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格闘魔法少女『カイラ&クテンのテーマ』セルフライナーノーツ



成人漫画家きいさんの最新刊『不完全マーブル』発売記念個展、不完全マーブル展のハズレなし特典として破滅ロマンスVo.梅星えあが楽曲を制作させていただきました。

単行本に収録されている『六月の雨の夜に』に登場する5歳くらいのキャラ、カンナちゃんが好きなアニメ『格闘魔法少女カイラ&クテン』から実際に主題歌とされる『カイラ&クテンのテーマ』。

きいさん描き下ろしジャケット💗

23日リリース予定でしたが嬉しいことに本当にアニメのタイアップ曲だと配信会社に認識されてしまい審査に時間がかかりました...。


私はこういう“作品の中のものがリアルに来た”ことにわくわくします。
ロケ地巡りや、好きな映画に出てくる物を雑貨屋さんで見つけたり、好きな芸人さんがコントで演じるアイドルキャラのCDが実際に物販であったり。
ファンタジーとリアルの狭間。
スクリーンや舞台で魅せられたその世界観に自分が入り込んだような不思議な感覚になれます。
今回はそれを仕掛ける側だな〜て気持ちで取り組ませていただきました。


きいさんからのご注文は2点

①サビは“いくぞ 興奮MAXだ カイラキック!クテンビーム!おしおきよ”部分は必須

②子供向けにシンプルな構成で


すでに原稿は出来上がっており、カンナちゃんがもう歌っているので伸ばすところなどなるべく忠実な歌い回しになるようなメロにしました。

『不完全マーブル』収録-六月の雨の夜に-より一コマ


ありがたいことに今まで他の方から楽曲制作のご依頼をいただいたこともありましたが“このワードは絶対いれてほしい”というのが私が扱えない言葉だったことが理由で申し訳ないけれどお断りしたことがありました。
生きているなら可能な限り言葉の重みを感じていたい。私が望まない言葉を軸につくりだした音楽は愛せる自信がなかった。
軽率にセックスしていざ妊娠した場合、私はその命を...。と考えるくらい自分の産みだすものには慎重になります。
なので今回初めて歌詞の縛りを守りつくりました。


“いくぞ 興奮MAXだ カイラキック!クテンビーム!おしおきよ”

すでに世界観が固定されている濃厚な一節すぎて取り扱い注意警報が少し鳴りました😇🚨
が、以前よりもかなり挑戦をしていくモードになっていて絶対良いものできるという自信があったので即レスで引き受けさせていただきました。


その日からプリキュアを全曲聴きました。
シリーズだけで19作品。楽曲の数はわかりません。とりあえずサブスクにあるやつは全曲聴いて、歌詞を読みました。
何故プリキュアにしたかというと、変身ヒロイン系アニメについて調べていくうちにプリキュアは【今までの「恋愛」「ファンタジー」のテーマを覆す「戦闘」をメインにつくられているから。】
『六月の雨の夜に』の一コマにもありますが、カンナちゃんは思いっきりキックしてます。(どこを狙ってかは是非本編で...。年齢一桁の代の人たちはまじで加減を知らないので怖いです。)

プリキュアのプロデューサー鷲尾さんについてWikipediaから一部抜粋させていただきますが、
【鷲尾は「幼児期の男女に差はほとんどなく、公園や幼稚園では男女関係なく飛び跳ねて遊びたいはず」という考えからそれは生まれ、企画書に「女の子だって暴れたい」と書いたという】

「女の子だって暴れたい」
この言葉が好きだなと思った。
『格闘魔法少女カイラ&クテン』のイメージに一番近い。そして単純に音楽的に昔よりも今の方が音数や音色が多いので参考にプリキュアを選びました。


歌詞は“プリキュア!プリキュア!”ととにかく繰り返すところが目立つけど、意外にもターゲット層の年齢一桁の代あたりには難しいのでは?と思える熟語や刺しにきてる歌詞が多かった。
以下抜粋。

誰かが誰かの代わりは マジなれないから
あなたもわたしも特別 唯一無二なの
個性は際立つ光になるよ
-DANZEN!ふたりはプリキュア〜唯一無二の光たち〜-


愛するために育った パワフル・ビューティー
強くなれ かわいいだけじゃもうだめなの
-プリキュア5、スマイルgo!go!-
(↑これは「え、私の歌かよ!」とおもうほど好き)

