6人芝居『ジャマコ、せかいをすくう。』

『ジャマコ、せかいをすくう。』作 すがの公

<あらすじ>ジャマコはパジャマを着てるジャマな子で、いつも自分の世界に閉じこもっている。ラジオ機能搭載ブリキのおもちゃブリちゃんと、新しい友達と、一緒に世界を救おうとしている。ジャマコの姉は妹がおかしくなったと思い、狂気的な博士に脳の手術を依頼する。

<登場人物>ジャマコ、姉、博士、助手、ぶり、ともだち

■開場
 
 舞台の中に、一体の人形が置いてある。名前は『ぶり』という。
 そのとなりに小さなラジオ。お手製のアンテナ。

■はじまり

 暗の中、姉の声。

姉    :「ラジオからニュースが聞こえたら。
      わたしは耳をふさいで、
      悲しい出来事を全部、忘れようとする。
      わたしは、せかいの真ん中にいる。
      わたしは、わたしのせかいを救わなくちゃ。」

 緑色の非常口照明が点く。
 ぶり人形に小さな照明がゆっくりと当たる。

ぶり人形 :…………

 ジャマコ、人形のそばに来て

ジャマコ :うん。
ぶり人形 :…
ジャマコ :うん。
ぶり人形 :……
ジャマコ :そう。
ぶり人形 :…
ジャマコ :最近ちょっと心配になる。
ぶり人形 :…?
ジャマコ :どうしてって。
ぶり人形 :……
ジャマコ :明日にはもう会えなくなるような気がして。
ぶり人形 :……
ジャマコ :ずっと一緒に居てね。
ぶり人形 :…
ジャマコ :死ぬまで一緒だからね。
ぶり人形 :…
ジャマコ :死んでも一緒ね。
ぶり人形 :…
ジャマコ :約束ね
ぶり人形 :…
ジャマコ :約束。
ぶり人形 :…

 楽しい音楽が聞こえてくる。
ジャマコ、ジョウロからブリちゃんに水をかけていく。

声123 :がんばれジャマコ。
ジャマコ :あたしはジャマコ。
声123 :がんばれジャマコ。
ジャマコ :そうだ!
声123 :せかいをすくう。
ジャマコ :そうだ!
声    :ジャマコ。
ジャマコ :あたしはジャマコ。せかいをすくう。

 楽しい音楽、上がっていく。

ぶり   :ちょっとごめん!ごめん!そーリー!さんきゅう!えくすきゅずみー。

 ぶりが怒りながら人形じゃなくなって登場する

ぶり   :こら!!
ジャマコ :あ。
ぶり   :ふやけるじゃん!ああもう、べっちゃべちゃ。鼻。
ジャマコ :お花に水を。
ぶり   :花ちがい。これは花っ
ジャマコ :あれは?
ぶり   :花っ
ジャマコ :おおきくなれよ。
ぶり   :人を、なんか、ポトスみたいに。あの観葉植物の。わかる?ポトス。

 とかいいながら人形を片付ける。

ジャマコ :じゃさじゃさじゃさ!(小躍り)
ぶり   :なになになに!
ジャマコ :ポトスの葉っぱって熱帯地方では超デカイって知ってる?
ぶり   :どれくらい?
ジャマコ :こども
ぶり   :でけー
ジャマコ :でけー
ぶり   :じゃさじゃさ!マレーシア語で「あらまぁ」はなんていうか知ってる?
ジャマコ :知らない
ぶり   :「アラマー」
ジャマコ :あらまー
ぶり   :あらまー
ジャマコ :じゃさじゃさ!笑点の座布団っていくらか知ってる?
ぶり   :2000円!
ジャマコ :35000円。
ぶり   :山田くーん!
ジャマコ :山田くーん!
ぶり   :ジャマコ!世界をすくおう!
ジャマコ :よし、世界をすくおう!

 ふたり、がっちり握手。


■ジャマコの世界。

 変な携帯電話で「かなり危険なミッション」を開始する。小さな灯りを持ってくる。
 いろんなものを準備する。ぶりも、気になって出てくる。
 特別椅子に座って居る。いろいろなコードが伸びてて、キーボードに繋がっていたり
 水中眼鏡のようなものをつけてそこからもコードが伸びている。たまにどこかが発光したりしている。
 慎重に特別らくらくキャッチで物を掴んでは、皿の上に移している。

ぶり   :ねぇねぇ
ジャマコ :ちょっと今忙しい。
ぶり   :ねぇねぇ
ジャマコ :ちょっと待ってって
ぶり   :なにしてんの
ジャマコ :言ってもわかんないじゃん
ぶり   :わかるかもしれんぞ
ジャマコ :ちょっと今忙しいんだって。
ぶり   :また姉ちゃん来てたぞ。
ジャマコ :エプロン鬼。
ぶり   :エプロン鬼な。

 ジャマコ、なんか落とす。

ジャマコ :ほらああ。
ぶり   :え?うそおっなんで?
ジャマコ :話しかけるから。
ぶり   :なんもしてないじゃん
ジャマコ :なんかしてよ。
ぶり   :だから何してるのか聞いてんのに。
ジャマコ :誰にも言わない?
ぶり   :言わない。
ジャマコ :誓う?
ぶり   :誓う
ジャマコ :じゃいいよ(手招き)
ぶり   :やった(寄ってく)

 ジャマコ、耳打ちする。音楽。

ぶり   :ええええ!!?そおいうミッション?!
ジャマコ :静かに!
ぶり   :(小声)そおいうミッション?
ジャマコ :うん
ぶり   :でも、ペンタゴンって
ジャマコ :うん
ぶり   :ほら。
ジャマコ :うん。
ぶり   :ペンタゴンって何?
ジャマコ :だから言ってもわかんないって言ったのに
ぶり   :かいじゅう?あ、食べ物?あ、くすり?パンシロンとか
ジャマコ :もおいいよ。
 
 眼鏡をつけなおすジャマコ。

ジャマコ :よし、ダイブ開始。
ぶり   :ダイブってなに?ゲーム?
ジャマコ :ペンタゴンに行くの。
ぶり   :どこ?
ジャマコ :遠いとこ。
ぶり   :どうやって?
ジャマコ :これで。

 キーボードつきの携帯。

ぶり   :携帯じゃん。ふるーい。
ジャマコ :お父さんに貰ったんだから。
ぶり   :へー。これ自分で作ったの?
ジャマコ :そ。
ぶり   :いいねぇええええ。
ジャマコ :じゃ行ってきまーす。
ぶり   :え?ちょっと、行く行く。
ジャマコ :行くの?
ぶり   :行くよ。ジャマコいないとつまんないし。
ジャマコ :じゃいいよ。載って。
ぶり   :どこに?
ジャマコ :後ろ。
ぶり   :なにしに行くの?ジャマコは?
ジャマコ :ジャマコは、せかいをすくいに。
ぶり   :かっこいい!!

 デケデケ音楽。水玉の特別椅子に載っていたジャマコをブリ君がくるくる回す。
 色々な角度を向いて世界を旅するジャマコとブリキ 
 
ジャマコ :ほらあれ
ぶり   :おお、パルテノン宮殿。
ジャマコ :ナビゲーションシステムオン。
姉    :(★パチン)悪い博士あらわる。
 
 悪い博士登場。

博士   :わびがぬごすがん?じゃばのがが?
ぶり   :なに言ってるかわかりません。どうします。
ジャマコ :撃てえ。
ぶり   :まじですか?
ジャマコ :やれえ。
ぶり   :亜空間ミサイルオンライン
ジャマコ :チュキュンチュキュン!
博士   :がばなじょりばいじゃば!
ぶり   :3、2、1
博士   :どごぉおおおん
姉    :悪い博士とんでいく
博士   :じゃいごすばあ(とぶ)。
二人   :よし!(ガッシリ手を組む)
姉    :アンドロイド出現。

 ともだちアンドロイド。

ともだち :ぴーちくぴーちくぱーチク
ジャマコ :あれは!
ぶり   :あのアンドロイドのベースは親友です。
ともだち :ぴーちくぱー。
姉    :親友は悪い博士に改造されてしまったのだ。
ジャマコ :うてー!
ともだち :助けないのか。
ぶり   :光子魚雷発射
ジャマコ :キュンッキュンッ!
ともだち :ぴい!ぴい!ぴい!
ブリジャマコ :どごおおおん!
ともだち :うう
二人   :よし!(ガッシリ手を組む)
姉    :なんでみんな撃つの?
ジャマコ :お姉ちゃん!
ぶり   :味方か?
ジャマコ :、、違う!
ぶり   :まさか。
ジャマコ :よく見て!あの、つの!
ブリ姉  :つの?!

