化粧品市場とユーザー変化に商機あり。韓国コスメ「ByUR」、将来的な複数ブランド展開を視野に成功パターンの構築目指す
現在、Hameeはさまざまな事業を展開しています。
「iFace(アイフェイス)」などスマホアクセサリーの企画開発・販売を手掛ける『モバイルライフ事業』、ゲーミングモニターブランド「Pixio(ピクシオ)」を中心とする『ゲーミングアクセサリー事業』、韓国コスメ「ByUR(バイユア)」を取り扱う『コスメティクス事業』など。
これら事業の今後の3ヵ年計画について、2022年6月にHameeグループとして「中期経営計画」(2022年5月~2025年4月)を発表しました。
しかし、資料だけではお伝えできるボリュームや内容に限りがあります。
各事業の施策や展望の詳細、そして実際に事業を担うリーダーの思いや考え方など、決算資料ではなかなか表現しきれない部分を、どうにかステークホルダーの皆さまにお伝えできないだろうか。
そう考え、今回各事業を率いる事業部長にHamee代表の水島自らがインタビューするという、珍しいスタイルでnote企画を実施する運びとなりました。
この企画を通して、少しでもHameeの取り組みについて理解を深めていただけたら、とっても嬉しいです。
第一回目の今回取り上げるのは、今年1月に韓国コスメブランド「ByUR(バイユア)」をローンチした『コスメティクス事業』。
同事業を指揮する事業部長の中谷が登場します。
インタビュアー水島の新鮮さも楽しみながら、ぜひ読んでみてください。
※コスメ事業を立ち上げた背景については、下記をご参考ください。
化粧品市場とユーザーの変化が参入チャンスに
―インタビュアー水島です、今日はよろしくお願いします!
中谷:よろしくお願いします。
ー中谷さんは、2年前僕が直接面接したんですよね。コスメ事業を引っ張ってくれる人を探していて、何人会ってもダメだったんですが、中谷さんと会ってピンと来たのを覚えています(笑)。あ、この人なら大丈夫だって。
中谷:面接というよりは、Hameeとしてコスメティクス事業を始めることについて語ってくださって、それについてどう思うか?と聞かれたのは、すごい鮮明に覚えています(笑)
―改めてということで、中谷さんの経歴を教えてください。
中谷:大学卒業後新卒で広告代理店に入社して、主に女性向けメディアを扱う広告営業としてキャリアをスタートしました。その後国内の内資のコンサルタントに転職し、大手メーカーの国内EC(健康食品、化粧品など)の新規事業立ち上げのクライアントワークを担当するようになりました。
そこで化粧品とデジタルマーケティングがキャリアになり、前職では化粧品メーカーで特定ブランドのデジタルマーケティングを担当していました。なので、メインでデジタルマーケティングのキャリアを形成したのは前職で、化粧品の製造開発、輸出入などは前々職になりますね。
―そういった中でなぜHameeのコスメティクス事業を選んだのでしょうか。
中谷:実は化粧品のBtoC事業責任者のようなポジションの募集って今の世の中めちゃくちゃたくさんあるんですよ。ただ、その中でも実際に商品を製造したり、ブランドを作ったり、全てを自社でやれている会社ってほとんどなくて。
例えば1万人くらい会員がいるWEBメディアを持っていて、全くやったことないけれど、とりあえず化粧品をつくり、マーケティングだけ自社リソースを活かしてやるというような企業が多かったり。本腰入れてやるのかどうか、判断つかない企業も結構いますね。
対して、Hameeは製造から販売という入り口から出口までを自社でできるという話だったので、そこは大きなポイントでした。
―入社から2年経ちますが、実際どうですか?入社前のイメージとギャップはありました?
