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僕の”やっぱり終わらないと実感させられた”自粛日誌 その⑮ 2024年秋冬編

コロナ禍で自粛生活となったのをきっかけに、いろいろな出来事を記録しようというくらいの軽いノリで書き綴ってきた『僕の自粛日誌⑭』も、なんと『その⑮』にまでになった。
今回はタイトルに “やっぱり終わらないと実感させられた” と入れ、自分の記録として、気楽に書き続けて行こうと思う。

10月になった。
9月の末に、政権与党である自民党の総裁選が行われ、石破茂新総裁が誕生し、実質、次の総理大臣が決定した。
そんな変化の中で幕を開けた10月は、コロナの第11波はある程度の収まりを見せてはいるものの、大手メディアがCOVID-19による死者数や後遺症問題を隠し続ける状況の中、僕とかみさんは手洗いやうがい、外でのマスク着用などに気を付ける生活を続けていた。
外では半数くらいの人がマスクをつけ、半数がつけていない。飲食店でもマスクをしない店員さんが増え、もはや完全に「気をつける派」と「気にしない派」がトラブル無く共存している状況が続いている。その比率で感染レベルが抑えられているのであれば、それが日本らしい解決点だったのかもしれないと感じながら、僕らの秋の生活がスタートした。

10月初旬。
僕とかみさんが2人同時に受診した「睡眠時無呼吸」の検査の結果を聞きに行った。
結論から言えば、異常値が出ているものの深刻度は少なく、保険適応で「シーパップ」のような大掛かりな予防措置を考えるまでには至らなかった。2人ともが仰向けで寝る際に呼吸が止まっている時間があるので、それを防ぐための枕を買う程度の対処法で済むらしい。喉元過ぎれば熱さ忘れるとは良く言ったもので、やはり心配無しとなってみると、秋の旅行代を吹っ飛ばした実費の検査代が恨めしい。

僕のオンラインレッスンの方は、定期継続の生徒さんの人数こそ増減を繰り返すものの、受講頻度を増やして下さる方が多く、ほど良く忙しくさせていただいていた。

●ハモニカフェオンラインレッスン専用HP

また僕の運営している動画募集企画「ハモニカフェ・ワン」のひとつ「ハモニカフェ・ブリーズ」という企画の視聴反応が良く、それが新しい生徒さんからのレッスン問い合わせにつながり始めて来た。自分1人だけが周りのハーモニカ奏者達やバンドマン達とはまるで違う活動を続けているという不安感から、若干だけれど解放された気がして来る。
続いて、ありがたい事に今年の年始めからの「吹いて宣伝!ブルースハーモニカ音頭」キャンペーンに続き、先月から新たに追加募集を開始したハーモニカ探し動画シリーズ「ハモニかくれんぼ」にも、いつもお手伝いいただいているレッスンOBマルモさんに続き、新たに参加していただけたハーモニカ奏者達が現れ、自分なりにこの分野に「育って行く幹」のようなイメージを持つ事ができた。

では、まず「吹いて宣伝」企画の話題から。マツカンこと、マツモト管楽器工房さんの動画が、なんとX(旧Twitter)の閲覧で1万回表示を記録したのだ。
(12月現在は1万2千回となる)

YouTubeの回転数は思う様には上り調子になって行かないものの、それでも宣伝コンテンツでこの成果は、なかなかなのではないだろうか。マツカンさんの動画が起爆剤となって、企画全体が上がって行けばと期待してしまう。
「ハモニかくれんぼ」の方は、Instagramでお知り合いになったクロマティックと複音ハーモニカ奏者の「Chie Hirasawa」さんから、全くアプローチの違う動画作品を投稿していただき、他の参加者の方々同様に、X(旧Twitter)では僕が代理投稿をさせていただく事になった。
その第1弾の動画は、画面でハーモニカを見つけるというより、Chieさんの視点で「見つからないハーモニカを一緒に探しに行く」という、優しい物語になっている。Chieさんの曲は必ず飼われている鳥のさえずりとハーモニカのコラボとなっていて、こだわりも効いている上にとても癒される。「僕のX(旧Twitter)」か「ChieさんのInstagram」から聴けるので、ぜひお試しあれ。むさ苦しい僕が運営する企画のせいなのか、常に女性の参加者が少ないので、Chieさんに続いていただければ嬉しいのだけれど。
また、アール・ブリュットアーティストの岸部大二さんからも、かなり凝った動画作品をお預かりし、僕の編集でXに代理投稿をさせていただいた。ここで写真を紹介したいところだけれど、ある特殊な工夫がされている作品なので、ネタバレの危険があり残念ながら貼り付ける事ができない。ぜひ、岸部さんのInstagram「ノンマルト原人」さんのページからご覧いただきたい。

