二人芝居『サンタのはし』

二人芝居『サンタのはし』すがの公

<あらすじ>舞台はド田舎のパチンコ屋の駐車場にある景品交換所。爺さんの泉谷又次郎はここで働きながら、死んだ妻を想いながら一人でほそぼそ暮らしている。ある日、孫の泉谷もみがビデオカメラを背負って訪ねてきた。再会を喜ぶが又次郎だが、独居老人を都会に移す作戦だと気づいた途端、もみを突っぱようとする。

<登場人物>爺、孫

■オープニング

駐車場の小屋。
駐車場っぽいガラの幕が引かれている。
右側に小窓が見える。
小窓のあたりにクリスマスツリー。

前説終わり、始まりの曲
『きよしこの夜』が流れる。
客電がゆっくりと落ち暗。
暗の中で、心電図の音
ピッ、、ピッ、、ピッ、、ピッ、、
ピッ、、ピッ、、ピッ、、ピッ、、
暗の中台詞。

孫: テステス。テスト。あ、あ、あー。
爺: ん?なに?なした?
孫: テステス、テス、あ、あー。
爺: あ、あー、なしたなした?
孫: テステス。ゴホン!
爺: 風邪か?
孫: ちがう。ただいまマイクのテスト中ー
爺: だれ?マイク?だれの?
孫: ちぇっくわん、わんつー。わんつー
爺: さん、しー
孫: わんつー
爺: わんつーさんしー

じょじょに舞台の中にはだか電球。
心電図の音、消える。

孫: 参加しなくていい。
爺: あそう?
孫: テストだから。
爺: なんの?こくごか?
孫: 違う。さんすー?あ、わんつーさんすー
孫: じーちゃん。
爺: おれどーすればいい
孫: なにもしなくていい。静かにしてて?
爺: わかった。
孫: ゴホン、ゴホン
爺: 風邪か?
孫: ゴホン
爺: 今の風邪は長引くど?豚インフルエンザで
孫: うるさい!
爺: 年よりだって緊張すんだ。
孫: 近い!はなれれ。
爺: ケチ。ケチまご。
孫: 聞こえてますかーハロー、ハローワンツー
爺: 外人かおまえ、
孫: じーちゃん!
爺: 、、
孫: えーと、まずテスト。
爺: ケッ、
孫: 私の名前は泉谷もみ。
爺: 変な名前。ZZZZZZ
孫: 寝るな!
爺: ちっ。
孫: じーちゃんの名前は泉谷又次郎
爺: いい名前。ZZZZZZ
孫: 無視。ここで効果音。SEキュー。あれ?キュー

ピッ  

孫: お、きたきた。
爺: ん?

ピッ  ピッ  ピッ  

爺: なんだこれ?
孫: 心電図の音
爺: 死ねってか!
孫: 音響効果っ
爺: ろくでもねぇマゴだ。
孫: えーと10年前、
じーちゃんは突然ド田舎に一人暮らしを始めた。
親戚の間ではこれを「泉谷家祖父・又次郎家出事件」と呼ぶ。
爺: 家出じゃねぇよ。
孫: ここで映像、ブラックアウト。

暗。ピッ  ピッ  ピッ  

孫: 家出事件の少し前、
丁度、クリスマスイブにばーちゃんが天国に旅だった。
爺: 天国じゃねぇ、極楽浄土だ。
孫: 心電図の音がうるさそうだから、
親戚一同相談して代わりに「きよしこの夜」をかけた。
えーと、演出効果、
心電図の音、音楽とクロスフェード。キュー
爺: おい!やめだやめだこんなの。
孫: わあかってるって
爺: その歌嫌いだって俺言ってんだろが
孫: だから、徹夜して作ったの。

ピッ  ピッ  ピッ 
心電図の音、リズムになり音楽になる。
すると、小窓の上のツリーが光り出す。

爺: え?徹夜?あ?ピピピ?
孫: うん。くるよくるよー
爺: ピピピ?
孫: ここでナレーション、
爺: きよしこの夜は?
孫: この物語は、愛と希望と明るい老後!
やらせ無し完全ノンフィクション!
じじ孫サンタのドキュメンタリーである!
爺: 「うそつき~~~~」

音楽上がり、プロジェクター映像。

「はじめましてこんにちわ。
北海道は札幌から参りました。
skcと申します。
全国47都市を回る事が目標です。
2006年に5都市。
2007年に10都市。
今年は22都市をまわってきます。
ワゴン一台に人間と舞台セットを詰め込んで約2ヵ月の長旅です。
札幌ハムプロジェクト企画
全国ワゴンで旅まわりskcふたり芝居。
前哨戦」

プロジェクター切れる。

■ムラサキおばさん

駐車場受け付け小窓から乗り出している爺。
顔だけ出してる孫。

爺: はい、おらいおらい、おらーい。
切ってぇ、切ってぇ、切ってぇ!切れってぇ!
ちがうバカこの!逆!こっち!こう!そう!ちがう!
あ、ぶつけた。
孫: ええー?!
爺: ヘタクソが。うまく止められねぇなら駐車場止めんな!
孫: 大丈夫?
爺: 大丈夫じゃねぇ。
あっこの壁、去年塗ったばっかだ。
孫: いやいや、車!
爺: 知らん。乗りもしねえのにピカピカに磨いてっから駄目なんだあのパーマネント。
孫: パーマネント
爺: 似合ってねんだあのばばあ。
孫: いや、お客さんお客さん。
爺: なんだあの色。
孫: 確かに紫だけど。
爺: ぶす色だぶす色。
孫: あ、こっち来た。
爺: あ?なんでよ?
孫: すごい形相だよ。

受け付け小窓に行く

爺: 何よ?、、、ああ?!
なんで俺のせいになんだよそれがー。
おめぇが言うこときかねぇからだろー?
きこえねぇ?きこえねぇなら窓あけろこやって!
忙しい?忙しいってなんだ?
運転で忙しい?今おまえボタンでびーって開くだろびーって!
あ?旦那の車?知らねぇよ馬鹿やろう。
壁どうすんだ壁ー?昨日塗ったばっかだぞ壁!昨日!
孫: 去年じゃないの?
爺: 去年も昨日も変わんねぇ!
孫: いやー。
爺: おまえこいつの味方か?
孫: いえ、じーちゃんの味方っす。
爺: よし。あ?うるせぇっつの!
なんで俺が弁償しなきゃいけねぇんだよ?
あ?横からやいのやいの言うから気が散った?
てめえさっき聞こえねぇっつったろが!
免許持ってんだろバカ女!あ?差別?差別じゃねぇよ!
じゃ女じゃねぇのか?なら変な色のスカートはくな!
みったくねぇ!
孫: じーちゃん言いすぎ!
爺: お前も言ってたろー。「変な格好だなー」って。
孫: 言ったけど。いや言ってません!
爺: だから旦那関係ねぇだろ!
昼間っからパチンコきやがって!
じゃ連れてこい!
おめえみたいのがいるから日本はおかしくなるんだ。
、、ちっ、あんなのと一緒になる奴の気が知れねぇな?
孫: じーちゃん、まずいよ。
爺: なにが。
孫: まがりなりにもお客さんじゃん。
爺: 知るか。俺の客じゃねぇ。
孫: パチンコ屋にチクられないの?
爺: こんなことで怒るようなら、こっちからやめたるわ。

黒電話
チリリリリン、チリリリリン

孫: あ。黒電話。
爺: いいだろこれ。変えたんだよ。黒電話。
孫: 勝手に?
爺: いんだよ俺の城だもの。
あとな、これもな、セカンドストリートでな。
これはな、ハードオフな。でな。これな。
孫: 出れば!
爺: あ、そーかそーか。
はい、パチンコジャパン駐車場管理、泉谷又次郎でございます。
もしもし。あ、社長さん。どしました?はい。
ああ、はい。、、、はい、、、はい、、、
孫: ?
爺: 、、失礼いたします。はい。
孫: チクられた?
爺: それどころじゃありません。
孫: え?
爺: あのおばさんの旦那、社長だった。
孫: うえええええい!!

