【プロジェクト紹介】GATCH株式会社 『⼤堀相⾺焼 松永窯 震災遺構型プロジェクト』~アートと伝統工芸の邂逅③~
全国・世界・地元から、福島県浜通り12市町村にて芸術家が滞在制作をする「ハマカルアートプロジェクト」(経済産業省令和5年度地域経済政策推進事業(芸術家の中期滞在制作支援事業)。
その採択プロジェクトのひとつ、GATCH(ガッチ)株式会社 による
・⼤堀相⾺焼松永窯震災遺構型 アーティスト・イン・レジデンス プロジェクトにつきまして、今回は滞在芸術家 的場 真唯(まい) さんへのインタビューをご紹介したいと思います!
ー滞在アーティスト 的場 真唯 さんとはー
今回取材に伺った的場さんは、慶應義塾大学にて美学美術史学を専攻され、卒業後は東京藝術大学大学院映像研究科にてメディア映像の専攻を修められた後、現在は大正大学表現学部 表現文化学科に専任講師として携わり、シングルチャンネルの映像が持つ記録性や再現性を研究されています。
ー 特定の人物ではなく、風景として自分が感じた"町"や"地域"の見続けたいと感じた場所を収めるー
今回の取材は私の的場さんへの取材のみならず、的場さんの現地収録にも同行させていただきました。
この日の収録先は
請戸地区に広がる松の植樹エリアと波打ち際
同じく請戸の防潮堤の上
旧松永窯陶芸館
谷津田地区に広がるソーラーパネル
でした。
的場さん曰く「『映像を見る』という行為は、身体的にこそ「静」ですが、心理的には「動」を引き出さないといけない。即席で映像が捨てられてしまいがちな時代にあって、そうした一瞬の刺激物ではない、自分の方で探したり、待ったりする動画に意味があると感じています。刺激的な映像効果を駆使するといった方法ではなく、ある風景をそのまま提示し続ける。」ということです。
確かに、収録の先々で、じっとカメラとマイクを構えて撮っていらっしゃいました。
「じっと何かを見続ける行為が好きで「見続ける」「待つ」は大事なことだとも自身の中でも確信しているので、(見た人・相手から)否定的な反応が来ても、後悔することこそないのですが、もっと違う見せ方があっただろうか、どうしていくか等は考えますね」と的場さん。
―なぜ、そのポイント(場所)での収録を選んだのか―
上記しましたスポットを含め、どういった基準で収録箇所を決めているのかについて伺ったところ
初めて来たときに感じた気持ちをそのまま残せる場所を選んだ
年末の下見で、初めて町を見て感覚的に気になったところである
特定の人物をではなく、風景として自分が感じた町や地域の見続けたいと感じた場所
作品全体として考えた時に見続けたいと感じた場所
を選んでいるとのことで、「初めて来たときに感じた気持ちをそのまま残せる場所や、見続けたい要素を発見した場所でカメラを回して、被災地と震災を経験していない場所の人が2024年1月に交差したという記録的な感じのモノがあってもイイかなと思いますし。後世のためにというよりはむしろ、"いま"の記録ということで撮っています」とのことでした。
また「町の中心部であれ、大堀地区であれ、何を撮りたいかは同じ感覚で選んでいます。それがたまたまこっちは大堀だった、町場だったというだけで、撮る時の心象には変わりはないですね。ただ、浪江の町に初めて来たときに、都内にもないスマモビ(浪江町を走るデマンドのバス)の様な便利なサービスが導入されていて、明らかに変わっていっているものと、変わらずに残っているものと、ハッキリした状態で共存していると感じました。なので、そういった要素も織り込みたいな とは考えています」とお話しくださいました。
「技術・テクノロジー自体や、テクノロジーを使った"表現"も含めてですが、テクノロジー自体の進化や変化も激しいので、自分の中ではもっと考え続けたいのに、"走ることを強いられる"感覚があります。目まぐるしい中にはない真逆の『ただ単純にひとつの映像を見ることの楽しさ』も大切だと思うんです」
「動」や「静」、そして過去と未来に中にある「今」といった様々な物差しの中で、今回の制作品は「相手に『じっと何かを見続ける』や『待つこと』を強いるものになると思います」とお話しくださった的場さん。
完成してくる映像作品も非常に興味深いです!
今回は『⼤堀相⾺焼 松永窯 震災遺構型プロジェクト』の滞在芸術家、的場 真唯さんへのインタビュー内容をお伝えしました。
次回は、2月20日に行われる「ハマカルアートプロジェクト2023 最終報告会」での、松永さんによる報告等についてお伝えします。
次回もお楽しみに!