進学か就職か、大学院進学問題。進学賛成編
高校進学率 約95%、大学進学率 約58%、大学院進学率 約10%というのが2020年での概算になっています。
大部分の人は高校に行き、半分くらいが大学に進学しますが、そこからは90%が就職となります。つまり、学年全体の5%程度の人しか大学院に行かないということになります。
この時期、来年の4月に就職するのか大学院に行くのか迷っている人もいると思います。進学か就職かは答えのない問題ですが、メリット、デメリットについて考えてみたいと思います。学ぶのか、働くのか、お金と時間を使ってまで学ぶメリットは何かというところがポイントだと思います。
1回目は賛成の理由を述べて、反論、反論の反論、反論の反論の反論までいくつか書き出してみます。
「賛成の理由1」
大学4年間勉強したのであれば、そこで学んだことをさらに深く学ぶのは若い方が良い。2年間大学院に行っても就職できるので進学すべき
→(反論)学部で4年間勉強したんだから就職した方が良い、あと2年授業料を払ったからと言って、将来的にその分を回収できる保証はない。特に最近は奨学金を借りて大学院に行く生徒がいるが、一度、卒業時点での借金総額と返済期間を確認してみた方が良い
→(反論の反論)社会人になると学ぶ期間が減ってしまう。研究は大学院生という立場で行うのが一番自由がきく。もし、経済的に行けるだけの余裕があるのであれば行ってみるべき
→(反論の反論の反論)研究職につくわけではないのだから、とりあえず大学院というのは時間とお金がもったいない。大学にいてもアルバイト等しているくらいなら働くべきである。
「賛成の理由2」
理系、特に工学部であれば、研究が就職先の仕事とマッチしているケースも多いので進学はすべき。文系でも、調べる、発表するというスキルは社会人になってからも必要なスキルなので進学して身につけるのが良い
→(反論)理系の場合は就職先が広がるが、文系の場合は年齢を重ねるだけ就職には不利になる。社会人になった時のスキルは、会社の研修で身につければ良いのであって、大学と会社のスキルは一致していない
→(反論の反論)学部時代の実績で行きたい会社に内定をもらえればいいが、ないのであれば大学院で学会発表するなどして実績を作る手がある。可能性があれば進学がよい
→(反論の反論の反論)大学院に行ったところで人を育てる教官の下につかないと実績を作るのは難しい。どうせ行くなら、他校も視野に入れて学校名で就職に備えるのも手ではないか
「賛成の理由3」
研究者を目指すのであれば、進学しか選択肢がない、若い時しか進学のチャンスはないので進学すべき
→(反論)研究者になれる可能性は非常に低い。就職できたとしてもポスドク問題に象徴されるように年収200万円以下で生活している人がたくさんいる。大学側は教員を雇う費用がなく、非常勤講師が講義を細切れで担当している時代なので、就職先の選択肢にしないほうがよい
→(反論の反論)日本の研究者不足は指摘されている通りで日本の大学で博士課程まで進学するには相当の覚悟がいる。研究者を目指すのであれば、海外の大学で返済義務の無い奨学金がでる大学に進学する選択肢もある
→(反論の反論の反論)海外の大学に出て研究者を目指すだけの英語力があれば進学も視野に入る。しかし、そこまでの学力も覚悟も無いのであれば、一旦、就職してお金を貯めた方がよい。そのお金を使ってでも行きたいと思ったら将来、再修学すればよい。
「賛成の理由4」
社会人になると自分の時間が取れなくなってしまう。学生時代を楽しみつつ好きなことをしたいのであれば大学院に進学すべき
→(反論)経済的にそこまで恵まれている状況であれば進学しても良いが借金をしてまで行く価値はない。学生時代をもう2年楽しむという程度の同期であれば、2年後に先に就職した人には追いつけない。その分、生涯賃金も目減りするので、就職の方がよい
→(反論の反論)余裕のない状況で就職先を選んだとしてもブラック企業しか残っていないかもしれない。少なくとも2年後に就職するつもりであれば、現時点でも就職説明会くらいは出て情報収集は必要である。その上で、勉強しながら就職先を考えるのがよい
→(反論の反論の反論)採用は能力もあるが、景気で採用人数が変わってしまう。そのため、採用があるうちに就職しておくのがよい。景気が悪くなって採用枠が減ってしまったら、どう頑張っても内定が出ないこともあるし、そこから就職浪人だと悪いサイクルに入ってしまう。
今回は、賛成から初めて、反論を書いてみました。個人的には、バイト漬けでない状況で研究に打ち込むだけの覚悟があるのであれば進学するのがよいと考えています。最近は、専攻を変えたり、大学院で独立した組織もあるので就職のために専攻を変えるという選択肢もあり得ます。
実は、私は学部は数学でしたが。大学院で情報に専攻を変えました。周囲も専攻を変えた人が多かったです。そのため、会社の人事異動も特に違和感はありません。会社だと同じ仕事をずっとやることはないので、自分の分野は変わっていくものです。