中谷:自分が思い描いていたことが実現できる土台、というか組織はイメージ通りだったなと思います。ただ、事業の進め方という部分ではなかなか上手くいかず、難しさを感じるところはありますね。
―ここから具体的な事業の話をしていきたいと思います。
現在、国内の化粧品市場って競合もたくさんいるし、結構厳しい状況ですよね。その中で何をチャンスに感じているのか、教えてください。
中谷:化粧品市場全体で見るとコモディティ化していて、競合もたくさんいるとは思うんですけど、僕らみたいなBtoCのブランドがどういう部分に奥行きを感じているかというと、市場全体の成長というより、その中での構造の変化です。
化粧品市場では、世の中がコロナ禍になる前から、欧米発ブランドがどんどん韓国コスメなどに取って代わられる事象が始まりました。コロナ禍以降は、一層状況が厳しくなり、日本国内において欧米発ブランドの撤退が多く見られるようになりました。
これらの撤退によって、ドラッグストア、ロフトなどの化粧品棚がバコンと空いてしまう、そんな事象が発生するくらい大きな市場変化がありました。
市場全体で言うと、微減少傾向にありますが、その中でも韓国コスメなどの、より尖ったブランドが入り込める余地は今後も増えていくんじゃないかと思います。
なので、有名ブランドがどんどん幅を広げていくというよりは、市場全体でのプレイヤーやブランドがどんどん増えていく感じじゃないかなと。
そういう視点で考えると、入り込む余地は十分あるのかなって感覚ですね。
―お客さんの状況は、この数年間で変わってきていますか?その中でさらにチャンスだなと思う部分があれば、教えてほしいです。
中谷:ユーザーの変化でいうと、マスブランドから、より個別の嗜好に合ったブランドを選ぶ方向に変わってきています。こうした流れは、コロナ禍以前からどんどん加速していますよね。化粧品全体の市場トレンドというよりは、モノの消費全体でも同じことが言えるのかなと。この変化はすごい大きなチャンスだと思います。
というのも5年前くらいであれば、韓国コスメの中でも特に韓国市場で人気のある商品しかユーザーは使わなかった。小売りや流通も、ある程度世間の認知があるものじゃないと取り扱ってくれなかった。
それがどんどん各々の嗜好に合った多様なブランドをユーザーが選ぶ方向に変わってきているので、新しいブランドを展開する上での障壁はますます低くなってきている感覚があります。
韓国コスメを日本向けに企画開発できるのがByURの強さ
―そんな中でHameeならではの強みってなんでしょうか。2年やってきて、これだなって思う部分はありますか?
中谷:韓国コスメの中でも、日本のマーケットを捉えた上で、日本向けに商品開発をしている点は特にユニークかなと思います。
現在国内市場に出ている韓国コスメって、あくまでも韓国で販売している商品の中から日本で売れそうなもの、もしくは市場に投入してみて反応が良かったものを展開している場合が多いです。
一方Hameeは、日本と韓国、それぞれのトレンドを捉えた上で商品開発をしている。
なので、すごい突飛な韓国コスメを市場に投下するのではなくて、韓国コスメだけど日本向けにきちんと企画開発した日本ナイズの商品を投入しているので、この点は韓国に関連会社を持つHameeならではの強みだと思います。
ー現在、韓国コスメとして日本に進出しているメーカーはいくつかあると思うんですが、比較したときに、「ByUR」が勝てる要素は、やはり商品をうまく日本ナイズしている部分にあるのでしょうか?
中谷:そうですね。商品の切り口でいうと、そこが一つ大きなポイントかなと。あとは、マーケティングの側面では、本社側でコントロールしているのは大きなポイントだと思います。
あくまでも韓国コスメって輸入代理店のようなところが販売していたり、本腰を入れてマーケティングをしているブランドはそれほど多くないので、そこに関しては投下する資本や施策の部分で勝ち筋があるのかなと。
―ByURとして今年1月に商品をリリースしましたが、ここまでの感触はどうですか?中谷さんの計画通りか、違うところもあるのか。
中谷:うまくいった部分とそうでない部分が結構明確かなと思っています。
まずユーザーから見た上流の部分、例えば、PRや認知活動に関しては一定レベルでのパフォーマンスができているかなと。
次に、それを販売するチャネル部分になると、小売についてはバラエティショップを中心に流通は徐々に拡大しているので、商品ラインナップを拡大させたり、企画品をつくっていくことで、さらに広げていくことができると思っています。
一方、自社ECを中心としたWEBチャネルについては、獲得した認知を購買までつなげて、さらに顧客を育成していくという全体プロセスがまだうまく回っていない現状です。
―そういった課題がある中で、今期は具体的にどういうアクションを予定していますか?
