ワタうさぎと綿のおはなし①
地球上のとある草むらに、しっぽがまるで綿(わた)のようにモコモコの、ワタうさぎたちが住んでいました。
わたうさぎたちは、自分たちのしっぽにそっくりな綿の実を見ると、大喜び。
まあるい綿をつんでは、お空に向かっておまじないをかけながら、風船のように飛ばしていたのでした。
飛んでいった綿は、お空につく間に雲に変わります。
それはわたうさぎのおまじないによるものでした。
そのうち、雲に生まれ変わった綿たちが、新しい綿畑に雨をふらせにいきます。
その雨水は、新しい綿花(めんか)を育て、そしてまたたくさんの綿の実がなるのでした。
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ある日、綿畑に綿をつみにいったわたうさぎは、
畑がカラカラに乾いていることに気が付きました。
葉っぱやくきがカラカラに乾いていても、綿はふわふわのまま。
お天道さまのしわざかと思い、わたうさぎはいつものように、まあるい綿におまじないをかけてお空に飛ばしたのでした。
あくる日、雲になったカラカラ畑の綿は、新しい綿畑に雨をふらせました。
そしてまたあくる日、小川の魚たちがかぜをひいたのだという知らせをききました。
畑から土をとおって、小川に流れた雨水が、かぜをはこんできたのだと、魚たちは言いました。
小川の水を飲んでしまった何ひきかのワタうさぎも、ぐあいが悪くなってしまいました。
そういえば、土に住んでいたはずの虫たちも、ずいぶんと前にどこかへ行ってしまったようでした。
カラカラの綿を飛ばしたせいかも、と思ったワタうさぎたちは、とても悲しくなりました。
そして、綿をお空に飛ばすことをやめました。
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そのうち、新しい綿畑に雨をふらせる雲はへってしまい、
かわりに、大きな車にのって大きなまほうの杖のようなものを持ったひとが、畑にまほうをかけにくるようになりました。
まほうにかかった畑に、生き物は住めません。
草がカラカラに乾いて、白い綿花がつみとられ、
ふしぎとまたすぐに新しい綿花がそだつのでした。
こうしてまほうにかけられた綿畑に近寄る生き物はいなくなり、まほう使いたちがまたどこにまほうをかけにくるのか、みんなびくびくしながら暮らすようになりました。
なぜ、まほう使いは綿花をつみとりにくるんだろう。
つまれた綿花は地球のはんたい側まで運ばれていくのだと、ワタうさぎたちは鳥のしらせで知ったのです。
綿はお空に飛ばして雨を降らせる雲になるだけだと思っていたワタうさぎたちは、
地球のはんたい側までわざわざとりにくるほど綿が欲しい人たちがいることに、おどろきました。
それでも綿がだいすきなワタうさぎたちは、自分のしっぽをみるたびに、綿畑を思い出します。
またまあるい綿をお空に飛ばしたい。という夢を、みんなでみていました。
続く
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このお話は、オーガニックコットン&フェアトレードのエシカルTシャツのデザイン案を考えていた時に思い付いたイラストデザインを具体化する為に、書き下ろしたものです。
結局自分のアイデアを原案とする必要は無くなったのでお蔵入りしていましたが、
せっかくなので挿絵を付けて公開する事にしました。
こういうテーマのある創作が得意です。
おはなしの続きは、まだ未定です。
↑Tシャツデザイン案描き下ろし。
他の過去デザイン案はTwitter(@hamandstars)で公開するかもです。
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