10月中旬。
巷では選挙の話題一色となる。石破新総理大臣の「ルールを守る党」という(え~、中学生の生徒会選挙か!?)とツッコミたくなるような衝撃のマニフェストに度肝を抜かされつつ、相変わらずの「裏金問題」「旧統一教会との癒着問題」などを引きずりながらの与党と、結局は結束する事なく、変化を感じさせられない各野党の論戦が続いた。
僕らはいつものように期日前投票を済ませ、もはやデマだらけで完全に誤作動しているネットメディアの中で、少しでも制度のある情報を求め「選挙漫遊」を掲げる異色の選挙ウォッチャー「畠山理仁」さんが毎日更新するXのpost書き込みなどをチェックしながら、後は流れを見守るだけとなった。

そんな中、僕らは愛知にいた頃の友人宅へ、旅行を兼ねて伺う事となった。かつて15年ほど住んだ愛知・岐阜は、車移動では長距離なれどもう慣れた道のりだ。
実はこの長距離の運転をしながらついでに行った作業があった。少し前からテスト的な録音を始めていた新しいミュージック・アルバムを、自分自身が客観的に聴いてみるのだ。
曲は今まで通りギタリストの中村アキラさんが作曲した曲の中から僕が選び、ハーモニカ用にアレンジして吹くと言う形式のアルバム制作で、僕はハーモニカのみを担当し、中村さんはそれ以外の楽器と編集作業の全てを一手に引き受ける。毎回同じなのだけれど広瀬哲哉のハーモニカのソロアルバムではありつつも、作業ボリューム的には、中村アキラ with 広瀬という感じだ。
中村さんの曲はどれも素晴らしいが、申し訳無くも、技術的に僕が吹きこなせなかったり、楽器的にハーモニカに向いていない曲もあり、今回は候補の10曲中6曲を僕の方で選曲して、テスト的にハーモニカを吹き込んでみた。 この時の作業は、ハーモニカの音色に合わないメロディーをアレンジさせてもらったり、どのようなテイストでテーマ・メロディーを吹くのかや、アドリブをどれくらいのコーラス数で繰り返すかなどを決める「構成」の段階だ。
ラフ試作なので音質もかなり荒めで、人に聴かせるには忍びないレベルだけど、僕とカミさんだけが車の中で聴く位なら充分だ。長い道のりを運転をしながら、このテスト録音を聴き(ここをもうちょっと伸ばそう。ここの繰り返しはやめた方がいいな)などと、それなりに客観性を持ちつつ感想を語り合い、運転をする僕に代わり、忘れないようカミさんに修正事項のメモをとっておいてもらう。
こうして決まった構成をさらに自宅で録り直し、OKを出せるレベルになった時、作曲者の中村さんに送り、改めて実際に使用するカラオケ音源バージョンを制作してもらうのだ。それを元に僕が実際に演奏した後、中村さんがバランスなどを調整するミキシング、音圧などを整えるマスタリングを行い、アルバムが完成する事になる。
かれこれもう5作品目のアルバムになるのでそれなりに慣れた作業だけれど、前回からもう5年以上経ってしまったので、かつての気力を取り戻すのが難しい。

夕方頃、友人の家に着く。懐かしの愛知県の長閑な景色が僕らを出迎えてくれる。まずは友人宅に来た際には必ず連れて行ってもらう近所の街中華の味を堪能する。この時ばかりは体に無理をしてでも、食べたいものは全て食べ尽くす。 この店の大将は和・洋・中、何を作っていただいても最高に美味い。僕らは遠慮なしに「美味い!美味い!」を連発しながら食べ続けるのだった。

