《海門の嵐呼び》デッキ紹介(スタンダード2022・青黒コントロール)
1.《海門の嵐呼び》について
こんにちは。
記事を手に取ってくださり、ありがとうございます。
突然ですが、《海門の嵐呼び》ってご存知ですか?
デビューは昨秋の『ゼンディカーの夜明け』。堂々の神話レア。
プレビュー公開時には「令和の瞬唱の魔道士」と呼ばれ、予約価格は2000円オーバー。
しかし、瞬唱と異なりインスタントタイミングで動けなかったり、コピーしたいスペルを手札に持っておかなければならなかったり、さらにはコピーできるスペルのコストに上限があったりと弱点が多く、鳴かず飛ばずで価格はどんどん下落。
ヒストリックでは《新生化》および《二重詠唱の魔道士》と合わせてコンボデッキが組まれましたが、それに対してテーブルトップでの需要は皆無で、最近ではショップのストレージから200円で発見される始末。
「何かできそうなスペックだけど、いざ何ができると言われると返答に困る」という、デッキビルダーに歯痒い思いを抱かせてきたカードです。
そんな《嵐呼び》ですが、最新弾の『フォーゴトン・レルム探訪』にて、まさにスタンダードでの相棒というべきカードを獲得しました。
それがコチラ。
《命取りの論争》です!
《嵐呼び》と《論争》を続けて唱えれば、手札2枚消費しますが4ドローに加えて宝物が2つ生成されます。
強くないですか?
《論争》は追加コストにクリーチャー1体かアーティファクト1つの生け贄が必要ですね。おっと、そこにはちょうど役目を終えたばかりの《嵐呼び》の姿が。《嵐呼び》がクリーチャーであるというところまで噛み合っている親切設計。
そんな感じのコンセプトで組んだデッキがコチラです。
デッキ
2 ひきつり目 (STX) 70
3 よろめく怪異 (AFR) 119
1 血の長の渇き (ZNR) 94
1 ジュワー島の撹乱 (ZNR) 64
3 海門の嵐呼び (ZNR) 77
1 否認 (ZNR) 71
1 乱動への突入 (ZNR) 62
2 検体探し (STX) 73
1 大群への給餌 (ZNR) 102
4 命取りの論争 (AFR) 94
1 落第 (STX) 71
3 襲来の予測 (KHM) 76
2 魂の粉砕 (ZNR) 127
4 多元宇宙の警告 (KHM) 46
1 ハグラの噛み殺し (ZNR) 106
2 激しい恐怖 (KHM) 82
1 蜘蛛の女王、ロルス (AFR) 112
2 オニキス教授 (STX) 83
2 雪上の血痕 (KHM) 79
1 海門修復 (ZNR) 76
1 ストーム・ジャイアントの聖堂 (AFR) 257
8 冠雪の島 (KHM) 278
9 冠雪の沼 (KHM) 281
4 清水の小道 (ZNR) 260
サイドボード
1 アルカイックの教え (STX) 57
1 壊死放出法 (STX) 78
1 過去対面法 (STX) 67
1 環境科学 (STX) 1
1 殲滅学入門 (STX) 3
2 マスコット展示会 (STX) 5
フォーマットはスタンダード2022(『ゼンディカーの夜明け』〜『フォーゴトン・レルム探訪』までが使用可能)です。
(デッキに箔を付けたかったので頑張りました)
2.《海門の嵐呼び》デッキ解説
デッキの構成をざっくり言うと、青黒コントロール+《よろめく怪異》《命取りの論争》パッケージ+《海門の嵐呼び》です。
黒の除去と青のカウンターで相手の展開を阻害し、《嵐呼び》からの《論争》を決め、大量の手札と宝物によるバックアップのもとにフィニッシャーを降臨させて勝ちます。
しかし、毎回毎回そうそう上手く《嵐呼び》と《論争》が手札に揃うものではありません。
