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調達屋 A
紗椰とディ、Aの部屋で
Aという人物がいる。
都心の片隅、Aのマンションは、外見こそ普通の建物だが、問題の一室には異質な空気が漂っている。
彼の住居には、二つの部屋がある。
ひとつは彼の住居、もうひとつには、変わった品々が整然と並ぶ部屋……依頼人との面会もここで行われている……
今日も、そんな住居に訪問者があった。
「お邪魔しまーす!」
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元気な声が部屋中に響く。
紗椰だ。
近所に住む女子高生で、特に依頼もないのに、ここへ来るのが日課になりつつある。
或る縁で知り合い、ある意味懐いてしまったJKである。
「また来たのかよ。宿題終わったのか?」
仕事上はただの“A”と名乗る青年が、居間でコーヒーを飲みながら彼女を見上げた。
ちなみに、住民票には、「エー」と登録されているのを、彼女は知っている。
この前そのことについて聞いてみたら、なにか問題あるの、と逆に聞き返された。
「それより、今日は何か面白い物入ってきた?」
紗椰は、彼が住居とは別に設けた部屋の扉を見やり、目を輝かせてくる。
曰く付き、あるいは危ない品に目がない彼女は、この部屋が大好きなのである。
「お前のためにある部屋じゃないんだがな……まあいい。新参はあるが……触るなよ」
Aは呆れたように肩をすくめながら、電子ロックを手早く押した後に、鍵を取り出すや扉を開けていく。
中には古びた武具、読めない書物、雰囲気だけある器物などが、棚や壁にぎっしりと並んでいる。
その中にあって、本日の新参は、異界の剣士と名乗っている、ディが持ち込んだ一振りの黒き剣だった。
それは、机の上に、どういった力が働いているのか、浮き上がっている。
「その剣、触るなよ。呪い付きだからな」
そう警告する声も耳に入らないのか、紗椰は剣に近づこうとする。
だが、その時、
「A、お祓いとやらは終了したのだろうか?」
力強い声と共に、気配なく部屋に現れたのは、女剣士ディだった。
緋色の外套を椅子に掛け、堂々とした立ち姿の彼女は、この部屋のもう一人の常連だ。
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「おお、ディさん!今日も強そうだねー!」
紗椰が明るく挨拶すると、ディは軽く頷いてから黒剣に視線を移した。
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「これは、我が家に伝わるものだ。怨念が宿っているといういわく付きだからな……触るのは、やめておくのが賢明だろうよ」
「だから触るなって言ったろ」
Aが苦笑しながら紗椰の手を引いて、剣から遠ざけた。
沙耶は未練がましく、指をくわえている。
「で、ディ、今日はどうした?また、依頼か?」
「いや、少し様子を見にがてらだ……ここで一息つくのが、楽しみなのは、知っているだろう、A」
ディは薄く微笑み、椅子に腰を下ろした。
「紗椰、お茶でも淹れてくれないか?」
Aがそう言うと、紗椰は楽しげにキッチンへ向かう。
ディと話すのも、彼女のもう一つの楽しみなのである。
異界と現実が交差するこの部屋には、今日も穏やかな空気が流れていた……
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