【採択者紹介】株式会社経営芸術総合研究所~新たな試みで捉える地域~
全国・世界・地元から、福島県12市町村に、芸術家が集まり、滞在制作をするハマカルアートプロジェクト(経済産業省令和5年度地域経済政策推進事業(芸術家の中期滞在制作支援事業)。
採択者とその活動を紹介しています。
どのような人々が、どのようなアートを福島県東部の12市町村でつくろうとしているのでしょうか?
今回は、アーティスト・イン・レジデンスのプログラムにて大熊町を中心に制作活動を行う株式会社経営芸術総合研究所の田島悠史さんについてご紹介します。
経営者、そしてアーティストとして活動 田島悠史さん
東京出身の田島さんは、福島県いわき市四倉出身の祖父を持つ。
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了、慶應義塾大学大学院後期博士課程修了。博士(政策・メディア)の経歴を持つ。専門は小規模地域芸術祭をはじめとする文化芸術団体のマネジメント。大正大学表現学部専任講師も務める。
また、中小企業診断士の資格を有し、過去には静岡県伊東市の宇佐美商店街の事業者と大学生と連携した広報づくりや「ひたちなかプロジェクションマッピング」事業の立ち上げ取り組み、3年目から自走可能を実現した実績を持つ。
田島さんは、ハマカルアートプロジェクトがローンチされた頃から興味を持ち、社内で検討していたころ、ちょうど大熊町で何かしたいと考えている方に北海道で出会った。その方と連携してやろうと決め、大熊町での活動が決まった。
大熊町に訪れて、田島さんは普通の地域芸術祭のやり方ではできないと感じた。他の地域では見ない使われていない野球場や飲食店などが目に留まった。「震災という要素が多く、それも大事な要素であり、忘れてはいけないこと。その一方で、ここに来るアーティストは震災に関する作品が多く、それぞれのアーティストの力を活かしきれていない。「震災」というテーマから逃れ、一度忘れてみることで作品を作ることができると思う」と話す田島さん。さらに、「ぼーっと町を眺めてみることで、見方が変わるかもしれない」と言う。これらの発想が、今回、田島さんが手がける本プロジェクトのテーマである『忘却と恍惚』につながる。
必要なことならば、アーティストとしてやらなくてはいけない、その覚悟と情熱を持つ田島さん。経営者として制約もある中、アーティストとしてやるべきことをしっかりやると切り替えている。
その一つのポイントとして「未来志向」にも注目したい。地域の人と関わるうえで、地域にもともと住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんに受け入れてもらうこともとても大事なことだが、短期間で地域コミュニティの活性化に繋げるため、田島さんたちは若者たちをターゲットとし、アプローチした。アート作品だけでなく、カルチャーや恋愛の話で盛り上がれる関係性が出来上がれば、短期間での地域コミュニティの活性化や地域の魅力の発見に繋がると田島さんは考えている。
次回は招へいされたアーティストの佐々木樹さんの紹介です。