翌日は友人の地域の祭りの日という事で、僕らは祭り見物をする。境内で馬を走らせ、若者がしがみつく勇壮な「おまんと」を眺め、たまたま会話で出た巨大な味噌樽で作られた部屋に入り込んでジンギスカンを焼くお店に立ち寄った。
夕方からが祭りの本番。獅子舞が全ての家々を回って「魔除け」を行う。それぞれの家の主が獅子の中に入り、住人達が交互に舞いを披露する。
友人の家の前では当然、友人がその獅子に入り舞うのだけれど、驚くほど見事な舞いだった。なんでも子供の頃の義務教育で習うらしく、長い付き合いながらも全く知らない友人の一面を知る。いかにも日本テイストの中に、伝統の素晴らしさや大切さを改めて実感し、とても良い時間を過ごさせてもらった。
その日の夜は友人宅に作られた囲炉裏部屋に案内され、ここでも誠にぜいたくな時間を過す。友人達はすでに囲炉裏もてなしプロのようになっていて、鮎の姿焼きやほうば味噌など、流石の愛知絶品の数々は、もはや専門店のような振る舞いだった。こうして2泊3日の旅は、朝から晩までご馳走の食べ尽くしだった。
翌日、僕らは地元小田原へ戻る。帰りも行きと同じようにテスト録音をしたアルバムを聴きながらの長い道中だ。数日経ったのもあり、また新鮮な気持ちで(ここを直そう。あそこを入れ変えよう)などと考えながら帰るのだった。

この頃、新企画「ハモニかくれんぼ」の応募に、非常に力強い参加者が現れた。静岡のハーモニカ奏者の山口牧さんだ。「吹いて宣伝!」キャンペーンでも動画参加していただいて、企画を大いに盛り上げていただいていた。
牧さんには以前に参加をお願いしてはいたのだけれど、正直、本当に参加をしていただけるとは思わなかっただけにとても嬉しかった。牧さんが番組を制作されているご自宅の収録スタジオでの撮影で、使うハーモニカは鈴木楽器の新製品「マンジスカイ」だ。もちろんBGMはご本人のもので、牧さんらしい非常に真面目で丁寧な作りの動画だった。

時同じくして、マルモさんの「ハモニかくれんぼ」第2弾とChieさんの第2弾も公開され、今後もどんどん盛り上がっていきそうで、非常に先が楽しみとなって来る。

月末
衆院選が終わり、結果は政府与党である自民党の大敗となった。「裏金」「旧統一協会」という2大スキャンダルを抱え、政権交代までは行かないものの、もはや待ったなしの負け方だっただけに、就任したばかりの石破新総理は頭が痛いどころではないだろう。地元小田原でも女性候補者2人がギリギリまで競り合い、全国区でも話題の戦いとなった。

そして、何かと話題となっていた「ハロウィン」の日を迎える。10月の月末という日本人としてはまだしっくり来ない日付ではあるものの、ここ数年間でかなりの大型イベント化をしつつあり、今では飲食やギフトを始め各商業のディスプレイが乱立し、クリスマスを超える商戦期として期待されている。
とはいえ、以前東京の渋谷を中心に、若者達がまるで暴動のような騒ぎを起こし、停車している自動車をひっくり返してしまう事態にまでなった事から、今年も警察は数百人の警官を動員して警戒に当たる事態となっていた。「渋谷に来ないで」「ハロウィンお断り」などの極端なポスターまで現れ、東京のいくつかの街は戦々恐々とした状態にまでなって来てもいた。
そんな特殊な日に、僕は東京の方へ外出する事になった。ハーモニカの神様「八木のぶお」さんのライブを見に行くためだ。場所は東中野駅にある「Thelonious/セロニアス」というジャズのライブハウス。もちろんジャズピアニストの「セロニアス・モンク」の名から来ている。
八木さんのFacebookを通じて、ライブの日付は逐一チェックしていたものの、自分のスケジュールとの折り合いで、かれこれ2年ぐらい生で演奏を観る事ができないでいた。何とか巡って来た行けそうな日が、たまたまこのハロウィンの日だったのだ。僕は警戒体制の新宿を通るため、かなりドキドキしながらも出発する。

