【ルージュの勝算】
ルージュは私に伝言をくれた
『紅を引きなさい、そうすればあなたの人生がもっと輝くから』
…いつからだろう、口紅が好きになったのは。
昔、初めて私が口紅を塗ったのは、七五三の時だった。
当時の写真、私の顔は全てムンクの叫びみたいな表情になっていて、(ひょえーって口してた)
紅がベタベタして気持ち悪くて、"いかにも化粧品"って感じの匂いも嫌いで、口を閉じるのがとにかく嫌だった。
そんな記憶がかすかにある。
次の記憶は、小学生の頃。
母のメイクボックス。
母がお友達から貰った、海外土産のシャネルの口紅を、興味本意で開けてみた。
やはり独特な匂いが苦手で、すぐ蓋を閉じた。
化粧の意味すら理解していなかった。
初めて、口紅が私の味方になってくれたのは、高校生の時。
口紅じゃなくてグロスだけど…。恋をした時に、カバンに忍ばせていた。
たぶん、ドラッグストアで買った安い製品だけど
当時の私のお守りみたいなもの。
淡い記憶。
時は流れ○×年、、、
今や私は、口紅を選ぶことから一日が始まる。
と言っても過言では無い。
ぼんやりとした頭が冴えるのは、きまって口紅を塗るあのタイミング。
無垢な心で職場に向き合いたい時は、
CHANELのルージュココフラッシュ90。(粘膜リップと呼ばれてる、純なピンクローズみたい)
凝り固まらない気持ちを自分の中で大事にしたい時は、
セルヴォーグの07(レンガ色リップと呼ばれてる)
強く芯のある、頼れる女性像を思い浮かべる時は、
クレドポーのルージュルミヌ09(藍を感じる赤というのかな…)
口紅の奥深さ、一度では語れないが、
口につけた瞬間に、背中をフッと押された気持ちになる。
この瞬間に、
メイクの効用、そしてメイクの高揚
を感じますね、はい。
一日が彩られるような、気がするんだ。
さぁ今日も愉しんで、
って口紅が教えてくれているような気がするから。
淡いあの日と変わらぬ、私の味方。
背中を押してくれる口紅を数本持つことは、
人生の勝機になる、かもしれない。なんて。