同時期に『魔女見習いを探して』という映画を観た。

とても素晴らしい映画


あらすじを説明すると、アニメ『おジャ魔女どれみ』を観て育った女の子たちが大人になり、作中の“MAHO堂”のモデルとされる場所に訪れる。
運命的にも居合わせた3人の女の子たちがこれをきっかけにおジャ魔女どれみ聖地巡りを始め、それぞれが抱える問題への答えを導き出していく。

過去最速、OPでボロ泣きした。
アレンジされたおジャ魔女カーニバル。
蘇る記憶。「家に空飛べるほうきあるよ」と誘われて友達の家に行ったらなかった。
その時は嘘をつかれたことがショックだった。
空飛ぶほうきないじゃん!!!!て。

空って飛べないんだ、じゃなかった。
当然のように魔法の箒があれば空を飛べると信じていた。
いつから“箒に乗っても空は飛べない”と知ったんだろう。“魔法はつかえない”って知ったんだろう。



まずはカンナちゃんのために作ろうと思いました。
きっと大人になるにつれて聴かなくなっていく。
口ずさまなくなる。
でも、ふとしたきっかけでまたその耳に届くことがあった時、懐かしさと共に込み上げてくるワクワク感や苦しくもなるあの感情、そして幼い頃とは違う感覚だけど、再び自分の可能性を信じれる音楽にしようと。


実際にお届けするのは制作段階ですでに18歳以上の方々なので、私が常に音楽に込めている“君の処方魔法薬”という願いの元、どこか一節でも誰かのお守りになってもらえるように言葉を紡ぎました。

あとは、きいさんに「カイラちゃんクテンちゃんにとって何が敵か」「担当カラーは?」など設定をヒアリングしてアニメの世界観を頭に描きながら、音楽に抽出。
そして、きいさんにとって前作より格段にアップデートされている“最新刊『不完全マーブル』”というのを意識したワードチョイスをしました。


アレンジは元・破滅ロマンスGt.ナガタトモヤ。

これはかなり前のウチら


別の形でまた一緒に音楽をつくる話をしていたのでタイミングの良いご依頼でした。
私の音楽の煌めき部分を引き出すには最適なアレンジャー。
テーマはやはりアニソンをイメージしてアレンジを開始。
私がとりあえずプリキュア全曲聴く、といったら
「俺もきいとくわ、プリキュア」と言って主題歌聴いてくれてた。渋可愛い。


なのに、イントロは歪んだベース。
プリキュアで歪みベースから入るやつあったか?てなって聞いてみたらナガタにとってのアニソンといえばNARUTOのOP、アジカンの『遥か彼方』。ナガタ少年は「世の中にこんな激しい曲あるんだ」て衝撃を受けたらしい。
可愛いエピソードなのでイントロの歪みベースはそのままにして大粒ラメを加えてもらった。

ナガタの粋な計らいで破滅ロマンス要素を節々に入っている。
破滅ロマンスファンは聴き慣れた感覚があるかもしれないです!

最初のデモをもらって歌ってみると、メロに違和感。
「自分で作ったのに...。上手くメロが乗らないな..。コード伝え間違えた..?」と思ったら、
1番からサビを転調されてた。
カンナちゃんが歌えるように単純に作ったのに😇


そして、落ちサビが大変良くできました。
2人で満場一致。落ちサビめっちゃいい。

勢いが失速して、不安がこぼれだす入りは浮遊感とややラメ。
ナガタがマーチっぽいことやりたかったみたいで、静かにも明るいドラムがまだ折れてない心を表現するように鳴っていてGOODです。
「でも 覚悟を砂糖で甘く溶かさないよ」
から、ギターの刻みと共に完全に戦闘モードを取り戻してアウトロはスパッと終わる。
ちなみに、“格闘魔法”を“覚悟を砂糖”で韻踏んでるところが語彙気持ち良いポイントです。


漫画の中のアニメの主題歌『格闘魔法少女カイラ&クテンのテーマ』。
聴き方、楽しみ方、受け取り方は人それぞれ。
私は愛されるべき音楽をつくれたなと思っています。

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