『爆笑SFパパ日記~死んじゃったパパの見てた世界~』

『爆笑SFパパ日記~死んじゃったパパの見てた世界~』
作 すがの公
<上演時間>1時間20分
<あらすじ>パパは真面目でつまらない人間だったので、早い時期にママに逃げられました。以来、私たちを男手ひとつで養ってきましたが、私が高校生だったある日に過労で死にました。私たちはパパの死を笑って生きてきました。パパの保険金が尽き、パパがローンで買ったこのウチを売ろうと書斎を整理していたら、パパの日記が発見されました。パパの裏の顔と本当の仕事、ママとの運命の出会い、ある女の影と熱烈な恋愛、巧妙に仕組まれた計画、私たちの出生の謎。パパの日記にはSF小説顔負けのウソが丹念に書き込まれていました。あんなにつまらないパパがこんなに愉快なウソを書くなんて、一体、パパにはどんな世界が見えていたのでしょう。今日、私たちは久しぶりにこのウチに集まり、この『SFパパ日記』を爆笑しながら検討しようと思います。

弁護士、パパ0、未来少年パパ
女/ママ
利男
明男
アサノ
繁子
空女
みつお
パパ1
パパ2
上司
部下

佐藤明男(あきお):長男。スーツ。借金取りに追われている。昔、風景画家になりたかった。
佐藤朝乃(アサノ):長男の妻。パニック障害チック。北海道札幌生まれ。
佐藤繁子(しげるこ):長女。リストカットしちゃったり。本当は歌手になりたい。フリーター。彼氏無し。
佐藤空女(まりあ):次女。馬鹿っぽい。役者志望。妊娠2ヶ月目に突入。
みつお:空女の彼氏。わりと考えている。空女のお腹の子を認知しない。
女/佐藤文子:蒸発したはずのママ。旧姓・櫻井。パパとは交換日記していた。
佐藤利男(としお):長男の兄とされる人間。山谷に住みつき普段は日雇いと競馬と酒。家族はいたこともあった。
上司:インターポール特別捜査課時間係、係長。平凡な毎日に嫌気。
部下:その部下、平社員。かしこい。SFに強い。
安斉:弁護士。スーツ。パパがタイムスリップして
未来少年パパ:そばと虫を愛する。未来少年パパ
パパ0(弁護士):佐藤藤雄(ふじお)本当のつまんない真面目なパパ、日記と3LDKのマンションを残した。
パパ1:第一タイムスリップパパ分裂体
パパ2:第二タイムスリップパパ再分裂体。

■舞台

 東京近郊。3LDKマンションの居間だった場所が内装工事中。
 床にはベニアがランダムに敷いてあり、よく見ると、間取りの一部である。
 これにより、抽象セットでもあるという事がわかる。
 壁材、脚立、椅子、作業灯、丸ノコ、グラインダー、インパクト、ブルーシート(灰色)、ペンキの缶。ハケ類。工具類。
 簡易な作業椅子や、もともとあったらしいソファーや食卓椅子が置いてある。
 天井から照明やアンテナのコードが垂れている。
 養生されたシートが、別の部屋がある事を現している。
 
 そんなマンションの一室、居間の一角、ソファーと食卓机と椅子がおいてある。

 机の上に、半分にちぎれた分厚い日記(カバーは赤茶)が置いてある。

■開場中

 サアアアアアアアアアアア

 屋根に雨が当たっている音がする。
 転がっている作業灯は接触が悪いらしく。
 時折、消えては、また点く。

■開演

 佐藤繁子が登場する。

00■プロローグ■■■■■■■■■■

 繁子、半分にちぎれた分厚い日記を手に取り、目を落とす。

 パパらしき男(パパ0)がサラリーマンスーツにメガネ姿で舞台上に現れ、話しはじめる。

パパ0:昭和50年結婚。すぐにママが妊娠。来年からパパになる。
 昭和51年4月1日。就職。同年8月、待望の長男・明男が産まれる。アパートに3人。風呂無し。6畳。
 昭和53年3月、北海道釧路支部に転勤を命ぜられる。新米は必ず通る道。社宅に住む。
 昭和53年6月、長女・繁子誕生。男だと聞いていたのに、女の子だった。嬉しい誤算。

 雨が上がる。

パパ0:昭和57年4月、本社勤務。明男も小学校に上がった。
 昭和59年またしても転勤。業務拡大によるなんとか。九州へ。転校に明男泣く。繁子もつられて泣く。
 昭和61年再び本社勤務。
 昭和62年、近郊に3LDKのマンションを購入。もちろんローン。がんばらねば。
 昭和63年の夏、まさかの妊娠が発覚。繁子が大喜び。明男は思春期で、複雑な顔をしてる。
 昭和64年1月、次女・空女が産まれる。
 そして平成元年、1989年、ママがいなくなった。

 音楽『アヴェマリア』が聞こえる。

繁子:パパは真面目でつまらない人間だったので、早い時期にママに逃げられました。
 以来、私たちを男手ひとつで養ってきましたが、私が高校生だったある日に過労で死にました。
 私たちはパパの死を笑って生きてきました。
 パパの保険金が尽き、パパがローンで買ったこのウチを売ろうと書斎を整理していたら、パパの日記が発見されました。
パパ1:繁子。
繁子:え?

 パパ1登場、赤と青の眼鏡をかけている。スーツがテラっとしてたり。

繁子:、、、パパ?

 パパ0とパパ1を見比べながら、話を聞いている。

パパ1:未来は何によって作られるか知ってるか?
 パパはな、人間の余計な想像力だと思う。
 つまり現在は、過去に考えられたSFなんだよ。
 昔、パパが手塚治虫の漫画で見た流線型の車が今、ほんとに走ってる。
 ゲームだって最初はこんなゲームウォッチっていう、白黒の。
 それだけでも驚きだったのに、最近じゃスリーデーらしいじゃないか。
 しかも赤と青の眼鏡をかけなくても、飛び出すんだって?

 パパ2登場、さらに嘘くさい格好。SF風。

パパ2:パパが会社で使っていたころのパソコンは黒い画面に緑の文字。
 ファイルを探すために命令を打たなくちゃいけないっていう。
パパ1:繁子、インターネットってすごいだって?
パパ2:カメラで実況中継が出来るとか、世界中につぶやき声が広まるとか、
パパ0:もう、パパには見当もつかんなぁ。
パパ1:携帯電話なんてパパが産まれたころには無かったよ。
パパ2:それが今じゃあほら、ちょいちょーいって。
パパ1:噂によると、テレビ電話がついてるんだって?
パパ0:そんなの青少年科学館にしか無かったのに。
パパ1:今作られている現実は人間の余計な想像力の産物だ。
パパ2:全部、人間がもしもこんなものがあったらと想像した結果なんだ。
3人:わかるかい、繁子。

 繁子、前を向き直り、
 リストカットした手首を見る。
 なかなか消えない、深いキズ。

パパ0:繁子。
繁子:!

 繁子、声に驚いて、キズを隠す。平静を装い。

繁子:、、なに?
パパ0:元気?
繁子:、、、
パパ0:元気か?

 音楽が上がり、繁子質問には答えずに日記を閉じ、奥の壁へ。

パパ1:、、、、

 パパ1、どこかへ消える。
 彼が完全に舞台からいなくなると、役者たちは準備を始める。

01■19時00分■■■■■■■■■■

 音楽が消える。
 工事中のマンションに安斉、明男、アサノ、繁子、空女、みつお。少し離れた場所に女がいる。
 皆、決して居心地が良いわけではない。 

 安斉、時計を見ている。

安斉:、、、、はい。では、19時になりましたので、えー始めたいと思います。
 では、よろしくお願いします。(礼)

 全員。礼。

安斉:まず、えーーーーっと。ご長男の佐藤明男さん。
明男:(ぼーっと立ってる)
アサノ:ほらっ返事。
明男:え?
アサノ:すみません、もう一度呼んでやってください。
安斉:ご長男、佐藤明男さん。
明男:はい!ほら馬鹿みたいだろ。
アサノ:第一印象っ
安斉:ええと、そちらは
アサノ:あ家内です結婚5年目で子供は一人まーくん写真♪
明男:いいから。
アサノ:なんか緊張しちゃって♪ぱにっく♪こんにちわ
明男:続けてください。
安斉:そして長女の佐藤しげこさん。
明男:あやっぱり。
安斉:は?
繁子:「しげるこ」です。
明男:”足繁く通う”の「繁」に子供の「子」で、しげるこって言います。
安斉:はー。変わった読み方ですね。
繁子:シゲルだけで良かったんですけど。
明男:いや、変わってていいよ。ねえ?
アサノ:この人なんて明るいに男でアキオ。
明男:単純で前向きで馬鹿みたいだろ。
アサノ:ばか。
明男:はい、続けてください。
安斉:そして、次女の、、、ううう。すみません。
空女:まりあ。
安斉:え?
空女:まりあです。
みつお:かっけー♪
安斉:まりあ?
全員:まりあ
安斉:あ、え?これでマリア?
空女:どーも♪
繁子:「空」の「女」って書いてまりあって読むんです。
アサノ:今、頭空っぽの女みたいだと思いました?
安斉:え?いや、すいません。
アサノ:思ったんだ。思ったって(兄に)。
明男:やめろっての。
空女:むかつくんだけど?
繁子:じょーだんじょーだん。
安斉:これはまた、さらに変わった名前ですね。
アサノ:どーせ当て字です当て字。
明男:なんでトゲあんだお前。
アサノ:別にないけど。
空女:ムカつく。
繁子:まぁまぁ。
みつお:まだおわんねっすか?
空女:始まったばっかじゃん♪
みつお:たのしそー♪

02■上司と部下■■■■■■■■■■

上司:はい止めれ。
部下:ピキャキョ

 空間に上司の声がすると、照明が変わり、皆体が固まり、時間の流れが遅くなる。
 SF警備員っぽい上司、サイバーな眼鏡をしていたりする。
 難しい顔をして立ち上がる。胸に「T・P」、背中に「ICPO」

上司:、、、、、、、、、、
部下:、、、、、

 上司、舞台に入りこむ。入り込む時、音がする。

上司:みゅあんッ
部下:あ、みゅあんッ

 舞台上を隈無く歩きまわる。観客も含め、劇場内の全員をチェックする。

上司:ううん。
部下:係長。あまり、見ないであげてください。
上司:どうせ見えないわけだろ?
部下:まぁ。
上司:えーと日付と時間
部下:2011年6月11日19時ちょっと過ぎです。
上司:2011年。俺、この次の年に産まれたんだ。

