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冒険者 #23

逃亡、そして潜伏

 「レオル、ミレニム、聞かせてもらえないか?今回のことを……君たちが公にできず隠していることを……」
 あの一夜が明けて、カリウス、エイラン、ミィナが、レオル達のギルドハウスに訪れていた。
 
 あの後レオルは、シンエンがルミエルとの闘いで残した触手や竜頭の一部をカリウスに引き渡していた。カリウスとレオルのパーティーが、倉庫街を襲った怪物を撃退した体にするためである。
 
 まずは、依頼を無事解決したことにしないと、カリウス達は倉庫街から、引き上げることはできない。依頼に縛られた状態になってしまう。
 
 だが、事件の源であるシンエンは、既に妹であるシロガネを助け出し、海に戻るばかりである。
 
 おまけにルミエルは眠ったままの状態で、どこにも持っていけず、ミレニムのギルドハウスで預かっている。
 ルミエルのケープドレスが元の白色になっていることから、再びマナなどのエネルギーを外から取り入れる機構は、回復しているようだが、意識がまだ戻っておらず、動かせる状況にはない。
 

ルミエル

 さらには、レオルの懸念するところのアサシンに、顔を憶えられており、ノワールの属する組織がどうでてくるか、予断を許さない事態ではある。
 
 レオル達にしてみれば、事情を望まずに知ってしまったカリウス達に、少しでも協力を願いたい状況ではあった。
 
 シンエンは、冒険者に撃退されたことにされるのを相当に渋っていたものの、レオルやミレニムに頼み込まれては、嫌とは言えず、それを承諾して、海に帰って行った……
 「今回のこと、深く感謝を……今後、私の力が必要な時がありましたら、言ってください……一度だけ、力をお貸しします」
 ……そう言い残して。

 そして、依頼終了をギルドに報告して、今の状況となっている。

 「……何処から、何から話したものか、だけど……」
 ミレニムが相当に困った顔をしている。略すと、逆に訳が分からないだろうし、まともに話すと長すぎる。それに全部を話すには、カリウス達のことを知らなさすぎた。
 「お茶をどうぞ」
 ハクロと、その後ろでグレイシャがカップを運んできた。
 カリウスが、礼を言って受け取る。
    ハクロが作ってくれるこの間は、ひと心地つくことができる。それを良いタイミングで運んでくる気遣いには、いつも助けられている。
 「……では、こちらから質問する形でどうだろうか?ミレニムやレオルも、話したくないことは、拒否してくれて構わない」
 「それは、助かる……気を使わせて、すまない」
 レオルが、カリウスを見遣る。彼は、レオルが魔族と聞いていたはずだか、忌避する様子がない。
 なかなかに、胆力のある男のようだ。噂以上かもしれない。
 「では、まず君が魔族であることは、本当のことなのか?何故、冒険者をしている?」
 「……本当だ……冒険者になったのは、戦闘経験があったことと、魔族でも角などを隠せば、何とか紛れ込めるかと、思ったんだ……魔族でも、生きていくためには、金が必要だからな」
 「なるほど……なかなかに、世知辛い」
 ミィナが、おそるおそる手を挙げる。
 別にそんな取り決めはしていないが、ミレニムが当てる。
 「ミレニム、あんたいつから知ってたの?ジュラもだけど、……その、怖くなかったの?」
 「僕は、全然……レオルの気、すごく大きくて、穏やかだった……一緒に冒険者ギルドに入った時から、知ってたよ」
 ジュラが自分のことのように、嬉しそうに話す。
 「私も、最初から……鑑定で分かってた。初めは騒ぎになるのが嫌で、黙ってた……でも、レオル、何というか、人間よりずっとまともだった……決して、見捨てない優しさと危うさを持ってた。放っておけなかった……」
 自分の手もとを見て、その時のことにしばし思いをやる。いつからレオルの傍で、一緒に歩いていきたいと思い始めたのか、もう分からなかった。
 でも、それでよい気がしていた。
 「……あんた、最初のパーティーが良くなかったから……その後も、あらぬ噂をたてられて、結構苦労したもんね……」
 ミィナが頬をかきながら。嬉しそうにしている。
 

