売れてないのに音楽を続ける理由
音楽を始めたのは遅かった。
早いも遅いもあると思いたくないが、
この国はある。
二時間に一本の人間を運ぶ気のない電車。
しかも鴨鹿を轢いて三時間遅延する。
どんな確率だよ。
部屋の窓をあけると一面田んぼ。
蝉よりカエルの鳴き声が聞こえて、
石を投げると黙る。
そんな超・田舎育ち。
県内に三つほどしかないライブハウスへはどこも遠かった。
学校を早退して好きなバンドを観に行った。
学校では一人だけ音楽の趣味が合う子がいて、
時々そのお母さんが片道一時間かけて
車で送っていってくれることもあった。
午後八時が終電なので帰りは大体車高の低いエンジン音うるさい車持ったヤンキーの友達に迎えにきてもらってた。
必死に通っていたライブハウスで、
よく見かける男の子がいた。
ツイッターで絡んで何となく段々仲良くなった。
「今度ライブするからよかったら来て」
高校生でバンドやってるのはとっても羨ましく思えた。
だって私の学校は文化部三つ、四つくらいしかない。
軽音楽部なんてものは存在するわけがない。
部活強制入部なので運動部に入ったけど、
集団行動が無理で何回も怒られた。
退部。
適当に美術部に籍をおいたけど誰とも仲良くなれなかった。
他の人たちは優しくて良い人たちだと思うけど私は別に絵に興味があるわけではなかったし、勝手にここにいても邪魔だろうなって思って。
部室内の後方。
パーテーションで区切られた隙間を抜けるとベランダに出る。
夏はアイス食べながらテニス部の練習を見ていた。
時々、誰かが手を振ってくれてそれに振り返す。
ABC続かない そんなんじゃダメじゃない
ココロの奥は違うんじゃない
アタシの青春こんなもんじゃない
オレンジレンジのイケナイ太陽って感じでしたわ。
そんな私にライブハウスで出会った男の子が新しい世界をくれた。
ライブはなんかよくわかんなかったけど、
ただみんなが輝いて見えて羨ましかった。
男の子は他の高校生バンドマンたちに私のことを紹介してくれた。
そしたらみんなSNSで繋がってくれて、遊んでくれるようになった。
私は学校の外に居場所を見つけた。
ありがとう。男の子。
それがのちの破滅ロマンスのBa.RYです。
高校を卒業できてから古着屋とガールズバーとラーメン屋のバイトをかけもちしていた。
合間にライブハウスに遊びにいった。
その時くらいから“地元バンド”というものに関わるようになる。
最初は仲良くなれてすごく嬉しかった。
仲間に入れてもらえた気がして。
ライブハウスにいくと「えあちゃん」て誰かに声かけてもらえるのが嬉しかった。
小中高どの教室ともちがう。
人がたくさんいるのにイヤホンで耳をふさぐことをしなかった。
でも何か違った。
地元バンドのお客さんは9.5割地元バンドだけ。
今は知らないけど、その時は。
ライブが終わると「はい、こっちはバンドマンであなたはお客さん」といった感じで打ち上げのムードになる。
身内ノリにしか感じられなくなって、
疎外感を感じ始めた自分がいた。
嫉妬もあったかも。
同じライブハウス。
ジャンルレスの同じようなブッキング。
私の方が面白いこと出来そうな気がする。
古着屋もラーメン屋もクビになった頃にあるバンドマンに「歌詞を書いてほしい」と言われた。
私の感性を好み、引き出すことに興味を持ってくれたのだ。
私の書いた歌詞が音楽になった多幸感。
私も自分の音楽を作ってみたい。
そのバンドマンからギターを教えてもらうようになった。
最初は好きなバンドのコピーが楽しいよってアドバイスの元、クリープハイプの『憂、燦々』をアコギで練習した。
Bm7かFかとにかく何か押さえられなくて途中で一度諦めてしまう。
代わりに、押さえられるようになった四個のコードでオリジナル曲を作った。
よし、ライブしよ。
誰もやったことのない場所で。
そんで宣伝のために映像つきのトレーラーつくろ。
地元バンド以外のお客さんに来てもらうために。
色々考えてる時にタイミングよく可愛い子にフォローされた。
メイドカフェの女の子だった。
圧倒的アイドル、いるちゃん。
ライブハウスから近いメイドカフェ。
めちゃくちゃ可愛い。
この子に出てもらおう、と思ってメイドカフェに通った。
映像に出るのはあまり...。ってことだったけど、
しつこく熱を伝えて承諾を得た。
たいした仲じゃないのに私のメンタル厳つい。
撮影は高校の時に仲良かった先輩がカメラを始めたのでその人に頼んだ。
これがのちの破滅ロマンスのアー写やフライヤーなどよく担当してくれる夕さんである。
夕さんの写真の中の私はどの加工アプリにも勝るくらい最高にクールでキュート。
誰もやったことがない場所でライブをしたかった。
ステージがあったしメイドカフェでやることにした。
ルールとしてメイドさんしかステージをつかえなかったため、めちゃくちゃ嫌だったけどメイドになった。
女の子たちは大好きだったし、お客さんもおもしろいし優しい。
でも本当に「おいしくなーれ!萌え萌えきゅん」やるのしんどすぎた。
不恰好な音源が流れる、
いるちゃん主演のトレーラーをつくった。
集客のために配信をし始めた。
路上でチケットの手売りを始めた。
地元バンドはやってないことをやった。
ライブ当日。
後方のとびらギリギリまで人がいる満員になった。
メイドカフェのステージ。
私はたった四個しか弾けないコードで五曲オリジナル曲をやった。
配信をみた人も来てくれた。
SNSで知った私のことを好きでいてくれる子たちがおしゃれしてきてくれた。
私がフリマで売ってた古着を着てきてくれたり。
ライブハウスであれだけ「えあちゃん」と声をかけてくれていた地元バンドマンは五人もいなかった。
RTもいいねもされなかった。
音楽を始めた途端にライブハウスに行っても声をかけられなくなった。
村八分。
上京前に岩手でライブをしたのは人生初ライブのメイドカフェ単独公演を含めて三回。
あとは「歌詞を書いてほしい」と言ってくれたバンドと合同企画。
働いていたコスプレキャバクラで単独公演。
店長は上京資金にしなよっていって箱代は受け取らず、チケット代を全部私にくれた。
その優しいお金と音の良し悪しもわからない、コード四個しか弾けないギターを持って東京に来た。
アイドルのイベントに良く呼んでもらってた。
お客さんは数人いたり、いなかったり。
チェキもやってないし物販もなかったし到底、アイドル好きな層に刺さることはまれで、お客さんと話す機会はなかったけど時々「怖い」と言われたりした。
今も「怖い」と言われるけど、ベクトルが違う。
笑顔で歌って踊って楽しませるアイドルの中に、
暗い歌をギター弾いてキレるように歌ってるやつ、怖い。
音楽ではなく“女”を見てくる相手には愛想をつかわなかった。
めちゃくちゃ塩。
「俺何歳にみえる?」
「何も見えない」て感じ。
視力失った?