 再び、舞台上の顔をしげしげ見る。

上司:おいこいつ動いたぞ。
部下:そりゃ少しは動きます。
上司:あ、そうなの?
部下:そうです。完全に時間が止まってるわけではないですから。
上司:へー。そうなの?
部下:詳しく話します?
上司:簡単に話せ。
部下:彼らの時間が止まっているわけではなく、
 我々が時間の隙間を高速で移動しているわけですから、このベルトで。
上司:かっこいいよな。このベルト。
部下:そうかなぁ。

 仮面ライダーみたいな。

上司:つまり、超ゆっくり動いているというわけだな?
部下:そうです。超ゆっくりです。

 あからさまに超ゆっくりうごきだす。

上司:ほんとだ。よくみるとあからさまに超ゆっくり動き出した。
部下:あからさまにとか言わないでください。
上司:大変だな。
部下:そうですね。
上司:下手だなこいつ。
部下:下手とかないですから。
上司:始まったばかりなのに。
部下:なんの話ですか。

 誰か、随分うごく

上司:おい!随分動いたぞあいつ!
部下:たぶん、すごい早く動いたんです。すごい早く。
上司:苦しいなその言い訳
部下:あまり、注目しないであげてください。
上司:わかった。

 上司、また観察を始める。

上司:今日も代わり映えしないなぁ。
部下:ですねぇ。
上司:毎日毎日。この時間に張り込みだ。
部下:はい。
上司:本当に犯人は現われるのだろうか。
部下:今日こそ。動きがあればいいんですけど。
上司:いやにならんか?
部下:仕事ですから。
上司:最近はお前等若者の方が社会に文句ねぇんだもんな。
部下:公務員っすから。
上司:それでいいのか?人生。
部下:安定ですよ安定。安定こそが人生だ。
上司:ふーん。毎日毎日ルーティンワークだ。なんのために生きているんだか。とか。
部下:思いません。
上司:俺いつまで係長なんだろう。とか。
部下:あ。
上司:何?
部下:今日、干渉するの早いですよ。コンマ5秒
上司:少しは変化のある毎日をさ。毎日毎日同じ時間覗いててもつまんないだろ?
部下:報告書になんて書くつもりですか?
上司:『勘』
部下:僕らが歴史を変えたらもともこもないじゃないですか。
上司:おい。この日記のさあ

 パパ日記の上巻を持ってる。

部下:ああ、それどっから?!
上司:え?こいつの部屋。あっちの。
部下:だめですってば勝手に触ったら!
上司:わかってるよ。
部下:下手をすると歴史が変わる危険がありますから。
上司:でもほらせっかく現物を目の前にしているわけだからさ。
部下:戻して!戻して早く!!
 それが未来においてどんな影響を与えるのかなんて誰にも想像出来ないんです!
上司:そんなにハキハキ怒らなくてもいいじゃない
部下:現に!我々が追っているその犯人は!
上司:『ノノ日記』。のの日記ってなんだろね?
部下:係長!!

 音楽。「Third Man Theme」

上司:あ、ほら!えんぴつでなんか書いてあるよ!(嬉々)えす、えふ!
部下:いいから!はやく!しりませんからね?みゅあん。

 部下退場する。

上司:ちょっと喜べよ新発見をさぁ。みゅあん。
部下:2011年6月11日19時2分ジャストから行きます
 場所。佐藤家マンション。犯人佐藤出現予定時間まで45分。
上司:どうせまた現れんよ。
部下:では、お願いします。係長。
上司:あ、初め。
部下:ピキョキョ。

03■オープニング(00:56まで)■■■■■■■■■■

 部下、音楽をあげ、上司、照明を変える。
 なんかゆったりした行進。
 『爆笑SFパパ日記』
 現在の人々後ろむきに行進する。
 未来の人々、前向きに行進する。

04■1分後■■■■■■■■■■

 少し戻る。

安斉:えーと、
空女:みっちゃん♪
明男:次女の友人です。えーと、職場の。
空女:彼氏です♪
みつお:あマジすか。
空女:え?マジっす。え?遊び?
みつお:え?マジっすか?
安斉:いや、私に聞かれても。
空女:(姉に)みっちゃんこういうこと言うよ?
繁子:あ、うん、そうだねー。
空女:かわいー
繁子:ねー
アサノ:バカか。
明男:こらっ
アサノ:バカだよあそこ。
明男:やめろって
空女:むかつく。

 皆、口々にしゃべりだす。

安斉:ああ、ええっと。すみません。静かに!あ、静粛に!
みつお:出た「静粛に」!さっすが弁護士!
空女:みっちゃんこれ聞くために来たんだもんねー。
繁子:よかったねぇ

 皆、口々にしゃべりだす。
 弁護士、携帯を取り出し話しだす。スマートフォンが良い。

安斉:あ、もしもし、鶴田法律事務所、安斉の携帯ですが?
 あ、すみません。ちょっと騒がしくて、ちょっとごめんなさい。
 (姉に)あの、お姉さんお姉さん。
繁子:はい?
安斉:ちょっと席外します。

 安斉、係の女に少し、耳打ちして退場する。

繁子:なんで私にいうんだろう。

 親族の騒ぐ姿をしばし傍観する繁子。

女:あのー
繁子:はい?
女:皆さん何かお飲み物とか?
繁子:あ、すみません。でも今うちなんもなくて。
女:あたし買ってきます。
繁子:でも
女:いんですいんです。
アサノ:そうですか?
女:リクエストっ
空女:コーラ!
アサノ:お茶を。あなたも?
明男:あ、うん。
繁子:私も。
みつお:ガリガリ君!
空女:あ、それいい!
アサノ:気にしないでください
明男:なんかテキトーに
女:はい。
繁子:あ、お金。
女:いんですいんですー

 女、退場する。

繁子:コンビニすぐありますからー、マンション出て、右。
アサノ:じゃ、椅子とか出そっか。
繁子:あ、はい。すみません。

 二人、場を整える。

空女:おねーちゃん。トイレ使える?
繁子:あ、うん。
みつお:よし!便所クエスト!
空女:探すほど広くねーし。
みつお:てててーてーてーてっててー♪(FF勝利音)

 みつお、空女退場する。

アサノ:逃げやがった。
明男:なんの音楽だ。
繁子:えふえふ。
明男:ふーん(わかってない)
アサノ:あまやかしすぎたんじゃない?
明男:え?
アサノ:まりあちゃん。
繁子:すみません。
明男:親じゃないもん俺。
アサノ:親代わりなんでしょ?
明男:違うよ。親父死んだの俺大学ん時だから、えーと。まりあが、
繁子:小3。8歳。
明男:その後俺就職して飛ばされたから、後はシゲルコが育てたようなもんだもな?
繁子:えーあたしのせい?
明男:そー、おまえのせい。
アサノ:お母さんはいつ出てったんだっけ?
明男:まりあ産んですぐ。
アサノ:へえ。産んですぐ?そー。産み捨てたって感じ?
明男:おい。
アサノ:何?
明男:その話まりあの前でするなよ。
アサノ:なんで?
繁子:おねーさんお久しぶりです。
アサノ:はいお久しぶり。
繁子:元気でした?
アサノ:元気元気。
繁子:良かった。冬に調子くずしたって聞いてたから。
アサノ:誰に?!(過敏)
繁子:わぁっ。えっと。兄に。
アサノ:あ、そ。
明男:ほらお前風邪引いて、1週間寝込んだろう。
アサノ:ああ。うん。全然平気。
繁子:そですか。
アサノ:シゲルコちゃんなんかぐっと大人っぽくなったねぇ。
繁子:そうですか?
アサノ:いくつになったの?
繁子:もう32です。やばいです。
アサノ:やばいねぇ。
繁子:はっきりいいますね。
アサノ:明日にでも結婚しなきゃしなきゃねぇ。
繁子:いや、結婚は別に、いんですけど。
アサノ:あ、そうなの?え?じゃ何がやばいの?
繁子:ああ、ええと、この先の展望というか。
アサノ:展望?結婚以外に?なんかあるの?ねえ、結婚以外にやばい展望ってなに?
明男:しらねえよ。色々あんだよ。繁子、ちょっとアレもってきてくれ。俺も読む。
繁子:あ、うん。

 繁子、書斎に日記を取りにいく。

アサノ:(色々ってなに?)
明男:(いいんだって)
アサノ:ねえ交通費とか出るんだよね?
明男:出ないだろそんなもん。
アサノ:だってうちらだけ飛行機で来てんだよ?不公平じゃない?
明男:どっから出るんだよそんなもん。
アサノ:相続税。
明男:なんでだよ。
アサノ:おみやげだって買ってかないとうちの親泣くしさ。
明男:泣くなよおみやげで。
アサノ:はいはい。
明男:なんで2回言うんだよ。
アサノ:初めて来た。
明男:あ、そうだよな。結婚式もむこうでやったしな。
アサノ:こっちのマンションってなんか小さい。
明男:北海道の住宅事情と一緒にすんなよ。築三十年だぞ。

 繁子、戻ってくる。

繁子:あっれー?

 繁子、何かパパ日記上巻観ながら不思議がってる。

アサノ:あ、あなたの部屋は?
明男:もうないだろ?
繁子:あ、今や物置です。
アサノ:こっち?
繁子:ああ!ほんとひどいですから!
アサノ:またまたああ♪るんー♪

 アサノ、ウキウキ退場

明男:なんであいつと結婚したんだ俺。

 繁子、やっぱり日記をいぶかしがっている。

繁子:?
明男:どした?
繁子:部屋入った?
明男:だれが?
繁子:入ってないよね?
明男:どした?
繁子:いや、なぜか部屋の前に置いてあって。

05■時間補正■■■■■■■■■■

 奥の壁の方で部下、上司をにらむ

部下:ストップ。
上司:ピキャキョ

 二人、止まる。

部下:係長。
上司:急がすからさ。
部下:クレオパトラの鼻が数ミリ低かったら、シーザーは彼女にプロポーズをせず!
 世界の歴史は大きく変わっていたと言われるんですよ!
上司:クレオパトラじゃないじゃん。ただの佐藤だろ。
部下:そういう問題じゃないです。ほんの少しの差が、未来に影響するかもしれないんですって!
上司:大丈夫だよちょっとくらい。
部下:だめです!
上司:ゆうずうがきかないねぇ。これだから役場の人間は
部下:係長!!
上司:わかったわかった。もどせばいんだろ?
部下:リバース。

 アサノ明男繁子、ちゃかちゃか巻き戻しに動く。その中で上司、パパ日記を嫌々受け取り、

3人:キュルルルルル
部下:2011年6月11日19時08分23秒。
上司:こまけえな。
部下:スタート。

 ちょっと戻る
 繁子、書斎に日記を取りにいく。

アサノ:(色々ってなに?)
明男:(いいんだって)
アサノ:ねえ交通費とか出るんだよね?
明男:出ないだろそんなもん。
アサノ:だってうちらだけ飛行機で来てんだよ?不公平じゃない?
明男:どっから出るんだよそんなもん。
アサノ:相続税。
明男:なんでだよ。
アサノ:おみやげだって買ってかないとうちの親泣くしさ。
明男:泣くなよおみやげで。
アサノ:はいはい。はいはいはい。
明男:なんで5回言うんだよ。
アサノ:初めて来た。
明男:あ、そうだよな。結婚式もむこうでやったしな。
アサノ:こっちのマンションってなんか小さい。
明男:北海道の住宅事情と一緒にすんなよ。