エイラン

 「俺も、遠慮なく聞くけど……まず、あのザインとか言うのは何だったんだ?魔族だとしても、あそこまで人の形から離れたヤツもいるのか?……あと、エレクチュアというのも半魔族だって話だけど、なんで天使様に手を出すのを、黙ってみてたんだ?……そこを説明してくれないと、レオル、あんたを信用していいか、分からないんだよ」
 エイランが言ったことは、まさにカリウスやミレニム達が、聞きたいことだった。
 ミレニム達は、レオルが黙って見ていたことには、意味があったと信じている。だか、カリウス達にしてみれば、天使人形であるルミエルがエレクチュアに酷い扱いをされるのを、黙認したレオルを最後まで信じられないというのは、当然だ。
 レオルが、ミレニムに視線をやると、ミレニムはわずかに頷く。これは、やり過ごしてはならない話だ。
 「……エレクチュアは、奴隷としてザインに使われていた。だが、俺達のことやルミエルのことで嘘の報告をしてくれた……庇ってくれたんだ……だから、彼女のことを信用した……もし下手な動きをすれば、犠牲が出ていた。そういった状況だったから、黙認したんだ」
 「だけど、天使様は、あんな状態だぞ……わかるけど、スッキリしないな。下手すれば、見殺しになっていたかも……」
 エイランが、少しだけ疑念を残した目でレオルを見遣る。
 「……パパは、そんなことしない……絶対に、助けるよ……酷いこと、言わないで」
 

グレイシャ

 グレイシャが、珍しく怒っていた。
 隅の方で、大人しく聞いていたのだが、我慢しきれなくなったらしい。
 「グレイシャ、ありがとう……いいんだ。エイランの言うことは、正しい。正直に言えば、エレクチュアを信じていたとは言え、ルミエルと俺達の安全を天秤にかけたのは、確かだ」  
 「パパ……グレイシャ、余計なこと言った?」
 「いや、グレイシャがいると心強いよ……ここに、いてくれ」
 いつものように撫でてやると、嬉しそうに笑ってレオルの横にすとんと座る。
 「……ついでに、聞いていいか?」
 「エイラン、グレイシャのことは、聞かないで……それだけ」
 ミレニムが膝に手を置いて、身を乗り出す。
 「お、おう、わかった……悪かったな、レオルのこと別に非難したわけじゃない。念の為、確認しただけだ……その、ゴメンな」
 「いいよー、パパがいいって言うから、いいよー」
 「グレイシャさん、話が進まなくなるので……レオルさん、続きがあるんですよね?」
 エルフィが、流し場の仕事を終えて、レオルの横に座る。最近、普通にレオルの近くにいることが多い。いつも、にこにこと静かに座っている。

エルフィ

 「エルフィ、ありがとう……エレクチュアは、あの瞬間、念話で情報を渡してくれた。ルミエルに約束通り力は戻したこと、ザインから守るために敢えて気を失うようにしたこと、あとザインやエレクチュアは、ここのエルサークとは、別の世界から来たこと……そして、ロロス王国を数日もしないうちに滅ぼすために来たということ……」
 「レオル、それは……!」
 カリウスが椅子から立ち上がるが、レオルが片手を挙げて、その先を封じる。
 「悪いが、最後まできいてくれ……あの、ザイン達は、闇帝……魔族でいうところの創造主だが、それに『収穫』された世界から、こちらに渡ってきた、恐るべき相手ということだ……ギラ・ファンという世界で人間を滅ぼすか支配下に置いた、歴戦の魔族ということになる」
 「……少し、時間をくれないか。整理をしたい」
 カリウスが目を閉じて、椅子に身を預ける。

