃんと守ってね!