 繁子、普通に日記持って登場。

繁子:築三十年ですからね。
アサノ:あなたの部屋は?
明男:もうないだろ?
繁子:今や物置です。
アサノ:こっち?
繁子:ほんとひどいですからね?
アサノ:ふおう!(なにか歌う♪)
上司:歌った!
部下:これが正しい歴史です。

 アサノ、ウキウキ退場

明男:歌が上手だな。歌が。
繁子:うん。
上司:どーでもいい歴史だなぁ。

06■パパ日記に遺書■■■■■■■■■■

繁子:ハイ。

 繁子、パパ日記の上巻を渡す。

明男:ああ、問題の日記だな。(パラパラとめくる)
繁子:うん。
明男:半分しかないの?
繁子:そー。
明男:ますますミステリアス。
繁子:そーなんだよ。
明男:あれ?挟まってないぞ?
繁子:あ、弁護士の人が持ってる。
明男:ああ、そういうもんか。
繁子:いちおね。
明男:へえ~。遺書ねぇ。
繁子:なんか変だよね。
明男:そういうのはドラマの話だと思ってたな。
繁子:うん。
明男:普通の封筒?
繁子:いや、銀行の封筒。
明男:え?なにそれ。
繁子:ほら銀行のATMんとこに置いてある。タダで貰える奴。
明男:ガッカリだな。
繁子:あぶなく開けるとこだったよあたし。
明男:何で止めてあった?
繁子:ガムテープ。
明男:ガッカりだな。

 空女、戻ってくる。

繁子:でも、「遺書」って書いてあるから。
明男:「兄妹揃った上、我が家の居間にて開封するべし」ってか。
繁子:、、、いちおね。
空女:パパ、日付と時間まで指定してたんでしょ
繁子:、、そう。
明男:今日かぁ。
繁子:19時30分。

 雨の音が聞こえてくる。

上司&部下:?(雨だ)

 空女、日記を手にとり、

空女:みしてね。

 読み出す。

繁子:おかげで改装工事もストップだよ。暮らしにくくてしょーがない。
明男:全部こんな感じか?
繁子:あたしの部屋だけ後回しにして貰ってる。
明男:すまんな。言い出したわりに任せきりで。
繁子:だってにーちゃん北海道だもん。
明男:すまんすまん。
繁子:仕方ないよ。
明男:結構本気で改装工事してんだなぁ。
繁子:うん。
明男:台所のほら、あれ、どこ行った?
繁子:対面キッチン?
明男:取ったのか。
繁子:もう流行んないんだって。
明男:そうなんだ。
繁子:そもそもうちでは結局誰も対面したことないじゃん。
明男:ま、鍋置きと化していたしな。カウンターみたいなの。
繁子:うん。
明男:へえ、、もう面影ないなぁ。
空女:トイレも張り替えててびっくり。変な壁紙。
繁子:不動産の人に相談したら「内装これじゃ売れない」って言うから。
空女:あたしの部屋も壁ベリベリだった。
繁子:落書きすっからでしょ。むかしっから。
明男:そっか空女なんて、生まれた時からだもんな。
空女:なんか、もう自分ちじゃないね。
繁子:(カチンとくる)だから、そうしないと売れないんだって。
空女:ふーん。いんじゃない別に
明男:、、、

 間

明男:あれ?まりあ今、一緒に住んでないのか?
空女:うん。
繁子:まりあは、ほら別のお友達のとこに。ね。
明男:お友達?
空女:隠さなくていいじゃん。
明男:あ、あいつか?
空女:そー。
明男:あ、そー。あいつと。ふーん。
空女:なに?
明男:いやいや、ちょっとほら、びっくりしたから。
空女:なんで?
明男:えーとほら。二人でやってると思ってたから、マンションのこと。
空女:あたしそんな権利ないし。
繁子:またそやってー。
明男:なんだ?
空女:なんでもない。
明男:え?
繁子:なんでもないってさ。
明男:どした?
空女:別に。ほんとに売るんだなぁって思って。
繁子:あんた。この後に及んで売って欲しくないとか言う?
空女:べつに。
繁子:ねーちゃんあんたに散々相談したからね?
空女:わかってるよ。
繁子:けどあんた「べつにどっちでもいい」の一点張りじゃん。
明男:おい、だいじょうぶか?
空女:なにが?
繁子:なにがじゃないじゃん。
空女:別にどっちでもいい
繁子:なら言わないでよ。
空女:はーい。
繁子:、、、もー。
明男:なんか、ごめんな。いろいろ。
繁子:別に、しかたないよ、、あたしがやるしかないんだから。
明男:そうか?わりーな。

 明男、アサノの退場した方へ退場

繁子:トイレ。
空女:あ、みっちゃん入ってるかも
繁子:(タメイキ)

 繁子退場。空女、日記に目を落とす。

07■ママと出会った日■■■■■■■■■■

 雨の中、パパらしき人(パパ1)登場。音楽
 半分の傘をさしている。出来れば半分濡れている。

パパ1:そういや、こんな変な雨の日だったな。
 パパは仕事に行く途中、工事現場で雨宿りしてたんだよ。
 でも変なんだ。
 雨の音が、こっちの方からしかしないんだよ。
 おかしいなと思って空を見上げて気づいた。
 雨が降っている所と、降っていない所の境目って、見たことあるか?
 まさにあれだよ。
 明らかに、こっちがくもってて、こっちが青空なんだよ。
 例えばちょうどこっからそっちが大雨。こっからそっちが晴天だ。
 うそじゃないよ?パパためしたんだから。境目のとこにこう入って。
 どうなったと思う?こっち半分、びしょぬれだよ。
 ま、そうして小一時間、雨の境目を楽しんでいたらだ。
 こっち側から声をかけられた。そう、お日様の方から。
 「何してるんですか?」
 そっちを見ると、、、
 一瞬目を疑ったなぁ。
 まばゆいばかりの日の光の中に美しい女の人が日傘をさして、
 パパを見て楽しそうに笑っているんだ。
 空から降りてきたんじゃないかと思った。
 天女みたいなその人が近寄ってきて、いい香りのするハンケチを差し出したら
 こっち側の雲の切れ間から光が、幾筋もさしてきて。
 雨がやんで、雲が晴れた。空一面の青空。
 空女が生まれるずっとずっと前、パパが、ママに会った時の話。

空女:、、、、

 空女、日記をとじる。音楽上がり、パパ1どこかへ退場する。
 空女退場する。

08■2061、オフィス■■■■■■■■■■

 奥の壁のどっかに「未来2061年」と書いた札、ぶらさがる。
 つまんなそうに上司登場。

上司:休憩。
部下:ピキャキョ。異常なしです。
上司:ねーのかよ。
部下:一字一句。何から何まで昨日の張り込みと完全に一緒です。
上司:あーあ。この後もお決まりの15分
 なんとなーく遺書読んでさ、
 何の問題もなく遺産を3分割してさ。
 1週間後に内装工事も完了。1ヶ月後に買い手もついてさ。
 仲良く3分の1づつ。1円の果てまで分けっこしてさ。
 お互いの問題に首つっこまないように3人の兄妹はそれぞれの道を歩むんだよな。
部下:いいことじゃないですか。
上司:ほんとにいいか?しってっか?長女なんて自殺未遂やらかしてんだぞ?
 リストカットだよ?ぜったい次女は知ってんの。
 おおかたそんなこんなで一緒に暮らしたくないんじゃない?
 長男の嫁なんてさー、完全にパニック障害か燃え尽き症候群だからね?
 次女はこの時、すでに
部下:係長。
上司:何よ。
部下:あまり感心出来ませんよ?
上司:なにが
部下:我々には守秘義務ってのがあります。
上司:知ってるよ。
部下:それは余計に詮索しても良いってことじゃありませんよ。
上司:知ってるよ
部下:われわれが余計に詮索して良いのは、2061年に現存する、この日記だけです。
上司:ノノ日記。

 部下、古い「パパ日記上巻」(50年経った風化した感じ)。

部下:昭和50年結婚。昭和51年4月1日。就職。同年8月、待望の長男・明男が産まれる。昭和53年3月、、
上司:つくづく、つまんない日記だ。もう覚えちまったぞ。
部下:せめてもう半分、出てくればいんですけど。
上司:どーせ代わり映えしねぇ日記だろーさ。
部下:こんな真面目な人が大罪を犯したってんですから、おっかないですねぇ。
上司:ぬすっとめ。どっからぬすんだんだ。時間旅行ベルト。
部下:警官の拳銃を盗むみたいなもんですからね。
上司:いや、それ以上だろ。
部下:ですねぇ。
上司:あ、そうだ。
部下:はい?
上司:さっき50年前の現物を手にした時にさ、えんぴつで「SF」って書いてたんだけど、あれなんだろう?
部下:ああ、消えてるんですね。えんぴつだったから。
上司:SF。
部下:SF。
上司:調べて。
部下:えー

 チリリリン、チリリリリリン。黒電話がなる。

部下:はいインターポール特別捜査課時間係、え?はい、そば?
上司:またあのガキか。
未来少年パパ:へい、かけそば1丁!

 未来少年パパ(パパ0)登場。短パンに、ランニング、メガネ。虫取り網、カゴ。

上司:切れ切れ
部下:ああ、こちらは、インターポール日本支局ですね。かけそばは無いです。
未来少年パパ:あ、仮面ライダですけろー。
上司:親はどした親は!
未来少年パパ:かめーーーん、ライライ!!
部下:切りまーす。

 チンッ。未来少年パパ退場

上司:なんで仮面ライライにそば注文されなきゃいけねんだよインターポールがよお。
部下:ノノ日記。金庫にしまいますね。
上司:おう。
部下:確認お願いしまーす。
上司:わかったわかった
部下:ノノ日記、はいりまーす。
上司:わかったって。
部下:あれ??
上司:あ?

 ウィーンウィーンウィーン

上司:ん?なんのおと?
部下:?!

 部下、机の引き出しらしき所から、

部下:、、、これ。
上司:ん?
部下:入れました?
上司:なに?