中谷:現在化粧品のECで主流となっているのは、2ステップマーケティングといわれるものです。いきなり本商品を売るのではなく、トライアルセットなどを購入していていただき、そこから本商品の購入につなげていく。
それが主に行われているのがスキンケア商材。そういった中で、ByURは1月のローンチから8月まで、ファンデーションを中心としたベースメイク商品しかラインナップがなかった。
かつ、本商品しか存在しないという状況だったので、想定はしていたものの、WEB上での戦いは予想以上に厳しかったです。
ただ今期は、9月にスキンケアラインの本商品が登場しました。11月頃からはスキンケアラインのトライアルセットをWEB限定で販売予定なので、新規の顧客獲得効率を大きく上げていきたいと考えています。
さらに先の話をすると、トライアルから本商品に引き上げていく、あるいは継続購入していただくために、いわゆるCRM(顧客関係管理)的な要素を立てていくことが今期後半の大きな課題になってくると思います。
なので、今期は新規顧客の獲得効率とLTV(顧客生涯価値)を伸ばしていくための施策を動かし始める、そんなアクションを予定しています。
ノウハウを構築し、将来的には複数ブランド展開へ
―中期経営計画では、5年間でコスメティクス事業の売上高を92億円に成長させる予定ですよね。他事業と比べて計画数値が大きいということで、ステークホルダーの皆さんからよく質問をいただきます。
それに対して、僕は事業そのものが違うから、比較が難しいと話しているのだけれど、中谷さんとして今後5年間の事業成長イメージをどう考えていますか?
中谷:単一のブランドで数値目標を達成するのは、他カテゴリーに進出したとしてもなかなか難しいと思います。
じゃあどういう形で進めていくのか。
今ByURという単一ブランドを展開していて、ブランドの企画・商品開発・製造・マーケティングなどの一連の流れが一定レベルまでうまくいくと、それは再現性のあるノウハウになると思うんです。
すなわち、化粧品ブランドをイチから立ち上げてつくって販売して、一定規模までつくりあげるという全体のノウハウが手に入れられます。そうなった時に、他のブランドを新たに作っていく。
コモディティ化している市場であるからこそ、ターゲットを変えたり、カテゴリーを変えるような形で複数ブランドを立ち上げてポートフォリオをつくり、売上を立てていくことが数値達成の上では重要になると思っています。
なので、この1~2年でByURの中でノウハウを貯め込み、かつ違うブランドを立ち上げる準備を並行してやっていく。
もちろんByURを一定レベルまで成功させることが前提条件にはなりますが、今後の数値も組み立てていくためには、他のことにも取り組み始めないといけないなと考えています。
―5年後くらいは複数ブランドで事業展開しているイメージですか?
中谷:そうですね。ただ、他ブランドを立ち上げたとしても、営業、マーケティング、PRなどの組織が現在の2倍必要かといわれたら、そういう状態ではないはずです。
ノウハウが積み重なっているので、リソースを他ブランドに効率的に展開していくことができるかなと思っています。
―現在ByURは、若年層向けのベースメイク&スキンケアブランドとして展開していますが、その根幹部分も変わるんでしょうか?
中谷:そこは変えません。もしそれ以外のジャンルやカテゴリーに飛び出していく場合には、他ブランドを立ち上げるなど、その時に適宜判断します。
いずれにせよ、ByUR自体がターゲットを広げたり変えたりするのではなく、今のターゲットを変えずに、ブランドポートフォリオの一つとして存在しているというのが基本の考え方です。
―もしかすると、単一ブランドの展開で数値目標の達成を目指していると捉えている方が多いかもしれませんね。僕も最初の段階ではそう認識していたので。
中谷:ですね。ただ、先ほどお伝えしたように、もちろんByURが一定の事業規模まで成功することが前提条件なので、今の段階で先の展望の風呂敷をどこまで広げられるかっていう部分はあるんですけどね。
―正直、数値目標に対する成功確度はどうですか?中谷さんの感覚でいいので。
中谷:現状で考えると、半々かなという感じです。
マーケティングや販売部分では、一定レベルでやらなければいけないことをきちんとやれている状態かなと。
その反面、まだできていない状態もあるので、そういった意味で半々というニュアンスです。
ただ先ほど少しお話したように、ByURの単一ブランドで5億、10億と売上をつくれる状態になると、そのノウハウを活かして再現性を持ちながら他ブランドを複数走らせることで30億、さらには50億に成長させるっていう道筋は見えてくるかなと。
逆にいうと、最初のByUR単一ブランドで5億、10億を作り上げるという最初の部分を突き抜けられるかが勝負だと思っています。
スピード感を持ち、自走できるプロフェッショナルチーム
―中谷さん率いるByURチームは、どういった構成なんでしょうか。コスメ事業の組織として、マネジメント面で意識していることなどあれば、教えてください。
中谷:現在、国内のコスメ担当チームは営業、PR、マーケティングといったフロントチームが専任で4名、物流、CSなどのバックオフィス業務を兼任で3名といった構成です。
コスメに限らず、このサイズ感での組織としての在り方という話になりますが、専門性を持ったメンバーが集まっているので、基本的には1人1人に対してかなり大きな権限を与えています。
各メンバーがそれぞれの領域で自走しながら、必要に応じてコミュニケーションをとっていく。かつ、その上でスピード感も上げることを意識しながらマネジメントしています。
―この先もっと組織が大きくなると、そのスタイルも変わっていくイメージでしょうか?
