譌・隱イ
タウ十字の黒ローブ。
香炉には龍の血、フランキンセンス、ミルラ。
瞑想。星に見放された神の子であっても、目を閉じて故郷に思いを馳せれば、私の中にある星の鼓動が呼応する。星と繋がる。
大きく深呼吸。インセンスの香りを全身に行き渡らせる。
蝋燭に火を灯し、祭壇を照らす。
霊力に満ちた森で見つけた、よく手に馴染む落枝。
聖水をかけ、浄化しながら汚れを落とす。
綺麗になったら、根から採った赤色の塗料。
丁寧に塗り重ねていけば、表面がゆっくり色づいていく。
仕上げに、アノインティングのオイル。
地球に降り立ってから、少しずつ元素武器を聖別しながら製作する作業を進めている。
今日は火の象徴。
「炎……火星、火のエレメント……」
そういえば、牡羊座も火に対応した星座だったなと思い出した。
「アレス様……私に、どうか火の加護をお与えください。」
出来上がった火の棒を両手で握りしめ、宙に祈る。
……まぁ、私は既に神から見放された子どもなのですが。
それでもやはり、生みの親の様な存在である事に変わりはありませんから、今日くらいは神との繋がりを感じてもいいかもしれませんね。
香炉から煙る香りを火の棒に浴びせ、大事に大事に祭壇の引き出しに仕舞う。
次の武器を作る為にも、今日はゆっくり神経を鎮めてから眠りにつこう。
部屋に充ちている燻した花の様な匂いを肺にめいいっぱい吸い込んで、瞑想。
ローブを脱いで魔術用の部屋から出れば、がらんとした自室が出迎える。
今日もまた、身体を休ませるだけの仮眠。起きたら素材を探しに行かなくては。
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