再びプロジェクターの映像と音楽

「なお、本公演のキャストは、
前哨戦はクインテッドキャスト、
全国戦はトリプルキャストで行われます。

つまり。

CAST
すがの公(爺)×高橋雲(孫)(前哨戦のみ)
すがの公(爺)×松下彩華(孫)(前哨戦のみ)
すがの公(爺)×大原慧(孫)
すがの公(爺)×彦素由幸(孫)
すがの公(爺)×天野さおり(孫)

一日3ステあり。

このじーさん役の人が→(小窓に爺さん)
途中で死んだらごめんなさい。

札幌前哨戦6/19~28!
旭川8/20!倶知安8/22!青森8/25!盛岡8/27!
仙台8/29!千葉9/1!東京9/3~4!横浜9/5!
名古屋9/7!金沢9/9!新潟9/11!函館9/14!
大阪11/2!高知11/4!松山11/6!広島11/8!
岡山11/9!京都11/11!北九州11/14!浜松11/18!
札幌凱旋公演11/28!

今年はワゴンで全国22都市!
企画制作ハムプロジェクト!
skc★二人芝居!
『サンタのはし』」
曲終わり、SEドーーーーーン!

■クビになった。

幕が取り払われる。
駐車場管理プレハブの内部が明らかになる。
エロめのポスター、黒電話、古いレジスター、
カギ置き場、段ボール。

片付けの途中で、将棋を始めた二人

爺: まさか、本当にクビになるとはな。
孫: 急展開だね!
爺: 楽しそうにいうな!
孫: 人がクビになる瞬間なんてなかなか見れないよ?
爺: そらみれねぇよ。
孫: ほんとにクビ?
爺: そーだな。9割がた間違いねぇな。
孫: どんなんだった?
爺: 想像できるか。
いつもはタメ口で話すお友達に
急に敬語を使われるんだぞ。
孫: わ、おっかねぇ。
爺: 何もいえねぇよこっちは。
孫: すごく伝わった。将棋さしてる場合だろうか。
爺: 平成21年、私はこの歳にして職を失った。
孫: 今の心境は?
爺: あまりにも突然の事で、まだ実感がわきません。
でも、力いっぱいやりました。

■ビデオカメラ

孫: 悔いはないですか?

ビデオカメラを撮りだす

爺: 無いと言えば嘘になります。なんだそれ。
孫: カメラカメラ。
爺: な、なんでそんなもん。
孫: いいからいいから。
爺: どうすんだそれ。
孫: えっとね、ビデオレターみたいなもん。
爺: やめろおい。
孫: 回ってます。
爺: え、うそ。
孫: お孫さんに一言カメラに向かってお願いします。
爺: 孫に?
孫: 緊張しないで、落ち着いて。
爺: バカ言うなお前。
孫: いきますよー、3、2、1、ハイ。
爺: 、、えーと、や、泉谷又次郎、オンとし60、いや、62、3、4?
すいません、もっかいお願いします。
孫: いつでもどうぞー。
爺: 泉谷又次郎です。
えー、父が満州から、北海道に引き上げまして、
えー、幼き私は、母に手をひかれまして、
当時、
孫: はしょってくださーい。
爺: あ、えーはしょりまして、
えーと、国語や算数が苦手でしたが、
体育の時間になれば、喜々として球技に興じるような
孫: お孫さんにお願いしまーす。
爺: あ、えーお孫さんに、えー申し上げます。
えー、あー、お孫さん(呼びかけ)。
お孫さんにおかれましては
大変、えーご無沙汰しており、いー、
ご挨拶も、おー、年末年始よりは、
お便りもせず、大変失礼いたしました。
孫: 固いでーす
爺: あ、ざっくばらんに、
今日はビデオレターに初挑戦という事で。
孫: 今日という日を明るく一言。
爺: ク、クビになっちゃったよん�

ピロン

孫: おっけーっす。
爺: なんだ今の!
孫: これはビデオカメラと言って、あ、
大丈夫、魂は抜かれないよ。
爺: カメラくらいわかる!
孫: タイトル「じいちゃんの最期」
爺: まだ死なねぇ!
孫: まぁまぁ、こういうのは、思い出だから。
爺: お前らのだろ、クソガキ。
孫: もうガキじゃないよ。
爺: いくつんなった?
孫: 23
爺: 、、ふーん、もうそんなんなるか。
孫: まーね。
爺: 樅(もみ)。
孫: ん?
爺: 急にどした。
孫: 、、
爺: 樅。

■ナレーション1

孫: あ、ちょっとタンマ。
音楽。

どこぞからCDデッキ。
のどかな音楽をかける。
ピロン、カメラに。

孫: 私の名前は泉谷樅。かなり変な名前をじじばばにつけられた。
小さい頃はよく泉谷モミガラ、泉谷おっぱいモミモミといじめられた。
が、くじけずまっすぐに生きてきた。
じーちゃんばーちゃんとは、小学校まで一緒に住んでいた。
10年前にばーちゃんが死んで、
その後じーちゃんは田舎で一人暮らしを始めた。
だから、じーちゃんと会うのはしばらくぶりだ。
爺: うおい!

孫、音楽止める。

孫: え?
爺: 誰にしゃべってんだ突然。
孫: まぁ、しいて言えば、お客さん。
爺: なんだって?
孫: まぁ、細かい事は気にしない。
爺: 結構気になるぞ。
孫: 気にしない気にしない。

孫、カメラをいじる。

■パーマ犯罪について

爺: おまえの名前つけたの俺じゃねぇ。ばばぁだ。
俺は反対したんだ。
孫: 結局折れたんでしょ?
爺: だってこええんだもん。あのばばあ。
孫: 尻にしかれてたもんねぇ
爺: しかれてねぇよ。
孫: どーだかねぇ。
爺: なんだ?今さら文句言いに来たのか?
孫: 元気してた?
爺: 元気なわけねぇだろ。この状況を考えろ。
孫: ああ、クビ切られたてだもね。ちょっと忘れてた。
爺: 片付けろほら。立つ鳥、後をにごさずっつってな。
孫: へいへい。
爺: 善良な老人に、なんて仕打ちしやがるんだあのムラサキおばん。
孫: ま、さっきの様子を目撃した立ち場から言えば、自業自得。
爺: 冷てぇなおい。人が長年勤めあげた駐車場をリストラされたってのに。
孫: あれをリストラって言ったら世のリストラされた人に殺されるよ。
爺: なんでよ。
孫: 社長の奥さんにあんだけ色々言ったらそりゃぁねぇ。
爺: ケツの穴がちいせえんだよ。犯罪者のくせに。
孫: 犯罪者?
爺: アイパーなんだぞ、社長。アイパー。
孫: アイパーってなに?
爺: アイロンパーマ。
孫: アイロンでかけるの。
爺: たぶん。
孫: テキトーだね、相変わらず。
爺: 夫婦揃ってパーマネントだ。犯罪者だ。
孫: パーマは犯罪じゃないよじーちゃん。

■パンクをさせよう

爺: あのムラサキおばんが嫁とはな。
あ、そうだ。うっかりパンクさせてこよう。
困ってるとこ、カメラで撮れ。
おい、なんかねぇか?鋭利なもの。
孫: どうにもならないんだね、そういう性格。
爺: おう。

爺、鋭利なものを探し始める。
孫、ビデオカメラ

孫: 一人暮らしで、少しは丸くなって行くのかと思いきや、
じーちゃんは、悪くなっていく一方だ。
爺: あ、発見!

ボールペン。

孫: え?ほんとにやんの?!
爺: (にやり)

爺、退場。

孫: ああ、行った。あ、ほんとにやってる。
あっと言う間に捕まるなありゃ。
元従業員逆恨み。
「クビを切られた腹いせ、おじーちゃんタイヤに八つ当たり」。
なんて悲しいニュースだ。

孫、職場の様子をビデオに収める。

孫: はい、じーさまの職場です。
なんだこの**********。
わ、エロ本あるし。いつまで元気なんだ。
もう70近いだろうに。
あ。

位牌を発見する。

孫: ああ、これ、、ユキちゃんか。

爺の声。

爺: あぶね!!見つかるとこだった。あっぶね!やっべ!
孫: 中学生かじじぃ!
爺: 見ろこれ!