夜職歴のおかげでそういう思想である。
物販では両サイド、チェキの列をなす中でぽつんと一人終演を凌いだ。
自分のなかで手持ち無沙汰でもiPhoneを見ないと決めた。
誰かが私の音楽を「ライブ、よかったね」
なんて言って認めてくれるかもしれない。
そんな期待を持って、ただ真っ直ぐ前を見て座っていた。
怖。
大手音楽プロダクションの新人開発部の人が名刺を持って何回か現れたこともあった。
色々、LINEで親身にアドバイスしてくれた。
それがさらに私に期待をもたせた。
無力無善寺に出るようにもなった。
その日から毎月第四金曜日、レギュラーになった。
なんか段々ファンと名乗ってくれる子達ができてきた。
みんながかけてくれる言葉にまた希望を持った。
音楽を始める前から見つけてくれた子。
音楽を始めてから見つけてくれた子。
もういいねもくれなくなった子たちは元気だろうか。
あなたが忘れても私が存在を覚えています。
あの時の私を支えてくれて本当にありがとうございます。
私が音楽を続ける限り、またいつでも待っています。
破滅ロマンスができた。
「梅星えあのバックバンドじゃなくバンドとしてやろう」
そう言ってくれたのは誰主催かもわからない飲み会で初めて出会った男の子。
元Gt.ナガタトモヤ。
社交性はあるが持続しないのですぐに私に慣れて、
「ツイッターで知っててファッションキチ●イだと思ってたけど“マジ”だった」と言われて無礼だなと思ったけど、酔ってんのかグループLINEで「梅星えあの才能を殺すな」とも言ってくれた。
脱退した今でも私の音楽の最たる理解者。
この二人のために破滅ロマンスをやろうと思い、都内某所でのキャバクラ単独公演をもってして弾き語りの活動は無力無善寺のみとした。
今全然出てなくてすみません。
メジャーデビューしたい。
私みたいな人間に可能性を見出してくれた、
Ba.RYとGt.ナガタトモヤの夢を叶えたかった。
私は私のできることをしようと思った。
正直、考えも一変して女つかってできることでもいいと思った。
実際「エロいから呼んだ」とかブッキングスタッフに言われたり、他のバンドは帰らせ私だけ残されてお酒を飲まされたりもした。
打ち上げで自分達よりも売れている対バンの男三人に囲まれて胸にお金をいれられたりもした。
でもただ酒でどうにかされたことはない。
私はキャバ嬢でもある。みくびるな。
東京からツアーで来たバンドマンに「プロのベーシストになりたいです。」と人見知りながら言っていた、私を教室の外に連れ出してくれた男子高校生。
自分がフロントマンで活動していたバンドよりも私に才能と未来を託してくれた彼。
たった二人の夢を叶えられなかった。
ナガタトモヤが脱退を迷う最中、
私自身の夢はなんだったっけ。
そんなことを考えた。
メジャーデビューすること。
大きなフェスに出ること。
私の夢だったかな。
私は私の世界を創ることが好きだった。
最初からそうだった。
目先にある面白そうなことに飛びつく。
ステージじゃない場所をステージにすることや
音楽以外のカルチャーと交わるライブ。
やりたいことがたくさんあった。
私は自分で1から創造することに魅力を感じる人間だった。
それを叶えるために何が必要か。
結局、数字だ。
私は売れていない。
キャバクラをやめたいがやめられるほど
才能が足りていない。
何度も期待して、希望を持って、
今度こそと思っても打ち砕かれる。
続けるのは苦しい。
インターネットもやめて誰も知らない街にいって暮らしたいなとか思う。
売れていないのに音楽を続ける理由は、
やめられないだけだ。
「歌詞を書いてほしい」そういったバンドマンが
メイドカフェのステージに上がる前に言った。
もう、降りられなくなるよ。
当然いずれ若さはなくなり、身体も衰える。
もしかしたら傷つかないために
感受性すら消えていってしまうかもしれない。
音楽を続ける約束はできない。
ステージ以外が苦しすぎる。
それでも、今はやめられない。
私の世界を創れる音楽をやめられない。
限りある時間のなか、誰かと交差できる瞬間。
友達でも恋人でもない。
キスでもない。
セックスでもない。
売れていないくせに、
私の唯一の愛し方をやめられないだけだ。
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春ねむり&破滅ロマンス
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