精子取引トラブルについて考えるという練習問題(後編)
前編と中編で、賛成の立場、反対の立場を無理矢理に取って意見を述べ、それぞれの意見に反論と反論の反論を書いてみました。後編では自分の意見のまとめを書いてみたいと思います。
自分は賛成なのか反対なのかどっちなのか
賛成です。もちろん答えはありませんし、無理に賛成か反対かを決める必要はありません。しかしながら精子提供ということ自体は子供を産む選択肢として必要と考えます。夫の精子では妊娠できない妻の場合は当然ですし、夫の精子で妊娠できる場合も夫婦の合意、子供への説明責任を果たせれば問題ないと考えます。必要なのは母親がどんなことがあっても生まれてきた子供を最後まで育てるという覚悟だと思います。
自分が当事者だったらどうするのか
では、自分が当事者だったらいいのかという問いについて考えてみます。
今回の問題のように、妻との間に子供がすでに一人いて、二人目の子供が欲しいんだけど自分の障害が遺伝する恐れがあるため、第3者の優秀な精子で妊娠したいと妻が言い出したら。おそらく自分は容認すると思います。ただし本能では拒絶しますので、可愛がることはできないだろうなと感じます。もちろん他人の子供に接するように普通に何かを教えたりすることはできると思います。しかし、本人の将来のために本気で叱るようなことはできないような気がします。それは結局のところ他人の子供だし、優秀なんだったら勝手に育つだろうという思いが消えないからです。
この問題を解決するために変えるべき制度はなんなのか
1、シングルマザーでも不自由なく生活できる環境
大きく分けて2つ、経済的な国の補助と、ひとり親が理解される社会だと思います。経済的な国の補助については、アメリカやイギリスなどが日本よりも先に取り組んでおり、貧困を救うための制度、シングルマザーへの補助金など法整備が進んでいます。経済的な問題がなければ今回のケースでも夫と離婚した上で第三者の精子提供を受けて子供を育てるという選択肢があったはずです。次に理解される社会ですが、これはもう、ひとり親が増えて、それが当たり前の社会が来るのを待つしかありません。最近では結婚していないけど子供を産んだという歌手、スポーツ選手、芸能人もいらっしゃるようなので将来的には許容される社会がやってくるのも近いように思えます。
2、精子提供の際に身元を確認できるインフラ
氏名、年齢などの情報は非公開でも、学歴、国籍、婚姻歴などは登録制で保証できるような組織から正式に有料で精子提供できていれば今回の問題は(身元詐称という事件)起きなかったはずです。ただ、これを商売として認めると、オープン価格をどう押さえるのか、個人情報が漏洩した時に責任はどこにあるのかなど別の問題もあります。
今回の事件で気になる点
第3者の精子提供を受けた妻は、なぜ相手の条件として未婚を提示したのか。東大卒/京大卒、日本人という条件の提示はいいとして、精子の提供だけであれば相手が既婚でも問題がなかったはずです。これは妊娠した後になし崩し的に旦那と離婚して、精子提供者と再婚するという計画でもあったのではないかと思うのです。しかし相手の素性を調べたら実は既婚だった、その上、他にも身元情報に詐称があったという状況を想像します。もしかしたら結婚しようと言い出したんでしょうか。
それ以外にも、精子提供だけとはいえ、精子提供者との会話はなかったのか気になります。学生時代の話、出身地、育ちなど、全く怪しいところはなかったのでしょうか。
また、一番気になるところは夫がどこまで合意していたのかというところです。話合いができていたら施設に入れて里親探しの状況にするとも思えません。
いずれにしろ、産まれてしまった子供が施設に入れられるというのは最悪の事態です。なぜ自分の子として育てられないのか、相手の詐称がわかった時点で投げ出すという無責任さから、子育てには向いていない方なんだなというのがよくわかります。この部分は全く同情できないです。仮に裁判で請求金額を貰えたとしたら、そのお金で子供を施設から引き取って責任持って育てて欲しいと思います。