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雑記20/06/29月 『リンダキューブ』のすごさ、プレイヤーに自発的に短期目標を見つけさせること、その手法、シナリオCもすごい

 

スマホアプリのゲームに疲れ果てる中でプレイした『リンダキューブアゲイン』(1997年)は、アプリと同じ”夢中にさせかた”を、スマートにやってのけた。

動物を集めるゲームだ。ジャンルは「サイコスリラー&ハンティングRPG」と書いてある。
PCエンジンのオリジナル版が出たのは1995年、ポケモンより、モンハンより早かった

舞台は未来、「惑星ネオケニア」。
地球を離れここに移住してきた人々だったが、巨大隕石が(作中では「地球死暦」の)1999年にやってくると発覚。大急ぎ別の惑星へと移住を進めるなか、なんと「神」からの「箱舟」も飛来。
主人公たちは、神の命にしたがい、この惑星の動物を「ひとつがいずつ」箱舟へと収容する任務につく・・・。

というわけで、ジャンルとしてはRPGで、いわゆるモンスター = 動物
最初は弱めの「リス」「ブタ」などを倒して捕獲、徐々に「カバ」「シロクマ」、最後のほうでは「クジラ」なんかを倒すことになる。
なお、場所は「惑星ネオケニア」なので、動物はよく知った名に反して絶妙な気持ち悪さを呈した見た目であり、なんで? といえば、昔地球から移住してきた祖先が、ちょっとした特徴だけあてはめて適当につけた名前、という設定になっている。

それでこれが、なんでスマホアプリのゲームと全然違うかって話でしたよね。

アプリゲーム系は(…って振りかぶりすぎるのもよくないが個人的には…)プレイヤーへの目的の与え方が即物的で、
ほらこのポイントを稼ぎましょう! という、エサのちらつかせ方が暴力的だなあ、と、感じていた。

『リンダ』は、絶妙なゲームバランスでプレイヤーに「次の目標」を、”自分で考えて選び出した” ”かのように” しっかり感じさせてくれる。

それは 諸要素&諸要素が絡まっての奇跡的なバランスだ。

たとえば、ふつうのRPGとは違い、主人公たちが強くなる=経験地を稼ぐ、のは、いいことばかりではない。動物を捕獲するには、相手のHPをあまり上回るダメージを与えてはいけないのだ。
だから、自分の強さとトントンくらいの動物を効率的に探していかなければならず、強すぎると  「リスの体は飛び散った…!!」となる。(※ゲーム内テキストより)

装備も、
これまた「ふつうの」RPGと違い、店で買うだけでなく動物を「加工」して作ることができる。モンハンで見慣れてる人も多いか。オスは10匹で武器に、メスは5匹=鎧、3匹=兜、2匹=靴にそれぞれ加工可能。能力は、その動物の能力値を反映する。
カンタンに言えば強い動物から作れば強い装備になる・・・。(でも、弱い装備で強い動物をどうやって倒すか? という戦略も大事)
「箱舟」に乗せるのはオスメス1匹ずつでいいのだが、のちの冒険を楽にしたければ、欲張って捕獲し、加工していかなければならない。

また、季節
ゲームは1991年から始まり、タイムリミットは1999年。それまでに春夏秋冬、プレイ時間に合わせて四季が変わっていくのだが、動物の生態として、季節によって見つけやすい動物も、性別も、群れの数も変わってくる。登場季節が限定されている動物もいる。また夏は群れ、冬は個別、が基本パターンなので、自分より強い動物を狙うなら冬が狙い目、などなど。

そのほか、「プテラノ鳥」の航空システムによって最初からどの都市も(ほとんど)行けること、
都市でなくても「シュート」でマップ上の好きな場所に落としてもらえること、
これによって狙った場所にすぐ行ける(世界の果てまで!)。ダンジョン踏破の楽しみ、というRPGの要素はばっさり切り捨て(たわけでもないのだが…ヒミツ)、プレイヤーが行きたい動物生息スポットへ一目散に迎えるようになっている。

また驚いたのはレスポンスのよさだ。
画面が2Dのドットグラフィックなのは、発売当時から「ショボい」と説明書で断るほどなのだが、戦闘のテンポ、移動のテンポ、メニュー画面を開くテンポ、宿泊したときの暗転時間、等々等々・・・とにかく

「ああ! まだるっこしい!!」

ということがなく、すぐ、行きたい場所へ行かせてくれる。プレイヤーが持った目的を、阻害せずスムーズに遂行させてくれる。長いエフェクト、挿入カットなし。

・・・「まずリス、ブタを捕まえて、売ってる武器買って少し強くしたら○○と××と△△で動物を捉えて、その頃にはレベルが上がるからこの近場の□□の**も捕まえられるだろう、途中どっかで雨が降ったら%%の洞窟が洪水になって##が出てくるからそれも捕って」・・・

と、次々プランが立ち、自発的にやることが見えてくる・・・・・・


「でもその知識、いちいちネットで調べんの面倒~」


では、ないのである。
ゲームをやりながら、自然に身につく設計がされているのだ。

「サイコスリラー&ハンティングRPG」の、前半を紹介する段が回ってきた。

このゲームにはシナリオ(ゲームモード)が3本! 収録されており、それぞれが初級編・中級編・上級編となっている。集めるべき動物の目標数が違うのだ。そして、さっきの思考回路は「上級編」でのもの。ステップを踏んで、そのころには動物の生息地や世界の動き方を把握している。好き放題動く。楽しい~。

じゃあ、初・中級はつまらないのか?

そこを補完するのが、サイコスリラーなシナリオの牽引力である。
もっぱらこっち面で語られることが多いほど、テレビゲームとしてマズい領域に踏み込んだ「人の闇」・・・血の愛情シナリオ。
CEROの審査もない時代、プレステの「暴力シーンやグロテスクな表現があります」という赤い三角マークはこのソフトのために作られたのだそうだ。検索すればすぐカナビス(田中達之)さんのイメージイラストや、挿入されるアニメシーンが出てくるだろう。めちゃめちゃ面白いですけどね。

それに、シナリオも、ゲームシステムも、すべて「種の保存」というテーマで一貫しているのがすごいところ。
まさに、あらゆるデザインが、美しいゲームです。

 

今回のプレイでは、上級編にあたるシナリオCのすごさに、ずいぶんしびれた。シナリオCには、グロはない。むしろシナリオA、Bで酷いことになってしまった人たちがパラレルワールド的に、自己パロディ的に幸せになっていったり、基本はふつうのRPGでの「クエスト」的な、おつかいをこなしていくものだ。

だが、シナリオCは、それらずっと「シナリオの舞台」だったところが、シナリオの領域に入ってくる。

つまり、世界の真実。

 

これはー、やられましたねえ。

構成としてめちゃくちゃかっこいいですね。


はい。

スマホアプリに疲れたら、リンダ。



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