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【Magic: The Gathering】カジュアル統率者戦の政治論【EDH・レベル5〜6】

前書き

こんにちは。
記事を手に取っていただき、ありがとうございます。

当記事では、統率者戦(以下、EDH)における政治について書いていきます。

EDHにおいて各プレイヤーはそれぞれ、どんなパーマネントを出すのか、どのカードに除去やカウンターを撃つのか、あるいはどのプレイヤーを攻撃するのか、といった様々な何気ないプレイングを通して、自分がゲームで何を実現したいのか、どのカードもしくはどの相手が脅威だと考えているのか、最終的にどのような勝ち筋を狙っているのか、という「メッセージ」を発信しています。

他のプレイヤーはそのメッセージを受け取り、受け入れるならば黙認し、受け入れられないならば妨害し、利害が一致するならば手を組み、一致しないならば対立し、はたまた他人どうしの争いに息を潜めて傍観する、といったメッセージを返信します。

EDHは、それらのメッセージの絶え間ないやりとりによって形作られていくゲームです。

特に「対戦相手と協力する」ことや「プレイヤーのうち2人が削りあった結果として第三者が有利になる」などということは、競技フォーマットの2人対戦ではまずありえない光景です。
EDHでは余程のぶん回りをするかデッキパワーのレベルに差がない限り対戦相手3人全員の脅威に対処しつつ勝つことはできないため、どの対戦相手とどのように脅威とリソースのやりとりをしてゲームを進めていくかが非常に重要です。

こうした要素をまとめて、俗に「政治」と呼ばれます。

EDHのプレイ中ならば常に行われていることですので、読者の皆様も無意識のうちにやっていることだと思いますが、この記事を通してEDHにおける政治的要素の面白さを再確認していっていただけたら幸甚です。

また、筆者は主に公式のレベル表で言うところの5〜6でプレイしています。異なるレベル帯、特にレベル7以上のいわゆるcEDHの環境では、当記事の内容が当てはまらない場合があるかと思われますのでその点ご容赦ください。


1. どのカードをどのように対処すべきか

まず大前提として、EDHでは一般的に、最も勢力の大きいプレイヤーに攻撃や除去が集中します(以下、「相手がコントロールしていて、自分の勝利手段が阻害されたりあるいは自分の敗北原因になったりするカード」をまとめて「脅威」と書きます)。

ここでまず問題となるのは、「どのカードが脅威なのか」ということです。

それが脅威か否かの判断基準となるものは、一面には「そのカードがそのプレイヤーのデッキの中で果たす役割」があり、他面には「そのカードと自分自身のデッキとの相性」が挙げられます。

「役割」とは、例えば、主要なダメージソースとなる大型クリーチャーであったり、そのデッキにおいて多くのアドバンテージを稼ぐためのキーカードであったり、あるいは即死コンボのパーツであったり、というようなものです。

「役割」はそれのコントローラー以外のプレイヤー全員にとって共通の脅威であり、他プレイヤーと利害を共有しています。
すなわち、プレイヤーどうしで手を組む余地が生まれ、その脅威のコントローラー以外のプレイヤーどうしで緩やかな連帯が築かれます。

しかし、「役割」の脅威に対しては、それに敵対するプレイヤー全員が、「できれば他のプレイヤーがそれに除去を撃ってほしい」と望んでいます。
除去を撃ったプレイヤーがリソースを消耗し、撃たれたプレイヤーがディスアドバンテージを負い、他の2人が漁夫の利を得ることになるのは言うまでもありません。

よって、除去を切るのは遅れがちになり、結果として主に攻撃によってライフにプレッシャーをかけていくことになります。
その脅威が大型クリーチャーであれば攻撃が通りませんが、その場合であっても除去を撃つのはそれが自分を攻撃してくるまで待つことがほとんどでしょう。

ただし、単に大型クリーチャーである場合は脅威として分かりやすいですが、複数のカードの相互作用を予想しながら脅威を判断しなければならない場合には、どうしてもプレイヤーにカードの知識が必要になります。
カードの知識量は各プレイヤーで異なるため、この点での脅威の認識はプレイヤーごとにズレがあります。
そのため、「他のプレイヤーが除去を撃ったが、その対象は自分が脅威と認識していないものだった」ということもしばしばです。