 もう一冊の日記『古パパ日記下巻』登場する。

上司:それ、、、もう片っぽ?
部下:どうして突然。
上司:貸せっ

 上司、両方をひったくり、合わせようとする。 

部下:エマージェンシーコードレッド!
 未来に影響する初期値との差分、、、、、測定不能。

 慌ただしく、任務に戻る、部下と上司。

09■パパ3人?■■■■■■■■■■
 
 未来少年パパ、走りこんでくる。
 仮面ライダーみたいなベルト。
 めっちゃめちゃ虫とってる。
 ママ(エプロン)登場、ママ、パパの着替えを持ってくる。
 未来少年パパ、スーツに着替える。ママ手伝う。

 パパ1とパパ2が出てきて、
 腕組みしながら考えごとしながら歩いていく。
 そんで、ぶつかりそうになって。
 「あ、すみません」みたくどけたっけ、
 パパ1は右に、パパ2は左に、
 「あ、すいません、どうぞどうぞ」
 「じゃ、失礼して、あ。」
 パパ1は左に、パパ2は右に、
 「じゃ、ぼくはこっちに、あなた、そっち」
 「はい。それじゃ。(礼)」
 うまくすれちがった。
 あれ?でも、あいつ、なんか、知ってるような。。
 ま、いいか。

 未来少年パパ、弁護士になる。

 二人退場。そのやり取りの間に次のシーンの準備。

10■兄の兄登場。19時15分■■■■■■■■■■
 
 曲、消える。
 安斉、見るからに土方の利男を連れている。相対する家族たち。
 明らかに、変な空気。

全員:、、、、、、、
利男:泊まっていいのかココ?
安斉:だめだと思います。
利男:じゃ金貸して。1万。
安斉:え
利男:5千
安斉:その話、あとにしてもらってもいいですか?
利男:千円
安斉:わかりましたから
利男:よし!!!!
みつお:汚いおじさん。
繁子&明男:しずかに!
利男:うるせえタコ部屋にいれんぞこのガキ?
みつお:やってみろや
利男:あ?お前か?
みつお:え?
利男:お前なのか?
みつお:え?
利男:答えろ!おまえ!おまえなのか!
みつお:ああ?おれは!おれだこのやろう!
利男:そおおかああああ

 利男、みつおに抱きつく

みつお:わあああ
利男:そっくりだなあ!!(号泣)
みつお:きたねえ!きたねえ!きたねえ!
安斉:トシオさん!落ち着いて!

 利男、泣きながら離れる。

安斉:では、改めまして。本日皆様にお集りいただきましたのはですね。
 皆さんのお父様が購入された3LDKマンションの売却に伴う相続問題の経過報告と、
明男:え?問題?
安斉:そしてこの、

 安斉、遺書を取り出す。遺書、銀行の封筒(北海道銀行)にガムテープ。

安斉:遺書の開封でございます。

 女、コーラとお茶を持って登場する。一礼。皆は無視。

安斉:先月、佐藤シゲルコさんより、管理会社の和田不動産に相談がありまして、そこから円山司法書士事務所の坂田に話が行きまして、鶴田法律事務所の私、安斉にお話が来まして、新藤探偵事務所の方に相続人調査の委託を頼んだという流れで、ですね。
アサノ:もうパニックです。
明男:流れはいいですから単刀直入に。
みつお:出ました単刀直入♪
空女:うわ、本気で銀行の袋だ。
アサノ:こんな遺書で大丈夫?
繁子:どうなんでしょう?
利男:おばさん金ある?
アサノ:おばさん!?
みつお:静粛に!♪

 皆、また口々に騒ぎ出す。

明男:あの!すみません。ちょっと。皆さん静かに!
 気になっているのはですね。さっき、相続問題とおっしゃいましたが、
 うちの母は蒸発しており、父に親兄妹はおらず、
 残るは長男のわたし、長女、次女の3人ですから、
 相続分はキレイに3分割ってことになります。
 これに異議のあるもの。シゲルコは?
繁子:異議なし。
明男:まりあ
空女:別に。
明男:私も当然異論ございません。という非常に円満な相続が行われるのではないかと。
安斉:え、あのー、僕も最近までそう思っていたんですが。
 本日皆々様にお集りいただきましたのには、もちろん深いわけがござります。
アサノ:結論から!イライラしてきた。おばさんじゃないし!
明男:お願いします!
安斉:では、単刀直入に申し上げたいのはやまやまなのですが、
アサノ:ああもお。
女:(どうぞ)(とお茶を土方に)
利男:お、どうも。

 女、そのままガリガリ君を取りに一旦退場。

安斉:その前に、トシオさん。
利男:おう。
安斉:こちらに。お兄さんも、こちらに。
明男:え?私も?
安斉:はい。

 利男勝手に自己紹介をはじめる。

利男:佐藤利男。おん年38歳!独身!
安斉:あ、いや、あの、別室で。こちらです。
利男:あ、普段は南千住サンヤのドヤ街で土方をしております!金は無いので貸すように。
安斉:あのーですね。お兄さん。ちょっと。
アサノ:誰?!イライラする!(胸どんどんどんどんどん)
安斉:まずお兄様に別室で個人的に紹介してからと思ったんですが、よろしいですか?
アサノ:早く!おみやげ買わなくちゃ!(胸どんどんどんどんどん)
みつお:ゴリラゴリラウホ!ウホ!
アサノ:(胸どんどんどんどんどん)
繁子:やばいやばいやばいやばい
明男:もうお願いします!
安斉:ではご紹介いたします!
アサノ:(胸どんどんどんどんどん)
安斉:はい静粛に!
明男:静粛に!
みつお:ウホ(胸ドン)!
安斉:はい、こちら!お兄さんの、お兄さんです!

 利男、一歩前に出て、礼。一歩下がる。

全員:は?
安斉:利男さん。あれを。
利男:ん?おお。

 利男、パパ日記の下巻を出す。机に置く。

繁子:あ。
明男:え?
空女:あ!これ。

 下巻を手にとる空女。

みつお:わかった!
 
 みつお、上巻を手にして

みつお:合体!カッシーーーーン!

 二つの日記、あわさる。

みつお:完成ええ!(読もうとする)あれ?

 女、ガリガリ君を持って登場する。

女:失礼します
空女:ペペ日記?
繁子:え?
明男:ペペ日記?
安斉:と、言うことでございまして。
 明男さん。
明男:はい?
安斉:こちら、明男さんのお兄さんの、利男さんです。
明男:、、、、?
アサノ:、え?、なに?
繁子:お兄さん?
安斉:お兄さんです。
空女:お兄さん?
みつお:誰の?
安斉:お兄さんの。
明男:私?
みつお:ぺぺ日記?
繁子:パパじゃなく?
安斉:明男さん。
利男:あ、おまえか?

 一同、事態をまったく呑み込めず。呆然としている。

女:、、、?

 事態になんとなく気づいてガリガリ君のやり場に困る。

利男:おとーと!!

 利男、明男に抱きつく。

全員:!!!!??

 みつお、ガリガリ君を自分で受け取る。音楽「アヴェ・マリア」

11■ママが違う■■■■■■■■■■

 パパ1、登場する。ペンを持ってる。手塚治虫的。

パパ1:明男の名前は明るい男。
 前向きでバカみたいだろ?
 これは、パパがつけた。
 あと、気の利く男っていう意味で利男ってのもあったな。

 パパ2、また変な格好で登場する。
 なんか、花吹雪みたいなものを持っている。

パパ2:そうそう。
 みんなには言ってなかったかもしれないが、明男は

パパ1と2:ママが違う。

パパ1:ま、それは、さておき、

 花吹雪、舞う

明男:ちょっと待って!!

 明男、利男をふりほどく。

 音楽おさまる。

パパ1と2:あ。

 パパ1と2、少しひるむ。が芝居を続けようとする。

パパ1:、、それはさておき。

 音楽ふたたび。

明男:待ってって。

 パパ、顔合わせる。曲消える。

明男:すいませんけども。
 物語、進めたいのはヤマヤマですが。
 今、おれの時間にしてもらって。はい。
2人:(なんか言おうとする)
明男:退場。

 2人、退場する。

2人:、、、、
全員:、、、、、

 皆、退場するのを待つ。

明男:、、、、、、

 パパ退場。
 みつお、こっそりとガリガリ君を開ける。それなりの音が出る。

みつお:(バリ)あ。
明男:(みつおをにらみつけながら)弁護士さん!
安斉:安斉です。
明男:安斉さん。ちょっと、よくわからないんですが。
安斉:これ。戸籍謄本です。
明男:え?
安斉:ご覧になったことは?
明男:ないです。
安斉:まずですね。明男さんは、お父様の連れ子だった事がここに証明されてしまいました。
繁子:え?

 明男、戸籍謄本をひったくり、見る。

明男:、、、、

 安斉、その戸籍謄本を覗き込み、指をさし。

安斉:これ、明男さんです。そして、繁子さん、空女さん。ですが、お母様が、、、違います。
明男:ほんとだ。
繁子:つまり、、、おにーちゃんはあたしらと腹違いってこと?
空女:え?腹違いってこと?
みつお:ママ違いってこと?
空女:ママ違いってこと?
安斉:、、、、、そういうことになります。
明男:、、お。おお。
安斉:そして、こちらですね。明男さんから、そのままこう、ずれていただいて、こちらですね。
明男:、、、、
安斉:ここ。ちょっと、読んで頂いてもいいですか。
明男:あ、読むんですか。
安斉:すみません。
明男:あ、『兄』
安斉:はい。お名前も。
明男:『兄、利男』
利男:(返事)はいっ

 元気よく返事する利男。パック酒『鬼ころし』を取り出す。

全員:、、、、、、、
明男:、、、あ、へー。

12■ペペ日記■■■■■■■■■■

上司:はい全員そのままあ!!
部下:ピキャキョ!

 全員ストップ。
 ウィーンウィーンウィーン!音楽。

上司&部下:みゅああん
上司:時間!
部下:2011年6月11日19時18分45秒!
上司:やりやがったな、あぬやろう。
部下:未来へ影響する誤差、測定可能値を越えました!
上司:昨日までは3兄弟だったろ!どうして突然4兄弟になるんだ!
部下:日記です。
上司:日記?
部下:失われていたこの、日記の後半半分により新しい事実が産まれたわけです。
上司:新しい事実?だと?
部下:そして係長が発見したこの鉛筆の文字!
上司:SFぺぺ日記。
部下:SFとは一般には、サイエンス・フィクション 、スペキュレイティヴ・フィクション、
 藤子・F・不二雄の造語「Sukoshi-Fushigi」などをさします。
上司:スコシフシギ。
部下:他にサウンドファクトリー、スーパーファミコン、スペシャルフォース、スターフォース、スターフォックス、ストリートファイター、スペシャルフォース、セックスフレンド 、サンフランシスコ !!
上司:もおいいどれだ!
部下:スペキュレイティヴ・フィクション。
 「科学」に限定されないSFの再定義、空想科学小説をさします。
上司:小説?
部下:犯人は空想により、事実をねじまげにかかっているのです!!
上司:どうやって?
部下:日記に、ウソを書き続けることによってです。
上司:どういうことだ?