《嵐呼び》と《論争》のうち、片方が引けない場合にもう片方が手札で腐ってしまうのは、決して好ましい状況ではありません。
ですが、このデッキでは《嵐呼び》と《論争》が揃わなくても問題ないのです。どちらも、他のカードと組み合わせて仕事をこなすことができます。
《嵐呼び》は、《血の長の渇き》と組めば相手のクリーチャーやプレインズウォーカーを2体除去できますし、《乱動への突入》と組めばキッカー付きでパーマネントを2体バウンスしたうえで2枚ドローできます。
《乱動への突入》でバウンスしたい相手のパーマネントが1つだけなら、自分の《嵐呼び》をコピーの対象にとって再利用することもできます。
ルールの話を少しすると、キッカーは追加コストなので、コピーする際は「それを唱えるときにキッカーコストを支払った」という情報も含めてコピーされます(※)。
例えば、前述のキッカー付き《乱動への突入》コピーで2ドローするために必要なコストは、《嵐呼び》2マナと《乱動への突入》2マナとそのキッカーコスト2マナ、合計6マナとなります。
(※)総合ルールに下記の通り記載されています。
707.10 呪文や起動型能力、誘発型能力をコピーするとは、その呪文や能力のコピーをスタックに積む、ということを意味する。呪文のコピーは唱えられず、能力のコピーは起動されない。呪文や能力の特性のコピーに加えて、例えばモード、対象、Xの値、追加コストや代替コストの支払いなど、呪文や能力のためになされた全ての選択がコピーされる。
また、《落第》をコピーすれば4マナで相手のクリーチャーを2体除去できますし、《検体探し》をコピーすれば履修を2回行うことができます。
《検体探し》コピーは終盤に《マスコット展示会》を2枚手札に加えられるので見た目以上に圧が高いです。
コピーしない場合でも、2ターン目におなじみ《環境科学》を手札に加えて土地事故をケアできます。
対する《論争》の方も、《嵐呼び》が無くても黒系サクリファイスおなじみの1マナクリーチャーである《よろめく怪異》と《ひきつり目》を生け贄にするだけで十分な働きを見せてくれます。
2体とも死亡誘発能力があるおかげで相手の攻撃を牽制でき、時間を稼いでくれます。
このように、「《嵐呼び》と《論争》が同時に引けなくても良し、引ければなお良し」という構築にすることで、最低限の動きを担保しつつも爆発力を有する、しっかりとした土台として機能します。
さらに、重要なアドバンテージソースとなる種のプレインズウォーカーも、《嵐呼び》や《論争》とそれぞれシナジーがあります。
《オニキス教授》の魔技はコピーでも誘発するので、場にいるときに《嵐呼び》からの《論争》が決まれば、4マナで4ドロー宝物2つに加えて4点ドレインがおまけにつきます。コスパがおかしいですね。
+1能力で《嵐呼び》や《論争》を探しに行けますし、-3能力も対象をとらないため、破壊不能や護法を貫通でき、さらに相手が使う《論争》などのコストによる生贄で空振りにならないのが素晴らしいです。
《蜘蛛の女王、ロルス》は自分のクリーチャーが死亡すると忠誠カウンターを得るので、言わずもがな《論争》と好相性です。
-3能力で生成される蜘蛛トークンはビートダウンに対するブロッカーとして優秀です。自分のクリーチャーをチャンプブロックや生け贄、あるいは全体除去に巻き込んで死亡させ、忠誠カウンターを供給し続けることで何度でも蜘蛛を生成でき、長く時間を稼ぐことができます。
デッキのおおまかなシナジーはこんな感じです。
あとの細かい動きはそのときどきの相手に合わせて対応していきます。
