【まちづくり実験室】the Port kakegawa(ポートカケガワ) 指定企画 最終報告書
◆新しい働き方LAB研究員制度とは
新しい働き方LAB研究員制度とは、今の自分の働き方からステップアップ、スキルアップしたい。新しい働き方に挑戦してみたい。そんな「働き方実験」を一緒に進めていくコミュニティです。
実験の枠組みは大きく「自主企画」と「指定企画」の2つに分かれており、自主企画は自分で決めた実験に取り組み、指定企画は企業や自治体が設定したテーマの実験に取り組みます。
ちなみに今回のthe Port kakegawa(以下、ポートカケガワ)企画は、後者の指定企画です。
◆実験テーマ
実験テーマは【まちづくり実験室】〜共創型の場づくりを通じて、地方のまちを豊かにすることができるのか?〜です。
開発中のポートカケガワをさまざまなメンバーと一緒に作り上げていくことで、まちの活性化に挑戦するという内容になっています。
実験の概要について詳しくは、こちらの企画書をご一読ください。
◆実験の目的と背景
そもそもポートカケガワを作ろうと思ったのは「自分の子どもに何を残すことができるのか」と考えたのがきっかけでした。
うちには3人の子どもがいるのですが、やっぱり子どもの未来や、そこにどう自分が関わることができるのか、ということについてよく考えてしまうんですよね。子どもに残せるものとしてすぐに思いつくのはお金や物、そして教育。でもなんだかそれだけではないような気がしました。
僕は自分の子どもには「自分の好きなこと、やりたいことに迷わず突き進んでほしい」と思っています。でもそれを言っている大人は好きなことに突き進んでいるのか。大人ができていないことを子どもに求めるのは無責任だし、きっと響かない。
つまり「自分の好きなこと、やりたいことを体現している大人がまわりにたくさんいること」が子どもたちにとって重要だと考えました。
だからそんな大人がたくさん集まる場所(環境)を作りたい。
そこからポートカケガワの構想がスタートしています。
今回研究員制度の枠組みを使わせてもらうことで、全国から様々な人がつながり、交流し、新たな価値を創り上げていけると思いました。
そして自分が想像した以上の”何か”が生まれる。そんな状態になれば、この場所でやりたいことが実現できると考えました。
◆実験の進め方
本実験では豊かさの指標として「エコノミー」「リレーション」「エピソード」の3つを設定しています。
実験の取り組みは6つの部門を設定し、部門ごとに目標を定めて活動を進める形としました。募集に対して60名以上の方が応募くださり、選考を経て合計39名の研究員の皆さんと活動を共にすることになりました。
アート部:ポートカケガワの内装を構想・創作する
ゲーム部:Eスポーツなどの最先端ゲームを通じて、場の活性化と自身のクリエイティビティ向上に取り組む
事業創出部:地域の事業課題を解決し、地域経済の発展とともに新しいビジネスの創出を目指す
コミュニティ部:ポートカケガワに関わるメンバーのコミュニティをデザインする
コンテンツ発信部:ポートカケガワの取り組みや掛川の魅力を、外へ向けて積極的に伝える
ゲストハウス部:オープンに向けて宿泊事業の準備を進める
実験の進め方として決めたのは、ざっくり以下の3つだけです。
◆実験内容
6/14(水)に開催されたポートカケガワ指定企画のキックオフを皮切りに、プトジェクトが動き出しました。
研究員は全国各地からの参加なので、基本的なやり取りはすべてオンラインにて実施します。
使用したツールは主にSlack、Zoom、メタライフの3つです。
ここからは部門ごとに活動内容をお伝えします。
アート部
アート部は市民参画型のデザインワークショップ開催を目標に活動しました。リーダーの咲月さんは、かけがわ茶エンナーレのアート部門のリーダーも務めており、「まちづくり×アート」という視点が活動及びアウトプットに大きく反映されていました。
このWALL ARTイベントには2日間で合計50名近くの方が参加し、NHKや新聞などのメディアでも紹介され大成功をおさめました。
ちなみにポートカケガワで流れているBGMはアート部のまやまさんが作成してくれた環境音楽(アンビエントミュージック)です。掛川で集音された音が使われているので、お越しの際はぜひ聞いてみてください。
ゲーム部