 姉、頭を触る。すると、角が現われる。

姉    :違うよ?これはほら、角じゃなくて、
ジャマコ :ライトサーベル!
ぶり   :にょおおおん
姉    :たけのこ!
ジャマコ :問答無用!
ぶり   :おおりゃああ!!
姉    :ぎゃっぱあああああ!!

 博士起き上がる

博士   :ふははは強くなった、強くなったな貴様!
ぶり   :巨大化した!なんだこのゲーム!
博士   :貴様もわれわれの仲間になれば、その素晴らしさがわかるというんだ!
ジャマコ :仲間になんかなってたまるか!逃げろー!
ぶり   :いかん!いきどまりだ!
博士   :くらええ!音楽アーーップ!
全員   :うわあああああ

 音楽変わり、皆生き返り、ダンスを踊ります。その途中でタイトルコールのテロップ。

 『ジャマコ、せかいをすくう』

 ダンスは回る椅子を中心にしたコミカルなもの。省スペースなダンス。

 踊り続けているジャマコとぶりちゃん

■姉

 ドンドンドンドン!!

ジャマコ :(隠れて)
ぶり   :(どっち?)
ジャマコ :(こっち!)
ぶり   :(そっち!)
ジャマコ :(そっちか!)

 そこに、エプロン姿の姉、自分の照明をつけて、登場。(★パチン)
 姉、手に便器のスッポンを持ってる。
 よくわかんない言語の楽しい音楽消え、ラジオのノイズに変わる。

ラジオ  :ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

姉    :ああもう。くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ。

 姉に気づいて、固まるジャマコ。

姉    :人が禁煙はじめた所を狙うかのようにこの子は。
ジャマコ :、、、、
姉    :ラジオ聞くなら周波数というのを合わせなくちゃだめ。
ジャマコ :、、、、、、

 姉、ラジオを消す。ブツっ

姉    :なんでお姉ちゃんの言うこと聞けないかなぁ。
ジャマコ :、、、

 ジャマコ、おもむろに地面に絵を描き出す。

姉    :ああ!どこにでも描いたらだめっ!
ジャマコ :、、、。

 ジャマコ退場する。

姉    :(ああ!どうしよう!なにか!ふくもの!きょろきょろ!ない!煙草!禁煙!我慢!できない!いやする!して!!)

 姉、ひとしきり、無音でじたばたする。そして泣く。

姉    :うううう。またわたしが怒られるんだ。拭いちゃおう。涙で拭いちゃおう。

 姉、不幸日記とかかれたノートを開く。

姉    :朝5時に起きて新聞を門の所まで取りに行って庭の掃き掃除。
      トイレお風呂場玄関も水拭き、洗濯機を回してご飯が炊けるまでに
      おじさんおばさんと双子のいとこのための朝ご飯とお弁当の準備、
      いとこの一族が食べてる間に洗濯物を干して、おじさんのスーツにアイロンをかけ、
      フィッティングルームでおばさんの着付けのお手伝い。
      双子の爪とハンカチティッシュをチェックして、皆を玄関でお見送り。
      おじさんはとなりにある総合病院の理事長、おばさんはナース、双子は学校の後、
      医大に入るための塾とピアノ。食器をキッチンへ片付けたころに洗濯機が止まるから
      屋上の物干場に干しに行く。
      朝のあいだ、妹はパジャマでコンピュータゲームざんまい。
      はなしかける。
      マコトっ。

 話の途中でマコト、ゲームのコントローラーのような物を出し、ゲームをしてる様子
 ジャマコ、何か、めちゃくちゃな字の書いてある紙を渡す。

姉    :なんだこりゃあ。なんか象形文字みたいなのたくさん。ばかにしてるわ!キイ!

 ぐしゃぐしゃぐしゃっとやり、地面に叩き付けて、ふんづける。投げようとしてポッケにしまう。

姉    :妹は無能なふりをして楽をしてる。わたしは不幸だ。
      あ。じゃじゃんじゃじゃんじゃん♪こくみんラジオ始まるっ。(パチン★)

■国民ラジオ

ジングル :じゃじゃんじゃじゃんじゃん♪こくみんラジオ~
アナ   :こんばんばん。2021年7月24日のニュースです。
アシ   :本日7月24日は第3次世界大戦の勃発記念日です。
アナ   :今日の国民ラジオには世界のメンタルクリニック、ドクトル黒織田博士をお呼びしています。
博士   :ドクトォ~ル~黒!織★田です。
アナ   :そうですか。
アシ   :ニッポン人がテレビを失って10年になります。
博士   :今となっては、はなまるマーケットも見たいです。
アナ   :地デジ化さえしなければ、こんな事にはならなかったんですが。
アシ   :テレビ局へのピンポイント爆撃による地デジ化の失敗でした。
アナ   :もちろん北コリアンによるテッポドーンです。
アシ   :案外上手に狙いましたね。
博士   :上手に狙いました。
アシ   :今日は「同情と外貨」というお題で、ドクトル黒織田博士をお呼びしました
博士   :戦争はたくさんの不幸を産みまして、当然各国は同情しました。
アナ   :アメリカ共和国、アフリカ合衆国などの諸外国から支援を受け、ニッポンはやってまいりました。
アシ   :しかし、かれこれ10年、各国からはこういった声が上がっています。
 
 外人登場。名札『オバマ』とかズラとか。

外人   :モウイイダロ。ネェ?モウジュウブンダロ?ネェ?

 外人退場。

博士   :今後も新しい同情を買い、お金を貰うために、次の不幸が必要です。
アナ   :次の不幸と新しい同情、ですか。
博士   :ドクトル黒織田研究所では、ひきつづき不幸な人を募集しています。
アシ   :リスナーの皆さんの不幸が、
博士   :ニッポンをすくうかもしれません。
アナアシ :ありがとうございました。
博士   :ドクトォ~ル~黒織田です。
アナアシ :ありがとうございました。
アシ   :次のニュースです。
アナ   :映らなくなった地デジ対応テレビを利用したフォトフレームがナウなヤングにバカウケです。
ジングル :じゃんじゃじゃんじゃじゃん♪こくみんラジオ~

 全員退場。

■姉の思い付き

姉    :(★パチン)、、、、、、、、

 姉、タバコを吸っちまってる。

姉    :はぁ。、、、、ああ!!すっちまって!ああ!ああ!くっ!たっ!な!

 頭を抱え、しばらく微動だにしない。

姉    :……………………

 突然、

姉    :さて、親戚が食いちらかした朝食の残りから残念な感じの朝ご飯を作ろう。
      そうそう、双子のいとこ専用のトイレが詰まってたんだっけ。ふふ、ふふふ。

 とぼとぼと退場しようとするが。何か、ひっかかる。

姉    :はっ!さっき、なんて言ってた?あの先生!
博士の声 :みたーいたーいたーい、みたーいたーいたーい
姉    :思い出してわたし!わたし頑張って!
博士の声 :はなまるマーケットもみたーいたああ
姉    :そこじゃない!
博士の声 :ひきつづきつづきつづき、
姉    :募集しています!
博士の声 :不幸なひとをひとをひとを
姉    :ああ!、、、、、(満面の笑み)
      そうだ!うちの家族の、不幸のテーマ音楽かけよう。
たくさんの博士の声 :「不幸な人を募集しています。」
姉    :応募しよう、、わたしの不幸っ

 優しく悲しい音楽、g線上のアリア/バッハが聞こえてくる。

姉    :ふふふ、ふふふ、

 姉、便器のスッポンで、オーケストラの指揮を始める。

ジャマコ :どうしようか。考えなくちゃ。
      でもさ。世界を救うってことはさ、大変なことだよ。
      大変だよねぇ。そうだよ。とても大変なことだよ。
      でも、だれかがやらなくちゃ。そうそう。それはそう思う。
      やっぱ戦争とか無いほういいでしょ。
      それはそう思う。
      あと、お腹空かないように。
      うん。寒くないこと。
      こどもが元気なこと。
      ペットがいること。
      犬?猫?どっちも?
      絵がかける。紙とペンがあること。
      チョコ。ケーキ。ビスケット。なんか話がずれてきた。
      お母さんがいること。
      お父さんもいること。
      うん。いろいろあるからなぁ。
      いろいろかもしれないけど、その方がいいよ。
      ねぇ、どうやって世界を救おうか。ぶりちゃん。

