【プロジェクト紹介】『アートと考古学国際交流研究会実行委員会』ワークショップ①
全国・世界・地元から、福島県12市町村に、芸術家が集まり、滞在制作をするハマカルアートプロジェクト(経済産業省令和5年度地域経済政策推進事業(芸術家の中期滞在制作支援事業))。
その採択プログラムのひとつ、『アートと考古学国際交流研究会実行委員会』による現地ワークショップが、2024年2月10日(土)~2024年2月12日(月)、および2024年2月17日(土)~2024年2月18日(日)の間、南相馬市小高区を中心に行われました。
前半Weekのうち、『表現からつながる家"粒粒"』にて行われた
「伝説の耳谷ーー大悲山の大蛇伝説と浦尻貝塚物語」
――アーティスト:gwai(服飾作家)、小原 二三夫(全盲の彫刻家)
【ワークショップ内容】
gwaiの服飾ワークショップ「大蛇っぽいドレスを作ろう partⅡ」
小原による木彫、粘土塑像制作実演とギャラリートーク
を取材、前編として服飾作家 gwaiさんにお伺いしたお話をご紹介します!(小原さんは後編でご紹介します)
~~ワークショップ「大蛇っぽいドレスを作ろう partⅡ」~~
gwaiさんはご出身の関西圏を中心に活動されている服飾作家さんで、元は服のデザイナー兼職人という経歴をお持ちです。
2014年からアーティスト的な服飾作家としての活動を開始され、かつての制作では、展示会場の近くでガンダム展が開催されていたので、それに履かせられるような"大きなジーパン"を作ったりされたことがあるとか。
ご本人は"アートをやっているんだ!"という実感を余り持たずして活動されていたそうなのですが、展示を見に来たアート関係者の方に「君は現代アートをやっている」旨のことを投げかけられたことがきっかけで、ご自身をアーティストとして認識なさったそうです。
ーリサーチの開始、長々と繋がってゆく「大蛇伝説」ー
2023年の11月からリサーチに小高へ入られたというgwaiさん。これまでも何度か小高へいらしたことはあったそうなのですが、"エモーショナルな"写真をいっぱい撮ってみようということで、今回は自転車であちこち走り回られたそうです。
「町のカタチ的には縦に長いんやなぁ、と。空もキレイやし川も多くて、その水面に移る景色の美しさとか、夜になったら星もキレイで、結果的に見返したら空が中心の写真がいっぱいになってました」と振り返られます。
そんな中で、町の中に遺跡や、由緒書が多くあることに気付かれます。
「どうも調べていったら、"大悲山の大蛇伝説"なるものがあるらしくて、町の人たちにもすごく親しく、愛されてることが見えて来まして。なのでリサーチ滞在後半は大蛇伝説についてがメインになりましたね」とのこと。
実際、町の居酒屋さんに行っても、そこの大将が大蛇伝説がらみのパンフレットや本などを収集されていて資料提供して頂いたり、お土産を買いに行った先では"学芸会の芸で大蛇伝説を扱う"、"盆踊りで大蛇伝説を取り入れた出し物をした"などの逸話が聞けたそうです。
「南相馬市は地域的にも『野馬追』がピックアップされることが多いけど、ことこの旧小高町域では"大蛇伝説"なんやな。みんなの心の中心にあるハートフルなものを、自分の活動を通してもっと残せたらな、と思った」とgwaiさん。こうして今回のテーマが「大蛇っぽいドレスを作ろう」("写真"と"大蛇伝説"を服飾で融合する)になったそうです。
ーコミュニティアートとしての制作、そして大蛇による新たな"つながり"ー
テーマが決まった中で、gwaiさん的には【コミュニティアート】としての要素
地域のみなさんと一緒に作る(ワークショップ)
名刺代わりの作品(どれほど作品でインパクト残せるか)
を大切にしながら、ミシン糸で繭を創ったり等の性別的なテクスチャーを布で表現したりしつつ、鱗を創るにあたっては
みんなで感じながら、思い出の画像などを使って
自分でも質感等にこだわりながら
といった方向性で進めてこられたそうです。
また、大蛇"伝説"自体はみんなそれぞれの心の中にあるので、実際のサイズ感を再現しよう!ということで、大きなサイズで制作したところ、ワークショップに参加された幅広い世代の方々が喜んでくださり、gwaiさんご自身もやってよかった、初日の時点で報われた…と感じられたとか。
「ワークショップ開催期間中の3日間で、既に3回広げてるんですよね。毎回広げるメンバーが違うし、担ぐ人によって蛇の性格が変わるんですよ、風や雰囲気とかも出て。みんなで広げたら風を受けて、大きさや生き物感を感じることができて、なんとなくみんなが打ち解けて、より大蛇に対しても愛着がを感じてもらえたかなと」と、嬉しそうにお話しして下さいました。
ーgwaiと南相馬はまだ始まったばかりー
南相馬市小高を中心とした滞在活動をされたgwaiさん。今回の滞在で行政も含めた幅広い地域の方々とのつながりもできたそうで、今後の展望を伺うと、これまた小高に多く見受けられる「横穴」に注目されているとか。
「お宅の裏にある穴、見せてください!的なのも面白いなと。(アーティスト活動として)制作自体は基本的に、作っている最中はしんどいものですが、デザインとかを思いついた瞬間にまず第一の"面白い"が来ますね。それが思った通りの"カタチ"になったらちょうどゼロになる感じ。その上で、みんなに喜ばれたりしてプラスになってゆく心持ちです。(自分自身は)よそから来ている者なので、逆にその視点で地域の魅力を再発見できればなと。今後もそんな感じで広げてゆければと思っています」
ということでした。
南相馬市以外でも活動の輪を広げていければなぁと語ってくださったgwaiさん。今回のハマカルアートプロジェクトをきっかけに"浜通り"と"アーティスト gwai"のつながりが広がり、更なるアートの幅が広がっていければいいですね!
次回は同日ワークショップ開催の彫刻家 小原 二三夫さんへの取材をお届けします!お楽しみに!