 その場にいる他の者も、どう話したものかと間が空いた時、階段の上の方で微かに音が転がる。
 「……レオル、レオル……ああ、お前があの、聖女ナルディア公女と共に、魔王ザナグルを倒したという、魂喰らいのレオルですか……光の子らが、少し前に話していた魔族……どこかで、聞いた名前だと思ったのです……」
 

ルミエル

 「……あと、グレイシャにエルフィ、なるほど、こんなところにソール森林王国の事件の関係者まで、いる……灯台もと暗しとしても……これは、私の職務怠慢ですね……」
 ルミエルが、階段の手すりに気怠げに体重を預けて、こちらを見下ろしていた。

 「ルミエル、起きたのか?調子は、どうなんだ?」
 「なんか、いつからお前のとこの家族になったんだ的な声掛けですね……あと、今、私、悪口を言ったんですよ?なんで怒んないんですか?」
 「……さあな?それこそ、お前にそのつもりがないからだろ?」
 レオルにしては意地の悪い目で、彼女を見遣る。 
 ルミエルが、うっ、と何か飲み込んだような顔をして目を逸らした。
 「ま、まあ……身体の方は、雷王がいないことを除けば、前よりいいぐらいですよ……お前らにコテンパンにされたり、転がされたりした、ペッチャンコのプライドを別にすれば、ですが……」
 かなりご機嫌は斜めらしい。
 いろいろと消化しきれないものがあるのだから、当然だろうが。
 「天使ルミエル様……お初にお目にかかります。私『赤き砂』の……」 
 カリウスが膝をついて、ルミエルに礼をとる。
 レオル達がイレギュラーなので、ルミエルに対する態度があんまりなところがあるが、貴族との付き合いのあるカリウスにしてみれば、これが普通であり、この世界一般の対応であろう。
 「Aランクのカリウスですね。聞き及んでおります。この前のダンジョン攻略はお見事でした。また、今回の件で、願わくば貴方の力をお借りしたいと思っております」
 ルミエルが、いきなりすっと背筋を伸ばし、穏やかな笑みを浮かべてカリウスに綺麗な対応をする。
 「……なんか、さっきまで垂れてたのが、干した海藻みたいにピンとしても、微妙というか……ありがたみが薄いかなぁ」
 ジュラにしみじみとそんなことを言われて、眉のあたりがピクピクしていたが……
 「ジュラさん、本当のことを言うと傷つく人だっているんですから、やめてあげてください……天使さん、でしたか?……これ、粗茶ですが、どうぞ」
 ハクロがいつの間にか階段を登り、ルミエルが先ほどまで垂れていた手すりに、器用にお茶と菓子を置く。
 「……この家の者は、全員、天使に対する敬いとか気遣いとか、何処に置いてきたんですか?あと、姓が天使みたいに言わないでください……
……む、このクッキー、美味しいですね……もう少し、ないですか?」
 「……レオルの兄さんの悪口を、二度と言わないのでしたら、おかわりを、お出ししますよ?」
 ハクロの目が笑っていなかった。さっき天使さん、という言い方もわざとそう言ったのだろう。
 「……わ、わかったのです……もう、言わないから、おかわり、お願いします」
 ちょっとだけ涙目で、ルミエルがハクロに皿を差し出してくる。ハクロがよくできました、といわんばかりに、にっこり皿を受けとって台所に引き上げていった。