 ぶり、その独り言を聞いている。
 となりに居たぶり、自分の人形を置き。
 ジャマコの電気を消して(パチン★)、退場する。
 ジャマコ、緑の照明の中、相変わらず絵を描いている。

姉    :、、、

 奥にぼんやりとズラの博士が浮かぶ。

博士   :たいした不幸だ。
姉    :このままだとニートひきこもりゲーマー、
      無能なふりをして、楽をしようとしているんです。
博士   :いつから。

 姉、電子タバコを加えながら、
 不幸日記を読む。

姉    :10年前、あたしもマコトも小さかったころ。
      たぶん戦争が起こって、ミサイルが落ちて、
      あっと言う間に戦争が終わって。あの頃から。

博士   :パジャマの妹は、魔法をかけられたんじゃないかね?
      「この世界は悲しいことでいっぱいだ」
姉    :だれに?
博士   :「外は、不幸でいっぱいだ」
姉    :だれにかけられたって言うんですか?
博士   :さあね。
姉    :、、、
博士   :ああ、これは魔法じゃない。のろいだな。
姉    :のろい。
博士   :他になにか、不幸の主張があるかね。 
姉    :いえ
博士   :明日またきたまえ。

 博士の照明、消える。

 姉、一人になり、
 不幸日記を開く。

 音楽あがり暗。

■わたしの不幸自慢

 (★パチン)音楽消え。

姉    :昨日も説明したんですけど。
      そんなわけで。あの子の姉である私の人生はこんなにも不幸なんです。およよ。

 (★パチン)助手、登場。ズラなしの博士。

助手   :「見えないお友達」って知ってますか?
姉    :はい?え?見えないんですか?おともだちが?なんで?
助手   :だれしも。幼児期には「想像の世界」と「現実の世界」がまだ明確に分離されてない時期がある。
姉    :あのう。
助手   :「見えないお友達」を創りだして話し相手とするわけです。まぁ、だいたい7歳くらいまで。
姉    :黒織田先生はいらっしゃいませんの?
助手   :先生は朝から放送局へでかけました。なんでも発表があるとかで。
姉    :これだからエラい奴は。
助手   :あ、ちなみに、僕も黒織田です。
姉    :息子さん?ああそう言えばよく似てらっしゃるかも。

 壁に黒織田博士の肖像画が貼ってある。

助手   :いや。クローン人間。黒織田博士の。
姉    :こういいたいの?黒織田博士のクロオんダぁ。こういいたいの?
助手   :いや。
姉    :黒織田博士のクロオんダぁ。こういいたいのね?
助手   :違います。
姉    :クローンってあの。
助手   :はい、博士の細胞のカケラから培養されました。
姉    :え。
助手   :博士は忙しいので、我々が皆さんの対応を任されています。
姉    :われわれ?
助手   :私の他に1023体のクローンが培養され、博士の研究のために働いています。
姉    :げ。なんだ。ニセモノか。スパー。
 
 姉、煙草を吸う。

助手   :、、禁煙は?
姉    :うん。これ吸ったら、次まで絶対すわない。

 間

助手   :これ。
姉    :え?
 
 ジャマコからのめちゃくちゃ文字レター。

助手   :文字ですか?
姉    :まさか。
助手   :あの、妹さんに合わせてください。
姉    :いいけど。
助手   :では、後日。
 
 助手、行こうとする。

姉    :ちょっと!わたしの不幸は?
助手   :結果はのちほど。(パチン★)
姉    :ぜったい採用に違いない。わたしくらい不幸な人は
      そうそうこの世の中にはいないもの。スパー(パチン★)

■不幸せの報われと、ご飯の準備。

 奥様たち、うわさする。

奥様1  :ちょっと奥さんきいた~?
奥様たち :なああにひぃい?
奥様2  :アヤノコウジ先生んとこの下女と脳タリン(げじょ)!
奥様たち :げじょおおお!
奥様3  :姉エプロンとアホパジャマ~?
奥様たち :そそそそそそ
奥様4  :父親が戦地で女つくったとかで~
奥様たち :んまああああああ
奥様1  :母親蒸発しちゃったみたいで~
奥様たち :ひっさああああん
奥様2  :なんでも噂によればあ、
奥様たち :なななななな?
奥様3  :どちらかは隠し子なんじゃないのってぇ
奥様たち :だれだれだれだれだれ?
奥様4  :だから預かってるわりに~~
奥様たち :つめたいわけねぇええええ
姉    :こんにちわー!
奥様たち :どおおおおおもおおおお
姉    :わたしのうわさばなしですか?
奥様たち :ノノノノノノノノノ
姉    :いいんです。今の私には不幸がふんだんに必要なんです。
      そうすれば、なお一層、私の不幸と幸福は確かなものになるわ!
奥様たち :そおおオオオオオ?
姉    :はい!
奥様たち :ぴよぴよぴよぴーちくぴいー
姉    :ああ、幸せ。わたし、ほんとに不幸で幸せ。
      これできっと私の不幸は報われるわ。スキップスキップらーんら
トラック :ブロオオオン!キキィイ!ばかやろう!気をつけろ!
姉    :まあ。
犬    :わんわんわん!がぶりー!
姉    :こら。
飼い主  :だめよ!シャトランゼ!ばい菌!ペ!
姉    :うふふふ
犬    :ちゃーーー
姉    :あったかーい
飼い主  :あらおりこうちゃん
姉    :あらおじ様ー
おじさま :ベンツみずたまりばっしゃあ
姉    :ちょうどいいー
双子1  :おいトイレがつまったままじゃないか
姉    :はい、すっぽん
双子2  :おいトイレがつまったままじゃないか
姉    :はい、すっぽん
双子1  :うんこまーみれー
姉    :はい
双子2  :うんこまーみれー
姉    :はい
双子1・2:おーまえーのいーもおとあったまーが、パア
姉    :!!

 姉、キレる。両手でなぐる。

双子1・2:ぼごおお!!!!
おじさま :なにか音がしたがね、えっへん。
姉    :なんでもないわおじさま。
おばさま :かわいい双子は知らないかい?
姉    :ここにはいないわおばさま。
双子1・2:たすけ

 姉、殴る。

双子1・2:ぼごおお!!!!
姉    :わたしの不幸を笑うのはいいけど
      妹をパアよばわりするのは許さないから。
双子1・2:パア、

 姉、殴る。

双子   :ボクゴオおおおお!!
姉    :わかった?
双子1・2:(こくん)
姉    :わらって。
双子1・2:(にこお)
姉    :みにくいこと。
双子1・2:(ゆがむ)
姉:部屋に戻って大人しくして

 全員、部屋に戻る。

姉:おやすみ。

 (パチン★)

■ともだちの出現。

 突然、サイレンの音。照明変化。そして不安気な音楽。暗、サーチライトの灯り。
 アーミールックのともだちがじわりと見える。
 何か変なお面をつけて何かへんてこな機械を頼りにして、
 北コリアンの軍事ネットワークに潜入している。
 (ブラックライトは使えないかなぁ)

ともだち :セキュリティ解除おっけー。ここまではセーフ。
      えーとー、(地図をだす)お。ドンピシャ。いい感じー。
      北コリアン軍事ネットワークのファイアウォール。
      えー、これより壁づたいにメインコンピュータへ侵入開始。
      やっぱわりとしょぼいかも、北コリアのミサイルシステム。
      それでは、パスワード、お願いします。パソコンちゃん。
パソコン声:パスワードカイセキ、カイシ。
ともだち :よろしう。
パソコン :パスワードハンメイ。
ともだち :早いね。ようし。
パソコン :ケイコク
ともだち :え?
パソコン :別のユーザーのログイン感知。
ともだち :うそっ。だれ?
パソコン :ギソウしますか?
ともだち :一応隠れて。
パソコン :ギソウ開始。
ともだち :北コリアン?
パソコン :別の国です。
ともだち :どこ?
パソコン :ケンサク。
ともだち :へえ、あたしくらいすごいハッカーがいるんだなあ、世界には。
パソコン :ジャッパンです。
ともだち :ニッポンじん?!だれだよそれ!?
パソコン :ケンサク。
ともだち :わあああ。ともだちになりたい。住所わかる?