不自然に曲がったボールペン。

孫: なんだこりゃ。
爺: さすがに金持ちのタイヤはかてぇよ。
孫: どうやったらこういう曲がり方になるんだ。
爺: 1本目はいったんだおそらく。2本目でパーだ。
孫: え、やっちゃったの?
爺: てやんでぇ。あたぼうよ。
孫: 江戸っ子はそんな暗い仕返ししない。
爺: 俺こやって2本目に取りかかってたわけ。
テレレーテレレーっつってな
孫: 仕事人も落ちたもんだ。
爺: シュピン!あああ。って曲がってよ。
なんだちくしょうこうなったらキズつけてやろうって、
ピカピカのボディに向かったら、
そこにムラサキちゃんがさらにすげえ形相で映っていた!
あっぶねぇセーフ!
孫: 見つかってんだろ!
爺: いや、ちゃんと言いくるめた。
孫: なんて。
爺: あ、いー車です。おくさまーもー、きれーい。
孫: なにしてたんですかって聞かれたろ。
爺: あちょっと、ちょっとあのー、ずらそっかなーって思って。
孫: 手で?
爺: あ、はい、あ、無理か。わしゃ老人じゃ。
孫: よし警察行くぞじじー。
爺: 大丈夫大丈夫!大丈夫です。
孫: なにが?なにが大丈夫?
爺: いっけね。用事思い出したじゃん。じゃ、ちょっとずらしといて?
孫: なんで
爺: 、、くそばばぁ。ひゅーん
孫: こらあ!
爺: あぶね!!見つかるとこだった。あっぶね!やっべ!
孫: 見つかってる。
爺: うまく行ったかな。一本目。
孫: じーちゃん、クビどころか犯罪者だわ。
爺: いんだ、いざとなったらボケたふりすっから。
孫: 元気そうだね。
爺: おう。なんだ、元気ねぇな。
孫: うちの一族にあなたのDNAが混じってるかと思うと。
爺: でーえぬえー?あれか?
♪てーんてーんてー、てんてててんてけてんてんてーん、ハイ。
孫爺: ♪てーんてんててんてーんててんてけてんてんてーん
孫: YMO!?
爺: でーえぬえー。
孫: 全然違う!じーちゃん知識がまばら!
爺: 「人生、広く浅く、おおまかに」泉谷又次郎。ってな。てーんてんてーん

と、爺、片付けに戻る

孫: もういい、否定しないわ。

■イトコたち

爺: 他のは他の。
孫: 他?あ、親戚?
爺: そー、そいつら。
孫: いちお気になるんだ。
爺: ま、いちおな。服役とかしてねぇか?
孫: してねぇよ!
爺: お、えらいじゃん。
孫: もっと期待してくれ、自分の一族に。
爺: 他のイトコ類は?いたろ、似たようなの3、4人。
孫: 元気だと思うよ。
爺: あれは?なんか余計に動く、
コーヒー苦くてのめねぇ、土地コロがしの息子。清田の。
孫: よしゆき?
爺: うん。
孫: なんか親の手前、就職活動で苦しんでるって。
いちおスーツ来て会社説明会行ってるふりしてるって。
爺: だめな奴だな。
孫: うん。
爺: あれは?あの小さくてコロコロしたの、
孫: さおりん?
爺: おー、宮城の。
孫: さおりんは、一人で北海道行って劇団入ったって。
爺: 北海道で演劇?馬鹿じゃねぇか?
孫: 夢はワゴンで全国貧乏芝居とかって言ってた。
爺: なんになるんだそれ。
孫: わからん。
爺: あれは?ほそくて体重ねぇぼやっとしたの、肉牛の息子。函館の。
孫: けい君?
爺: おー。
孫: なんか就職活動あきらめて、
本気でパチプロになる道を考えてるって。
爺: 何考えてんだバカ。
孫: だよね。
爺: あれは?ちょっと頭のたりねぇ目むく女子と
なんか仮面ライダーの変身前みたいな男子。
孫: あやかといずもは、
フリーターしながら、コミュニケーションで悩んでるって。
爺: ろくなのいねぇな俺の孫。
孫: まったくだ。
爺: おい、とーちゃんかーちゃん生きてっか?
孫: うん。
爺: そんで。おまえは?
孫: あー、一番まとも。
爺: どうだか。
孫: 最近、開眼したから。
爺: なんだそれ。
孫: 閃いた。こう、目の前のもやが晴れたっていうか。
爺: たぶんお前が一番駄目だ。
孫: なんで!
爺: いやいやお前が一番あぶないな。
孫: なんで?
爺: 孫で唯一俺とばーさんが面倒みたから。
孫: 悪影響かー、確かに。


■トンビ

SEとんびの声
ピーーーーーーーヒョロヒョロヒョロヒョロ
なんとなく、外を見る二人。

孫: あ、鷹。
爺: ちがう、とんびだ。
孫: とんびか。
爺: どこにでもいる方だ。
孫: 駄目な方か。
爺: まーな。
孫: でもいいな。
爺: なに?
孫: 空飛べて。
爺: ?
孫: 、、、、

SEとんびの声
山なみ。広いそら。とんび。

爺: もみ、なんかあったんか。
孫: じーちゃん。
爺: なんだ。
孫: クビになったね(にこにこ)。
爺: うるせぇ。
孫: 逆恨みでタイヤに穴あけて捕まれ。じじい(にこにこ)
爺: ろくでもねぇ孫だなてめぇ。

■パチンコジャパンについて

孫: 犯罪じじい。クサいめし食ってこい。(にこにこ)
爺: わらっていってんじゃねぇ。捕まるのは俺じゃねぇ。
孫: じゃだれ?
爺: あいつらだろ。パーマ夫婦。
孫: なんで。
爺: ヤクザだヤクザ。バクトだバクト。日本はバクチ禁止だぞ。
なのにあいつらときたら、公然とパチンコ屋で儲けやがって。
孫: そんなこと言ったらパチンコパチスロ全部違法じゃん。
爺: そうだよ。警察は何してんだ。捕まえろっ
孫: じーちゃんも捕まるよ。
爺: なんでだよ。
孫: 駐車場管理も、パチンコ屋の一部じゃん。
爺: ばかおまえ、俺はいっつも言ってんだよ?
来るお客来るお客全員に。
孫: なんて?
爺: 「このパチンコ屋は出ないから、帰って寝ろ」って。
孫: そんな事言ってんの?
爺: 出来る限りの事はしてやらんと。
孫: あーそもそも勤務態度に問題があるんだね。
たぶんさ、良い機会だからクビになったんだわ。
爺: 俺はまともに働いてんだ!
孫: だいたいわかるよ、じーちゃんの行動パターンは。
現にお客に帰れとか。
爺: いや、善かれとおもってよ。
だってホントに出ねぇんだよ。
孫: 少しは出るでしょ。
爺: いや、まったく出ない。
俺が言うんだから間違いない。
俺も給料の半分はやられてる。
孫: 自分もやってんじゃん。
爺: 思わせぶりな台がたっくさんある。
でもどの台も結局振り向いてくれない。
必ずふられる。
孫: 才能無いんだよ、じーちゃん。
爺: 違う!このパチンコジャパンが、まったく出さない。
その証拠にな、俺はここの秘密を知ってんだ。
孫: 秘密?
爺: ききてぇか?
孫: ききたい
爺: どうしようかな。
孫: ききたいききたい。
爺: やめよっかな。
孫: じゃいいや。
爺: あきらめんな!
孫: あー理不尽だ。

■外の景品所(まず、パチンコの仕組み)