 「……レオル、もう、そう呼ばせてもらうですが、確かに『星落とし』と言ったのですか?……相当まずいですね」
 ルミエルが、一階の削り出しのテーブルのところに降りてきて、先ほどまでエルフィが座っていた椅子に座る。
 エルフィは、奥の方でハクロと何か喋りながら家事をしているようだ。
 「天使ルミエル様……私達、『赤き砂』のメンバーにも、お教え願いたいのですが、闇帝、収穫、星落とし、この単語の意味を教えて頂けませんか……今後の活動に支障が出る懸念があるので……」
 「Bランク・スカウト、ミィナですか……その単語を拾うセンスは、流石ですが……こちらも全て教える訳には、いきません……混乱を呼び込むことになりますから……」
 ミィナに対して、居住まいを正して喋るルミエルは、確かに天使の名に相応しい威厳を保っている。
 「ルミエル、なら俺から情報提供するのは構わないだろう……カリウス達の協力は、この先必要になる。伏せていて、良いことはないだろう」
 「ルミエル、私からも頼むわ……ミィナ達は、絶対頼りになるから……あの魔族が襲撃をかけてくるのなら、私達だけは対処しきれない……もしかしたら、王国軍でも、手こずるんでしょう?」
 レオルとミレニムから、同時に押し込まれるように説得されると、ルミエルは何とも言えない顔になる。
 シンエン達の援護があったにせよ、彼等に一度敗北していることも加わり、いつもの天使の威厳も彼等の前では、紙切れ以下になっている。
 「あー、もう、お前たちはー!……カリウス達にいいカッコしても、すぐにお前達に崩されては、こっちの立場がないですよー!……もう、いいです。カリウス、ルミエル呼びでいいです!知ってること、教えてやるですよ!」
 ついに、ルミエルが切れて、やけくそ気味に叫び出した。
 カリウスも苦笑した後、少しだけ頭をさげる。
 「あなたに感謝を、ルミエル」

 ルミエル曰く、
 「闇帝」は、魔族達の創造主は、魔族達がその世界を支配下に置き、繁栄を極めた時に、その世界を吸収する存在であること。
 その吸収こそが、「収穫」と呼ばれる現象であり、魔族をも含めた世界を、自分の存在をより強大するために行っていること。
 「星落とし」は、収穫された世界から逃れた魔族が、他の世界に侵攻し、支配下におくことをいい、
比較的その世界の魔族の勢力が衰退しているときに、複数の魔族が競い合うように割り込みをかけてくることを指すということ。

 「……魔王ザナグルが消滅し、次代の魔王が勢力を立て直す隙を狙われた、ということです……レオル、お前がザナグルを倒したことが、今回の事態を呼び込んだと言えるです……ザインだけでなく、おそらく他の魔族も既にこのエルサークに入り込んでいるはず……お前達が出会った、異界湿原の女もそうかもしれないです」
 ルミエルは、この世界の情報のほとんどを把握している。それは、先ほど言っていた「光の子ら」と関係している。
 「ストラス・システムか……確かレーネが、前にそんなことを言っていたな。この世界の記録を、世界中に散った何十億もの、目に見えない極小のエネルギー発生器が、情報を集め、天使や勇者に届けていると、そして術というのは、そのストラス粒子がその術の詠唱を読み取ってエネルギーを変換、行使しているだったか……それを『光の子ら』と天使は呼ぶと」
 天使と魔族、本来は話し合いすら持たない二つの存在がこうして、顔を突き合わせて人間が本来知り得ないことを、話している。
 不思議な光景といえる。
 「ルミエル、率直に言ってザインと戦闘になった場合、勝てる見込みはあるのですか?」
 カリウスが、最初に重要な問題点を挙げてくる。
 「……この際、はっきりと言うですが、勝率は1割か2割です……雷王が向こう持ってかれていますし、それでなくても、一度は別の世界を手中に収めた魔族、人間の軍で立ち向かえるか、です……それに、レオル、お前協力してくれるのですか?」
 ルミエルが、珍しく真正面に聞いてくる。
 「ザナグルのことは、俺の責任だ……だから……」
 「違います、レオルさんの責任ではありません。ザナグルは、誰かが止めねば世界は終わっていました……それを、ルミエルさんや神様ではなく、レオルさんやナルディアさん達が代わりにやってくれたんです……だから、そういうふうに、レオルさんを利用することは、やめてください」

エルフィ

 エルフィがいつの間にか、レオルの横に立っていた。静かに、それでいて真剣な表情でルミエルを、正面から見据えている。
 「エルフィ……」
 「レオルさん、貴方を想ってくれたアナスタシアさんや、ここにいる、ミレニムさんやジュラさん、ハクロさんやグレイシャさんのことを考えてください……その上で、戦うというのでしたら、私が言うことはなにもありません……私は最後まで傍にいますよ……」
 このエルフィの想いを、何と呼べばよいのか。