やはり心配していた通り、何らかの交通トラブルにより行きの電車は途中で止まってしまい、お店に着いた頃には、既に演奏は始まってしまった後だった。僕は唯一空いていた座席に座り、ドキドキしながら間近で八木さんの演奏を観始める。
その日の出演は「トリオ・ザ・リラックス」という特別なユニットで、このメンバーでは2年ぶりのライブなのだという。非常に小さなお店で15~20人も入れば満員になってしまいそうな狭い客席のおかげで、僕は1メートルと離れていないところで、八木さんのハーモニカ演奏を観る事ができた。
八木さんは、ほぼ目を閉じてハーモニカ演奏をされるので、次の曲への変わり目に、目の前に座る僕に気が付かれたようで「おおっ?なんだぁ~?」なんて驚ろかれたような表情だった。僕は軽く会釈をし、自分に気が付いてもらえたのが嬉しく、鼻息を荒くして、八木さんのライブを楽しませていただいた。
マイクこそ使われておられるものの、生音に近い状態で聴けるほどの距離に座れた僕は、50センチと離れず、初めて八木さんの顔の真横から演奏を見る事ができ、口とハーモニカが接する部分までしっかりと見る事ができた。ややストーカーっぽく聞こえるかもしれないけれど、これはハーモニカを吹くものとしては滅多にない貴重な機会だ。八木さんが見ている譜面をも見る事ができる位置なので、まるでバンドメンバーの1人のように演奏を聴けたのだった。

八木さんのハーモニカの音を聴くと、今でも高円寺にあるライブハウス「JIROKICHI/ジロキチ」で、初めて八木さんの音に出会えた瞬間を思い出す。文字通り人生を変えた日だった。その時はデザイン系の専門学校生で、まだ10代だった僕は、聴いた事のない音に例えようもない衝撃を受けたものだった。そして八木さんの使っているハーモニカと同じものを買ってみたり、八木さんの喋り方や仕草なんかもモノマネをしたものだ。八木さんのCDが手に入るようになってからは、八木さんのフレーズやプレイスタイルなんかも参考にさせてもらった事もあるけれど、少しも近づく事はできなかった。
もちろんかろうじてハーモニカを仕事にできている今でも、決して近づく事などできない存在だけれど、少しくらいは専門的な理解ができるようにはなった。そして、それができるようになって、また改めて八木さんのハーモニカに驚かされるのだ。この八木さんのライブを、 僕ほど様々な角度から楽しめている観客もいないのかもしれない。
では、会話の方はというと、もう普通にお話をしていただけるようになってからかなりの年月も経っているし、僕が出版したハーモニカの教則本ではインタビュー記事まで寄稿していただいた関係だというのに、やはり今だにドキドキしてしまって、なかなか普通には話し掛ける事ができないでいる。喋ろうとすると他の観客達が八木さんに話し掛けるものだから、結局今回も簡単な挨拶をした程度で、僕はただ八木さんを観ているだけだった。
その上ライブが終わるやいなや、どうしていいかわからず、なんとなく逃げるように帰ってきてしまった。
僕は10代の頃と僕は全く変わっていないようだ。昔、JIROKICHIで大勢の人に取り囲まれる八木さんを少しでも触ろうと手を伸ばし、勢い余って肩を叩いてしまい、「痛ぇ!!」と怒ったような八木さんの声を背中に聞きながら、走って逃げた事もある。 まぁ、50代半ばになってそれほどドキドキできるのだから、僕は幸せ者なのだろう。

帰りも人身事故での列車の遅れこそあったものの、心配していた東京でのハロウィンイベントのトラブル等は特に無かった。ネットなどで確認をしても、人出こそ多かったものの、コスプレなども少なく別段騒ぎなども無かったらしい。僕は小田原までの長い電車に揺られながら、また次の八木さんのライブを観に行ける日を楽しみにするのだった。

