20「シンデレラをつかまえて」
ティーンズハート「つかまえてシリーズ」の感想をだらだらと綴ります。
わたしの好きな菊地薫がここにもいた。
「おれ、明日が誕生日なんだよ」
といったのは、クラスメイトの横館クンだった。
あたしとサキは教室の窓際にいて、いつものように、くだらないむだ話をしていたところだった。
あたし、工藤由香。高3。
事件がようやく大団円を迎えたいま考えてみると、2週間前の昼休みに横館クンがいったひと言が、あの嵐のようなドタバタ騒ぎ“シンデレラ宝石盗難事件”の始まりだった……。
秋野ひとみ『シンデレラをつかまえて』1992年
このシリーズによくある、やけにもったいぶった曖昧な導入部を除けば、わりと好みのお話でした。掴みどころのない感じがね。
由香とサキが、探偵としてではなく、あくまでも「探偵ごっこ」として、成り行きでドタバタと事態に巻き込まれていくっていう流れのほうが好きなのかもなぁ。
犯人を追い詰める由香も、つらくなさそうだし。
蓉子さんの美しさと格好良さも相変わらずでした。
圭一郎さんと圭二郎さんが、蓉子さんのことを「蓉子」って呼ぶと、どきっとする。なんでか分かんないけど。
なんにせよ、わたしの大好きな軟派な菊地薫が今作も堪能できました。
ディスコ(……時代だね)で、女の子にちやほやされてる菊地薫の気配を遠巻きに感じながら不機嫌になる由香が面白い。
そのときの由香とサキの会話も良い。
喧騒が聞こえてきそうな、不思議な臨場感がある。
今回の菊地薫は犯人と格闘の末、ボコボコにやられちゃったけど、べつにいい。
あたしの許しなんていらないだろうけど、全然いい。だって大学生だもの。
由香とサキの菊地薫に対する雑な扱いも、またいい。
好きとか嫌いとか、そういう恋愛的な要素をとっぱらっても、なんとなく無視することができない、琴線に触れるなにかがある……みたいな関係なのかな。由香と菊地薫は。
由香が夢のなかで菊地薫に言ったセリフは、そういう予感めいたものの裏返しだと思いたい。
うん、これは菊地薫派の願望だな。
小林クンも可愛かったな。
小学生のときは、小林クン単体では特に魅力を感じなかったけどな。不思議。(……老い?)
小林クンは、なんかいい匂いがしそうだよね。
香水とか、そういう色気づいた香りじゃなくてさ。もっと、健全なやつよ。
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