爺: 外の景品所あんだろ?あの怪しい奴。
パチンコ屋とべっこになってる。
あれがよー、実はよー
孫: 何?景品所って。
爺: え?景品交換所だよ。
孫: なに?外にあんの?
爺: うん。え?お前パチンコもやったことねーの?
孫: 賭け事やりませんから。どこぞの誰かと違って。
爺: ああー、お前の親父な。ありゃーダメな奴だ。ヘタクソだ。
孫: じーちゃんも。
爺: 俺は才能ある!俺のモットーは楽して儲ける、だ!
孫: 孫に胸はって何言ってんだ。
爺: うん、確かに。
孫: 景品交換所って何?景品交換するの?外で?寒くない?
爺: あーー。そっからの説明か。
孫: 知らないから。
爺: だから、パチンコ玉を金で買って、
それ使って売って当たって、
増やして、その出玉をまた金にしたいわけだろ?
でも、それじゃおまえ、日本じゃ犯罪になるわけよ。
金かけて、勝ったら金増えてー、な?
孫: 日本はバクチ禁止だ。
爺: だからよ、法律をごまかすために、
一旦、玉を景品に変えて、
それを売って金にする必要があるわけよ。わかるな?
孫: ほーほー
爺: だから、パチンコ屋の外にお店が必要になる。
それが、景品交換所。
孫: はー、うまいことやるね。
爺: 店内にも景品所がある。
そこだと、景品にまでしかしてくんねーんだよ。
あ、ほらチョコとか、お前にやったろ昔。
孫: ああ、あの頃、あれ不思議だったんだ。
大人のくせにどうしてチョコ貰いに行って。
日によっちゃ悔しがってんだろーって。チョコあるのに。
爺: ま、おまけみたいなもんだ。でな、
孫: (興奮)パチンコっておまけでチョコついてくんの?!全員?!並ぶ?!
爺: あ、ま、並ぶ時もあるよ混んでる時は
孫: (大興奮)並ぶの?!チョコ欲しくて?!ウケる!!
爺: いや、そこで盛りあがらなくていんだわ。
孫: あ、そー?
爺: えーと、どこまで話した?
孫: チョコ。
爺: チョコはいい。貰わない。
孫: 、(悩む)、、でも貰った。
爺: 、、じゃ、チョコも貰いますが、
孫: あ、はい、貰いますが(安心)。
爺: どっちかというと、
出玉に応じて、ヘンテコリンな景品をたくさん貰います。
孫: ヘンテコリン?
爺: なんかもうよくわからねぇ景品をくれるわけよ。
孫: ヘンテコリン?
爺: ほんっとにヘンテコリンなんだよ、それ。
孫: どんな?
爺: 例えば、
ジッポの芯が入っている、プラスチックのケースとか。
今なら、なんかよくわからねぇ模様のコインが、
永久に封印されている、プラスチックのカードとか。
とにかく、人間に必要のないもの。
孫: 全然想像がつかん。
爺: んーとな。

爺、絵に書く。

爺: こんなん。
孫: なんだこりゃ。
爺: 俺も初めてそれ見た時はもう、サギだと思ったからな。

■話しがそれたとこ

孫: いつの話?
爺: わかかりし頃。東京で浪人してた時。
孫: 勉強しろよ。
爺: 歌舞伎町の怪しいちっちぇ、パチンコ屋でよ。
何度か通って、生まれて初めてパチンコで勝った俺にだよ?
一目で人間に必要のないものをポンとよこすわけよ。
孫: これかー(絵)。
爺: そりゃ怒るだろ?!
こんなもんが欲しいわけじゃねぇ金よこせって!
孫: そしたら?
爺: ツラーって。見下すような顔して、無言。
孫: 無言?
爺: 俺も若かったからよ、
このやろうと思って襟首つかもうとしたらよ、
店員の男がこう、ちょんちょんって指で。
孫: ん?
爺: そこ見てみたら、へったくそな地図があるわけよ。
そのパチンコ屋の場所から、
赤い矢印がこーひっぱってあって、
そこに赤ペンでココですーみたいな丸がついてんだよ。
孫: なに?
爺: なんだよこれは?と聞くだろ?そしたらやっぱり
孫: 無言?
爺: ツラーッてそのまま奥に引っ込みやがんだよ。
孫: 無視か。なんだそいつ
爺: 仕方ねぇから、なんかよくわからねぇ景品持ってよ、
その地図通りに歩いたら、店の裏なのな。
これはどういうイタヅラなんだろうと辺りを見回したら、
孫: うん。
爺: どう考えても不自然な小窓があんだよ。
孫: どこに?
爺: 壁に。
孫: 普通じゃん。
爺: 違う違う、もうね、ただ壁なの。小窓なの。カーテンかかってるし。
孫: なに言ってんの?
爺: 入り口とかないの。その大きな壁には小窓しかないの。
孫: ああ、確かに変だ。
爺: さらに。
その小窓の下の方に、頑丈な引き出しがついてんだよ。
孫: 頑丈な引きだし?
爺: 引き出し。
孫: 引き出しって、机についてる?
爺: その引きだし。これっくらいの。
想像してみろ、
だいたい、こんくらいの高さにカーテンかかった小窓。
引き出し。しかも、俺の方に引き出された状態。あとは、壁ー。
孫: 、、、壁に何いれんの?
爺: そう思うだろ?
孫: なんか入ってた?
爺: いや、からっっっぽだ。
孫: うえええ
爺: 問題はその後だ。
カーテンと引き出しの間に、こんくらいすき間があってよ。
明らかに居るんだよ。誰かが。
孫: なんか恐いな。
爺: さらにだ。俺こう、立ってるだろ?
なのに、このへんのスキ間から、見えるんだよ。
孫: 、、なにが?
爺: 、、、くつ下が。
孫: うわこえーー!!え、くつ下?
爺: あの景色は今でも忘れねぇ。
孫: ごめん、突然わかんなくなった。くつ下?
爺: どうやら、そいつの床、高いわけ。
孫: なんのために。
爺: たぶん、顔を覗かれない工夫だと、今は思う。うん。
孫: あーへー。なんか恐くなくなってきた。
爺: ばか恐いよ?もう辺りは薄暗くなってきた。
周りには人っこ一人いない。
そしてまたそいつ、
どう考えても俺に気付いているくせに一言もしゃべらねぇ。
孫: あ、こわいかも
爺: お互い息ひそめて壁越しに様子伺ってる。
かろうじて見えるくつ下もピクリともしねぇ。
これは、スキを見せた方の負けだ。
にらみ合いは、3時間に及んだ。
孫: 話、でかくなってない?
爺: うるせぇ。
孫: で、どしたの?
爺: このままでは決着がつかねぇ。
意を決した俺はこう、引き出しをスッと閉め。
くつ下に向かってさらりと一言。
「物騒ですよ」
孫: 、、、ん?
爺: キマったなあれは。、、あれ?
孫: なにが?
爺: だって物騒だろ?!引き出しには財産が入ってる場合が多い!
タンス貯金なんて言葉もあります!
孫: だって空なんでしょ?
爺: 空だってお前、なんか入れられたら、やだろ!
孫: なんかって?
爺: え?えっとぉ、、、、うんことか。
孫: なに言ってんの?
爺: やじゃないのか?!自分のタンスに、うんこ入ってたら!
孫: ま、最悪だけども!
爺: しかも誰のうんこかわかんないんだぞ?
孫: 誰のうんこかわかった方やだよ!なんだこの話!
爺: もう終わるからっ
孫: はい、引き出しをしめて、
爺: 俺が閉めた。そして一言。
孫: 物騒ですよ。うんこが入りますよ。
爺: 言った、いや、言ってない。
孫: そしたら?
爺: 、、すっ
孫: ?なに?
爺: あの野郎、また開けやがった。
孫: なんだ人が閉めてやったのに!
爺: 思うだろ?!
孫: てめえ!うんこ入れられてぇのか?
爺: そお!言ってやれぇ!
孫: うんこがないと思ったら大間違いじゃ!
爺: そうじゃ!!そしてぇ!
孫: そしてぇ!じーちゃんはその場でぇ!
爺: そお!ズボン脱いで!
孫: パンツ脱いで!
爺孫: どかーーん!!
爺: 違ああああう!!!!
孫: いよおおおおお!!!、、あれ。
爺: 、、終わりにしよう全部。疲れた。
孫: ごめんちゃんと聞く。
爺: おのおのの家に帰るぞ。
こんな事したいんじゃないんだ俺は。
孫: すまん。続きをっ
爺: なんでこの歳になってうんことか言わなきゃいけないんだ。
孫: ごもっともです。さ。物語の続きを!
爺: ま、それが景品交換所だ。わかったな。
孫: わかんない。
爺: 知っとけそれくらい!
孫: 知らないよ行かないもん。
爺: 店内で金渡したらバクチでアゲられるから
へんな景品渡してパチンコ屋との関係は終わった事にして。
違う店がそのへんな景品買い取るって形にしてんだよ。
孫: あー、最初からそう言えばいいのに。
爺: うるせぇ!
孫: なるほどー、そういう仕組みなんだ。パチンコ屋。
爺: そうなんだよ。、、、あれ?
孫: あれ?