 上司の手に、古ペペ日記。

部下:日記の後半にはSF小説顔負けのウソが丹念に書き込まれていました。

 曲切れる。

13■ノノ日記の一節■■■■■■■■■■

 パパ1とパパ2の声。

パパ1&2:今作られている現実は
 人間の余計な想像力の産物だ。
 全部、人間がもしもこんなものがあったらと
 想像した結果なんだ。わかるかい、繁子。

14■ママが違う・続き■■■■■■■■■■

 屋根にあたる雨の音。
 サアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 パック酒「鬼ころし」を飲む利男。

明男:あ、へー。、、、そうなんだー。そうですかぁ。わかった?
繁子:う、うん。
明男:うん。そうなんだねっこれによると。空女、わかるか?
空女:腹違い。
みつお:ママ違い
空女:ママ違い。
明男:そんな言葉はナイ!っつってな。ふーん。へえ。それで。兄、利男さん
利男:はい!
明男:元気元気。な?わかるかお前。
アサノ:ごめん、ぜんぜんわかんない。
明男:だな。ちょっとな。整理しよう。あっちで。ね。休憩。ね?
 ここで休憩取らなかったらいつ休憩とるんだっていう。人生の休憩っつってね?な?
アサノ:え?なに?だれ?
明男:わかんないな。わかんないわかんない。そんな簡単にわかってたまるかって言うさ。
アサノ:え?わかる?
みつお:(利男をガリガリ君で指差し)兄。
明男:すごい。呑み込みが早い。じゃおやじは再婚だったてことか。聞いてた?ま、いっか、今は。
 ちょっと休憩。お茶、いただきます。ちょっと俺、俺の部屋。
繁子:物置になってる。
明男:あ、居場所がない
繁子:おにーちゃん。
明男:じゃトイレ行ってくるトイレ。どうだお前も行くか?
アサノ:え?なんで?
明男:な。行かないよなっ。だってトイレは一人で入るものだから。
 はい、ちょっとトイレお借りします。

 明男、退場する。

アサノ:え?わかる?わかるの?
みつお:(利男をガリガリ君で指差し)義理の兄。
アサノ:あそー?そーなっちゃう?やばいやばい。なんか心臓。鼓動激しんだけど。
繁子:あ、まずい。
アサノ:(どんどんどんどんどん)
みつお:ゴリラ
アサノ:(どんどんどんどんどん)
繁子:おねーさんっおねーさんこっち。
アサノ:へいきへいきっ心臓破裂しそうなだけだから。
繁子:こっち。どうぞこっち!あたしの部屋。
アサノ:ぜんっぜん平気。ぜんっぜん平気(どんどんどんどんどん)
繁子:まりあ、お水っ

 アサノ、繁子に付き添われて退場。

空女:なんかスゲーことになってきた♪

 空女、お茶を持って退場。

みつお:なんか頑張れー

 ガリガリ君を食うみつお
 酒を飲む利男。

利男:え?こっちは?弟?
安斉:いえ。違います。
利男:関係ないの
安斉:あ、えっと、妹さんの、、ええっと
みつお:彼氏?
安斉:いや、聞かれても。
みつお:結婚しよっかなぁと思っていて。
安斉:今日は言わない方がいいかもしれないよ。
みつお:なんで?
利男:うおい!妹を幸せにできる男か?!なんつって。はーっはっはっはっは!飲むか?
みつお:うぇーキタねぇ。
利男:んのやろう!(かかる)
安斉:まーまーまー!!(おさえる)
みつお:こいつファブりてぇ。(女に)ファブリーズありますか?
女:あ、買ってきます!(退場しかけ)
安斉:いやいいよ!。
女:なんかお手伝いしたくて。
安斉:いいいい。
利男:(寝る)グォオ、グォおお。
みつお:うわあ寝た!漫画か!
安斉:ああ。どうしよう。
利男:グオおおお、グおおおおお。
みつお:弁護士って大変だね。
安斉:いや、今日は、特別。どっか。ふとん。
みつお:こっちにおじさん部屋あったけど。
安斉:あ、じゃ、そこに。よっ。
女:あ、(手伝おうとする)
安斉:ちょっと持ってもらえる?
みつお:手伝う?
安斉:あ、すみません。
みつお:せーの!ああ、だめだ。
利男:はくよ?
安斉:ええ?!
みつお:ちょーうぜえ!
安斉:みつおくん!トイレ!
みつお:長男がいま
安斉:もおいいや、風呂場!!

 安斉、みつお、利男を担いで退場。

女:、、あ、、、。

 女一人、残る。

 机の上に置いてある、半分づつと思われていた日記が二つ。

 それを大事そうに手に取る。
 
 ぺぺ日記、後半をひらく。音楽『アヴェ・マリア』がかかる。

15■ペペ日記後半戦■■■■■■■■■■

 パパ2登場する。女、ペペ日記下巻を読んでいる。

パパ2:シゲルコは産まれる直前まで男の子だと思われていて、名前はただの『繁』だったんだ。
 ある日、そろそろ歩き始めた明男が、DNA変換装置という機械をいじったんだな。
 一瞬光って、ママのお腹の中の繁子に当たった。あぶないとこだったんだぞ。
 ヒトゲノム配列を間違えば、繁子はサルとして産まれたかもしれないんだから。
 サルじゃなくてよかった。サルじゃなくて、よかった。

上司:え?何言ってんのあいつ。
部下:ノノ日記改め、ペペ日記下巻は思った以上の内容です。
上司:DNA変換装置なんて、産婦人科にあるわけねぇだろ。
部下:下巻の嘘はとどまるところを知りません。
 ペペ日記下巻に呼応するかのように、上巻もウソでうめつくされてしまいました。

 パパ1、パパ2登場。

パパ1:昭和51年4月1日。就職。
パパ2:アメリカロシア日本を渡り歩く三重スパイだった。ないしょだった。
上司:だろーよ。
パパ1:昭和53年3月、北海道釧路支部に転勤を命ぜられる。
パパ2:その前にハワイの刑務所に入れられて遺伝子組み換えを受けた。いたかった。
部下:歯医者みたいですね。
パパ1:昭和53年6月、長女・繁子誕生。
パパ2:嬉しくて、宇宙飛行士の免許を取ったら、スペースシャトル一号の失敗事故にあった。熱かった。
上司:よくそれですんだな。
パパ1:昭和59年またしても転勤。業務拡大によるなんとか。
パパ2:そして、魔法を使えるようになった。うれしかった。
部下:魔法ですって。
パパ1:昭和61年再び本社勤務。
パパ2:見世物小屋に売り飛ばされたけど秘密部隊に引き抜かれた。がんばろうと思った。
上司:本社どうした。
パパ2:でも訓練が嫌になってたまたま便所の横にあった時空移転装置で逃げ出した。狭かった。
パパ1:昭和62年、近郊に3LDKのマンションを購入。
部下:狭かったから買ったみたくなってます。
パパ1:昭和63年の夏、まさかの妊娠が発覚。繁子が大喜び。明男は思春期で、複雑な顔をしてる。
パパ2:昔に戻ってみたら、その分だけ若ががえってしまいに記憶喪失になった。大変だった
上司:もういい曲止めない?
パパ2:未来がかわっちゃって女ばかりの宇宙人が攻めてきたけど将棋で説得して地球すくった。がんばった。
パパ1:昭和64年1月、次女・空女が産まれる。
上司&部下:なにをがんばったんだか
パパ2:宇宙人のもじゃもじゃのペットにキスをして魔法が解けたらママになった。恋をした。
上司:さっきと言ってること違うじゃん。
パパ1:そして平成元年、1989年、ママがいなくなった。
上司:もう、なにがなんだか。

 パパ1、パパ2礼をして退場。曲、消える。

上司:なんかいいことあるのか、自分の日記に嘘ばっっかり。
部下:やはりあとから、加筆修正がされていますね。
上司:なんのために?
部下:過去の日記に書かれたウソは、ほんの少しづつ未来に影響し、やがて、現実となります。
上司:まさか、うそはうそだろう。
部下:その時代では嘘かもしれませんが、時代をこえ、嘘は、SFとなります。
上司:スコシフシギ
部下:SFは、人類を進歩させる原動力になります。
上司:、、、、。
部下:エジソンの発明により世界に灯りがともりました。
 ライト兄弟の努力により飛行機が発明されました。
 しかしその前に、夜でも明るい空想や、空を飛ぶためファンタジーにより人間はイメージを描き出すのです。
上司:なるほど。
部下:1865年H.G.ウェルズの小説『タイムマシン』の発表により、時間旅行の概念は世界に広まったと言えます。
 そして2031年9月、ようやく時間旅行の兆しがアメリカのNASAによって発表されたのです。
 我々は経験と環境と知識によって、己の人生を進んで行きます。
上司:つまり。
部下:過去の自分に影響しうる言葉を選ぶのは、そう難しくはないはずです。
上司:、、、

 二人、女に目をうつす。

 音楽「Third Man Theme」

16■繁子の独白■■■■■■■■■■

繁子:ママは妹を産んで1ヶ月もしないある朝、突然家を出ていきました。
 パパはママを追うふうでもなく、その日もいつもと変わらず出勤しました。
 朝の7時から夜中まで、毎日パパは仕事でした。
 高校に入ると私はパパと顔を合わさない日が多くなりました。
 ある日パパは会社に行く途中に倒れて病院に運ばれ脳溢血でそのまま死にました。
 久しぶりにパパに会ったのはお通夜の時でした。
 棺に、パパが大事にしていた分厚い日記を入れたような気がしたんですが、あれは、記憶違いだったみたいです。

 音楽消えていく。

17■女の怪しい行動■■■■■■■■■■

 サアアアアアアアアアアアアアアアア
 いつのまにかまた、雨が降っている。

女:、、、、、、、、、、、

 ペペ日記、上下巻を、右と左に置き、
 自分の鞄から、風呂敷の包みを出し、
 その中央に奥。
 同じような大きさ。
 包みを解こうとすると、繁子

繁子:あ、どうかしました?
女:え?いや。別に。ちょっと汚かったから。
繁子:あ、すいません!なんかとっちらかっちゃって。
女:いやぜんぜん!ぜんぜん。
 なんかお飲みになります?
 買ってきますよ?
繁子:ああ、まださっきのありますから。
女:あ、はい。
繁子:(タメイキ)
女:、、大丈夫ですか?
繁子:え?ああ、まぁ、ちょっと、びっくりしてますけど。
女:、、、ですよねぇ。
繁子:こういうことは、よくあるんですか?
女:え?
繁子:遺産相続で。
女:は?
繁子:親戚や兄弟増えたり。ま、腹違いが判明したり。
女:ま、どうなんですかねぇ。
繁子:あの、法律事務所の方じゃ、
女:あ、お手伝いです。お手伝い。
繁子:あ、そうなんですか。
女:だから、なんでも言ってください。おねーちゃん。
繁子:え?
女:え?
繁子:おねーちゃん?
女:あ、おねーさん。間違いました。
繁子:あーびっくりした。
女:おねーさん。
繁子:ドキッとくる間違いやめてください。
 今度また妹が増えるのかと思った。
女:はは、はっははは。
繁子:なーんか。(しげしげ)
女:え?、、はい?、、え?
繁子:誰かに似てますよね?
女:え?あたし?そう?ですか?
繁子:言われません?
女:いやーどうだろう。*****に似てるってたまに。なーにを言ってんだっつってな。はーっはっはっは!!たいじょー
繁子:ああ、退場した。ぎこちなく。