相手がアグロやビートダウンだった場合、生き残ることを最優先にプレイします。
特にアグロの場合、全体除去を最低1枚は引かないとどうにもなりません。頑張ってドローして探しましょう。
《影の評決》もアグロに効く優秀な全体除去ですが、味方の死亡誘発と噛み合いが悪く、さらに《雪上の血痕》で《嵐呼び》などをリアニメイトできなくなる点でアンチシナジーなので、採用を見送っています。
白単の場合、《傑士の神、レーデイン》や《精鋭呪文縛り》に全体除去のタイミングを遅らせられて負けるパターンが多いので注意です。
巨悪マジ巨悪
緑単の場合、タフネス4のトランプル持ちである《老樹林のトロール》や《節くれだった教授》を優先的に処理し、残りはチャンプブロックで凌ぎつつ全体除去に繋げます。
この2枚は一度戦場に出ると厄介なのでカウンターしても良いです。
また、2022ではミシュラランドが多用されるので、ライフをなるべく多く保つよう意識することも大切です。
逆に序盤からライフを詰めてこないミッドレンジやコントロールが相手の場合、《嵐呼び》《論争》を決めやすくなります。
片方しか引けていない場合でも無理に使わず温存しておき、もう片方を待った方が良いでしょう。
青赤ドラゴン等、《アールンドの天啓》を使うデッキの場合、相手の戦場にクロックを残さないことが非常に重要です。小まめに除去していきましょう。
1枚きたら2〜3枚立て続けにくるやつ
白黒でたまに使われる《テレポーテーション・サークル》や黒緑の《群がる骸骨》は、青黒の当デッキではエンチャントへの対処が難しいのでマストカウンターです。
もしカウンターできなかった場合、《大群への給餌》でライフをすり減らしながら破壊するか、《乱動への突入》でカウンター再チャレンジするか、《殲滅学入門》で否応なしに追放するかのどれかで対応しましょう。
できなければ、中長期的にアドバンテージを稼がれ続けて負けます。
2022ではクラス・エンチャントも強いので、エンチャント対策はデッキ構築の一つの課題になりそうですね。
相手が白黒、青黒などのコントロールの場合、キモになるのはプレインズウォーカーです。
コントロール同士の対戦において、プレインズウォーカーが戦場に長く定着することは、それだけで負けに直結します。
2022のコントロール対決は、ミシュラランドやトークンで相手ライフにプレッシャーをかけつつ、《雪上の血痕》や《過去対面法》でプレインズウォーカーを何度も何度もリアニメイトする泥試合です。
それらをすべてカウンターするのは無理なので、手札にある除去やクリーチャーと役割分担しながら対処していくことになります。
「カウンターすべき」なのか、「カウンターしなくても他のカードで除去可能」なのか、「今すぐ除去しなくても問題ない」なのかを適切に判断していきましょう。
ちなみに、相手がカウンターを握っていたとしても、《嵐呼び》《論争》は99%妨害されません。
《嵐呼び》はカスレア(褒め言葉)であるため相手に警戒されにくく、《論争》を唱えたらもう《嵐呼び》によるコピー生成は止められません。
全体的には、アグロにやや不利、コントロールに有利です。
アグロにやや不利ですが、小型クリーチャーがブロッカーになること、宝物のおかげで全体除去が間に合いやすいことなどから、全く勝負にならないわけではありません。
また、コントロールに対しては、《嵐呼び》《論争》のおかげで手数、テンポともに相手を上回ることができます。お互いゲームレンジが長いので、1ゲーム中に2〜3回《嵐呼び》《論争》が決まることも珍しくないです。
《嵐呼び》《論争》って、やっぱり強いのでは?