11月に入る。
驚くほどの気温の変化で、家の中にいても「寒い!」と声を上げるほどだった。コロナは落ち着いてはいるようだけれど、そこかしこで咳やくしゃみをする人が多く、風邪が流行り始めているようだ。
そんな日本は、というより世界中が、揺れに揺れる事態が起こる。アメリカの大統領選で、ハリス副大統領をやぶり、トランプ前大統領が返り咲きの当選を果たしたのだ。「もしトラ=もしもトランプが勝ったら」などと言われ、実現したら世界中が混乱すると言われた人物が、再びアメリカの大統領になったのだ。
多くのジャーナリスト達がアメリカへ渡り、現地の声を取材していた。ネット番組のいくつかは予算がないので、クラファンで寄付を募り、低予算ながらもリアルな現地の声を集めて配信し、健闘を繰り広げていた。
それらの番組は手作りっぽさはあるものの、スポンサーなどの支配を受けていないので、絵もリアルで信憑性がある。
動画ではアメリカの投票権を持つ数名のインタビューが紹介されていて、その全員がトランプ支持であった。 理由の中で大きいのは経済問題で、人によってはイスラエル問題が理由だった。世界戦争の一端をアメリカの判断が担ってしまっているのが誰の目にも明らかだ。つまり、トランプを支持すると言うよりも、今の戦争を起こしているアメリカに、アメリカ人達がNOを言った訳だ。ある意味ではうなずける判断だと思えた。何にしても、これから日本を含めた世界がどのように変化して行くのか分からないけれど、僕らはそれを受け入れるしかないのだ。

11月初旬。
僕とカミさんがよく行く「アートギャラリー陶彩」さんで、思わぬタイミングで長年の念願が叶う事になった。僕らは食事の専門的な美味しさに加え、天井からブドウが実っているというおしゃれさと芳しさでこのお店によく伺うのだけれど、あるタイミングからお店でさまざまなハーモニカ動画を撮れせていただく関係となった。中でも、店長さんと相談しながら撮った「ブドウと一緒に実ったハーモニカを収穫しながら吹く」というショート動画は、Instagramをはじめ、さまざまなSNSで好評を博す事になった。
その日も陶彩さんへ伺い、僕ら夫婦がよく食事をする店のテラスのテーブルでランチをしたのだけれど、そこに段ボールに詰められた、収穫したばかりらしい初めて見る果物があった。「一体何の果物だろうね?」とカミさんと話しながらも、僕は何気なしに「あれって、フェイジョアじゃないの?」と口にしてみた。フェイジョアというのは僕ら夫婦が好きな少女漫画家の河原泉の短編作品「愚者の楽園」に出て来る主人公が食べる日を夢見る果物で、よく僕らも話題にしたものだった。別に何の気なしに言っただけなのだけれど、それをお土産にと渡された際にその名を聞き、「ええっ!?これがフェイジョアなんですか!?」と、のけぞって驚いた。
あまりの嬉しさに、収穫されたばかりの箱につまったフェイジョアにハーモニカを隠し、記念に「ハモニかくれんぼ」動画を撮らせていただいた。時間のある方はハーモニカ探しをお楽しみいただきたい。

その味は、漫画の中でも語られていた通り、なかなかに例えるのが難しく、僕はバナナの色違いのような見た目でありながら、味はミカンっぽいと感じた。とにかくその香りは素晴らしく、帰りの車の中は南国気分そのものだった。ブドウに続いて、収穫したばかりの果物の味を知ってしまうと、商店で買う果物に満足できなくなってしまいそうだ。

11月中旬
この時期、大きく世間を動かしていたのは、兵庫県の知事選挙の話だった。
もともとはパワハラなどを公益通報をされた斎藤兵庫県知事が、自身の権力を使いその通報を阻止、通報者を追い詰めた事から、その方は正当性を告発しつつ自ら命を絶つという最悪の結果となり、知事の失職から始まった知事選だった。
それなのにどういう訳か、その原因を作った元知事本人が再度出馬し、関西系のテレビ局が大々的に応援し、水面下では自民党と維新の会が応援していたらしい。対して、東京を始め他の地域がこぞって元知事の問題行動を報道し続けた事で、世論が大きく二極化してしまう。そこにカルト教団やカルト政党が力を貸し、SNSでのさまざまなデマ拡散により、テレビ局をはじめ新聞・雑誌などのマスメディアを「オールドメディア」と称し、全員でこぞって元知事をいじめているかのような構図を作り上げ、なんとそれを鵜呑みにした兵庫県民の一部に実際に影響を与えてしまう。結果として「知事がかわいそう」という、非常に奇妙な理由で、なんと再度当選させてしまったのだ。全く訳がわからないけれど、これこそまさにデマ拡散から起こった洗脳と誘導の結果だった。
僕は他県民なので何とも言えないけれど、本当にデマの発信くらいなものでこんな県単位の人数を巻き込んだ大事件が起きてしまうのかと、心底恐ろしくなった。うちはテレビは無いので「オールドメディア」と呼ばれた側の状況は良くわからないけれど、ネットやSNSなどではこの話題で持ち切りで、連日多くの憶測や仮説を生み出して行く。
と、まぁ、こうして書いてはみたものの、とてもではないけれど、あまりの情報の多さにこの件をブログレベルではまとめきれない。自分視点の記録として、顛末だけは書き記しておこうと思う。
「兵庫県人が」という言い方まではできないものの、日本人という人種が、ここまで盲目的で情報を精査する能力が無いとは思いもしなかった。映画「福田村事件」しかり、やはりかつての大地震の際、根拠もなく「暴動を起こしたらしい」というデマから6000人を超えるとされる在日朝鮮人達を殺害してしまったというのは、このような日本人の危うい踊らされやすさから来るものなのだろう。