 考える

繁子:誰かに似てる、、、

18■異母兄妹■■■■■■■■■■

 空女登場する。

空女:いやーウケるね、にーちゃんのお嫁さん。
 あたしめちゃめちゃ写メっちゃった。
繁子:え?写メ?
空女:みる?イタコみたいだよ。
繁子:やめなさい。
空女:へいへい。
繁子:落ち着いたみたい?
空女:いちおね。
繁子:良くなってないんだね、にいちゃんのお嫁さん
空女:あたま?
繁子:、、うーん。

 間

繁子:まりあ。
空女:なに。
繁子:あの子大丈夫?みっちゃん。
空女:なんで。
繁子:バカすぎる。
空女:そこがいいんだよ。
繁子:演劇の人?
空女:そー。
繁子:あんなんで台詞とか覚えられんの?
空女:わりとねー。
繁子:あんたは?
空女:やめない。
繁子:そー。いいねえあんたは。自由で。
空女:おねーちゃん。
繁子:何
空女:時計ずれてるよ。
繁子:え!

 姉、あわてて時計を確認する。リストカットのキズを気にしている。

繁子:、、、、
空女:お兄ちゃんは鈍感だから絶対気づいてないよ。
繁子:、、ありがとう。
空女:別に。

 利男、登場。

利男:ここいいの?
繁子:あ、どうぞどうぞ。

 土方、座ると思いきや寝転がる。

空女:うわっ寝たし。
利男:明日も仕事だからさ。体力勝負だからな。飯場遠いんだ今回。今日休みで丁度。
 トンコされた!っつってもシャクじゃん。な?うははは。
空女:何語だ?
利男:あ、なんか飲むか?
繁子:お茶ありますよ。
利男:しゃらくせえ。酒酒。飲むか?

 ポケットからたくさんの鬼殺しやワンカップ。

繁子:あ、ああ、思ったよりも出てきますね。
利男:だろ。これがねぇと、ハジマラネぇ。な?

 妹、おもむろに土方の前に行き、写メをとる。
 
利男:お。いえーい。
繁子:何すんの。
空女:つぶやく。
繁子:やめなさい。
空女:「お兄さんが出来た。」
繁子:やめなさい!

 利男、「起きればもっと飲みやすいのに」と誰もが思う格好で寝ながらのみはじめる。

利男:ちゅーちゅー

 妹、またおもむろに前に行き、写メ。

空女:「起きればもっと飲みやすいのに」
繁子:やめなさい。
利男:のむ?おごりだ。
繁子:いえ結構です。
利男:人がせっかくこのやろ
繁子:いただきます。
利男:好きなの選びな。
繁子:じゃこれ。
利男:それ高いんだよ
繁子:じゃどれを。
利男:これとか。ううん、ま、これだな(結局一本)
空女:「ケチ」
利男:ケチでけっこうコケこっこう
空女:「たすけて」
繁子:ツイッターやめなさい。

 兄、登場

明男:あ、さっきは、あれだった。ま、みんなちょっと集合。あれ?他は?
空女:彼、ココイチ行った。嫁、ふらりと消えた。
繁子:そうなの!?
明男:大変じゃないか嫁!ちょっとタンマな!

 兄、携帯で電話をかける。

空女:大変だね。結婚って。
繁子:みんながみんな、ああではないと思うよ。
空女:ほんとに?
繁子:願いたい。
空女:お兄ちゃんって、パパみたいじゃない?
繁子:え?そう?あんなにしゃべんなかったよ。
空女:え?しゃべったよ。あたふた。
繁子:あたふた?
空女:緊張するらしくて。
繁子:え、そうだった?
空女:年、離れてるから気使ったんじゃない?
繁子:へえ、知らなかった。
空女:超おしゃべりでうざかったもん
繁子:あれ?なんだそれ。
空女:愛情の差じゃない?
繁子:そうか。妹の強みか。
空女:逆じゃない?
繁子:逆?
空女:あたしにはちゃんとしゃべってくんなかったってことだよ。
繁子:そうかなぁ
空女:そうだよ。
繁子:あたしたちってさあ、パパのことなんもわかってなかったのかもね。
空女:ママも。

 兄、電話終わった。

明男:すまん。ちょっと。あれだ。話。安斉さんに。
姉空女:どした?
明男:嫁まいご。おれ行く迎え
空女:インディアンか。
明男:ははははは

 笑いながら兄退場。

繁子:なんか乾いた笑い声に哀愁だね。
空女:ずっと思ってたこと言っていい?
繁子:いいよ。
空女:これ、お棺に入れたよ?
繁子:え?
空女:あたし。

 間

繁子:、、、実はあたしもそう思ってたんだけど。
空女:、、入れたよね。
繁子:だよね。
空女:、、こわ
繁子:、、こわ
利男:チュウ!(酒)
二人:こわ!!
利男:つまみ。。お。

 利男、女が忘れてった風呂敷の包みを開ける。

繁子:あ、それ。

 止める間もなく、風呂敷がほどけ、中から。

利男:なんだっ、、また日記かあ。
繁子:え?

 サアアアアアアアアアアアアアア

 空女、繁子、おそるおそる、
 日記を合体させると、

 パパ日記完成。

繁子&空女:パパ日記。

 安斉と女、忘れ物に気づいて走りこんでくる。

女:!あ(遅かった)

18■どういうこっちゃねん■■■■■■■■■■

 全員ストップ。

部下:時間旅行を使った犯罪のほとんどはこうです。
 「過去に行き、現在を有利な現実にするために、過去を作り変える。」
上司:つまり?
部下:犯人は、日記を改ざんすることにより、
 これからの未来だけでなく、
 これまでの過去を変えているという事です。
 もうひとつの正しい歴史が。まるで列車が分岐点で路線を変えるかのように動き始めたのです。

19■遺書開封

 机の上に、パパ日記上中下巻

安斉:「遺産は、今、一番不幸なものに与えるものとする」
全員:?
安斉:皆さん、どうされました?
空女:えーと、
明男:え?どういうこと?
安斉:えーと。、、あ、わかりません?
繁子:もっかい読んでもらっても?
安斉:「遺産は、今、一番不幸なものに与えるものとする」以上でございます。
アサノ:これは分与というよりかはつまり。
みつお:ひとりじめ?
安斉:えーーーっと。はい。そういうことになります。
上司:なんかおかしなことになってきたな。
部下:あ、メガネかけてる。
上司:ホントだ。
部下:エプロンつけてる。
上司:ホントだ。

 間。

女:あの、こういうことじゃないですか?
 裕福な人に遺産が分配されるよりかは、
 例えば、貧しい人に渡ったほうがいいと。ねぇ?
安斉:ああ、いいこと言う。かもしれません。
みつお:じゃ、あいつに決定じゃん?(指)
明男:指をさすな!
上司:こんなんだったか?
部下:歴史、変わっちゃってますね。
上司:オー、刺激のある毎日。
部下:ダメじゃないですか!
上司:どうなってるんだ。
部下:お金のない人が不幸だってことになってます。
アサノ:いやそんなことない!
空女:そんなことない!
アサノ:幸せっていうのは、お金じゃ計り切れないと思うわけ。ねぇ?
空女:そう!貧乏でも幸せってあると思う!
みつお:おお、あるある!
安斉:では、多数決をとります。
女:はい。貧乏でも幸せって、ある。
安斉:はい挙手!

 ぱらぱらと様子を伺いながら手をあげる。

上司:なんかあいつらキャラ変わってないか?
利男:はい!
明男:おお。まさかの。
安斉:あ、良かったですね。では全員一致ということで。
 財産の額によって、不幸を計るものではないと。
 そういう判断にさせていただきます。はい。
アサノ:じゃ、何で決める?

 間

安斉:では、こういうのはどうでしょう?
 ええ、私がですね、この中では一番関係のない立場かと思いますので、
 僭越ながら、私が審判をさせていただくと。
空女:どういうこと?
安斉:え、皆様のお話を伺いまして、そして、
 私がこの人こそ不幸だぞという方を選出させていただくという。
上司:、、、不幸自慢コンテスト、そういうこと?
部下:はい。
アサノ:どう?あなた?
明男:そう、、だなぁ。
利男:おっけい!
繁子:ああ、また、まさかの
明男:どうだ?繁子?
繁子:私はまぁ。
みつお:おっけー?
空女:あ、そうだ!この人もでしょ?
女:え
安斉:、、、あ、えーっと。どうします?
女:私は、あの、
空女:だって、ママがあたしらを捨てていなくなってから、他の男と作った子でしょ?
繁子:ちょっとやめなって。
女:あの、辞退します。
安斉:え、ほんとに?あ、そう?じゃ、しかたないんじゃない?ねえ?
上司:ストップ!
部下:ピキャキョ!

 時間が止まる。

上司:なんかおかしいな、あの二人。
部下:メガネしてるし。
上司:なあ!
部下:エプロンしてるし。
上司:なあ!あれ?なんか見たことあるな、あのメガネ。
部下:え!どこでですか?
上司:わからん。
部下:ちょっと。
上司:続き!続き見よ!スタート!

 時間が進みだす。

安斉:デッデデンデーン!さあとうとう始まりました、不幸自慢コンテスト。
 この中で一番不幸な人が遺産総取りでございます!
女:ファイッ!
空女:じゃああたしから。不幸自慢。
みつお:かっけー!