ちんもく

孫: そういう話し?
爺: 、、、いや、ちがったと思う。
孫: なんの話しだっけ?
爺: なんの話しだっけ?
孫: 知らないよ。
爺: ちょっとまて、思い出す。

各々の場所へ。

孫: くつ下の人って何もの?
爺: ちょっと黙れ。
孫: あ、わかった大人がチョコに並ぶ話し?
爺: 違う!チョコは忘れろ!
孫: うん。
爺: 、、、、、駄目だ。頭ん中チョコばっかりだ。
おまえのせいだ馬鹿!
孫: 理不尽~~~。
爺: 何が言いたかったんだ俺?
孫: ま、あきらめろ。
爺: 簡単に言うな。ああ、きもちわりい。
孫: あ、ねぇ、引き出しってなんだったの?
爺: 、、、、
孫: ?

爺、おもむろに後ろの段ボールをよける。
と、引き出しが出てくる。

■景品所発見

爺: これだ。
孫: え、あんの?!
爺: あるよ。うちの外の景品所は、ここにある。

■それた件について

まず、それが言いたかったんだ!
孫: 最初から見せようよ!
爺: お前が口はさむから話が長くなったんだ!なにがうんこだ!
孫: それじーちゃんが出したうんこじゃん!
爺: 勘違いされるような事を言うな!
お前が換金所について詳しく知っていれば
すぐにでも見せてたんだよ!
孫: あ、計画があったのか。
なんかごめん。
爺: ああ!思い出した!ほら!みろ!引き出し!
孫: あー確かに頑丈な引き出しだ。

■話しが戻った。

爺: ここにお客さまが外からヘンテコリンなモノ入れて
スッと閉めると、
私はその代わりにお金を入れて
スッと押しかえす。
お客さまとの無言のふれあいがあるはずだった。
孫: え?
爺: とうとうこのパチンコジャパン秘密を明かそう。
孫: あそうだ、秘密を握ってるって話だ。
爺: そー!その秘密とは!
孫: その秘密とは?!
爺: なのにここに、換金用の金は一文もねぇ。
孫: え?
爺: ここ数年、換金に来た客は一人もいねぇ。
孫: おお!サギ罪!
爺: ついでに言うと、
この小屋の電源はとなりのスナック山田からこっそり引っぱっている。
孫: 電気どろぼうだ。
爺: アイパーヤクザとパーマおばさんはド田舎で荒稼ぎだ。
ああ、スッとした。疲れた。腹減った。

爺: おい、まだいるだろ?
孫: あ、うん。
爺: そば食うだろ?
孫: いーねぇ。おごり?
爺: しかたねぇな。
孫: でもよくそれでお客さん来るね?
爺: パチンコジャパン?
孫: さっき結構入ってたよ?
爺: それが来やがるんだよ。ド田舎に一軒だから。
トノサマ商売。パーマのトノサマと、パーマの大奥。
孫: あー、想像すると憎めない。
爺: 憎めよ!祖父のクビを切ったんだぞ?
爺: おい、今の裏事情を言いふらせ。
孫: そしてどうするの?
爺: 黙ってて欲しければ口止め料をよこせと言う。
孫: じーちゃん。
爺: さー、金をせしめて競馬に行こう。
(カレンダーがある)
次のG1は、お!宝塚記念!人生はギャンブルだ。
孫: じーちゃん。
爺: 俺のモットーは、楽して儲ける。これだけは譲れん!
孫: じーちゃん。
爺: なんだ?
孫: 結構昔から思ってたけど、
爺: なんだよ。
孫: 性根が腐ってるね。
爺: おい!失敬だぞ!

■そば

じい黒電話へ行く。
壁のはり紙にそば屋の電話番号。
孫、爺の様子をずーっと見てる。

爺: ん、見えね。

黒電話。ジーコ、ジーコ、ジーコ、ジーコ、ジーコ

孫: あ、チャンス
爺: あ?
孫: こっちのはなしー
爺: ?、、あっもしもし。

孫、ビデオカメラでじーさんを撮る。

爺: 駐車場の、泉谷又次郎だけど、うん、そば。うん、いつもの2つ。
あ?いや、二つだっつの。ボケてねぇ!
いや、それがさ。
ちょっとさ、孫が突然きちゃってさ。
かわいくねぇよ。じゃまくせえだけだ。
ん、そば食って帰らす。
うん。はいよろしく。どもー。

カレンダーを見る。

爺: あれ?今日何日だ?
孫: 24日
爺: 、、、、、、。

壁のはり紙にそば屋の電話番号。
やっぱり老眼でよく見えない。

爺: 、、、、

黒電話。ジーコ、ジーコ、ジーコ、ジーコ、ジーコ

爺: あもし?泉谷だけど?もう作った?あ、まだ。
いや、せかしてるわけじゃねぇよ、
あ、いや、今日かしわだわ。かしわ。うん
そうそう。24日だから。そーそー。めんどくせーけど。
孫: お。

孫、電話の終わりを感じ、
こっそり隠し撮り開始

爺: うん、はい、よろしくー。うん、二つとも。
ふいー。

孫: !!あ、は!や!
爺: なにしてんだ。
孫: ちょっと*****
爺: ****?
孫: そうそう。うん(チラ見)。
爺: 何見た?
孫: べつに。
爺: ふーん。
孫: (にやにや)
爺: なににやついてんだ?
孫: え?だれ?(にやにや)
爺: おまえ。
孫: にやついてないよ(にやにや)
爺: にやついてるよ。
孫: あ、もともと。にやついた顔だから。(にやにや)
爺: ふーん。
孫: ま、気にしないで。楽にしてよ。
爺: ああ、まあ、俺の職場だからな。
孫: あそっか。(ニヤニヤ、そわそわ、チラリ、ニヤニヤ)
爺: どうした?
孫: なんか話していいよ。自由に。
爺: は?別に話ねーよ。
孫: 今の心境をほら、ちょっと、赤裸々に。
爺: 、、、、何言ってんだこいつ。って思ってる。
孫: そうじゃなくてさ。あ、かしわそばについて。
爺: あ?
孫: かしわそばって、ほら。何。
爺: そば。
孫: じゃなくて!
爺: なに?
孫: なんでかしわにしたんですか?
爺: べつに。
孫: どうして今日はトリ肉入れたんですか。
爺: べつに。
孫: ちゃんと!
爺: なにを?
孫: じゃいいよ、

メモ帳を出す

孫: 自然な会話をしてね。
爺: あ?うん。
孫: 中学ん時だから、わー。もう家出歴10年だー。
爺: 、、ん?
孫: 中学ん時だから、わー。もう家出歴10年だー。
泉谷祖父・又次郎家出事件からー。
爺: おまえが自然じゃねぇーよ。
孫: あのときー、親戚中で騒然としたんだよなー
爺: ふーん
孫: クリスマスからおおみそかにかけてあっと言う間の家出だったなー。
爺: うん。
孫:

孫: じーちゃんしゃべらんと!!
爺: なに怒ってんだおまえ?

■ナレーション2

孫: ちょっとタンマ

CDデッキから、
音楽とビデオカメラ
のどかな音楽。

爺: ?
孫: じーちゃんが家出してからも、
高校の頃まではたまに家族で遊びに来てたが、
専門学校に入学したころからめっきり会わなくなった。
疎遠になった理由は学校が忙しくなったからだけではない。
そうなのだ。
小中学校までは気付かなかったが、
じいちゃんは、性根が腐ってると、私は思う。さらに、、。
爺: さらに?
孫: よしと。

孫、CDデッキを止める。

爺: よしじゃねぇ!
孫: ん?
爺: 「ん」じゃねぇよ。
お前何失礼な説明たれてんだ!
孫: 説明じゃないよ。ナレーションだよ。
爺: スキみてはなんだ。
孫: いーのいーの気にしない気にしない。
爺: 気になる!さらに、なんだ!
孫: さ、片付けよう。あ、ゴミ、どうすればいい?
爺: 無視か。
孫: どうする?どうする?
爺: そこのダンボールにでも入れてくれ。
孫: ちょ待って、あ、撮れてる撮れてる。

