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小さな輝き、綻び

「ねぇ、またあの子……」

「いつもの事だろ、そっとしておいた方がいい。」


そんな印象を植え付けられて、何年経っただろう。

星の命は人に比べたらずっと長いものだから、教育を受けている年数も、きっと人間さんのものよりもずっとずっと、長かったのだろう。


「アストロさんは、本が好きなのね。」

「ご、ごめんなさい……」


初めて他の神の子たちと違うと自覚したのは、初等部の頃だった。
私は朝早くに登校して学校の図書室に入り浸り、校長先生が太陽の火種ストウブを付けてくれるのを横目に、ひたすら大好きな本を読み続けていた。

ファンタジー、ミステリー、怪奇、伝記……何でも自分の目に飛び込んで来るものは新鮮で、私の中の冒険心を満たし、何時までも私の心を空想の世界へと縫い止めてくれるものだった。

そうやって読み進めているうちに、私は始業のチャイムを聞き逃し、慌てて授業を始めようとしている自分の教室に飛び込んだのであった。

授業が始まってからも、私は何処か夢うつつであり、早く休み時間を迎えて冒険の続きへと身を投じたいと考えていた。


中等部になれば、幾らか時間の意識はついたものの、好きなものへの熱中は止められなかった。
本を読み、絵を描き、ほんの少し空想が乗じて占いや魔術の類いを独学で勉強したりして。

初等部の頃の友達は、もう傍らにいなかった。
いつも図書室にこもってうんうん唸りながら本をめくり、怪しげな紋様を書いている女の子。

そんな私の環境を心配してか、クラスの先生が部活動をやってみないかと声をかけてきた。
私は体力も運動神経もからっきしであり、運動部は向いていない。
おまけに小さな学校に入れられていたから、文化部と言えば吹奏楽部くらいしか無かった。


吹奏楽部、恐るべし。
文化部の皮を被った運動部とはよく言ったもので、ひたすら顧問の先生に厳しく指導され、体力を付けるように運動もさせられた。
おまけに自分が一人で物事を抱え込み、なかなか人に頼ろうとしない事を部活内のミーティング中に見抜かれ、泣いてしまった。

他人を信用していないというレッテルまで、貼られた。


高等部に上がった。
なるべく中等部の頃の汚名を知らない子たちのいる方へと、住処を移して学校を変えた。

それなりに自分も他の神の子たちの様になろうと、明るく前向きに、少しだけポジティブに演じるようになった。
自分を、偽った。

また中等部の頃のように可哀想な子どもと思われたくなくて、文化部である演劇部に入って裏方に徹することにした。
人の補佐を務めるのは好きだったから、小道具を作ったり照明を考えたりするのは楽しかった。


それでも、やっぱり友達はいなくて。
いつもひとりきりで、図書室に入り浸っては星の歴史、神話、人間さんの世界の本を読んでいた。

いつまでも、私は皆と同じ"牡羊座の神の子"には、なれなかった。

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