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短編小説ハムちゃん先生

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#オリジナル小説

ハンニャのおともだち【大徳寺・今宮神社編】

ハンニャのおともだち【大徳寺・今宮神社編】

ハムちゃん先生には最近不可解なことがある。

夜のお散歩をしていると、同じ場所で何者かに話しかけられるのだ。

お散歩コースは決まって大徳寺周辺。

その声は大徳寺の土塀に沿って歩く時に聞こえる。「はにゃ?」という疑問系のイントネーションで問いかけてくるのだ。

恐らく最近人間の間で流行り出した言葉なんだろうとハムちゃんは思っていた。

いつもは暗くてその姿がわからない。

そこで今日は正体を突き

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🦆カモクシーで行こう

🦆カモクシーで行こう

ハムちゃん先生は京都の街を移動する機会が増えたので、交通手段を考えていた。
人間と同じように京都市バスや地下鉄に乗ってもよいのだが、迷子のハムスターと間違われて捕獲される恐れがある。
なるべく人間に目をつけられないように移動したい。さて、どうしたものか。考えてみた。

1.ルンバを改良して乗ってみた

ルンバに乗って移動すれば、京都の街がお掃除されてピカピカ。一石二鳥だと思っていた。
しかし哲学の

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ホテル ソンジョソコラノ

ホテル ソンジョソコラノ

夜中の0時を過ぎると灯りのともる建物が京大の敷地内にある。

ここはハムちゃん先生が気まぐれで経営するホテル ソンジョソコラノだ。

いつも研究をしている附属図書館のすぐ裏側にあって、普段、人間が使うことは滅多にない。

もちろんこの施設も人間の研究のために開いた。

一般的なホテルと異なる点は、宿泊料金を支払う必要のないこと。

宿泊した客は、引き換えに自分のみた夢を提供することになっている。

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スパイをやめた日【中編】

スパイをやめた日【中編】

「カモさん、流れに逆らって泳ぐのは大変でしょう。」

ハムタコスキーは申し訳なさそうに尋ねた。

この疏水は琵琶湖の水を京都市へと流す目的でつくられたものだから、これから琵琶湖へ向かうとなると逆行しなければならない。

「いや、そんなことあらへんわ。むしろな、流されて生き続けたら、鴨川のカモはどうなると思う?」

「あのまま鴨川の下流に流され、それから行き着く先は大阪の淀川でしたかな」

「そうや

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