日本人と中国人との日本での(協議)離婚等について(2022.6.27更新)

1 はじめに

日本の方や中国の方から,離婚の相談を受けることがあります。そこで「双方ともに日本在住(常居所を有する)の日本人と中国人が離婚する場合」について少しノートしておきます。

2 そもそも,結婚しているのか?

まず,どのように結婚しているのかです。まず2つのパターンが考えられます。

①中国国内で婚姻手続(登記,中国国内で婚姻したことをを登録します。)後,日本の戸籍に(中国での婚姻を登録したことを)報告的に届け出る。

②日本で戸籍に届け出ることで国内で婚姻を成立させ(つまり、戸籍の届出で婚姻関係を創設します。),その後,中国において婚姻した旨の手続をする。

①がほとんどだと思われます。何故なら、中国における「渉外婚姻(結婚)」は、中国人と外国人が「中国国内で」婚姻することです(中国での狭義の「渉外離婚」は,中国人と外国人が中国国外で結婚することを含みません。)。そして、渉外婚姻を中国で登録する場合、中国人以外の外国人が訪中し、中国人と共に渉外婚姻登記機関(注1)に登録することになります。

まれに、手続きの不備で、一方の国では婚姻した事となっており、他方の国では法的に婚姻関係にない場合があります(跛行的身分関係といいます。ただし①の場合、日本で届出なくとも婚姻は有効です。)。弁護士による法律相談等では,どちらの国でも法的に婚姻しておらず,内縁関係だったという事例もあるのではないでしょうか。

3 離婚について

(1)日本で離婚する場合

ア 離婚の準拠法:①実質要件(離婚できる事由・原因等)も②方式(裁判に拠るのか、行政機関に届け出ればいいのか)も日本法になります。(通則法27条,但書34条2項)

イ 実際の手続:協議離婚(離婚届の提出)、調停離婚、裁判離婚

日本における協議離婚については,日本の戸籍では受付けますし,日本国内では離婚は有効です(なお,余談ですが、日本に居住する中国人間での協議離婚についても、準拠法の中国婚姻法第31条の「婚姻登記機関に出頭して離婚を申請する」を「方式」(上記②)の問題とし、日本での方式(戸籍(市役所等)への届出)で「日本国内では」有効に成立します(注2)。)。

(2)中国で離婚する場合

ア:準拠法:婚姻を受理する法院の所在地法(つまり中国法)

イ:手続:中国では「渉外離婚」は中国人と外国人が中国国内で離婚することを指します。当該渉外離婚は、婚姻登記機関に2名が出頭して行う協議離婚、裁判離婚があります。

4 日本での離婚をした場合、中国での効力は?

(1)上記で述べたとおり,中国での「渉外離婚」は,中国国内で外国人と中国人が離婚する場合を指します。つまり,日本在住の中国人と日本人が,日本で離婚した場合を指しません。したがって,日本での離婚を中国の婚姻登録機関で登記することができません。

(2)中国からみた外国(=日本)の離婚については,中国の裁判所(人民訪印)において承認を行う必要があります。ここでは、中国の民訴法のほか

「中国公民の外国裁判所での離婚判決の承認申請に関する規定(1991年)」

「人民法院における外国法院離婚判決の承認申請事件の受理問題に関する規定(2000年)」

等が問題となります。

(3)では,どのようなものが承認されるかです。この点については、2017年の国際私法学会第130回大会における馮西助教授の報告(「中国におけ外国裁判の承認・執行ー家事事件を中心に」)が極めて参考になります。同報告では承認対象は「離婚判決」及び「離婚調解書」であり(注3)後者には日本の家庭裁判所の調停調書が含まれるとされております。

 ここで,重要なのが,裁判所以外の機関の協議離婚文章が対象とならないということです。したがって,日本の協議離婚届(の受理証明)は承認の対象にならないおそれがある,ということです。

ですので,日本では協議離婚でよいのですが,中国人側の依頼を受ける弁護士は,この点に注意する必要があります。無論,当事者が中国国内の登記機関に出頭して離婚手続を取れる場合は別です。

なお、日本での協議離婚については、上記のとおり、中国の裁判所における外国離婚の承認の対象となりません。しかしながら、裁判所における外国判決の承認の可否ではなく、日本での離婚の効力を中国が承認するかという点においては、現在、日本側の公証があれば、中国でも日本での離婚が有効に扱われるということです(注4)。


(注1)中華人民共和国婚姻登記条例は(中国の)内地居住者を対象としています。)

(注2)高松高等裁判所平成5年10月18日判決(判タ834号215号)

(注3)中国公民の外国裁判所での離婚判決の承認申請に関する規定及び人民法院における外国法院離婚判決の承認申請事件の受理問題に関する規定3条
(注4)この点は、黄軔霆「中国の渉外家事実務と日本」(国際私法年報9号163頁)及び同先生から情報提供をいただきました。

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