 空女、お腹を叩き、

空女:もう2ヶ月!そろそろおろすの厳しい!
繁子:え?
明男:、、、、おまえ、本気で言ってんのか
繁子:、、、妊娠?
空女:そー。
繁子:誰の子?
空女:みっちゃん。
明男:、、、そうか。
アサノ:ふーん。じゃあ、おめでただ。
繁子:あ。
アサノ:だってそうでしょ?おめでたいでしょ?ねぇ?
繁子:あ、そうですね。この場合。
明男:まあ、そうだなぁ。おめでたっていうくらいだから、
アサノ:不幸ではないわよねぇ?
繁子:そうですねぇ
空女:ざんねーん♪
安斉:は?
空女:不幸だよね?
みつお:ま、不幸っちゃ不幸か。。
空女:え超不幸だよ。あたし泣いたし。
みつお:あそっか。じゃ不幸だわ。
繁子:え?なんの話?
空女:実はー、みっちゃんがぁ、認知してくれないわけ♪
明男&アサノ&弁護士&繁子&女:え?
空女:ね?超不幸じゃない?!
安斉:まあ、今んとこトップですねぇ。
アサノ:え、まじで?!
明男:おまえ認知しろよ!
繁子:しなさい!
みつお:うわは、なんかおかしくないすか♪
明男:おまえの子なんだろ!!
みつお:えええ、どおおっすかねぇ
利男:おれの妹が尻軽女だとでも?おうおうおう
安斉:利男さん出てくるといちいちややこしくなるからそっちに。
女:はい(利男を連れていく)
空女:こんな所で不幸が役立つとは思わなかったなぁ。みっちゃんえらい!
みつお:うへへー
安斉:以上ですね。はい。では、次の不幸をお願いします。
女:じゃかじゃん。

 明男

明男:よし、言おう!いっちゃおう!おまえら、びっくりするなよ?実は。
みつお:妊娠3ヶ月!
明男:そう、見てこのお腹、ちがう!
全員:おおおお。
明男:去年、仕事、やめた。
繁子:え?
空女:去年?
明男:すまん。ほら、言い出しにくくてな。おちつけっ!おちつけよ!どうにかする!どうにかするんだよ?
 わかってる!まさひろもうすぐ小学校だ!わかってるんだよそんなことは!な?
アサノ:そんなこと?
明男:いちいち挙げ足とるなよそやって
アサノ:挙げ足なんてとってない。
明男:どうにかして再就職してから、
 どうにかしてからあらためてお前に言おうと思ってたんだよ!
 「あなたの年で再就職なんて!」というんだろ?な!わかってる!
 大変だ!この年で!なかなかない!だからこそ、去年から、いままで。
アサノ:ねぇ。
明男:すまん!いままで黙ってた!許せ!
アサノ:なんで今日、突然言うわけ?
明男:うんわかった。頼むから、な。まくしたてるな。頼む。
アサノ:あたし、まくしたててないけど。
明男:いや、とにかく、ちょっと座って。おちついて。
アサノ:落ち着いてるけど。
明男:だから、すまん。
アサノ:去年のいつ?
明男:、、、3月。
アサノ:3月。
明男:すまん。会社、うまく行ってなくて、リストラかかりそうだったとこで、、上司とモメて。だから、
 違うとこ口聞いてもらったりしててさ。そんで、それまでは日雇いで現場やっててさ。
 朝、スーツでさ、コインロッカーに作業着入れてて。結構いるんだな、今。仮面サラリーマンっていうの。
アサノ:、、、
明男:仕事無い日はパチスロ行ってな。

 雨。

明男:おい、聞いてるか?だいじょうぶか?パニックか?おい。
アサノ:、、、あんまりバカにしないで欲しいさ。
明男:え?
アサノ:本気で言ってんだ?それ。
明男:、、なにが?
アサノ:本気で、騙されてると思ってた?
明男:、、、、え?
アサノ:、、何ヶ月も本気で気づいてないと思われてたんだ。
明男:、、知ってたの?
アサノ:、、、あたりまえでしょ
明男:、、、いつから。
アサノ:3月。
明男:、、、あの、
アサノ:、、、あんまりバカにしないで欲しいさ。
明男:おれ、
アサノ:ちょっと、ごめん。

 アサノ、外へ行く。

明男:、、おい。
アサノ:こないで。
明男:、、、、、

 間

安斉:非常に、不謹慎ですが、、明男さん、不幸、ダントツトップに躍り出ました。
明男:、、、、よ、、よし(小さいガッツポーズ)
空女&みつお:えええええ!
安斉:どう考えても、ちょっと。
空女:なんで?父親の無い子供!母子家庭!非行!ちょっと!おねーちゃん!やってやって!
安斉:では、最後。繁子さん。

 間。

繁子:あたしは、特にない。
明男:え?
繁子:あたしは、特に不幸とかない。
みつお:おお、幸せ者!
空女:だめだよ!北海道に持ってかれる!がんばれ!おねーちゃんの不幸!
繁子:特に幸せでもないけど。特に不幸とかないから。
明男:繁子?
安斉:あ、終わりですか?
繁子:、、あたしはいつもそう。
 まん中で。2番目なのに長女で。だからしっかりしてなくちゃいけなくて。
 普通。でも、普通って一番やだ。悩みがなんか。しょぼくて。
 おにーちゃんみたく男だったら良かったのに。
 空女みたく、末っ子だったら良かったのに。
 そういう、しょぼいことは思うけど。
明男:長男だってな。結構大変なんだぞ?
繁子:わかってるよ。別に大変じゃないとか言ってないじゃん。
明男:いや、そうなんだけど。ほら、墓とかな。
 いちお俺が面倒みることになるしさ。結構細かくやることあって、
 金かかったりするんだよ。
繁子:だからそういうこと言ってないよ。
明男:お前はさ、お前で不幸だって思ってるかもしれないけどな。
繁子:思ってないってば。あたし普通だもん。特に話せるような悩みないから。
明男:そうか?まぁ、ならいいことか。
安斉:では、これで、、ええと
空女:リストカットは?
繁子:え
空女:リストカット。あれ十分不幸だよ。
繁子:、、なんでそんなこと言うの。
空女:いいじゃん別に隠すことないじゃん。
繁子:隠すよそりゃあ。
空女:自分で言えないから言って貰いたいのかと思って。
明男:リストカットってどういうことだ?
繁子:なんでもないって。なんでいうの?
空女:おにーちゃん嘘。なんでもない。
明男:なんでもないってことあるか。いつだ?いつやった?
繁子:関係ないじゃんそんなの。
明男:おれはなぁ、佐藤家の長男としてさ。
繁子:いいって言ってんじゃん。
空女:ピアスあけるようなもんですから。
明男:いつだ?
繁子:随分前だよ随分前。もうしないから大丈夫だって。
明男:見せてみろほら。
繁子:見せてどうすんのそんなの。
明男:いいからほら。
空女:みせりゃいいじゃん減るもんじゃないし。
繁子:見せないよ。いいよ。
空女:勲章でしょ。勲章。
明男:見せろ。にーちゃんが判断する。
繁子:離してって。
明男:いいか?死ぬ勇気あるくらいだったらな
繁子:わかってるって!わかったから!
空女:わかってんだって。
繁子:死ぬ勇気あるくらいならちゃんと生きろとかそういう事でしょ?
 前向きに真面目にきちんとやれってそういうことでしょ?
 やってるよ。やってんじゃん。普通に。
明男:でもな、でもお前が普通が嫌で、自殺未遂を繰り返すというようなな。
繁子:繰り返してないって。自殺未遂じゃないって。なんでもないって。
空女:なんでもないなら隠さなきゃいいじゃんねぇ?
明男:そうだなあ。空女の言うことももっともだ。
繁子:、、そんなに。、、そんなにさあ、もお。
空女:キモい!
明男:おい、空女
空女:キモいんだって!わかりにくい!
 なんか、一人で抱え込んで!
 そんなに嫌なら、ちゃんとするとか、どうにかするとか、真面目にやるとか
 そういうのやめればいいじゃん。キモい!おねえちゃんキモイ!
 おねえちゃん嘘ばっかり!
 やめてよ!じぶんばっかり我慢してるとかそういうの!
繁子:そんなに簡単じゃないんだって!!
空女:ばーか!おまえの不幸なんてなんでもねーよ!
繁子:だから不幸だなんて思ってないよ!!!
 別になんもないよ!
 特に幸せでもない。
 、、特に不幸でもない!
 、、なやみもしょぼい!
 別に、いいたいことなんかない!!

 雨、ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

上司:、、、、
部下:、、係長
上司:、、ん。
部下:こんなの、また毎日、見なくちゃいけないんですか、、
上司:、、、うん。

 利男、立ち上がる。
 競馬新聞を丸めて空女、繁子、明男の順に、たたく。

 パン!!パン!パアアアン!!!

安斉:あ、利男さん、、
三人:!!!!
明男:、、なんすかそれ。

 利男、明男にパアアアン!!!

利男:、、当然だと思ってんだろ?、、くのやろう。
明男:なんすかそれ!!
 
 明男、利男の襟首を掴む

安斉:ちょっと!
利男:てめええらあ!!
 当然だと思ってんだろお!!
 家があるってのはなぁああくぬやろう!
 家族がいるってのはぁなあああくぬやろう!!!
 当然のことじゃないんだぞおおおおおおう!!
全員:。。。。。
利男:、くぬやろうめらら

 明男、手を、離す。雨がやむ。音楽「アヴェマリア」

利男:、、おれはぁ、母も、父も、ありませんし、
 子どもも、嫁も、もう、知りませんが、、
 まぁ。、、産まれて、ありがとうと、思ってさ。
 家あって。ほら。、、家族!
 良かった!!みんな。うん。はい!拍手!
 ありがとう!