ゲーム部は地元の商店街と連携し、街歩きARゲームの開発に取り組みました。このARゲームは掛川市で開催されたハロウィンイベント「掛川百鬼夜行」にあわせて、参加者に商店街を巡ってもらうために企画されたもので、掛川にちなんだ妖怪を3Dモデリングしてキャラクター化。商店街に設置されたQRコードを読み込むと、妖怪と音楽、解説が流れる仕組みです。
合計11体の妖怪をキャラクター化し、街を歩きながらARゲームを楽しめるコンテンツが完成しました。この企画はNHKによる取材の中でも大きく取り上げられ、さらには制作で使用したpalanARからも取材を受けるなど、多方面から注目を集めました。
このゲーム開発の過程や商店街の方々のコメントについては、コンテンツ発信部が記事にまとめてくれていますのでぜひご一読ください。
事業創出部
事業創出部では、ポートカケガワを起点とした新たな事業を立ち上げることを目標に活動しました。結果として生まれたのが「研修事業」と「関係人口創出事業」の2つです。
研修事業は研修コンテンツを企画し、サービスとして販売するものです。まずは企業向けの研修から入り、ゆくゆくは個人向けの研修にも対応できる形を目指します。この企画は実験期間終了後も継続して動いており、今後ポートカケガワの事業の1つとして成立するよう現在も営業活動中です。
関係人口創出事業については、静岡県で行なっている「関係人口創出・拡大モデル展開事業費補助金」を活用し、ポートカケガワの関係人口を増やす取り組みです。この取り組みでは「SNS情報発信」「DIYワークショップ」「ZINE(小冊子)づくり」の3つの軸で関係人口を増やします。ちなみにZINEづくりについてはコミュニティ部が主導し、2月発行を目指して現在も進行中です。
コミュニティ部
コミュニティ部はこのプロジェクトがうまく機能するように、全体のコミュニケーションをデザインするのが目標です。
コミュニティ部の活動としては「読書会」「オリジナルグッズ販売」「ポータルサイト運営」「テキストマイニング」がありました。
読書会
読書会は月に1回のペースで「コミュニティ」をテーマにした本をみんなで読み、感想をシェアする形で開かれました。お互いの意見を共有することで、相互理解も深まり、結果として良いコミュニティ形成につながったと感じます。
オリジナルグッズ販売
ポートカケガワのオリジナルグッズを作り、オンラインで販売しています。
ロゴデザインは研究員のけーやんさんがデザインしてくれたもので「つながる」というメッセージが込められています。ぜひお買い求めください!
ポータルサイト運営
ポートカケガワ研究員限定で閲覧できるポータルサイトをNotionで作りました。Slackだとどうしても情報が流れがちなのですが、Notionは情報をストックできるので便利です。
テキストマイニング
テキストマイニングはX(旧Twitter)に投稿された情報の出現頻度や、傾向について分析するものです。
コミュニティ部のみねこさんがマイニングしてくれたのですが、あまりに素晴らしかったので毎月お願いしてやってもらうことになりました。
この分析を毎月行うことで、月毎の投稿内容の変化を追うことができました。最初はまだ掛川に来たことが無いメンバーが、徐々に掛川を訪れると投稿内容が変わってくるんですよね。まちに親しみを感じてきている様子がテキストマイニングから見えてきたことにはとても感動しました。
コンテンツ発信部
掛川の魅力を発信するのがミッションのコンテンツ発信部。
コンテンツ発信部が取り組んだものは「ポートカケガワラジオ」「ZINEづくり」「note発信」でした。
ポートカケガワラジオ
ポートカケガワラジオは「ポートカケガワのことをもっと知りたい!」というメンバーの声に応えて生まれたコンテンツです。
・ポートカケガワという名前になった由来
・ロゴが生まれたエピソード
・ポートカケガワに関わっている人の話
など、さまざまな切り口からポートカケガワの成り立ちを紐解く全5回の内容になっています。
ZINEづくり
ZINEとは個人または少人数の有志が、非営利で発行する自主的な出版物を指します。掛川の魅力を発信するため、コンテンツ発信部が主導してZINEづくりの勉強会やワークショップを開催しました。
現在は関係人口創出事業の取り組みとして、ポートカケガワのオリジナルZINEづくりを進めている最中です。2月に完成予定なのでお楽しみに!
