
飛べないシンパパ☆ハクトウワシのマーフィー 子育て記
海外事情のまとめサイトカラパイアで紹介されていた『ハクトウワシの子育て物語』のその後の話が気になったので調べてみました。
2007年に保護されてから施設で過ごす独眼ハクトウワシのマーフィーが、パートナーがいないにも関わらず、石をタマゴに見立てて抱卵行為をはじめてしまったことから物語は始まります。
そのうち飽きるだろうと保護施設の職員達は見守っていましたがマーフィーは健気にタマゴを温め続けました。
雄同士でペアリングしたペンギンが石を抱卵する話はよく聞きますが、ワシにも同じ事が起るようです。しかもシングルの状態で。
そんな折、嵐で巣を破壊されて落ちてしまった野生のハクトウワシのヒナが施設に運び込まれました。
職員はもしかしてと閃いて、マーフィが温めていたタマゴの代わりにヒナを置いてみることに。
上手く育てることが出来れば、Win-Win。
しかし一抹の不安が、
保護施設で暮らしたマーフィーには子育て経験が無いのです。
職員達は細心の注意を払ってマーフィ達を見守りました。
まさか本当にタマゴが孵ると思っていなかったのか、マーフィーは突然現れた雛に戸惑っていたけれど、やがてお世話をするように。
という、ワシ好きにはたまらない優しい世界の物語。
これ、その後どうなったのかしら?

マーフィーはしっかり父親の役目を全うしました。
野生に戻すことが決まっている個体には固有名詞を付けないのが施設のルール。
彼が育てたヒナ(個体番号イーグル23ー126)は2023年7月8日に大空に羽ばたきました。
子育て初心者、しかもオスのマーフィー。
最初は上手くいきません。
まず餌を分け与える事が出来ませんでした。
ヒナが餌を必要とすることが理解できなかったようで、雛用に与えられた食事を全部食べてしまったのです。
別種のハリスホークは、子育て中に母鳥が不慮の事故で死んでしまうと、父鳥だけでは育てる事が出来ず餓死してしまうという例があります。
理由は簡単。
雛のためにせっせと餌を運ぶことは出来るけど、雛に食べさせるためには獲物を細かく刻む必要があることが、オスには判らないのです。
雛の回りに、獲物の死骸が堆く積まれ、食べようとしない雛に戸惑うパパホーク。
父鳥の切なさよ。
マーフィーももしかして出来ないのかと危惧されたけど、出会いの翌日、雛もご飯を食べる事を理解したマーフィー。
細かく刻まれた雛用の餌を、雛が食べるのを待ってから残り物を食べるように。
雛は食べ物かどうか判らないときは、マーフィーが食べる姿を見て、これは食べられるものだと学習してついばむようになりました。
マーフィーに求められたのは、給餌などの養育ではなく、イーグルとしての振る舞い方の模範となることだったのです。

まだまだ子供で、マーフィーに餌をねだります。
まだ自分の分が残っているのに、パパの分を奪う暴君ぶり。

イーグル23ー126への給餌は画像右上の白いパイプから与えられます。
人間が餌を与えてくれる存在だと認識しないように、職員達は極力雛の前に姿を見せないようしています。
雛は巣の中でジャンプをしたり、マーフィーを見習って羽繕いしながら巣立ちの準備をしていきます。
巣立ちの時
巣立ちというと、人間社会では子育てが終了し、成人した子供が親元を離れることを意味しますが、鳥界は違います。
『巣から離れる』ことです。
安全圏である巣を出る最初の一歩の事。
この時、雛はまだ自由に空を飛ぶことはできません。
巣から離れ、生きていくための飛行訓練に入ることを意味します。
イーグル23ー126は離れて見守っているマーフィーに向かってジャンプして、巣から飛び出しました。
これは雛が成長した喜ばしい瞬間であり、マーフィーの子育ての限界を表した瞬間でもありました。

雛は地面をトントンと弾みながら歩いてマーフィーに近寄ったのです。
イーグル23ー126はマーフィーの行動をじっと観察して大人になるための準備をしてきました。
独眼で飛べないマーフィから、地面を跳ねて歩いて移動することを学んでしまったのです。

このままではイーグル23ー126は飛行できないハクトウワシになってしまいます。

野生に還るための、飛行訓練が出来る大型ケージにイーグル23ー126は引っ越すことになりました。
施設には、怪我で運び込まれたリハビリ中のハクトウワシが、大型ケージにて野生に戻る準備として飛行訓練を始めています。
仲間のハクトウワシがケージ内を飛び回る姿を観察し、翼の使い方を覚えるため、イーグル23ー126は同じケージに入ることになりました。
マーフィーとイーグル23ー126
自然界に比べたら早い、親離れの時がきました。
これが親子の永遠の別れです。
飛行訓練学校に入校
イーグル126、208、305の三羽で訓練を行います。
126にとってはマーフィー以外の初めて見る大人のワシです。


大人を自分の同種の仲間と認識して、飛び方を学ぶ若鳥たち。
3週間の飛行訓練を終え、ついに野生に還る時が


元気でね!
父の日に公開された マーフィーパパとイーグル23ー126の写真

126が巣立った後のマーフィーはというと、通常運転に戻り、大好きな水浴びを楽しんでいるようです。

抱卵行動はハクトウワシの繁殖期の影響だったようですね。
次の繁殖期にまた雛が運び込まれて来たときは、イクメン実績が評価されてパパワシ姿を見せてくれるかも?