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スパイをやめた日【中編】

「カモさん、流れに逆らって泳ぐのは大変でしょう。」

ハムタコスキーは申し訳なさそうに尋ねた。

この疏水は琵琶湖の水を京都市へと流す目的でつくられたものだから、これから琵琶湖へ向かうとなると逆行しなければならない。

「いや、そんなことあらへんわ。むしろな、流されて生き続けたら、鴨川のカモはどうなると思う?」

「あのまま鴨川の下流に流され、それから行き着く先は大阪の淀川でしたかな」

「そうや。さらに淀川で流されたらな、今度は大阪湾に投げ出されんねん。常に流れに逆らってへんと、海で溺れ死んでまうわ。」

「そう考えると人間というのは流されるのが好きな生き物かもしれませんなあ。」

ハムタコスキーは、人間というのは信じることが得意なぶん、騙されやすく流されやすい生き物であるような気がしていた。

「流れに任せるのも偶にはええけど、それ続けてたらいつしか人間も大衆の海で溺れて苦しくなるんとちゃうかなあ。人間も大変や。」

カモとハムは流れに逆らい語り続け、琵琶湖に到着した。

GPSを川に投げ込んだ件で、根掘り葉掘り聞かれるのではないかとハムタコは心配していたが、あまり深入りしてこないカモのかことが気に入った。ズカズカ踏み込んでこないところがまたいい。洞察力も鋭い。

「さあ、思う存分、その捨ててまいたいもん投げたらええわ。」

カモに促され、ハムタコスキーは躊躇った。

一時的な感情でいまの仕事を辞めることにならないだろうか....

思いとどまったハムタコスキーにカモは言う。

「大丈夫やって。ほんまに必要なもんは手放したってかならず戻ってくるねん。試しに投げてみたらええわ。」

ハムタコスキーは今までのハム生を振り返った。これまでにしてきたことは、自分の意思で選んだものではないような気がした。そう思った瞬間何かが吹っ切れた。

そして、迷うことなく静かにポチャンと
自分を監視してきた首輪を湖に落とした。

1羽と1匹は、ゆっくりと沈んでいく社畜の首輪を見届けるのであった。

             🦆後編へつづく

中編を誤って削除してしまいました😢

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申し訳ありません😢

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