note発信
コンテンツ発信部のメンバーが中心となって、ポートカケガワのnoteアカウントを作成。滞在日記やイベントレポートなど、ポートカケガワをもっと深く知ることのできるコンテンツが読めます。
ゲストハウス部
ゲストハウス部は、ポートカケガワを宿泊所としてオープンできるよう準備を進めるのが目標です。ゲストハウス部は「備品調達」「アンケート調査」「オペレーションマニュアル作成」に取り組みました。
備品調達
備品が何も無い状態から、必要なものをリストアップし現地滞在メンバーが中心となって調達を行いました。金額にして約150万円…!(泣)
アンケート調査
滞在者にアンケートを実施し、評価やフィードバックを通じて施設の改善に役立てました。さまざまな視点が無いと気づけない部分があるので、研究員の皆さんに滞在してもらい、意見をもらえたのは本当に助かりました。
オペレーションマニュアルの作成
他のゲストハウスの運用などを参考にしながら、必要なオペレーションとそのマニュアルを作成しました。4月のオープンに向けて更なる準備を進めている最中です。
◆実験結果
半年にわたる取り組みの結果、すべての目標値を達成しました!!!🎉🎉🎉
1つずつ見ていきましょう!
エコノミー(経済効果)目標値:300万円
エコノミーの計測は、活動で発生した経費や交通費など、実際に使われた金額を集計しました。
300万円の目標に対して374万円の実績となり125%の達成率となりました。
比率として大きかったのは交通費、備品購入費などです。
リレーション(関係人口)目標値:延べ人数1,100人、純人数550人
リレーションの計測は、実際にポートカケガワを訪れた人や、オンラインイベントに参加した人など、ポートカケガワの取り組みに関わった人を集計しました。
延人数1,100人の目標に対して1,548人の実績で141%の達成率、純人数550人の目標に対して597人の実績で109%の達成率となりました。
期間中に企画されたオンラインイベントにも、たくさんの方にご参加いただきました。
エピソード(想いの発信)目標値:100件
エピソードの計測は、SNSやnoteの発信を集計しました。SNSに関してはポジティブワードが使われたものを、想いが紐づいた発信としてカウントしています。
エピソード100件の目標に対して171件の実績で171%の達成率となりました。
エピソード計測においても、テキストマイニングの結果が大変役立ちました。
◆考察
3つの指標をクリアしたことで「共創型の場づくりを通じて、地方のまちは豊かにできる」と結論付けられました。
また3つの指標以外にもそう実感できることがあったので、補足情報としてお伝えします。
①地域の人たちとのつながりが増えた
実験期間中、地域の皆さんにもポートカケガワを自由に使っていただいたのですが、それによりそれまでつながりの無かった方々とつながることができました。結果として掛川で面白い取り組みをしている人たちのことや、掛川の歴史や成り立ちをより深く知ることができました。
これは体感値ですが、実験前に比べて10倍くらい出会いが加速しているように感じています。
②掛川への移住者が生まれた
ポートカケガワの研究員から移住者が生まれました!
1人目がジャンク(喜多村純)さんで、2月より掛川の地域おこし協力隊として掛川市に移住が決定。2人目がテツ(川田哲)さんで、事業創出部の活動のため、現在月の半分は掛川に住んでいるのでもう半移住と言っていいでしょう。
このように「掛川に腰を据えよう」と思ってくれる人が自然に生まれたことは個人的にとてもうれしいことでした。
思い返せば複数の研究員から「掛川に住んでみたい」という声をいただいているので、今後も掛川を居住地として選んでくれる人が増えるかもしれません。そうなったらもっと面白いまちになるなぁと思います。
◆まとめ
本当に楽しい半年間でした。
このメンバーがいなかったら今のポートカケガワは間違いなく存在しないので、巡り合わせの不思議さというか、偶然の必然性みたいなものを感じています。
素敵なメンバーに恵まれて動き出すことができたポートカケガワを幸せに思います。
とはいえ、本番はこれから。
「引き続きポートカケガワに関わりたい」と言ってくれるメンバーもいて、僕もまだまだみんなと一緒に何かやりたいなと思っています。
ということで、4期研究員制度において新たなポートカケガワの指定企画を計画中です…!🔥
3期を上回るオモシロ企画にしますので、ぜひ楽しみにしていてください!!!!!