見出し画像

精子取引トラブルについて考えるという練習問題(中編)

先日読んだ「自分の意見で生きていこう」の著者ちきりんさんがVoicyで仰っていた練習問題、精子取引トラブルについて考えてみましょう。というのを、実際にnoteで練習します。中編になります。

再度、問題の背景です。実際にあったニュースで、以下のような概要です。
・SNSで知り合った男性から精子提供を受けて子を出産した女性が、相手男性が学歴、国籍、婚姻歴を詐称していたとして約3億円の賠償請求をした。女性は夫との間に1人の子がいるが、夫に難病の疑いがあるため、第2子は第3者からの精子提供を求めSNSで探していたが、条件として東大卒、日本人、未婚などの条件を出していた。それに対して、精子を提供した男性は京大卒を偽り(実際は地方国立大)、国籍も中国、既婚であった。

今回は、精子取引に反対(夫の精子でも妻は妊娠できるという仮定をおいています)の意見を書いていきます。


「反対の理由1」:結婚している夫婦で旦那の精子でも妊娠できるのに、第3者から精子の提供を受けるのがおかしい。そんなことを将来、自分の子供に伝えられるわけがない。

「反対の理由2」:優秀な遺伝子が欲しいという気持ちはわかるが、それを前提とした第3者からの精子提供で、子供に障害があった場合に育てられるのだろうか、悪い方に転んだ可能性を考えると取引すべきではない

「反対の理由3」:妻が第3者の男性を気に入っていても、結婚をしている夫婦が第3者から精子の提供を受けるのはおかしい。優秀な子供が欲しいのであれば、生まれてきている子供を引き取って育てればよい。

「反対の理由4」:たとえ、旦那に障害の恐れがあったとしても、子育ての公平性を考えると旦那の子供、第3者の子供という環境を意図的に作り出すことは将来的に子供側が不公平を感じる原因になる。恨まれる原因にもなるのでやめるべき。

「反対の理由5」:子供の方から考えると、自分の親が実の父親ではない、しかもその原因が母親が優秀な子供の遺伝子が欲しかったという理由だとしたら喜ばれるとは思えない。優秀といっても将来が保証されているわけではないし、育つ環境による能力の伸びの方が大きい。子供のためには精子提供はやめるべき。

次に、反対の理由に対する反論、さらにその反論を考えていきます。

「反対の理由1」:結婚している夫婦で旦那の精子でも妊娠できるのに、第3者から精子の提供を受けるのがおかしい。そんなことを将来、自分の子供に伝えられるわけがない。
 →(反論)妊娠して育てるという子育ての大部分は妻の仕事なので、妻の意思で精子提供による優秀な子供を産みたいという意見を尊重すべき。子供に聞かれた時にも、優秀な人の子供なんだよ、と教えて上がればよい。子供の自身にもつながる。
 →→(反論の反論)子育てにかかる経済的な負担は夫が協力することになるので妻の意見だけでは精子の提供を認めるべきではない。将来的に二人目の子供に平等に接することは不可能なので、二人には差があるのだということを子供に説明できないのであれば精子提供は避けるべき

「反対の理由2」:優秀な遺伝子が欲しいという気持ちはわかるが、それを前提とした第3者からの精子提供で、子供に障害があった場合に育てられるのだろうか、悪い方に転んだ可能性を考えると取引すべきではない
 →(反論)たとえ悪い方に転ぶ可能性があるとしても優秀な遺伝子の方にかけてみたいというのが自然な考えで、そのためにいい学校に入れたり、いい会社に入ったりするのと同じ。出来るだけ妻の意思を尊重して精子提供を認めるべき
 →→(反論の反論)子供が優秀な遺伝子ならば優秀に育つという保証なんてどこにもない、それならば育っていく環境を良くしていく努力を夫婦で協力すべきであって、第3者の優秀な遺伝子に頼る考えがおかしい

「反対の理由3」:妻が第3者の男性を気に入っていても、結婚をしている夫婦が第3者から精子の提供を受けるのはおかしい。優秀な子供が欲しいのであれば、生まれてきている子供を引き取って育てればよい。
 →(反論)他人の子供を引き取るのと、自分で妊娠して育てるのは全然違う、たとえ夫の子供でなくても妻からしたら自分で出産すれば自分の子供になる、妻が自分の優秀な子供を求めているので精子提供を認めるべき
 →(反論の反論)どうしても第3者の精子提供を受けたいのであれば、それが原因で離婚することや、一人目の子供とも妻が離別することも考慮すべき。優秀な子供をそこまでして欲しいのであれば、別の男性と再婚する方が良い。

「反対の理由4」:たとえ、旦那に障害の恐れがあったとしても、子育ての公平性を考えると旦那の子供、第3者の子供という環境を意図的に作り出すことは将来的に子供側が不公平を感じる原因になる。恨まれる原因にもなるのでやめるべき。
 →(反論)子供が不公平を感じるかどうかは、将来にならないとわからない問題。2人を十分に育てるだけの経済力、環境があれば問題はない。相続や進学なども公平な条件を子供に提示して十分な説明が可能
 →(反論の反論)子供に状況を説明しても、それを子供が友達に話して理解されるような環境はまだ整備されていない。そんな少数が認められるほど社会は豊かではない。特に日本は。

「反対の理由5」:子供の方から考えると、自分の親が実の父親ではない、しかもその原因が母親が優秀な子供の遺伝子が欲しかったという理由だとしたら喜ばれるとは思えない。優秀といっても将来が保証されているわけではないし、育つ環境による能力の伸びの方が大きい。子供のためには精子提供はやめるべき
 →(反論)優秀な遺伝子を残したいという欲望は昔から人間が持っているもので生物はそうやって生き残ってきた。実際は変化に対応できるものが生き残るのかもしれないが。いずれにしろ、長い人類の子孫繁栄という意味では少子化の状況では少しでも優秀な遺伝子を多く残すべき
 →(反論の反論)人類全体として優秀な遺伝子を残すという話であれば、個人で取り組む話でもない。もし個人で取り組むとしたら完全に自己責任でやるべきで夫がいる状況で取り組むべきことではない

ここまでが反対の意見と反論とその反論です。

反対の意見を書いてみて、自分は強く反対しているわけではないし、結局のところ、これは個人の問題であって、その後で子供に問題が起きた時に夫の協力は期待できないし、公共のサポートも十分ではない。そういったことを乗り越えていく強い意志が必要なんだろうなと思いました。では、賛成なのかというと、自分が当事者だったら妻が第三者の精子提供で妊娠した時にどう感じるだろうかと考えると、素直に喜べない気もします。そのあたりがこの問題に答えがない部分だし、社会制度が十分でない日本の制度の問題点でもあるのだろうと思います。後編ではそのあたりのまとめを書きます。

いいなと思ったら応援しよう!