 向こうから現われるジャマコ&ぶり

ぶり   :まちがった。

 曲切れる。

ジャマコ :え、まちがったの?
ぶり   :うん。まちがった。
ジャマコ :ほらあ!
ぶり   :ほらあってことないじゃん。
ジャマコ :だからさっきんとこ右な気がするって言ったのに!なんで間違うんだよもう!
ぶり   :なんでって言われても!
ジャマコ :ああーああー、もう武器ないよ?暗いし。こわいし。どうするどうする!
ぶり   :このままだとつかまる?
ジャマコ :くわれる!モンスター?グおおおおおおお。
ぶり   :あああああ。
ジャマコ :だからあそこでセーブしとけば良かったのに。
ぶり   :だってさ。
ジャマコ :だってじゃないよー。
ぶり   :いいよもう!もう知らない。知らないからね。さよなら。
ジャマコ :どこいくの
ぶり   :別の出口を探す一人で。もうジャマコの言うことは聞かない。
ジャマコ :へーふーんあっそ。
ぶり   :そうです!最後に言い残すことは?
ジャマコ :そこ、赤外線センサー、気をつけて。
ぶり   :え?

 ぶり、赤いライトに照らされる。
 ウィーンウィーンウィーン、音楽再び。

ジャマコ :いったそばから
ぶり   :ごめん。
ジャマコ :困ったな
ぶり   :くわれる?!
ジャマコ :逃げるよ。急ごう。
ぶり   :どっち?
ジャマコ :こっち。

 アーミーともだち再び登場。ともだち、なんかかぶってる超怪しい。

ともだち :そっちやばいよ。
ジャマコ :え?
ともだち :そっちのルートやめた方いいよ。
ぶり   :だれ?
ジャマコ :知らない。
ともだち :そっちのルートは袋小路。ハッキングを防ぐために張られた意図的なバグだ。
ぶり   :何言ってんだあいつ。
ジャマコ :だれ?
ともだち :こっちから行こう。
ぶり   :怪しいなあいつ。
ともだち :ついてきて。

 ともだち退場(パチン★)

ジャマコ :(ついて行こうと一歩ふみ出す)
ぶり   :待って。
ジャマコ :え?
ぶり   :信用すんの?

■博士の発表。

 音楽の中、最新ニュース。

アナ   :緊急ニュースです!
ジングル :じゃんじゃじゃんじゃじゃん♪こくみんラジオ~
アナ   :こんばんだ。今日は番組を変更して、ドクトル黒織田博士による世界的な発表をお伝えします。
      ちくしさーん?
アシ   :お父さんもニュースキャスター、筑紫てつこです。
アナ   :会場の様子はどうですか?
アシ   :博士の研究発表を聞くために世界中から報道陣がつめかけております!
記者   :きたぞー!
アシ   :来ました!
記者団  :パシャー!パシャ!パシャー!

 博士以外記者団になり、照明をパシャパシャする。
 (パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)

博士   :ええ、本日みなさんに集まっていただいたのは他でもありもはん。
      とうとうニッポンを新しい不幸にする病気が発見されたのす!
アシ   :博士は興奮すると薩摩藩士になりまふ!
博士   :これはもう世紀の大発見だもんにー!
記者団  :ぱしゃ!ぱしゃ!ぱしゃしゃ!
博士   :新しい病気というのは他でもない。
      かの世界大戦ののち、若者を中心に起こっている病なのです。
記者   :博士!その病名は?
博士   :パジャマシンドロームです!
記者団  :パジャマパジャマおおーパジャマおおー
アシ   :どのような病気なのでしょうか?
博士   :コミュニケーション能力の急激な低下!
      他者との関わりを嫌うようになり、
      しだいに現実と妄想の区別がつかなくなるという恐ろしい病い!
      それが、パジャマシンドローム!パジャマ症候群です!
記者団  :パシャー!パシャぱしゃ!パシャぱしゃー!
 (パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)
博士   :10年前我が国はテレビを失いました!
      そのテレビに恋い焦がれた若者たちの脳を占拠したのがコンピューター端末であります!
      これは第3次大戦による戦争後遺症であります!
      我々ニッポンは敗戦以来、テレビを持たぬ国として戦後を生き抜いてまいりました! 
      若者にテレビを!いまこそ!ニッポンにバラエティが必要なのです!
アシ   :以上!中継でした!
アナ   :この病気の治療法はまだ見つかっておりません。
      政府はパジャマシンドロームがニッポン全土に広がっていく見方を強めています。
アシ   :突然ですが、中継です!今!アメリカ共和国大統領の声明が発表されました。

 外人登場。

外人   :カワイソウダネェ。パジャマキテェ

 外人退場

外人記者団:PASHA!PASHA!PASHAPASHA
 (パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)(パチン★)(★パチン)

 一瞬の暗。曲があがる。

■採用!

 音楽が切れると。
 ジャマコ、立っている。

博士   :申し分ない不幸の持ち主だ。
姉    :ほんとうですか?
博士   :採用だ!
姉    :ありがとうございます!
博士   :彼女を正式にパジャマシンドロームと診断しよう!
姉    :え?
博士   :世界で一人目のパジャマ症患者だ。これは名誉なことだよ。
姉    :でも、あの、わたしの不幸は?
博士   :君の不幸などとるにたらん。
      世界にはその手の不幸はあふれている。
      そんなことで、世界が同情すると思ったら大間違いだ。
      あらゆる病気には流行する兆しが必要なのだよ。
      この病いは流行る!間違いない!わかるかね?
      世界中から私のもとへ患者がやってくるぞ!
      彼女は最初の被験者となり、私の手によって正常な人間へと生まれ変わる!
姉    :え?
博士   :さあ、カルテを書こう。薬を飲ませよう。手術をしよう。
姉    :でも、あの、わたしたち、お金がないんです。
博士   :心配いらん!世界の同情がある。
姉    :同情?
博士   :グアハハッハッハッッハハ!!不幸は財産だよ。
姉    :博士?
博士   :安心したまえよ。政府公認の不幸な姉妹だからね。
      これからはなんの心配もすることはないよ。
      せっかくの不幸だもの。姉である君も、その恩恵にあずかるべきだ。
姉    :、、、、
博士   :グアッハッハッハ
姉    :ふっふっふっふ
博士   :グア!グアおお!
姉    :グア!グアおお!

 二人、笑いながら、角やキバをつける。
 博士は悪魔のように、姉は鬼のようになる。

ぶり   :聞いた?あの笑い声、
ジャマコ :グア!グアおお!
ぶり   :グア!グアおお!
ジャマコ :グア!グアおお!
ぶり   :やっぱ虫の仲間になるのかなぁ。かたつむり。
ジャマコ :虫っていうか。なんか。鬼とか。
ぶり   :つの?
ジャマコ :うん。
ぶり   :最近さぁ、親戚のヒトたちみなくない?
ジャマコ :うん。
ぶり   :どしたんだろ
ジャマコ :わかんない。
ぶり   :双子のイトコもいないね。
ジャマコ :もしかしたらと思うんだけど。
ぶり   :え?うそ。
ジャマコ :だって。鬼だから。
ぶり   :(小声)たべた?
ジャマコ :(うん、うなづく)
ぶり   :こおおおええええええ
ジャマコ :だって機嫌いいもん。
ぶり   :なんでなんでなんで!
ジャマコ :だって人間がチョコ食べたみたいなもんじゃん。
ぶり   :そりゃ、鬼はニンゲンくうと機嫌いいかも~!
ジャマコ :気をつけよう。食われないように。
ぶり   :食われないように。
二人   :(うん)
ぶり   :外は危険だ。
ジャマコ :うん
ぶり   :この世界は悲しいことでいっぱいだからね。
ジャマコ :そのとおり
ぶり   :外は不幸でいっぱいだ。
ジャマコ :うん。
ぶり   :ねぇ。
ジャマコ :なに?
ぶり   :最近ちょっと心配になる。
ジャマコ :どして?
ぶり   :どうしてって。
ジャマコ :なに?
ぶり   :明日にはもう会えなくなるような気がして。
ジャマコ :そんなわけないじゃん。
ぶり   :そんなわけないか。
ジャマコ :そーだよ
ぶり   :ずっと一緒に居てね。
ジャマコ :いいよ
ぶり   :死ぬまで一緒だからね。
ジャマコ :いいよ
ぶり   :死んでも一緒ね。
ジャマコ :いいよ
ぶり   :約束ね
ジャマコ :約束
ぶり   :約束。
ジャマコ :あれ?
ぶり   :なに?
ジャマコ :この約束、前にもしてない?
ぶり   :そうだっけ?
姉の声  :マコトちゃーん、ごっはんだよおん
ジャマコ :うわあ
ぶり   :やさしー。おっかねぇー
ジャマコ :代わりに食べて来てよ。
ぶり   :やだよ。
ジャマコ :食わないと殺されるんだよ。
ぶり   :やだよ
姉の声  :たべようよ~
二人   :(恐怖)やさしいいい
姉の声  :たべちゃうよ~~~
二人   :いまいまいまいく!
ジャマコ :ほら!ほらいけ!

