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【読書まとめ】他者と働く (前編)

これまで、『対話』についての重要性や可能性についての話をしてきたが、さらに対話の役割/機能を刷新できる概念に出会ったので、こちらでまとめておく。

概要

本書では、『対話』という概念が刷新された、より実践において明確になったという点で非常に興味深い内容だと感じた。本書での対話の概念とは、『技術的に解決できない問題(=適応課題)を解くための手法であり、他社との新しい関係を構築することである』と述べられている。また対話のプロセスとして、①準備→②観察→③解釈→④介入 4つの段階があり、これらを実験的に試しながら、新しい関係性を築いていく必要があると述べられている。

背景

『技術的問題と適応課題』:既存の方法・スキルで解決できる問題を『技術的課題』。一方、他社との関係性の中で生じる問題であり、既存の方法・スキルで解決できない問題を『適応課題』と分類している。現在の世の中では、技術的問題は多くは解決されており、我々が直面している問題の多くは、適応課題であると考えられる。この解決困難な適応課題を解くための方法が、『対話』であると筆者は述べている。

対話の概念(私とそれ、私のあなた)』:人間同士の関係性を2つに分類することができる。一つ目は、『私とそれ』の関係である。これは、向き合う相手を道具のようにとらえる関係性のことであり、具体的には、レストランでの定員に対して、一定の礼儀(笑顔で対応する)や機能(おしぼり、水を出す)ことを求める関係。組織において、効率的に仕事を進めるためには必要な関係性でもあるが、信用によって繋がっている関係である。二つ目は、『私とあなた』の関係である。これは、相手の存在が代わりが利かないないものであり、『私とそれ』の関係性から違いを乗り越えて、新しい関係性を築くことができている状態であり、まさにこの状態に移行するために『対話』が必要となる。

誰しもがもつナラティブとは』:『わたしとそれ』の関係性でうまくいっているなら無理にその関係性を変える必要はない。しかし、想定外の問題が発生した場合、関係性を改める必要があるでしょう。では、なぜ想定外の問題、『適応課題』が発生するかというと、誰しも自分の『ナラティブ』を持っているからだと筆者は言います。ナラティブ(narrative)とは、『解釈の枠組み』(別の言い方をすると、その人個人のモノの見方、意味づけ)である。自分のナラティブと相手のナラティブに溝があることに気づき、『その溝に橋を架ける行為』が対話をするということである。

対話の実践

 以上、本書において重要な背景を述べてきたが、ここから、本書で示す対話について例を挙げながら、説明してみる。

本書での対話『新しい関係性を築く』際の流れは、①準備→②観察→③解釈→④介入の四段階で説明されている。本書に用いられているスターバックス例を用いて、流れを確認してみたい。

経営者と顧客との対話の例 スターバックスは、上場によって、訪れる顧客ではなく、株主価値の最大化のための施策を行った(サービスの効率化や短期的な売り上げ向上のための商品開発など)。これによって、顧客にとってスターバックスは訪れるべきサードプレイスとはかけ離れてしまった。当時の経営者シュルツは、この状況に直面して、自身が短期的な経営施策を行ってしまったということを受け入れることから始めた(①準備)。そこで、改めて顧客にとってのスターバックスでの体験について考え始め、『集う人々が特別な空間で過ごす』という経験が重要であることに気づいた(②観察および③解釈)。そして、これらを解決する施策として、顧客からバリスタの顔が見えやすいに配慮するなどの措置を行いました(④介入)。

 先の例からわかる通り、本書によって対話についての概念が大きく広がったのではないだろうか?つまり、経営者シュルツは、実際に顧客と話しをしたわけではない。顧客との関係が『私とそれ』という関係になっていたところを、顧客の立場になって考えることで、『私とあなた』という新しい関係を再構築するを目指したのだ。このように本書では、『対話』について、非常に有用な視点を与えてくれる点において、重要である。

まとめ

今回は、本書にて説明する対話の概念について、背景の思想を説明しながら理解してきた。具体的には、現在の社会の中に存在する問題は、他社との関係から生じる『適応課題』であり、それを解決するためには、『対話』をすることが重要である。しかし、対話とは、単に相手と話し合いするという狭義な意味ではなく、相手と自分に『新しい関係性を築く』プロセスのことを示している。後半では、先の対話のプロセスについてのさらに詳しく述べているので、そちらについてのまとめを行いたい。







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