3.コントロールデッキにおける宝物トークンの有用性
スタンダード2022には、宝物トークンを有効活用するカードがたくさんあります。
環境のパワーカード筆頭の《黄金架のドラゴン》は、自身で宝物を生成するのみならず、宝物から得られるマナを増やしてくれます。
それとセットでイゼットドラゴンに採用されている《ガラゼス・プリズマリ》は、宝物を生け贄に捧げることなくマナを生み出します。
マルドゥサクリファイスが使う《スカルポートの商人》は、宝物をハンド・アドバンテージに変換します。
また、《厚顔の無法者、マグダ》は宝物を5つ消費してライブラリーからアーティファクトかドラゴンを戦場に出せます。
ですが、これらのカードは今回のデッキに採用されていません。
しかし、宝物を直接参照するテキストを持つカードが採用されていないからといって、《嵐呼び》《論争》によって生成される宝物2つが文字通りただ2マナ分だけの働きしかしないのかと問われれば、それは否です。
前提として、コントロールを使い慣れた人は誰でも、相手のターンにインスタントの除去やカウンターを撃てるように、多くの場合土地を何枚かアンタップさせた状態で相手にターンを渡します。
よって、例えば土地が7枚のときに相手のターンに2マナのカウンターを用意するなら、自分のメインフェイズに使えるマナは5マナまでということになります。
しかし、宝物がある場合、この制限がなくなります。宝物が2つあれば、自分のメインフェイズで土地7枚をフルタップにしても、相手のターンに唱えたい呪文があればいざとなれば宝物からマナを出せばよいということになります。
これが一体何を意味するのか?
まず第一に、質的な側面に目を向ければ、本来インスタントタイミングで使うところだったマナを、ソーサリータイミングで使うことができる、ということです。
コントロールデッキがメインフェイズに使用したいマナの使い道はたくさんあります。
プレインズウォーカーをできるだけ早期に戦場に定着させることのメリットは説明不要でしょう。
《海門修復》のような大型のソーサリーを通せば、ゲームの流れを引き寄せることができます。
《ストーム・ジャイアントの聖堂》は強力な代わりに起動コストが大きいミシュラランドですが、宝物のサポートがあれば1〜2ターン早く攻勢に出られます。
第二に、量的な側面に目を向ければ、毎ターン土地から出せるマナを使い切りやすくなり、ゲーム全体を通して使用するマナの総量が増えます。
先ほどの例で、相手のターンに土地を2枚アンタップした状態で2マナのカウンターを構える場合、その後の相手のターンでカウンターを当てるべき呪文がなければ、その2マナは自分のアンタップステップを迎えたときに無駄になってしまいます。
もちろん、極力無駄が発生しないように相手ターンの終了フェイズにインスタントのドローソースなどを使うものですが、そういったカードを毎ターン都合よく用意できるものではありません。
ですが、相手のターンに構えるマナを宝物から出すことにした場合、相手がマストカウンターを唱えようが唱えまいが関係なく、土地から出るマナを全て使うことができます。
また、このマナ・アドバンテージは、ターンを経るごとに積み重なり、大きくなっていきます。
こうしてマナの損失を抑えることによって、結果的には生成された宝物の数以上のマナを使うことができるのです。
相手のターンにインスタントを構えるという動きは、相手の構築やデッキの回り具合、さらにはプレイングに依存する部分が大きいものです。
しかし、ここに宝物の補助が入ることによってそのリスクの緩衝材となり、より大胆に、より無駄なく、マナを使うことができるのです。
これこそが、コントロールデッキにおける宝物トークンの有用性です。
そして、これを実現しているのが他でもない《嵐呼び》《論争》なのです。
後書き
以上で《海門の嵐呼び》を使ったデッキ紹介記事は終わりです。
スタンダード2022は黒系コントロールが強いので、当《海門の嵐呼び》デッキも立ち位置が良いですね。
2022で良い感じのデッキが組めたので、次の『イニストラード:真夜中の狩り』のプレビューがますます楽しみになってきました。フラッシュバックの再録が確定しているので、更なる強化が期待できますね。
《海門の嵐呼び》ファンの皆様、およびこの記事を見て《海門の嵐呼び》に少しでも興味を持った皆様、プレビューでは2コスト以下のインスタントやソーサリー、および死亡誘発能力持ちクリーチャーに注目です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。