■本物のともだちが登場する。

 ジャマコ一人。絵を描く。

 照明変化。

 ともだち。サイバー携帯で現住所をつきとめた。

ともだち :あ、ここだ。おじゃましまーす。

 ともだち登場、アーミーではない。パジャマで眼鏡の女の子。

ともだち :発見ー。おっすー。びっくりー。げき近。あたし、となりの総合病院に入院しててさ。
      ネットでばったりでくわしたときマジびびった。運命じゃね?
      屋敷ちょー広いんだけど、金持ち?でも召使いいねーし。玄関鍵かけたほういくね?
      あたしここまでスルーしてきちゃったんすけど。
ジャマコ :?
ともだち :あれ?昨日会ったじゃん。
ジャマコ :、、、
ともだち :あれ?だめ?わかんない?
ともだち :あれー何言ったら思い出すかな。あ、名前か!アミコ!
ジャマコ :、、?
ともだち :あ、思い出しそう?亜美子!

 ジャマコ、ぶり人形を掴む。

ともだち :あ、何それかわいいね。なに?ロボット?あ、ラジオじゃない?
      売ってたよね。昔。ちょっと貸して。
ジャマコ :、、、
ともだち :かしてかしてかしてかしてかして。
ジャマコ :ああ、あああ!!

 ぶり登場

ぶり   :ふぉんふぉんふぉんふぉん~~~(回想シーン)

 皆くるくる回る。照明変わる。

ともだち :いつでもこの国は緊張状態だからなぁ
二人   :へー
ともだち :となりの危険な国がさ、ニッポンを狙ってる。
二人   :ふーん
ともだち :ミサイルがいつでもこっち向いてんだよ
二人   :あー
ともだち :大陸間弾道ミサイル、炭疽菌ミサイル、水爆、核爆弾、
二人   :はいはいはいはいはいはい
ともだち :テポドーン1号、2号、白頭山1号ペクトゥサン イルホ、ウンハ イルホ
二人   :ほー
ともだち :さすがのパトリオットミサイルでも迎撃が間に合わない。
二人   :はー
ともだち :だからそこを俺たちが助けるわけよ。
二人   :おれたち?
ともだち :RSとは有線でインターフェイスされているわけだから。
二人   :ん?
ともだち :コンソールプログラムにブリッジかけて一旦こっちにシステムごとダウンロードする。
二人   :わー
ともだち :乗っ取ってしまえばこっちのもんだ。
二人   :うんうん
ともだち :UHF通信ルーティング・インターフェース装置にはいりこんで
ぶり   :わかる?
ジャマコ :少し。
ぶり   :すごいね。
ともだち :とにかくこっちだ。
ジャマコ :君は何を探しているの
ともだち :人生
ぶり   :うわ、大人
ともだち :アディオス!
ぶり   :もし、君の名は?
ともだち :ここじゃアミーゴと呼ばれてんぜセニョリータ。
二人   :かっこいいーーーーー
3人   :ふぉんふぉんふぉんふぉんふぉーん。

 ぶり、人形をそでに置き、入れ替わる。

ぶり   :ただいま。
ジャマコ :おかえり。
亜美子  :かしてかして!

 ジャマコとともだち、ぶりをひっぱりあってる形になっている。

ぶり   :うううううう
ジャマコ :はなせ!
ともだち :かせ!
ぶり   :先に手を離した方が本当の親だよ!
二人   :離すもんか!
ぶり   :なんでえ!!

 姉、かけこんでくる。

姉    :なにしてんの?!

 ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる

3人   :?

 おねえちゃん、健康ぶるぶるマシーンを身体のどこかにこっそりつけている。

姉    :あなた誰?警察よびますよ?(ぶるぶるぶるぶるぶる)
ともだち :うわ、なんだ!身体の部位のある部分がぶるぶるしてる。
姉    :ぶるぶる?だれが?(ぶるぶるぶるぶるぶる)
ともだち :してんだろーよお!
ぶり   :え?
姉    :あたしのどこがぶるぶるしてるっていうの。うぉおおお!!(ぶるぶるぶるぶるぶる)
ともだち :うわ!なんだ!よくみりゃ鬼だ!わああ!
ジャマコ :見えるの?
ともだち :見えるよ!にげろ!鬼だ!
ぶり   :つのも?
ともだち :ロングホーンな。バッファローマンばりじゃね?こええ!またね!ばいばい!
姉    :待ちなさい!(ぶるぶるぶるぶるぶる)

 ともだち、姉に追われて退場。

ぶり   :あいつ。
ジャマコ :うん

 姉、ぶるぶる登場する。

姉    :(ぶるぶるぶるぶるぶる)あああああもおお
ぶり   :ひぃ
姉    :だれ?見ず知らずの人を家に入れたらだめよ。
ジャマコ :お姉ちゃんどんどん鬼になっていく
ぶり   :鬼ってお腹まわりぶるぶる震える?
姉    :わかったの?
ジャマコ :言ってることわかる?
ぶり   :さっぱりわからん。
ジャマコ :どんどんわからなくなる。
姉    :ごはん食べちゃって。ね?
二人   :わらってるー。こわいよー。

 二人退場する。姉が残る。

02■姉と博士

全員:次の日

 更に悪魔化した博士。(パチン★)

博士   :今日はまた、どこに行きましたか?
姉    :マコトー!マコトー!ウォおおお!!
博士   :グヘッヘま、いいでしょう。
姉    :あの子にはなんだか違う風に見えてるって思いますわたしマコトー!ウォオオオ!!!

 博士登場、カルテを読んでいる。

博士   :マコちゃんには二つの世界が見えているんですね。本当の世界と、空想の世界です。
姉    :え?そうなんですか?
博士   :つまり、これは手術が必要になりそうです。
姉    :手術?
博士   :ほんのちょっと、脳みその中の線を一本切断するだけだ。
姉    :それは危ない手術じゃないんですか?
博士   :グエェエヘッヘッヘッヘ
姉    :博士?
博士   :大丈夫、私を信頼しなさい。
姉    :私、心配になってきました。
博士   :グヘッグヘヘヘ!大丈夫です。簡単な手術です。グホォ!グホォ!
姉    :ちょっと、考えさせてください。
博士   :今週の金曜日に手術する。
姉    :でもあの。
博士   :わしの実力を世界に知らしめるためには、早く治さなくてはいけない。
姉    :え?
博士   :あ、グヘヘヘヘ。これは余計な事を。
姉    :あのう。
博士   :これはあなたたちだけの問題じゃあない。
      あなたがたの不幸が世界を救うんだ
      この病のおかげで、ニッポンは同情を買い、不幸を売るんだよ。

 博士退場する。

姉    :、、、、、手術、、

■さかな?

 ぶるるるるるるるるるるる、という振動音がする。

 なんか、ぶるぶるしている食べ物

ぶり   :なんか、ぶるぶるしてない?
ジャマコ :してる。
ぶり   :え、食べるの?
ジャマコ :食べないと、また吠えられる。
ぶり   :鬼だからな。
ジャマコ :鬼だからね。
ぶり   :やって!
ジャマコ :うわあ!
ぶり   :こわいこわいこわい!