ビデオをいじり出す孫
それを見ている爺

爺: 、、専門学校ってあれか?そういうのか?
孫: うん。映像関係。
爺: 卒業したのか?
孫: うん
爺: 仕事は?
孫: 、、ぼちぼち。
爺: ふーん。
孫: 最近、開眼したからいーの。
爺: また言ったなそれ。
孫: 目の前のもやが晴れたっていうか。
そういう事なかった?
爺: 昔はな。あったような気したけどな。
今となっちゃ、それで良かったんだかわからん。
俺の目玉はヤニだらけだ。
おまえ人生ながいんだから。
トンビがタカを生むとはいかなくてもよ。
ある程度はびしっとしろ。

■うそつきじーさん

孫: 今日クビ切られた人にいわれたくないな。
爺: 俺はさんざん働いたっての。色々。
後は年金でなんとでもなる。
孫: ふーーーーーーん。
爺: なんだその反応は?
孫: 働いてたんですか?色々。
爺: まぁな。
孫: どんな?
爺: なんだその挑戦的な態度は。
孫: どんな仕事?
爺: 色々は、色々だ。
孫: 例えば?
爺: 例えば、、なんか、あ、駐車場管理とか。
孫: それ今じゃん。昔は?
爺: 、、忘れたなぁ。
孫: 出たよ!
爺: なんだ。
孫: ぜってぇ昔の話きいたらごまかす!
そして必ず嘘をつく!
こう見えてももう大人ですから?
昔みたくもう騙されませんから。
爺: え?
孫: めちゃめちゃうそついてたし。
爺: え?だれが?
孫: あんただよ。
爺: 例えば?
孫: アメリカロシア日本を渡り歩く三重スパイだったとかさ。
それでなぜかハワイの刑務所に入ったとかさ。
そこで猛勉強してパイロットと宇宙飛行士の免許を取ったとかさ。
スペースシャトル一号の失敗事故にあったとかさ
軽い火傷で済んだとかさ。
そのキズから入ったばい菌がもとで脳に突然変異が起きてさ。
ちょっとした魔法、
「例えば落ちた消しゴムを引き寄せる程度」の念力がついてさ。
見世物小屋に売り飛ばされてさ。
じーちゃんの能力に気付いた秘密部隊に勧誘されてさ。
爺: まだ続くのかそれ。
孫: 訓練が嫌になってたまたま便所の横にあった時空移転装置で逃げ出してさ。
過去でニクソンと田中角栄にちょっと文句言ったらさ。
やっぱり未来がかわっちゃって女ばかりの宇宙人が攻めてきてさ。
将棋で説得してさ。地球救ってさ。
その宇宙人の連れてきたメスのペットを友好のしるしに貰ってさ。
せっぷんをして魔法が解けたら地球人の女の子。
爺: それがばーさんだ。
孫: わしゃ中学まで信じとったんや!
爺: 事実は小説よりも、奇なりってな。
孫: どれだけ学校で頑張ったと思う?
爺: 信じない奴には言わせておけ。
ま、信じる方も信じる方だ。
孫: ウソつきと呼ばれる子供の苦しみをわかってない!
爺: 本当のことだからな(にやにや)。
孫: チャリ!チャリ買ってくれたじゃん!
爺: ああ、自転車な。誕生日な。
孫: 飛ぶっつったろ!
爺: いや、だから、トップスピードまで上げたらだぞ?
孫: 白いアルトとタメはったんじゃ!
ふっとチャリごと浮いたんじゃ!
爺: お!飛んだな?!
孫: 飛んだわ!!そのあと両手両足血みどろじゃ!
じーちゃんそれを横から見てて!
爺: ばくしょう。
孫: ふざけんなぁ!
爺: いやーあれはめちゃめちゃ怒られた。ばばぁに。
孫: あたりまえだっ
爺: いひひひひ
孫: 気味の悪い笑い方して。弁明なしか
爺: ま、信じない奴には言わせておけ。
孫: 、、
爺: ほら、日暮れちまう。片付けろ。
孫: うそつき性悪じじーめ。
爺: 俺だって生まれた時から年寄りだったわけじゃねぇよ。
孫: え、そうなの?
爺: うるせぇ。
孫: 口癖、「うるせぇ」。
爺: 帳面に書くな帳面に!
孫: 「突然言葉が古い」
爺: うるせぇ!
孫: 病名「うるせぇしか言えない病」
爺: 何しにきたんだお前?
孫: 通りかかっただけー。


■いらないものあそび

孫、怒りに任せてどんどん入れていく。
爺、ひとつひとつチェックする。

爺: こら。
孫: え?なに?
爺: これはいらないもの入れだっ。
孫: 知ってるよ。
爺: なんでいらないもの入れにいるものが入ってるんだ。


孫: これは?
爺: いるよ
孫: いらないよ
爺: いるんだよ
孫: どうすんの
爺: こうすんだよ
孫: そうすんの?
爺: そうすんだよ。
孫: いるの?
爺: いるよ
孫: いらねーよ
爺: ガタガタ抜かすな!
孫: 全然かたづかん!
爺: かたづけろ!
孫: むり!
爺: うるせぇ!
孫: 口癖、
爺: うるせぇうるせぇ!

※に戻る×3。
ゴミ1、カブトガニ飼育セット
ゴミ2、日変わり
ゴミ3、磁石で楽々キャッチ

孫: じーちゃん、職場に私物を持ち込みすぎだ。
エロ本とか。エロ本とか。エロ本とか。
爺: やらんぞ?
孫: いらん。

SEピーーヒョロヒョロヒョロ

■てづくり位牌

孫、位牌に注目。

孫: あれは?
爺: あー、ばーさんのな。
孫: あー位牌だ。
爺: そう。お墓の代わり。
孫: なるほどー。

と、いらない物入れに入れようとする

爺: こらあ!
孫: 冗談!ごめん!ちょっとやってみたくなった!
爺: 楽しくねぇ冗談だなおい!
孫: いや、そんなに激しく反応すると思わなんだ。
ごめんなさい。ごめん!天国のばーちゃん、ごめん!
爺: あーびっくりした。笑うしかねぇなおい。
孫: でもなんか。
爺: なに?
孫: 手作り感満載だね。
爺: ん、まぁ、力作だからな、俺さまの。
孫: え?どういう意味?
爺: 作ったんだよ自分で。
孫: 自分で?
爺: 彫刻刀でほって。
孫: すげえ!何材ですか?キリ?クルミ材?
爺: 100均で買った。
孫: へー。

コンコンと壁に叩く。

爺: このバチあたり!(取り上げる)
孫: あ、つい。
爺: お前ばばぁにたたられるぞ?
孫: もうしません。これほんと。
爺: 信用ならねぇ。

手作り位牌に「泉谷ユキ」と書いてある。

孫: これってさぁ、戒名とか書くんじゃないの?
爺: 普通はな。なんとかかんとかしんじょだか、ぜんじょだか、なんにょだかな。
孫: 書けばいいじゃん。
爺: あるわけねぇだろそんなもん。
孫: なんで?あ、そっか。
爺: キリスト教だもん、あのババァ
孫: クリスチャンネームとかは?
爺: これにか?変だろ。
孫: なんかペットのお墓みたい。
爺: 失礼な事いうなっ!気持ちだ気持ち!
孫: 気持ちかぁ、、ん?
爺: なに?
孫: まさか、、これも?

手作り位牌のとなりに、呼び鈴

爺: それも、キモチだ。
孫: 召使い呼ぶ奴じゃん。
爺: 棒無くさなくて便利だろ。
孫: 買ってこようか?
爺: いらん。気持ちだ気持ち。
孫: うーん。これ気持ちかぁ。
爺: やれほら、チーン。挨拶。
孫: ん。

孫、やる。チーーーーーーン

孫: 、、、、、、(こらえ切れず、首をかしげる)
爺: 気持ちと、慣れだ。
孫: なんか、新しい宗教みたいだ。
爺: 仏教だ。

孫、拝む。

孫: 、、、、、、

爺、それを見てる。

孫: よし。
爺: 、、、おう、ちゃんと出来たか。
孫: うん。************って
(例/お金持ちになれますように)
爺: 願い事してどうすんだバカ。なんだ******って。
孫: まぁ、いいじゃん
爺: ばばあにそんな力はねぇよ。
孫: 天国でパワーアップしてるかもしれんよ。
爺: なんたらゴンボールか。
孫: おおお、よく知ってんね。
爺: スーパー野菜人か。
孫: あ、惜しい。
爺: おまえちっさい頃あればっか見てたろ。
孫: ああ、だからか。
爺: そう、だから一番馬鹿になったんだお前。
孫: いちいちむかつく。