それに対して「相性」とは、例えば、自分が墓地利用デッキを使っているときの、相手の墓地追放カードなどです。

「相性」の脅威に対しては、基本的に除去を当てることになります。
攻撃での対処も不可能ではないですが、自分の戦術が機能していない状態でライフ40点を削りきるのは少々無謀です。

また、「役割」は他プレイヤーと協力して対処するのが可能なのに対して、「相性」の場合はあくまで自分一人にとっての脅威であるため、他のプレイヤーがそれに除去を撃ってくれることはあまり期待できません。

そのため、自分の除去カードを当てるべき優先度は基本的に「役割」<「相性」となります。


2. どのプレイヤーと手を組むべきか

どのプレイヤーを手を組むべきかについて大きな判断基準となるのは、「対戦相手の勝ち筋」です。

そもそもの話、EDHの勝ち筋は大別して2つあります。
1つはコンバットで相手のライフを削って勝つ(統率者ダメージ21点による勝利を含む)こと。

もう1つは、複数の特定のカードを組み合わせて、何らかの手順を無限に繰り返したり、有限であっても対戦相手3人を一度に倒せる出力を伴うものであったり、あるいは特殊勝利条件を達成したりする、いわゆる即死コンボによる勝利です。

そして結論から言えば、コンバットどうしでは組み易く、どちらか片方(もしくは両方)がコンボの場合は組み難いです。

1章にて、脅威とは、大型クリーチャーや多くのアドバンテージを稼ぐためのキーカード、あるいは即死コンボのパーツなどであると述べました。

しかし、これらすべてが脅威となるのはあくまでコンバットを通して勝利するデッキに限る話であり、コンボデッキには当てはまりません。

コンバットで勝つデッキは、相手にP/Tの高いクリーチャーが並べば攻撃が通りませんし、逆に相手の攻撃にさらされてジリ貧になっていきます。
また、相手に多くのアドバンテージを稼がれれば、展開力で歯が立ちません。
それらを放置すればいずれ負けることは火を見るよりも明らかなため、早い段階で対処する動機が生まれます。

これらの点で、コンバットどうしは利害を共有しており、それゆえ両者の同盟は正しく機能するでしょう。

反面、コンボで勝つデッキは、わざわざその大型クリーチャーを乗りこえて相手に攻撃を通さなくてもよく、相手がどれだけアドバンテージを稼ごうが関係なく、ダメージレースで負けていてもやはり何も問題ありません。
コンボデッキはコンボパーツ(と相手の妨害を凌げるカードやそのような状況)が揃いさえすれば勝てるのですから、「いずれ負ける」の「いずれ」がコンボスタートよりも早くない限り、対戦相手の脅威を対処する必要はありません。

したがって、コンバットとコンボの利害は一致しておらず、その同盟の内実はコンボが時間稼ぎのための隠れ蓑として利用する関係です。

ですが、コンバットがコンボを仲間であると勘違いする例は、誠に残念ながら、枚挙に暇がありません(筆者もよくやります)。
コンボはコンバットに比べて必要以上に戦場にパーマネントを並べないため、コンボパーツが揃うまでは一見すると地味で脅威とほど遠いように思え、コンバット側からは手を組みやすそうに見えてしまいます。
また、コンボが攻撃に積極的ではなく余計なヘイトを買わないよう立ちまわることも、好意を寄せられやすい一因です。

しかし、コンバットとコンボ(あるいはコンボとコンボ)が仲良く手を取りあえるのは、「脅威に対抗しなければ他の3人全員が死ぬ」という場面だけです。呉越同舟。

ただし、実際には、コンバットとコンボの二刀流で戦うデッキも多いです。
ジェネラル固有の能力によってコンバット寄りかコンボ寄りかの傾向が分かることもありますが、具体的にコンボパーツ収集用のサーチカードを何枚積んでいるなどの構成は使用者にしかわかりません。
さらに、コンバット寄りのジェネラルであっても、固有色が合っているという理由だけで定番コンボが搭載されている場合もあります。