 ぶるぶるご飯どうにか食べる。フォークで刺してみると
 ジャムにカステラみたいなもの。

ジャマコ :ぱくり。
ぶり   :、、どう。
ジャマコ :、、、、
ぶり   :、、ぱくり。
ジャマコ :なんか。
ぶり   :!
二人   :カステラにジャム塗ったみたいな味!あんがい。
ジャマコ :けっこうおいしー
ぶり   :けっこうおいしー
ジャマコ :よし。ちまちま食べよう。
ぶり   :うん。ちまちま食べよう。

 二人ちまちま食べる。

ジャマコ :ぶりちゃん、これ食べおわったらまた世界をすくおう。
ぶり   :え?また?
ジャマコ :うん。また。
ぶり   :そんなに毎日さあ、世界を救わなくてもいんじゃない?
ジャマコ :え?そう?
ぶり   :うん。
ジャマコ :気がついたらこまめに救ったほういいんじゃない?
ぶり   :ためないように?
ジャマコ :うん。
ぶり   :そんな、洗い物みたく世界すくわなくてもいいよ。
ジャマコ :そうかなぁ。
ジャマコ :ぶりちゃん。
ぶり   :なに?
ジャマコ :食べちゃってていい?
ぶり   :えっ無くなる?あんまない?身。

 二人、食べ物をのぞきこむ

ぶり   :うわあ。
ジャマコ :うわあ。
ぶり   :結構ぐろいね。
ジャマコ :ね。
ぶり   :ジャマコ。
ジャマコ :なに?
ぶり   :今日は世界すくうのやめて二人であそばない?
ジャマコ :いいよ。
ぶり   :よし。
ジャマコ :じゃ、ジャマコがサインを書くから当ててね。
ぶり   :いいよ。

 二人、絵を描く準備をする。
 絵が完成する。

ジャマコ :これなーんだ。
ジャマコ :ジャ、マ、コ。
ぶり   :あ、ジャマ語だ。
ジャマコ :ジャマ語ー。よめる?
ぶり   :読める。ジャ、マ、コ
ジャマコ :あたまいいねぇ。
ぶり   :ふふっ、ふふふっ
ジャマコ :ああお腹減った。
ぶり   :え、もう?
ジャマコ :ちまちましか食べてないから。
ぶり   :全部食べたくせに。
ジャマコ :チラ。
ぶり   :やめた方いいよ。
ジャマコ :うーん
ぶり   :やめた方いいって。
ジャマコ :皮。
ぶり   :皮でしょ?
ジャマコ :ひとくち
ぶり   :絶対おいしくないって。
ジャマコ :持ってて。
ぶり   :やだよ。
ジャマコ :いいから。
ぶり   :、、、やだなぁ。ああ、ぬるっとしてる。ぶつぶつ
ジャマコ :割くよ
ぶり   :えええ!さくのお!?
ジャマコ :一気に。
ぶり   :やだやだやだこわいこわいこわい!
ジャマコ :せーのっ

 ぶるぶるぶるぶるぶるぶる

二人   :うううああああわわわわわわ!!!!!!
 
 二人、おっつけあう。

ぶり   :うああああ!
ジャマコ :うああああ!
ぶり   :うあ!
ジャマコ :うあ!
ぶり   :ああああ!
ジャマコ :ううう
ぶり   :あああああああ!
ジャマコ :ハああああは!!
ぶり   :ハあああうあ!!うあああ!はう!はあ!ああ!

 助手がそこにくる。(★パチン)

助手   :ねえなんの音?
二人   :ああああ!!
助手   :ああああ!
ジャマコ :ああ!ああああ!
ぶり   :ううわん!わんわん!わん!
助手   :ごめん!ごめん!なに!?なに!?

 ジャマコ、引っ込む。(パチン★)


■現実でみると、奇声を発する患者。

助手   :親戚のかたは?
姉    :政府からおりたお見舞い金で、新しく家を買ってひっこしました。
助手   :、、そうですか。
姉    :あの子、本当に病気ですか?
助手   :え?
姉    :手術するんですよね。
      納得いかないんです。
      、、、、私の不幸が、あの子の病気のせいなんて。
助手   :、、、、、
姉    :あ、ごゆっくりどうぞ。

 姉、礼をして、退場

 助手のこり、部屋の中を見回す。
 めちゃくちゃ語のかかれた紙を何枚か発見する。
 みくらべる。

助手   :あれ?、、、このめちゃくちゃな絵と、このめちゃくちゃな絵、、、まったく同じだ。
      、、、、、、、、え?

 助手、床を見る

助手   :手術まであと、2日か。

 デジカメを取り出し、床の写真をとりはじめる。

 フラッシュがたかさり、次の瞬間に、暗


■ともだちがともだちになるまで。

ぶり   :え?なに?もっかい。
ともだち :やんぼじゃまががるんばぼるんばぼんじょぼんじょばんばるぼんじょそぺぺぺいるーぷら
ジャマコ :やんぼじょまがまがま
ともだち :やんぼじゃ
ぶり   :やんぼじゃ、
ジャマコ :やんぼじゃまががるんば、ぼるん
ともだち :まががるんば、ぼるん
ぶり   :無理!覚えられん!
ジャマコ :ジャマコはだいたい覚えた。
ぶり   :すごいね
ジャマコ :えへーへへーへ
ぶり   :どういう意味これ?
ジャマコ :意味ある?
ともだち :ない。
ぶり   :ないの?
ともだち :この歌詞に歌を付けなきゃ。
ジャマコ :そうだね
ぶり   :そうなの?
ともだち :そうだよ。
ぶり   :へえ、たいへんだね
ジャマコ :がんばって
ぶり   :え?
二人   :さんっはい。
ぶり   :え?
二人   :さんっはい
ぶり   :あ、えっと、♪やんぼじゃー、ががん
ともだち :まががるんば
ぶり   :♪まががるんばー、、えーと
ジャマコ :ぼるんばぼんじょぼんじょ
ぶり   :えーぼるんぼるん、、
二人   :やんぼじゃまががるんばぼるんばぼんじょぼんじょばんばるぼんじょそぺぺぺいるーぷら。
ぶり   :すごいね!
ともだち :もっとこう。やさしい感じ
ぶり   :これを?
ジャマコ :そう、やわらかい感じ。
ぶり   :え、本気で言ってる?
ともだち :じゃさじゃさじゃさ、シカの指って何本か知ってる?
ジャマコ :知らない。
ぶり   :6本?
ともだち :4本
ジャマとも:すくな!
ぶり   :ふーん
ともだち :キリンは?
ぶり   :6本?
ともだち :2本
ジャマとも:すくな!
ともだち :馬は?
ぶり   :6本?
ジャマコ :1本
ともだち :せいか~い!
ぶり   :ふ~ん

 ぶり退場。ジャマコとともだちの語らい。

ともだち :大きくなったら何になりたい?
ジャマコ :大人ってこと?
ともだち :何になりたい?
ジャマコ :考えたことないかも。
ともだち :へーないの?
ジャマコ :ない。
ともだち :なんで?
ジャマコ :ジャマコ程度が何かになれるわけないと思って。
ともだち :そんなこと誰に言われたのさ。
ジャマコ :だれだっけ。だれか。
ともだち :ふーん。
ジャマコ :アミーゴは?
ともだち :ハッカー。
ジャマコ :はっかー?
ともだち :うん
ジャマコ :はっかー?
ともだち :ハッカーは戦争を止める力があるから。
ジャマコ :へー。
ともだち :うちの父ちゃんはミサイルの落ちてくるど真ん中に居て死んだ。
      偉大なハッカーはミサイルを自由に操れる。
      撃ってから、弾道を変えて、海に落とすことだって出来るし、爆発させないことも出来る。
ジャマコ :かっこいい。偉大なハッカー。
ともだち :ジャマコもなれるよ。
ジャマコ :うん。でもハッカーってなに?
ともだち :またまたとぼけちゃって。
ジャマコ :え?
ともだち :ジャマコがハッカー知らないわけないじゃん。
ジャマコ :え?

 ぶり、じゃまをしにくる。

ぶり   :ハンガリー語で、塩が足りないときなんていうか知ってる?正解は「シオタラン」。
      納豆の糸はどのくらい伸びるでしょーか。正解は12メートル。どっしぇ~
二人   :すごい。
ぶり   :いいよスゴイと思ってないならスゴいっていわなくたって!

 ぶり、退場。後ろ向き。

ジャマコ :ねえ、ぶりちゃんどしたの?
ともだち :ジェラシーじぇらじぇらなんだよ。
ジャマコ :なにそれ?
ともだち :あたしにジャマコを独り占めされそうで嫌なんだよ。
ジャマコ :ふーん。そうか。

 ジャマコ退場。

ともだち :お。これか。

 ジャマコの携帯を触ってる。

ともだち :おお。すごいじゃんこれ。わりかし。

 見計らって、姉。登場。

■言葉がわかるの?