12月となった。
時の経つのはほんとに早いものだと、年々思いしらされる。特に今年は能登の大地震から元旦が始まったのだから仕方がないのかもしれない。加えて僕はこの年明けに「吹いて!宣伝ハーモニカ音頭」キャンペーンという、自分の中ではかなり大きめな企画を立ち上げたので、余計に忙しい幕開けで、時が過ぎるのを早く感じられたのかもしれない。
結局一年経ったけれど、能登の復興は遅々として進まないままだ。ロシアのウクライナ侵攻も終わっておらず、さらにそこにイスラエルのガザ侵攻が加わり、世界は混沌を極めて行く。最悪なのは来年からアメリカの大統領がトランプになるのが決まっているのだ。
まさにお先真っ暗という感じで迎えた年末は、誰にとっても浮かれたシーズンではなくなっていた。クリスマスムードなど微塵もなく、値上げに次ぐ値上げで、僕らもさすがにどこをどう節約していいかわからない状況だ。
ただ今年は「ハモニかくれんぼ」という新しい企画を始めた事で、ずいぶん撮影にご協力いただく個人商店の方々の知り合いが増えたので、せめて外食や買い物などは、個人商店でしようと決めてはいた。

コロナウィルスの拡大は今のところわずかのようだけれど、インフルエンザが急拡大し、この時期の2週間ほどの間に、地域によっては医療崩壊まで起こしてしまっているらしい。加えて「マイコプラズマ」「りんご病」などの感染拡大も加わり、結果的に手洗いうがいマスクなどはやめることができそうもない。街では相変わらず、半分ほどが気にせず生活をし、半分ほどがマスクなどをしながらある程度距離をとって行動しているまま、ゆるやかに共存している状況だ。

12月初旬
カミさんがもうすぐ休館になってしまう美術館にどうしても行きたいと言うので、レッスンの予約が空いていたのもあり、急遽1泊2日で千葉県に小旅行に行く事になった。
僕はちょうどこの時期、今まで2年間にわたって撮り続けて来たミニ動画を特集するYouTube番組制作をしていて、その最後のピースとなるロケ動画をどうしても撮らねばならなかったので、ロケーション的にもぴったりなその話に、旅行以上に意気込んでいた。
そのロケとは「ダッシュで息切れワンフレーズ」というミニ動画企画で、懸命に走り、あえて息を切らし躍動的にハーモニカを吹くというもので、天候と健康管理の両方が重要となっている。
まだ最終納期まではかなりあるのだけれど、年末には他の企画のシメも重なり、できればこの旅でその企画の撮影の目処だけは立てておきたかった。けれど、別の理由で、僕はその日の撮影が「年内最後のダッシュ」となってしまったのだった。
測らずも、大した距離でもないダッシュなのに、なんと左足のふくらはぎが肉離れを起こしてしまったのだ。
写真をご覧いただきたい。

ご覧の通り、ガンダムのような見事なふくらはぎの腫れようである。

場所は「海ほたる」の最先端にある大型のオブジェの前だった。やはりいつものように観光客が来るたびに撮影はストップし、その合間を縫って何度も何度も繰り返し撮影していた。その中の1本、というか最後となった動画で、僕は肉離れを起こしてしまったのだ。
少し前に北海道のハーモニカ仲間の岸辺大二さんがこの企画の撮影中に肉離れを起こしてしまっていて、全治3週間とSNSにあげていた。僕も同じ日に整形外科で診察を受け、やはり同じ診断結果を受けたのだった。
エコーで見せていただくと、コンビーフのように映る筋肉の断面の画像が、いきなり亀裂まみれに変わって行く。さすがにギョッとするものがあったけれど、先生は「肉ばなれは痛いが結局治る、無理をしても治る、後遺症もない」と笑いながらキッパリ言い切った。
という事で、残念ながら「ダッシュで息切れワンフレーズ」企画は、この日が年内最後となったのだった。
その時の魂のダッシュがこちらだ。