 利男、一人、拍手を始める。
 パチパチパチパチ、パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

安斉:なんだこれわ。
女:、、、、(感動した)(パチパチパチ)
安斉:ええええ?!
女:感動した!(パチパチパチ)
部下:うん!感動した!(パチパチパチ)
上司:ええ?
部下:ほらっ(パチパチパチ)
みつお:おおし!!(パチパチパチパチパチパチ)

 アサノ、戻ってくる

アサノ:なにこれ?
利男:ありがとう!!(パチパチパチ)
みつお:おめでとう!(パチパチパチ)
部下:よかった!ほら!(パチパチパチ)
みつお:ほら!(パチパチパチ)(空女の手を取り)
空女:(ぱち、ぱち、、ぱち)(泣きだす)
繁子:、、
アサノ:なに?(明男に)
明男:いや、わからん。
安斉:ま、良かった!(拍手パチパチパチ)
アサノ:あ?え?
みつお:泣け泣けえ♪(空女の手で拍手)
アサノ:あ、うん。泣け泣け!いいぞ!(パチパチパチ)
繁子:おにーちゃん。(拍手の準備の手)
明男:なんだそれ。
繁子:はいっ
利男:ありがとう!くぬやろう!
全員:(パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ)
上司:?(拍手)

 変な拍手の中、上司、曲を上げにいく。
 すると、拍手がゆっくりになり、
 バカバカしいスローモーションになる。
 照明、少しかわる。

20■そうして。

 そして人々、ストップする。
 部下と上司、その中に入ってくる。

部下:19時55分、過ぎました。やっぱり現れませんでしたね。
上司:、、、、
部下:でも良かったじゃないですか、たいくつな日常にほら少しの変化が。
上司:全ては過去のだれかの空想の産物ってことだもんな?
部下:そうですね。
上司:地球はまるいんじゃないかとかさ。
 宇宙に行けるんじゃないかとかさ、
 考える奴が考えないと、誰も考えつかんわけだもんな。
部下:ええ
上司:むかしむかしな、こんなことを言ってた学者が居たんだって。
部下:だれですかそれ。
上司:スティーブン・ホーキンス。
部下:ふーん、全然知らない。
上司:「そもそも未来からの時間旅行者がいないのが、現在から過去に向かうタイムマシンが存在できない証拠である。」
部下:へー。変わったこといいますね。
上司:そう?
部下:ええ。
上司:なんで?
部下:だって、ほら、ぼくらいるわけですから。
上司:そう、そうなんだよな。
部下:帰りますよ。
上司:ああ、うん。

 上司、パパ日記をさわる

上司:、、うーん。えすえふ、、えす、、?佐藤?あれ?、、、
部下:は?
上司:パパの下の名前ってさぁ、
部下:え?
上司:いや、そんな答え、やだな。
部下:帰りましょう。みゅおん。
上司:はいー。みゅおん。
部下:干渉終了。

 音楽、上がりぶつりときれる。
 照明、が変になる。
 みんな、ストップをやめて、退場する。
 変な空気感。
 安斉と女が残っている。

安斉:ま、今日はこんなもんかなぁ。
女:だいぶいいんじゃないの
安斉:そう思う?
女:思う思う。
安斉:なんか、君まで異母兄妹にされちゃって。
女:しかたないよ。
安斉:今度いつ会える?
女:まぁ、わかんないけど。
安斉:空女にさぁ、言った方がいいことある?
女:無い無い。
安斉:そう
女:起きてしまったことは、起きてしまったことなんだから。
 これから起こることに期待するしか、
 人間進んでいく方法なんて無いでしょーよ。
安斉:、、まーね。
女:あなたもほら、そろそろ、安斉君に身体返してね。
安斉:あ、やっぱ返すよね。そりゃね。
女:そりゃね。死んでんでしょ?
安斉:はい。
女:ほんとに過労死?
安斉:うん。
女:なんだつまんない。、、、じゃ、またね。

 女、エプロンを外すと、タイムベルトをつけている。
 女、退場しかける。

安斉:あの。
女:ん?
安斉:今度またいつか会える?
女:うーん。どうかなぁ。ばいばい。
安斉:、、ばいばい。
女:みゅおん。

 女退場する。安斉、残る。

安斉:、、、、

 パパ日記を手に取る。

安斉:、、、、

 ポケットを探ると、
 ちょうどマッキーが出てくる。

安斉:、、、、、、
 えーっ。
 パパは。、、実は。過労死では、無かったんですよ。
 疲れて、めまいがして、よろけて、頭をうつという
 かっこわるい死に方だったと、
 聞いているのかもしれませんが。
 実は、えーと、それも、作戦でした。
 えー、過労死と、みせかけて、
 あ、この書き方だとだめじゃん。
 死んだあとに書いてることになってる。
 あ。、、、、、油性だ。
 まいっか。
 過労死と、みせかけて、悪の組織から足を洗いました。
 洗ったとゆっても、おとり捜査でしたので、
 安心してください。
 パパは、潔白です。
 、、
 あ、そうそう、空女。
 パパは嘘をついていました。
 ママは、遠い所に買い物にでかけたとよく言ってましたが、
 えーと、
 空女のために、雲をこえ、山をこえ、時をこえ、

 しだいに色うつる。

 札、「未来2061年」

上司:あー疲れた。今日もこんな時間か。
部下:おつかれさまでーす
上司:おい、今日どうだ?のみいくか?
部下:いや、今日はちょっと
上司:あ、あそ。
部下:お先に失礼しまーす
上司:おつかれー、、、ちっ。人がせっかく。

 タイムベルトを乱暴に置く。

 チリリリン、チリリリリン

上司:もうおわりましたよー。本日の営業は、シューリョーいたしましたので

 チリリリン、チリリリリン

上司:えいぎょうじかんは、、

 チリリリン、チリリリリン
 上司、めんどくさくなって出る。

上司:(ガチャ)あーもしもし?
 おう。どした。なに?
 いや帰るよまっすぐ。
 飲みに?んなわけねーだろ。のまねぇよ。俺痛風だもの。
 そうだよ。
 うん。はい。
未来少年パパ(声:登場!!とお!
部下(声:わあ?ちょっとまって!だめ!おわり!
上司:あ?いや、なんか来た。

 未来少年パパ

未来少年パパ:へい!かけそば1丁!
上司&部下:、、、
未来少年パパ:へい!かけそば1丁!
上司&部下:、、、
未来少年パパ:そばっちょう!
上司:撃ち殺してやろうかてめえ。
部下:ほら帰って!
未来少年パパ:(網)つっかまえた!!
上司:(つかまえられた)
未来少年パパ:へい!へい!そばっちょう!
部下:ころされるから!
未来少年パパ:ははは!おかしいや!網がぶりんちょ!そばください!もしもし!
上司:書け直す。死ね!
部下:係長!銃は!!

 3人退場。

 しばらく誰もいない舞台。

 未来少年パパ、再登場

 発見、タイムベルト。

未来少年パパ:かっけええ。

 少年、タイムベルトに手をのばす。

 暗

21■エピローグ

 音楽の中、佐藤繁子が話しだす。

繁子:パパは真面目でつまらない人間だったので、早い時期にママに逃げられました。
 以来、私たちを男手ひとつで養ってきましたが、私が高校生だったある日に過労で死にました。
 私たちはパパの死を笑って生きてきました。
 パパの保険金が尽き、パパがローンで買ったこのウチを売ろうと書斎を整理していたら、パパの日記が発見されました。
 パパの日記にはSF小説顔負けのウソが丹念に書き込まれていました。
 あんなにつまらなかったパパがこんなに愉快なウソを書くなんて、
 一体、パパにはどんな世界が見えていたのでしょう
 今日、私たち兄妹3人は、久しぶりにこのウチに集まり、パパの日記を検証したいと思います。
 
 音楽が消える、みんな、場にいる。
 のっぺりとした、全明。

 ★この会議は毎日毎日違っていいです。
 おそらく色々な思い付きが本番中にあります。
 それを思いつくままに検証していく時間です。
 その思い付きが空想であり妄想でありSFであり、
 それがまた、明日の未来をつくるのです。
 もちろん、それぞれの役の範囲で発言をしてください。
 楽屋トークというわけではありません。言うなれば、エチュードです。
 この会話の深さは役者の余計な創造力にかかってきます。
 観客にとって新しい情報が出ても構いませんが、
 今日の観客が知らないことは必ずだれか説明を求めるようにします。
 帰着点は、『日記が3つに別れる』です。

部下:それでは緊急会議を行います。
上司:われわれの存在だって、だれかの空想の産物かもしれんからな。
部下:では、はじめ。
パパ0:昭和51年4月1日。就職。同年8月、待望の長男・明男が産まれる。
アサノ:ほら返事!
明男:はい!
アサノ:かわいー
明男:そう?
空女:きもいよー
アサノ:似たようなもんでしょ?!
みつお:いえてる!
パパ0:アパートに3人。風呂無し。6畳。
パパ2:この時の仕事は何?工作員?だっけ?
パパ1:あれ、なんだっけ?国際的スパイじゃね?ちがった?
部下:6畳一間に住む国際的スパイって。
上司:なんだ。
パパ0:僕は知りません。
繁子:営業でしょ営業。
パパ0:はぁ。
みつお:これであれでしょ?パパ分裂!!
パパ012:あああ~~
部下:第一タイムスリップによる、分裂体と第二タイムスリップパパ再分裂体。
アサノ:なになに全然わかんない。
明男:あれだろ?同じ時間軸に2人自分が存在しちゃいけないという。
ママ:わかったドッペルゲンガー?
繁子:あ、知ってるそれ!もう一人の自分でしょ?
ママ:あたし教えてやったんだよ?
繁子:そうだっけ?
ママ:死にます。5人みつけたら。
全員:こええええ!
明男:はい!ドッペルゲンガーについてはそうだけど、ぜんぜん違います。
アサノ:あなたかっこいい♪
上司:なんかむかつくな。
部下:つまり、同じ時間軸にいるもう一人は存在が薄まるという。
パパ1:ああ。
パパ2:だからなんだか差があるのか。ね?
パパ0:はあ。
ママ:わかる?
パパ0:さあ。
空女:え、そもそもさ、全部ウソでしょ?
アサノ:ま、そうだそうだ。
空女:タイムスリップ?
アサノ:バカじゃないの?
全員(空女とアヤノ以外):あわわわわわわわ!!
繁子:だめだめ!
明男:そんなこといっちゃだめ!
空女&アサノ:なんで?
パパ1:消えちゃうから!
パパ2:じょじょに透けてます!
上司:訂正してやれ!
部下:係長。
上司:なんだ?
部下:どこですか!
上司:ああああ!!そうか!!俺たちもか!
パパ0&ママ:(手をふる)
上司部下パパ1パパ2:手をふるな!手!
上司:なんでこいつら(パパ0とママ)消えない!
パパ0&ママ:ウソではない。
上司部下パパ1パパ2:くそお!
利男:あ、おい、けんかすんなよ?
明男:おにーさん、ついてきてます?
利男:ぜんぜん。
アサノ:あ、良かったー。
パパ1:昭和55年6月、長女・繁子誕生。
繁子:あはいはい!
パパ1:男だと聞いていたのに、女の子。
繁子:それってさぁ。おんなだから子つけようってこと?
パパ0:いやママが。
ママ:なんであたしのせいにするかなぁー
パパ0:オシルコみたいでかわいいって。
繁子:言ったの?
ママ:、、言った。
パパ0:かわいいよ。ねぇ。
利男&明男&上司&みつお:あ、うん
繁子:生返事!
パパ2:貸して、えーーと、昭和62年、近郊に3LDKのマンションを購入。
明男:おお、ここだここだ。
繁子:売るけどね。
空女:売れなきゃいいのに。
繁子:またあんた!
パパ1:貸せ!昭和63年の暮れ、まさかの妊娠が発覚。繁子が大喜び。
空女:はいー!
みつお:誕生!
パパ2:貸して。明男は思春期で、複雑な顔をしてる。
パパ0:雑に扱うとまた。
パパ1:返せ!昭和64年9月、次女・空女が産まれる。
パパ2:そしてついに!平成元年!
パパ0:だからほらー
パパ1:そやって出はるな!
パパ2:うるさい!
全員:あ~あ~あ~

 パパ日記また、3つにわかれる。

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。