姉    :マコトの言葉がわかるの?
ともだち :あ、鬼。でも、この前ほど鬼じゃないね。
姉    :答えなさい。マコトの言葉がわかるの?
ともだち :え?わかんないの?
姉    :、、うん
ともだち :ふーん。かっけー。あたしあみこ。
姉    :あみこちゃん。
ともだち :アミーゴってよばれる。しばしば。
姉    :アミーゴってどういう意味か知ってる?
ともだち :知ってる。
姉    :ねぇ、マコトのともだちになってくれる?
ともだち :でも多動児。
姉    :え?
ともだち :おれっち。
姉    :たどうじ?
ともだち :注意欠陥、多動性障害。小学校になってじっとしてられない事に気づかれて医師に診断された。
注意力を維持しにくい、時間感覚がずれている、様々な情報をまとめることが苦手などの特徴があるけどいい?
姉    :あ。えーと。
ともだち :日常生活に大きな支障をもたらすが適切な治療と環境を整えることによって症状を緩和することも可能である。
脳障害の側面が強いとされ、しつけや本人の努力だけで症状などに対処するのは困難である。
それでもいい?
姉    :ちょっと考えてもいい?
ともだち :悪びれないね。
姉    :うん。
ともだち :だめ。我慢ならん。
姉    :それはマコトが決めるんじゃない?
ともだち :お。うまい逃げ方だ。
姉    :うん。
ともだち :おねーちゃん好きよ。
姉    :どうも。
ともだち :これすごいね。
姉    :、、父さんの携帯。父さん、軍の特殊工作員だったから。
ともだち :どおりで北コリア軍事ネットワークに侵入できるわけだ。
姉    :侵入?なにやってんのあの子。
ともだち :せかいをすくおうって。
姉    :え?

 間

ともだち :これ、ジャマコが作ったの?
姉    :ジャマコ?
ともだち :うん。
姉    :あの子、自分のこと、そう呼んでんの?
ともだち :うん。え?違うの?
姉    :ジャマコはね、いとこがつけたんだよ。
ともだち :え?
姉    :いつもパジャマで、邪魔な子だって。
ともだち :、、、、
姉    :やっぱあのこ、話わかってんじゃない?にくたらしい。
ともだち :ねー。

■夜中

 夜。フクロウの鳴き声。ホー、ホー、ホー

 懐中電灯の灯り。ジャマコ、忍びこんでくる。

ジャマコ :なにしてんの。
ぶり   :別に。
ジャマコ :ふうん。

 ジャマコ、懐中電灯をころがして一旦退場。

ぶり   :?

 ジャマコ、ビーチチェアーをひきずってやってくる。

ジャマコ :これー。えーと。こうか。こうやって。こう。そして。
      あれ?こうか。そうして。こう。

 ジャマコ、独り言開始。

ジャマコ :なんだこれ。こわれてんのかな。知ってるこれ?
ぶり   :、、知らない。
ジャマコ :押し入れの奥の奥の奥にあった。
ぶり   :、、、
ジャマコ :青、きれい。青好き?
ぶり   :、、好き。
ジャマコ :ジャマコも。
ぶり   :、、べつに。

 ビーチチェアーをよく見る。

ジャマコ :だめだ。ポンコツだ。ゴミだ。
ぶり   :ゴミじゃないよ。
ジャマコ :だって壊れてるよ。
ぶり   :壊れてないよ。
ジャマコ :こわれてるよ。
ぶり   :こわれてないよ。使い方わかんないだけじゃん。
ジャマコ :だって知らないんでしょ?
ぶり   :、、知ってる。
ジャマコ :だと思ったんだあ
ぶり   :うるさいな

 ぶり、ビーチチェアーを完成させにいく。

ジャマコ :ぶりちゃんはなんでも知ってるからなぁ。
ぶり   :なんでもじゃないよ。
ジャマコ :これ、誰の?
ぶり   :、、
ジャマコ :知ってんでしょ?
ぶり   :海行く時の。
ジャマコ :海?
ぶり   :うん。みんなの。
ジャマコ :みんなってだれ?
ぶり   :ジャマコと、おねーちゃんと、おとーさんとおかーさん。
ジャマコ :おとーさんとおかーさん?
ぶり   :これはさぁ、昔むかし、ジャマコのおかーさんがおとーさんに買ってもらったんだよ。
ジャマコ :いつ?
ぶり   :うんとー、10年前の今日。
ジャマコ :10年前?
ぶり   :海に行ったとき。
ジャマコ :ものしりー。
ぶり   :近所のアンティークショップで。
ジャマコ :なにそれ。
ぶり   :ふるーいものやいらないものやうれなかったものがたくさん売ってる。
ジャマコ :いくら?
ぶり   :500円。
ジャマコ :わあ、うまくやったねぇ。
ぶり   :戦争が起こるまえ。ジャマコはちっちゃくて覚えてない。
ジャマコ :ねぇねぇ。
ぶり   :なに?
ジャマコ :なんでぶりちゃんは知ってんの?
ぶり   :居たから
ジャマコ :海に?
ぶり   :アンティークショップに。
ジャマコ :ふーん。たまたま?
ぶり   :たまたま。
ジャマコ :へー。
ぶり   :海でラジオ聞くって。
ジャマコ :ふうん。
ぶり   :おかーさん「そんな変なラジオやめなさいっ」て言うのに、
      ジャマコとおねーちゃんがせっかくならロボットの方がいいって。
ジャマコ :ふーん。そんなこと言ったんだ。
ぶり   :お父さんも調子にのって「ラジオは、ロボットであればあるほどいい」って。
ジャマコ :いいやつだね。お父さん
ぶり   :そう思う?
ジャマコ :うん、やっぱロボットであればあるほどいいと思う。
ぶり   :で、海ついて、空、真っ青。海、ラジオかけて。海の家に行って。
ジャマコ :海の家ってなに?
ぶり   :海の家は、海の家。
ジャマコ :海の家。おそろしい場所?妖怪とか出る?
ぶり   :あ、ちがうちがうちがうぜんぜんちがう。
ジャマコ :どんな家?
ぶり   :飲み物が全部ぬるいの。ラーメンがのびててまずいの。
ジャマコ :かわいそうな家。
ぶり   :うーん。なんていえばいいかなぁ。
ジャマコ :かわいそうな家。
ぶり   :いいや。そのかわいそうな家でぬるい飲み物とまずいラーメンを高いお金出して買って。
      まずまずいって食べて、海で泳いで疲れて、入り過ぎてガチガチ震えて、お父さん砂に埋めて
      炎天下にラジオかけながら、あついあついって、灼熱の砂浜にねっころがるの。
ジャマコ :なんのために?
ぶり   :、、そういわれると、、うーん、なんのためだろう
ジャマコ :海、青い?
ぶり   :ひろーくて。遠いの。青い。空と海は違う青なおかげで、混ざんなくていい。
ジャマコ :じゃ、よかったね。
ぶり   :うん。
ジャマコ :たのしそう。
ぶり   :うん。
ジャマコ :それで?
ぶり   :それで、、、その後、、ラジオから(戦争のニュース)
ジャマコ :ラジオ?
ぶり   :この話はもういいよ。
ジャマコ :えーなんで?
ぶり   :もう面白いとこおわり。
ジャマコ :いいじゃん。
ぶり   :おわり。あ、そうだ。思い出した。怒ってるんだった。
ジャマコ :ねーねー
ぶり   :だめ。
ジャマコ :ちぇ。ちぇえ。ちゅーちゅ-ちゅー
ぶり   :ちゅーちゅーしない
ジャマコ :ちゅーちゅー。いいじゃん
ぶり   :だめ
ジャマコ :いいじゃんともだち増えたって。
ぶり   :、、だってさあ。ちゅーちゅー
ジャマコ :ちゅーちゅーしてる。
ぶり   :うるさい!
ジャマコ :うるさくない!