疲れながらもニコニコと気楽にやってはいるが、このすぐ後に、僕は砂の塔が崩れるように、海ほたるに手をつき、這いつくばる事になるのだ。それにしても、歳のせいか、本当に年々医療費がかさんで行く。一体どうして良いものやら。

あまりの痛さに、また自粛の日々のようになって行くのだけれど、時同じくして、こそっと大変な数字を目にする。なんと今年の7月のコロナの死者数は3356人と、7月としては過去最高だったらしいのだ。月間死者数のグラフを見れば、今年もずっと超過死亡が続いている。
僕はちょうどその時期に、レッスンでのコロナ感染の不安を理由に、10年以上続けていた東京の対面型ハーモニカ教室を辞めたのだ。もちろん感染は急拡大していたものの、ほとんどのスタッフや生徒さん方はコロナに慣れてしまっていて、気をつけ続ける僕を大袈裟過ぎると見ていた事だろう。けれど、やはり遅れて、当たり前のようにこういう情報が出て来るのだ。これだから念には念を入れ続けるしか無いと、改めて肝に銘じるのだった。

数日後、掛かりつけの内科医へ定期健康診断を受けに伺う事になった。
その時も、いつもよりもかなり混んでいる状態で、中には凄まじい咳をしていらっしゃる患者さんもおられた。患者同士距離を取るようにはするのだけれど、狭い待合室ではさすがに限界はあるだろう。
僕らの検診結果は心配をするようなところは何もなかったのだけれど、先生との世間話の中で「やはり今年もコロナは終わっておらず、少し上がって来ており、インフルエンザについてはかなりの感染拡大となって来ている」と伺った。ネットで調べてみると「喉の痛み」を共通の症状とするインフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、新型コロナの「トリプルデミック」と呼ぶ、異常な状況なのだそうだ。もはや子供達の学級閉鎖なども急増し、医薬品も不足し続けているという中、この3つの感染拡大を、周囲では誰もが気にもしていない中を一体どうやって防げばいいのか。結局またこの年末年始も、ここ数年と同じような感染対策を強いられながらの閉じこもり生活が続く事になりそうだ。

12月中旬
被害こそなかったものの、僕はとある詐欺サイトに引っ掛かってしまった。
新しい番組動画を制作するにあたり、その画面でいくつか出てくる別の動画の紹介やお店の紹介などで「QRコード」が載った画面を使う事になっていた。そういった難しい編集作業はいつもカミさんにお任せなのだけれで、この時期は彼女のオーバーワークを感じ、こういう事も自分でやれるようにならねばと、僕側でサイトを調べ、一番上に出て来る無料のQRコード制作サイトにアクセスし、QRコードパーツを制作した。
その数は10種類ほどで、特に問題なく制作ができ、そのQRコードをはめ込み動画編集を完成させ、後はその通りに本撮影をするのみとなっていた。
ところがある日、その試作映像を元に簡単なチェックをしていた際に、そのQRコードから案内したいサイトに「リンクしない」というエラーが起きる。元々、最後にはもう一度作り直すと決めていたのもあり、特に焦りはしなかったものの、調べるとなんと全てのQRコードが機能しなくなっていた。
そして「このQRコードは何らかの理由により無効化されました」次に「再度有効にするにはここをクリックして下さい」との文章が連なり、そのままクリックしてみると、プランと料金と言うページが出て来て、このQRコードを継続するには毎月3000円近くの費用が発生するという事を、初めて知らされるのだ。
僕は驚きこの企業のページを再度見直すも、別で有料プランの紹介はあれど、無料作成からそれらしい有料プランへの自動的な切り替わりの事など一切書かれてはいない。他のサイトと同じく無料QRコード制作としか書いていないのだ。広告料のせいなのか何度検索してもこのサイトがトップに表示され、何も考えなければこちらにアクセスをしてしまうのだ。全くの驚きだ。まさかこんな種類の詐欺があるとは。
もしこれを知らずに動画をアップしてしまっていたり、印刷物等を制作していたら、泣く泣くこの料金を払うしかないという事態になっていたかもしれない。これはデザイン的な特許を事前に取得しておいて、それを盾に後請求するといったサブマリン型の詐欺ではない。このQRコードを企業側は、決めている期日(おそらくは2週間ほど)を超えて使いたければ、払い続けるしかないというタイプの、実に巧妙な新しい手口の詐欺なのだ。「2週間後に」というのが、またなんとも恐ろしい。急ぎのイベントならそれで良いだろう。けれど、会場を抑えて1月ぐらい前にアプローチをするものであれば、当然印刷は終わり配布し終わった後だ。これを回収することを考えれば、払うしかない。