中谷:多分、一層横の連携を強めていく必要性があるのかなと。例えば、マーケティングとPRで連携を深めたり、韓国のチームと商品企画を進めていくとか、組織の規模が大きくなればなるほど、そこは必要性が増していくイメージです。
現状の規模では、それぞれの領域でスピード感を持たせることを大切にしています。
―なるほど。採用目線での話になりますが、今後事業をより成長させていくために、どんな人と働きたいですか?
中谷:一番重要視するポイントは、その領域で専門性を持っている、かつ自走ができる点ですね。裁量権が大きい反面、自分で考えなきゃいけないことが非常に多いです。
もちろん最終的な判断は私がするのですが、そもそも担当領域の中で何をしようとしているのか、大きな絵を描くところから実際のアクションまでは、担当者に任せているので、自分で考えて自走するっていう部分は重視しています。
―よく分かりました。あと、今後の展開について一点教えてください。
ByURってもともと「iFace」から生まれた派生ブランドですよね。今後iFaceとの絡みってなにか考えていますか?
中谷:現状で考えると、iFaceとByURの認知度にかなり大きな開きがあるので、今の時点で本格的にコラボ施策を考えようとすると、iFaceの知名度にあやかった嫌らしいクロスセルにしかならないなと思っています(笑)
ある一定レベルまでByURとしてのブランド認知を上げて、iFaceと絡んでもおかしくない土壌をつくらないといけない。
もともとは一つのブランドであることを認知してもらった上で、両ブランドの商品を併せて自然にご購入いただけるような導線や企画、商品開発なども含めて、将来的にはなにかしら一緒にやっていく必要性があるのかなと。
例えばiFaceの公式サイトで商品をご購入いただいた方にByURのノベルティを配布するみたいなキャンペーンや小売店でのポップアップを一緒にやったり。
施策を通して同じブランドであることの認知を広げていき、一緒にやることの違和感をなくしていく。そんな取り組みができたらいいねと、よくiFaceのブランドマネージャーとも話しています。
ー最後に、意気込みを聞かせてください。
中谷:コスメという、Hamee史の中でも全く異色の事業に挑戦させてもらっているので、プレッシャーはもちろんありますが、そこにモチベーションを感じながら、結果を出せるように頑張っていきます。
また、いわゆるブランドビジネスの点で見ると、iFaceから学べるものはたくさんあると思うので、そこのノウハウを拾い上げていきたい。
逆にByURがある程度軌道に乗れば、iFace側に提供できるノウハウも作れると思うので、両方で活かせることを見つけながら、コスメティクス事業の成功とともに、会社全体の成長にも貢献できたらいいなと考えています。
―今後の展開に期待しています。本日はありがとうございました!
おわりに
事業部長インタビュー企画第一弾、いかがでしたでしょうか?
休日に街に出ると、つい百貨店や雑貨店のコスメ売り場に立ち寄り、お客さんの動きを目で追ってしまうという中谷。
移り変わりが激しいコスメ業界だからこそ、常にどんなお客さんが何を感じ、何を求めているのか、貪欲にアンテナを張り情報収集する姿勢に、プロフェッショナルを感じました。
まだ生まれたばかりのコスメティクス事業ですが、Hameeの核となる事業になることを目指して今後も成長を続けていきます。プレスリリースやnoteで、今後も最新動向を発信していきますので、応援していただけると嬉しいです。
次回はモバイルライフ事業の予定です。お楽しみに!!
◆記事を書いた人