 ともだち登場。

ともだち :仲直りした?
二人   :まだ!
ともだち :早くしてよ。やることいっぱいあるんだからさー
ジャマコ :ぶりちゃん許して。
ぶり   :べつに
ジャマコ :ぶりちゃん。
ぶり   :もういいよ。
ジャマコ :あげる
ぶり   :物で買収する気?
ジャマコ :あめ
ぶり   :飴なんか!
ジャマコ :カンロ飴。
ぶり   :、、、、許せばいいの?
ジャマコ :うん
ぶり   :いいよ。
ともだち :あ、買収された。
ぶり   :ふんふんー♪ふんー♪
ジャマコ :はいじゃあともだち。指切り。
ともだち :ゆびきり?
ぶり   :ゆびきりげんまんとととっとともももっももだあち。ゆびきった!ともだち!
ともだち :やったあ
ぶり   :これ食べていい?
ジャマコ :いいよ。
ともだち :じゃあ秘密を教える。
二人   :ひみつ?
ともだち :(秘密ノートを出す)えーとね。これだ。バンコクってほんとは長いって知ってる?
ぶり   :バンコクって、タイの首都?
ジャマコ :長いの?
ともだち :クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラー
      ユッタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラー
      チャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティ
      ヤウィサヌカムプラシット
ジャマコ :なにそれ!
ともだち :バンコクの正式名称
ジャマコ :へー
ぶり   :秘密だよ。
ともだち :よし!みんなで覚えよう。
ジャマコ :よし!覚えよう!
ぶり   :やだなー。
ともだち :ともだちの証だから!
ジャマコ :はーい。
ぶり   :やだなぁー。
ジャマコ :あ。思いついた。
ともだち :なに?
ジャマコ :大きくなったら何になりたいか。
ともだち :教えて教えて。
ジャマコ :洗剤をたっぷり入れたバケツにさ、ドライアイス入れると大変なことになるってさぁ、
ともだち :うん
ジャマコ :よく言うじゃん。
ともだち :うん。
ぶり   :え?
ともだち :よく言うね。
ぶり   :よく言う?
ジャマコ :その程度のことくらい毎日できるような大人になりたいなぁ
ともだち :なるほどねぇ。
ぶり   :そうかなぁ。

 いつのまにか音楽がかかってくる。なんだか楽しい変な言語の音楽。

■楽しい毎日。

・じゃんけん

ジャマコ :じゃんけんやろーう
全員   :おおう。さいしょはグっ、ジャンケンポン!
姉    :♪むっかしのじゃんけん
全員   :「庄屋!鉄砲!狐!」
ともだち :♪ミャッンマージャンケン
全員   :「大将!拳銃!降参!」
ぶり   :♪韓国じゃんけん
全員   :Kai bai bo(カン、バイ、ホ)
助手   :♪ベットナムじゃんけん
全員   :モッ、ハイ、バー。。うわーい

・臭い霧吹き

ともだち :ねねねね
二人   :なになになになに
ともだち :これ臭い霧吹き。だから、かければもとの匂いが気にならなくなるよ。
ジャマコ :へぇ、いいなぁ。
ぶり   :やだよ!

・南京たますだれ

・鬼ごっこ

ぶり   :鬼ごっこしよーう
四人   :おおおう。
姉    :片付けろよおおうぉおおおおおお!!!!!
全員   :わあああ
姉    :床に絵かくなよおおおおおおお!!!!

 暗

■死んだ。

ザアアアアアアアアアアアアアアアア

ジャマコ :え?
ともだち :クローン織田さんが死んだ。
ジャマコ :え?

■手術をやめたい。

姉    :、、、、、、、

 (★パチン)

姉    :先生。
博士   :、、、、、、
姉    :わたし、手術をやめたいと思うんです。
博士   :どうして?
姉    :いま、とてもうまく行ってるから。
博士   :、、、、、
姉    :クローン織田さんに聞いたら、家族の反対がある限りは手術できないって。
博士   :彼女の場合、彼女に言語能力が無いと判断したから、家族の賛成が必要だったんだよ。
姉    :え?
博士   :だから、本人のサインがあれば話は別だ。
姉    :(ホッ)マコトは字が書けません。
博士   :果たして、そうかな。
姉    :え?
博士   :この写真。

 写真を見せる。

姉    :、、マコトの、床の絵
博士   :絵じゃない。グエッヘッヘッヘエッヘ!
姉    :どういう意味ですか?
博士   :私のクローンがね、研究熱心でね。
姉    :なんですか?
博士   :解読したんだよ。これは言語だよ。
姉    :、、、まさか。
博士   :君もうすうす気づいてたんじゃないか?
      彼女は言葉を理解しているよ。
姉    :、、、マコト

■ともだちのぴしゃり

 ホーホーホー

 ジャマコとぶり、青いビーチチェアに腰掛けている。

ともだち :ねーちゃんから伝言あるんだけど、聞く?
ジャマコ :うん。
ともだち :なんかアミコが怒られてる気分。
ジャマコ :ごめん
ともだち :このままニートでひきこもりでゲーマーで人に迷惑ばっかかけて生きてく大人になるのか
ジャマコ :、、、
ぶり   :つめたいな、あの鬼。
ともだち :そうかな。
ジャマコ :え?
ともだち :言ってること、正しいと思うよ。

 ともだち、退場。

ぶり   :なんだよあいつ。ジャマコ、たのしいことしよ。

 ピンポン玉をドライヤーで浮かせる術をしながら登場するぶりちゃん

ぶり   :どう。ほら?わかる?わかりにくい?すごいすごいすごいほら!ジャマコ見てる?見て。
      ジャマコ。見てて。ほら浮いてる。ほらほら。不思議不思議。ね、?おお~。
ジャマコ :見てなかった。
ぶり   :なんだよおお!!なんだよお!昨日からきもそぞろ。何?なんかあった?!
ジャマコ :うんと、、別に。

 ジャマコ、ビーチチェアで寝始める。

ぶり   :、、なんだよ。寝たの?、、

■こくみんラジオ

 緑色の非常口の灯り。
 ラジオの音、キュイーーンキュンザアアザザザアザアアアアブッブン

ともだち :あたしの話。
ジングル :じゃじゃんじゃじゃんこくみんらじお
ともだち :10年前。戦争が起きて
アナ   :テレビはぜいたくひんっね。
アシ   :ラジオ万歳
ともだち :そんな話はゴロゴロしてる。
アナ   :ニッポン人はがんばってますよお
ともだち :あたしももう、子供ってわけじゃないし。
アシ   :今日もメールが届いておりますよ。
ともだち :誰かのことば。
アシ   :いつミサイルで狙われるかわからないですってば~
ともだち :わたしは、せかいの真ん中にいる。
      わたしは、わたしのせかいを救わなくちゃ。
      一緒に、戦おうね。せかいと。

 ザアアアアアアアアアアアアアア

■姉、

 姉。ジャマコを見つける。

姉    :また。ラジオてキトーにつけて。
ぶり   :、、、
姉    :マコト。寝てんの?うわ、なつかしい
ぶり   :、、、、
姉    :起きてんだ。

 姉、全然鬼じゃない。

姉    :覚えてる?海行って。家族で。ビーチチェアー買って。
ぶり   :。。
姉    :ラジオ買って。

 姉、ぶり人形をとりに行く。
 音楽、g線上のアリア聞こえてくる。
 照明が変わる。

姉    :これ。
ぶり   :、、、
姉    :その日、マコト、自分でラーメン頼んだのに食べないで捨てたんだよ。
      ラジオからニュースが流れて。
      戦争が始まったって。
      その後。どーん、どおーーんって。遠くの方で音がして。
姉    :覚えてる?
ジャマコ :、、、、、、
ぶり   :やめろって!
ぶり   :覚えてない!寝てる!聞こえない!意味が通じない!

 ジャマコ、起き上がる。

姉    :、、、、
ジャマコ :、、、、
ぶり   :あれ?、、ジャマコ?
姉    :見えないお友達がいる?
ぶり   :いない!
姉    :いるんだね。

 ジャマコ、ゆっくりと、指をさす。

ジャマコ :、、、

 しばらくの間

姉    :明日のいまごろ、妹は手術台の上にいます。
      いままで、妹のこと、ありがとう。さようなら。

 姉、深々と礼をする。

ぶり   :、、、、、、
      外の世界の色々を知っても、何も出来ないから、
      だから、外からの色々を入ってこなくしたんだ。
      いろいろな事を知ると、何かしなくちゃいけない。何も出来ないのに。
ジャマコ :そーか。

 ともだち

ともだち :そんなことないよ。
ぶり   :でも、ジャマコは病気だから。
ともだち :そんなの関係ないよ。
ぶり   :関係あるよ。
ともだち :目あけなくちゃ。
ぶり   :わかってんのか?
ともだち :立たなくちゃ。
ぶり   :わかってんのかそれ?
ともだち :ジャマコはわかってるよ。
ジャマコ :ぶりちゃん、、、
ともだち :ジャマコ、ラジオをつけて。

 ジャマコ、ラジオをいれる。

ぶり   :世界は、悲しいことばかりなのに!

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。