■電話について

爺: おい、手止まってるぞ。ちゃんと働け。
孫: 人使いが荒いもんなー。相変わらず。
爺: 電話の一本も入れずに遊びにきたお前が悪い。
孫: 電話したよ。でもいくら鳴らしても出ないから。
爺: 忙しいんだよ俺は。
孫: 忙しいったって。電話くらい出れんじゃん
爺: なに言ってんだおまえ。やだよ。
孫: え?
爺: やだよ。
爺: 電話には出ない事にしてんだ。
孫: え?
爺: あ?電話には出ない事にしてんだよ。
孫: なんで?
爺: なんでって、だから、電話には、出ない事にしてんだよ。
孫: なんの説明にもなってないっす。
爺: 用あるのはそっちだろ。
孫: は?
爺: 俺用ねぇもん。
孫: 、、、、、
爺: わかったか?
孫: いや、どうだろう。
爺: 俺が用あるときは、する。な。
孫: 、、あー、うん。
爺: おい、手止まってるぞ。ちゃんと働け。
孫: あ、うん。えーと。人使いが荒いもんなー。相変わらず。
爺: 電話の一本も入れずに遊びにきたお前が悪い。あ、デジャブ。
孫: 違う違う違う違う!
つまり、出ないから、突然来たんだけど?
爺: なんで。
孫: とうとう死んだかと思って。
爺: 縁起でもねぇ事いうな!
まだ60ちょいだ。現役だ現役。
孫: いやー、そろそろでしょう。
爺: てめえ、本気で言ってんのか。
孫: うん。
爺: ったく。そんな事のために来たのか?
今なんでもあるだろ、インターンネットとか。
電子メイルとか。
孫: え?パソコンあんの?
爺: あ、パスコンな?お前あんだろ?
孫: ある。あるの?
爺: ないよ。
孫: えないの?
爺: あるわけねぇだろ。
孫: じゃ無理だよ。
爺: あ、無理なのか。
孫: いや無理じゃん。どっちもないと。
爺: なんだ、たいしたことねんだな。パスコンも。
孫: ん?なんかパソコンを過大評価してた?
爺: インターンネットじゃなきゃ、ほら、なんだ。
孫: インターンじゃないけどね。
爺: ほら、なんだ。ほら、携帯電話とかで。
孫: あ、ああ、
爺: そういうの使って確認すればいんだ。
孫: ん?携帯で?
爺: お前あんだろ?
孫: ある。
爺: お前のどんなのよ?ドコノか?EUか?
孫: いや、AU。EUは、ヨーロッパ国家共同体。
爺: なんだ、あれじゃねぇのか。犬コロの。
孫: 犬?ああ、CMか。
爺: ソフトバンド。
孫: 惜しい。それは柔らかい、帯。
爺: どら。見してみ。
孫: あ、うん。

携帯渡す

爺: はーん。ちっちぇえな?もしもしーつってか?これ。
「もしもしー、携帯電話を携帯してますがー」ってか。
孫: あんまりそういう使い方はしないかな。
爺: 「おたくの携帯電話はー、どれくらい小さいですかー」ってか。
孫: 携帯だからって携帯電話について情報交換するわけでもないかな。
爺: 「その件について今からメイルしまーす」
孫: うん、絶対言わない。意味ないから。
爺: ふっおもちゃだもんな。

携帯投げる、ゴン。

孫: あ!あああ、投げない!
爺: それで確認すればいんだ。
孫: ん?何を?
爺: 死んでるかどうか。
孫: えーーとぉ。どやって?
爺: 電話出ねぇから死んでるんじゃねぇかーとか思ったんだろ?
孫: うん。
爺: じゃー、それ使って、確認すればいんだ。
孫: どやって。
爺: ピピって。
孫: ピピ?
爺: 「ピピー。あ、大丈夫、じーちゃん生きてるわー。
まさかまさか死んでるとは思わねどもな。
あー、いかったー携帯あってー。」って。できねーのか。
孫: そういう機能はないわ。
爺: だめだな。ソフトバンドは。EUにしろ。
孫: あのー、EUもドコノもソフトバンドも、そういうすごい機能はない。
爺: じゃなんのために携帯してんだそれ。
孫: うんとね、電話。
爺: 家にないのか?
孫: ある。
爺: おもちゃだもな。
孫: 、、、、、、うーーーーーんと。
爺: おい、また手止まってるぞ。ちゃんと働け。
孫: あ、うん。えーと。「人使いが荒いもんなー。相変わらずー」って言ってー。
爺: 電話の一本も入れずに遊びにきたお前が悪い。あ、(デジャブ)
孫: いや、デジャブじゃなくてぇ、
爺: 今なんでもあんだろ?
孫: なんでもはなくてぇ、
爺: 来る前に電話しろ電話。
孫: でも電話が鳴っても、
爺: 出ねーことにしてんだ俺は。
孫: その心は?
爺: 用がある時は俺から電話すっから、な?
孫: ここだ!!!
爺: ん?
孫: じーちゃん!電話に出ろ!!
爺: なんで?
孫: 今度から出ろ!!
あっちは用あるはずだから!
爺: 、、、、でも
孫: 出てください!じゃないと話が一向に進まなくてつらい!
爺: だけどお前携帯あんだろ?
孫: やめようこの話!
爺: なんでよ?
孫: いや、もう理解とか一切しなくていいから、
新しい約束をしよう、じーちゃん!
爺: ?
孫: 家の電話が鳴ったら、
爺: 出ない
孫: 出る!「電話が鳴ったら出る」!お願いします!
爺: まぁ、お前がそこまで、言うなら。
孫: うん。ありがとうじーちゃん。
爺: ほら、手止まってんぞ。ちゃんと働け。
孫: はい。働きます!
爺: 電話の一本も入れずに遊びにきたお前が悪いんだからな?
孫: ぐっ、、我慢。、、はい。
爺: やー、長かったな。
孫: え?
爺: ほんとお前は昔から物わかりが悪い。
孫: 、、、、、いけない、殺意を感じてはいけない。
相手はおとしより相手はおとしより。落ち着こう。
ちょっとうっぷんを晴らそう。

■映画をとるの

ビデオカメラ

孫: じーちゃんは性根が腐っている!
爺: また言うかそれを?!
孫: さらに!
爺: え?さらに。
孫: 頑固で、思いやりに欠け。
自己愛が強く、人の話に耳を傾けない。
思い込みが極端に激しい。基本的に嘘をつく。
悪態をつく!素直じゃない!かわいくない!
爺: おい、そんなにいうなよ。
孫: そして、
爺: まだあんのか。俺もちょっとキズつくぞ。
孫: これは、なかなか大変な作業になりそうである。
爺: おい、一体さっきから誰にむかってしゃべってんだ。
孫: まだ見ぬ、未来の大観衆。
日本中、いやいや、世界中の映画館を観客で埋め尽くすわけ。
爺: 映画?
孫: カンヌ、ベルリン、ヴェネツィア、
世界三大国際映画祭を総なめ!
私、一生をかけて映画をとります!
爺: あ、ふーーん。映画。映画とんのか。
孫: とうとう、言ってしまった。
爺: 開眼って、それか。
孫: 実は、そう。
爺: あーあー、専門学校な、そういう奴だったって聞いたもんな。
孫: 、、どう思う?
爺: あー、まぁ、頑張れ。
孫: ほんとに言ってる?
爺: うん。
孫: そう思う?!
爺: まぁ、目標を持つのは良いことみてぇだし。それに。
孫: それに?
爺: 俺関係じゃねぇし。
孫: いやあ、言うと思ってた!さすが!
爺: いやぁ、照れるなぁ。
孫: やっぱじーちゃんに話して良かった。
こんな事とうちゃんかあちゃんに話したら、
就職しろ!で終わりだもん。
自分のことしか考えていないじーちゃんなら、
わかってくれると思ったんだぁ~!
爺: いやぁ、それほどでも。
孫: 応援してくれる?
爺: え?ああ、いいよ。応援はタダだ。
孫: 協力してくれる?
爺: え?協力?なにを。
孫: いや、もう、別になにもしなくていい。
爺: なにも?
孫: うん。なにも。簡単だろ?
爺: んー、簡単そうだな。
孫: よし決まり!一緒に映画を作ろう。

握手を差し出す。

爺: 、、、、、、
孫: そうと決まれば善は急げだ!握手!
爺: 、、、、なんかかつごうとしてねぇか?
孫: してないよ!
可愛い孫が大きな夢に向かって邁進してるんだよ?
ほら、笑顔で握手しようよ!
爺: 別にもう、そんなに可愛くねえし。
ちっちゃい頃はな、
よく、笑わして貰ったけど。
孫: 何もしなくていいから。
爺: わりに押しが強いのが気になる。

孫、むりやり握手。

爺: あ。
孫: (ぶんぶんぶんぶん)やったー!協力!やったー!
爺: (ぶるんぶるんぶるん)ん??ん?強い強い強い。
孫: はい!契約成立ー!はい音楽!

