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雨粒

しずかに さらさらさらと
ほそい糸のように落ちてきて
ひんやりと
ちょっぴりつめたい雨

窓の中からそんな雨の日をながめる

音楽もかけず
地上へただしずかにしみこむ雨粒に
気持ちをあわせてみる
おなじように
地上へ 地中へ 
だれの目にも止まらない下のほうへ
自分の気持ちをしみこませておく

それは いつかなにかの種になるだろう
わたしの雨粒
わたしのこころのしずく
わたしのなにかの種

ひらたいアスファルトには
いくつもいくつも 波紋が浮かぶ
土に向かって流れていくまで
雨粒は波紋をつくる

それでも それは いつか地中に届くだろう
そうして いつかなにかの種になるだろう
わたしの雨粒
わたしのこころのしずく
わたしのなにかの種

本を開き
”今・ここ”とは違う場所でのできごとを味わう
さらさらさらと音がつづいているあいだ
雨粒はときおりはっぱや枝にたまるしずくになる

たぶん
ページをめくるたび
”今・ここ”とは違う世界がそこに映し出されている

それは だれにも知られぬ宝だ
わたしの雨粒
わたしのこころのしずく
わたしのなにかの種

わたしの宝

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