すぐにかつてのYouTube動画でこのようにQRコードを利用したものをチェックしてみたけれど、さすがはカミさんの仕事というべきか、そのような問題が出て来るようなQRコードは無かった。カミさん曰く「昔からちゃんとやっているところで作れば問題がない」との事。やはりカミさんがやっていた事を僕がやろうとすると、こういう問題が常に起きるのだ。 今回は大事には至らなかったのでよかったけれど。「この手口、この企業、このページに注意!」とまで書けないものの、そういったものがあるという事だけは、このブログを通して記事にしておきたいと思う。

年末
インフルエンザの急拡大により、大手メディアからも感染が警報レベルに達したとの報道が始まる中、僕のネットでの番組制作準備の方も、いよいよ年末の追い込みに入って来る。この時期、年末ギリギリのタイミングで3本の動画コンテンツを公開する事になっていたのだ。最近続けていた気軽に撮れるショート動画ではなく、20分前後もある自分の中では久々の長編コンテンツで、何度も動画試作を繰り返し、入念にチェックしてから本番撮影に臨むというような大仕事だった。
それがこちらになる。

今までコツコツと続けて来た、景色の良いところで、ハーモニカを撮る「#絵になる景色でワンフレーズ」、息が切れるまで走り、乱れた呼吸のままハーモニカを吹く「#ダッシュで息切れワンフレーズ」、そして、ここ数ヶ月前から始めた、小物だらけの中で小さなハーモニカを探し出す動画ゲーム、「#ハモニかくれんぼ」の、3シリーズそれぞれを特集する内容だ。
と言っても、ショート動画の編集版などではなく、それらを撮影して来た経験から「スマホの撮影に映えるハーモニカの機種を紹介する」という、かなりコアな内容のコンテンツとなっている。
早いものでこのハーモニカのミニ動画企画を立て、同時に募集を呼びかけて来た「#hamonicafe_one」シリーズを始めてから、早くも2年ほどの月日が経ち、それを振り返りつつひとつの結論を出せたような機会となり、一緒に手伝ってくれたレッスンの卒業生マルモさんや、参加者の方々への感謝などもあって、感無量なものとなった。
僕自身が、コロナ禍から一旦は何もできなくなり、そこにさまざまな体調不良まで重なってしまった事から始めた苦肉の策ではあったのだけれど、それでも必死でもがいた末に生まれた自分らしい個性的な方向性ではあるので、この動画を通して、今の現場でバンド活動などがしづらくなってしまっている多くのハーモニカ奏者達や、ハーモニカを吹けるようになったものの、それを何に活かせば良いのか分からないといった方々に「ハーモニカには、他の楽器にはない、こんな特別な楽しみ方もある」という事が伝えられればれと思っている。
だからといって、それが多くの人に見てもらえるという保証もないので、久しぶりに公開する長編動画が、かつての番組「ハモニカフェ」シリーズのファンを始め、多くの方々に観てもらえればと、今はただただ祈るような想いだ。

と、ここまで書き、一区切りのアップをしてみたいと思う。
前回の『その⑭』には、 “やや終わりに差し掛かった” と付け加えるしかない感染状況で、今回も “やっぱり終わらないと実感させられた” と書き加えてみたけれど、いつかは「もう“終わりとなった”自粛日誌」と銘打ちたいものだと、『その⑯』に期待したいと思う。

2024年12月31日 広瀬哲哉