そのため、各対戦相手がそれぞれどちらの勝ち筋を狙っているのかは、主にそのプレイヤーが発するメッセージをもとに判断していくことになります。


3. 自分の立ち位置をもとに、どのように立ち回るべきか

「最も脅威とみなされるプレイヤーに攻撃や除去が集中する」ということは、すなわち、自分がその立場にいれば厳しくマークされ、逆に脅威とみなされていなければいないほどフリーになる、ということです(以下、より大きな脅威とみなされる順にプレイヤーを1位〜4位と表現します)。

自分が1位であれば、対戦相手3人全員と敵対することになります。
その脅威の大きさによっては、さながら1人vs3人のような構図になることもしばしばでしょう。
自分の次に大きな脅威である2位か、あるいはキルターンの早いコンボデッキから順番に攻撃していくことになります。

自分が2位であれば、1位を牽制しつつ自分の戦場を強化していくことになります。
しかし、1位からの除去や攻撃の対象になりやすいので、リソースを消費させられやすいです。
自分よりも戦場が育ってない3〜4位を攻撃できますが、それには何の意味もなく、仮にそうしてしまったら1位が喜ぶだけです。
基本的には、3〜4位と緩やかな連帯を組んで1位に対抗することになります。

自分が3位や4位であれば、相手に妨害されることは少ないでしょう。
であれば、1位の脅威に対して除去やカウンターを撃つよりも自分自身の戦場の強化にマナを注ぎこんだ方がよいです。
1位に暴れられるのは確かに困りますが、自分よりも2位の方がはるかに困っているので、その人が対抗策を持っていればいずれその人が止めてくれます。
また、それによって妨害カードを後半戦に温存できることも強みです。
ただし、1位が勝ちそうになる場合は話が別です。

ちなみに、2〜4位が1位と手を組む利点は基本的にありません。
勝つためにはゲーム中のどこかで1位の脅威を対処しなければならないのですから、その協力相手を自ら潰しにいくのは下策です。
唇亡びて歯寒し、です。

このように、脅威が1〜4位まで綺麗に分かれていれば話は単純なのですが、実際には各プレイヤーが同程度の脅威を有し、それゆえ1位が同時に2人または3人以上となることも少なくありません。

1位が2人いる場合、基本的にその2人で争いが起こることになりますが、それぞれのプレイヤーが卓内の勢力図をどう認識しているかによって少し展開が変わります。

2人の1位がどちらも「自分は2位である」と認識している場合、3〜4位にとっては望ましいパターンです。
2位は3〜4位と連帯を持ちたがるため、強者2人の攻撃を免れることができます。
それどころか、2位は3〜4位の戦場が強化されることを(自身の安全が脅かされない限りにおいて)望むため、「自分の戦場を強化する行動が強者2人の両方に歓迎される」という一見異様な流れになります。

2人の1位がどちらも「自分は1位である」と認識している場合、3〜4位にとって望ましくないパターンです。
なぜなら、1位を自認しているプレイヤーは、隙あらば3〜4位にも攻撃します。
もちろんもう1人の1位の方が優先度は高いですが、1位のプレイヤーにとっては3〜4位を生かしておく意味など何もなく、それどころか放っておけば他の3人が手を組むものと認識しています。
そのため、「強者2人の攻撃をどう凌ぐか考えつつ自分の戦場強化を図らねばならない」というやや苦しい展開になります。

ちなみに、プレイヤーごとに順位の認識が食いちがう可能性がある理由は、1章にて述べたように各プレイヤーのカード知識によって脅威の度合いの認識が異なるためと、誰しも自分のデッキ構成には詳しいのに対して相手のデッキ構成には疎いためです。
例えば、「使用するカードはガチだが構成はカジュアルに組んでいる」というデッキなどの場合、他のプレイヤーから脅威が過大評価されがちになります。

1位が3人以上いる場合、「誰を攻撃しても有効打にならず、逆に攻撃したことでヘイトを買ったりクリーチャーがタップ状態になることで次の相手のターンに無防備になったりする弊害の方が大きい」という膠着状態になることが多いです。

こうなると互いに自分の戦場を強化することに注力することになり、その強化速度の差から卓内のパワーバランスが崩れ、再び1位1人か2人状態にシフトしていくことになります。


後書き

これでカジュアルEDHの政治論は終わりです。

カジュアルEDHでは本当に様々なデッキが見られるため、プレイングの最適解は「状況による」としか言えませんが、その状況を整理するためにこの記事の内容が役立ってくれたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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