派手な音楽

爺: 契約?俺は何もしねぇんだろ?
孫: もうね、普通にしててくれればいいから。
爺: 普通?わかった。
孫: じゃ撮るよー。
爺: え?ちょと待った。
孫: 撮ってるよー。
爺: 何?またビデオレターか?
孫: 違う違うー!
爺: なんだ今度。
孫: 役者。
爺: はぁ?!
孫: 役者をやって欲しいの!
爺: ば、ば、ばか言うんでねぇよ!
孫: なんもしなくていいから!
爺: なに言ってんだおまえ!
ばかこのー。
役者っつたらほれ、台詞覚えたりよ。
チャンバラしたりよ。見栄きりしたりよ。
流し目したりよ!
そんなん俺には無理だー!(見栄きり)
孫: 全然大丈夫!
爺: 協力っつーからどんなんかなーって思ったらおめ、
役者だもの、とつぜんそったらこついわれても
困るってぇーい!
孫: まんざらでもなさそー!
爺: だいじょぶか俺で?
孫: うわーじーちゃん!
カメラごしに見たらもう
なんだか匂いたつようなオーラが出てきた!
すげーよじーちゃん!
なんだろこれ?加齢臭?いや有名人のオーラ!
爺: 有名人?
孫: ******みたいな!
爺: おだてるなおだてるな!
孫: ******みたいな!
爺: おだてるなおだてるな!
孫: ******みたいな!
爺: おだてるなおだてるな!
孫: じーちゃん、映画当たったらテレビでれちゃう!
もうガッポガッポ、お金入るよ?
爺: ガッポガッポ!?
孫: そらそーだよ有名人だもん!
ほら丁度良かった!
今日クビになり、
今日孫と会い、
明日から有名人になり
爺: 金がガッポガッポ入るのか?!
孫: じいちゃんごめん!
俺間違っていたよ!
やっぱ人生はギャンブルだ!
これからかけるの金じゃない!
爺: なに賭ける?
孫: 残りの命だよじーちゃん!!
爺: 残りの命かーーあ!
孫: この物語は性悪ウソつき爺泉谷又次郎の実録!
なみだなみだのドキュメンタリーである~~!

二人、なんとなく踊りだしている。

音楽止める。

■孫が来たわけ。

孫: あ。(踊りすぎる)
爺: どういう意味だそれ。
孫: え?なにが?
爺: 実録?
孫: ドキュメンタリー映画ってわかる?
その人の生涯を撮るわけ。
爺: だれ?
孫: タイトル「性悪ウソつき爺、泉谷又次郎の一生」
爺: 、、、、、泉谷又次郎?あ、俺だ。
孫: そう。
爺: 、、、、、、おれの一生?
孫: 本当に何もしないでいいから。
普段通り!そのわびしい独り暮らしの様子を
おさめさせてくれればいいの!ね!お願い!
爺: いつまで?
孫: 死ぬまで!
だから、この先、密着取材をさせていただきたい。

■読みすぎ

明り、夕方になってくる。

爺: 、、、密着ねぇ。
孫: つっても四六時中一緒にいるわけじゃないけど。
爺: 通ってくるのか?
孫: あ。うん。
爺: 遠いだろ?
孫: あ、まー
爺: 金かかるぞ?
孫: ま、そのへんは、これから考えるけど。
爺: 、、、ふん。
孫: どしたの。
爺: そば遅すぎねぇか?
孫: あ、うん
爺: そろそろ帰るだろ?もういいぞ。だいぶ片付いたから。
孫: あ、いや、まだいる。
爺: いや、
孫: ほんっとに普通に居るだけでいんだよ?
たぶんさ、じーちゃんの昔の秘密がさ、
映像の中からにじみ出てくると思うわけ。
爺: 、、、、ふーーーーん
孫: あれ?
爺: あぶねーあぶねー、そういう魂胆か。
孫: へ?

遠くのトンビ。
ピーーーヒョロヒョロヒョロヒョロ

爺: トンビよ。
孫: 、、、
爺: ばばぁがよく言ってたよな。
一匹で飛ぶから可愛そうだってな。
孫: 、、、うん
爺: かわいそうだって思うか?
孫: 、、、思ったりもする。
爺: 、、、俺は思わん

遠くのトンビ。
ピーーーヒョロヒョロヒョロヒョロ

爺: ほら帰れ。
孫: え?
爺: 用済んだだろ?
孫: あ、えっとー
爺: こう言っておけ、
まだ死なねぇからほっといて大丈夫だって。
孫: え?なんの話
爺: 俺はな、超能力があるからな、心が読めるんだよ。
孫: え?
爺: 歳よりだからってなんでも騙されると思ってんだもな?
あぶねえあぶねぇ。ピンと来たよ俺は。
なに企んでやがるかと思ったら、
そういうことか。
孫: なにいってんの?
爺: 「あのじじいは言ったって聞かねぇから、
映画を撮るとかだまくらかして、連れ帰ろう。
遠いと世話がめんどくせえから」
そういう事だろ?
孫: 、、
爺: 俺は介護なんていらねぇし。人の手煩わす前に
勝手にどっかで酒でもくらってポックリ行くから大丈夫。
そう言っとけ。
老人ホームに入れられて、
さあそろそろ死んじゃいますよって
親戚中電話で呼びつけられて
はいみんな揃ったからそろそろ死んでください。
そんなの俺はまっぴらだ。
孫: 、、一言もそんなこと言ってねぇよ。
爺: 呼びつけられた親戚どももよ?
内心いつ死ぬかいつ死ぬかって時計ばっかりみちゃってさ。
死ぬんだったらあらかじめ時間決めて欲しいもんだよってさ。
やれお通夜はどうする葬式はどうする葬儀屋はどこにする
本人生きてんのに気のはええ相談ばかりしやがって。
あーやだやだ。俺は一人でこっそり死ぬよ。ほら、帰れ。
孫: じーちゃん。
爺: なんだよ。
孫: 別に誰も悪気があってああしたわけじゃないと思うよ。
爺: なんの話しだよ。
たまたまばあちゃんキリスト教で、
誰もやり方知らなかったから、相談しただけじゃん。
爺: 誰もばばぁの話なんてしてねぇよ。
孫: 心電図の音、うるさそうな顔して寝てたから、
親戚一同気きかして、
特別に病室に曲流して貰ったんでしょ?
俺中学だったからよくわかんなかったけど、
心電図の音よりはずっと良かったよ。
爺: 、、、、お前らが良かっただけだ。
孫: 、、、、
爺: じゃ。、、、、なんだあの帽子。
孫: 、、、あれは、サンタの。
爺: たいした事じゃねーんだろどうせ。
孫: ばーちゃんクリスマスが好きだったから。
爺: 俺もじっさいそう思うよ。
孫: 毎年サンタはばーちゃんの役だったから。
爺: 人一人死ぬなんて、どーせなんでもねーことだろ。
孫: 聞いてよ。
爺: しまいに勝手に音楽かけて、
うちのばばぁはチンドン屋か。
へんてこりんの真っ赤な帽子かぶしやがって。
俺にはまったく理解ができねぇ。
孫: 聞いて。
爺: うるせぇな。
孫: 、、、、、、、
爺: ほら帰れ。。

孫、戸口に向かう。

爺: とーちゃんかーちゃんに言っとけ。
孫に説得されりゃ目尻さげて言う事聞くと思ったんだろうけどよ。
おれはそんな好々爺じゃねぇってな。
子供だましの作戦にひっかかるほどボケてねぇから安心しろ。
孫: 、、、

出ていかない。

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。