 「ありがとう、エルフィ……」
 レオルの手が、初めて自分からエルフィの手に重なっていった……

 すっと、玄関の扉の下から、折りたたまれた紙が差し込まれた。
 ハクロが駆け寄って紙の面をみると、レオル宛になっている。
 「兄さん……妙な手紙が……」
 「貸してくれ……」
 ミィナが、窓から既に外を見ていた。
 

 「アイツ……どっかで」
 レオルが手紙をざっと見る。
 「カリウス、ヴァルトラム伯爵というのは、今回の依頼人か?」
 「ああ……何かあったのか?」
 「ギルドの方に私兵を寄越したらしい……天使誘拐及び傷害の容疑とある……こっちにも、兵が来ている」
 ミレニムに手紙を渡す。
 「……レオル、どうするの?……これ、その伯爵とアサシンギルドが繫がっているって……ルミエルを引き渡して済む話ではない、と思うけど……この、例の場所って、何?」
 「それは、後で話す……皆、荷物を最低限纏めてくれ……一旦ここを離れて、身を隠す。ここで捕まっても、冤罪で投獄、そこで暗殺ということだろう……カリウス、ルミエルを頼めるか?」
 カリウスも状況だけ見て理解したらしく、了解してくれる。
 「何処に行くかは聞かないよ……無事を祈る」
 「頼んだ……エルフィ、台所の右端の床板が外れる。そこから下へ3メートル、南へ2キロ、例の指輪で掘れるか?」
 エルフィがいつもの感じで、慌てて台所に走り込む。
 「ホントにいきなりですね……でも、やってみます!」
  

エルフィ

 「レオル、いろいろと聞きたいけど、後で聞くわ……みんな、急いで!」
 
 それから用意が終わった2分も経たないうちに、扉が乱暴に叩かれる。
 「魔族レオル及び魔女ミレニム、天使ルミエル様の誘拐容疑で、捕縛する!ここを開けろ!」
 
 「レオル、急げよ、20人はいるぞ、そうは持たない!」
 エイランが、扉に取りつく。
 窓が割られ、扉も剣の柄で穴を開けられる。
 『レオル、先に行け……ここは、吾が引き受けるところだ』
 「ゾラ、殺すなよ!」
 

ゾラ
 

 「人間ども、吾の住処を荒らした報い……安くはないぞ!」
 ゾラが、扉の下から影となって外に現界する。
 武装した兵士が、二十一、二はいるか。
レオルが魔族ということから、相当出張ってきたらしい。
 「貴様も、魔族か?!」
 槍や剣が、彼女に向けられる。
 「ああ、お前らが生まれるずっと前から生きてきた魔族さ……」
 その瞳が、紅に染まり輝く。
 「……黒い恐怖の海に、溺れるがいい」
 相手の魂に干渉するゾラの、ソウルスパイダーの能力が、兵士達の心を恐怖で縛り付ける。
 次々と、白目を剥き倒れ込む兵士達。
 白昼、異様な光景がそこに生まれていた。

 「なんで、ゾラがここにいるんだい?」
 ジュラが穴の中に身体を半ば入れながら、レオルに聞く。
 「え、ゾラさん……夜中によく作業してましたよ、この台所で。水飲みに来たら、びっくりして黙っててくれって……」
 エルフィがとんでもないことを、さらっと言いだした。
 「……レオル、後で説明と説教、セットね」
 ミレニムがジトッとした目で、レオルを睨んでくる。
 「お手柔らかに、頼む」


 穴を抜けた先は、いつかレオルが来た路地裏だった。
 そこには、一人の少女が壁に背を預けて待っていた。

リン

 「待ってたよ、レオル……これでようやく、恩が返せるね」
 そう言って、少女はにっこり笑い、レオル達に手を差し出した……


 


 
 
 


 
 

 


 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

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