雑記21/02/02(火) 『かまいたちの夜』1、2、×3について


こないだダーッと『かまいたちの夜』三部作ーー1、2、×3(トリプル)ーーをやった。2と3に関しては全クリ。なつかしい~単語。全クリ。までした。
 (※つまり金のしおり…しかし今はプラチナのトロフィー
   だったりするのかしら)

1が名作、2は迷作、3はう~んそこそこ、みたいな感想がネットのほとんどだけれど、

3は超名作。

もう一度。

3は、超名作。


ということを、ちゃんと書く…までのつなぎで、雑記に試行してみる。

『かまいたちの夜』1994年11月にスーパーファミコンで発売。
チュンソフトが作り出した「サウンドノベル」という新ジャンルーー
背景画像の上にがっつりテキストが表示され、その小説を読んで、ところどころの選択肢で話の筋が変わる、BGMも付いて臨場感ある…という、いってみればそれだけの、ストイックなアドベンチャーゲームーー
の、第2作目だった。

小説の筋を選べる、介入できるってのは面白いやね。

1作目の『弟切草』が古い洋館でのゴシックホラーだった(実際はふざけたストーリーや色々に分岐するが、基本は)のに対し、『かまいたちの夜』は吹雪の山荘を舞台にしたミステリー。主人公の一人称小説で、宿泊中に起きた殺人事件の謎を解いていく。
 (↑発売時期もちゃんと冬だったんだなあ)

『弟切草』は単に読みたい方の選択肢にすすめばよかったのだが、こちらではジャンルがミステリーになり、「事件を解く」という目的が加わった。
怪しい人物や、もう一度捜索しておきたい場所、トリックはこれじゃないかなどなど、うまく選択していかないと・・・
宿泊客たちの「犯人がこの中にいるなんて」という恐怖、疑心が高まっていって・・・
怖いエンディングを見るハメに・・・。

ミステリー作家 我孫子武丸さんの書いたシナリオということで
(※ちなみに 目ぼしいミステリー作家にスーファミと弟切草を送りつけて、返事をくれたのが我孫子さんだけだったらしい……結果的に最高でしたが)
謎解きのむずかしさもあって、だいたいの人はさいしょ犯人を捕まえられず、
ミステリーから、いつのまにやらサスペンス、ホラーになって死亡エンドとなってしまいます。

ほんと怖かったなあ・・・。


すごいのは、怖いながらも「ここで後頭部を殴られて死んだってことは、あの時点で生きてたのはこれだけだから、後ろに来れたのは、あいつかあいつだ!」みたいな、バッドエンドからもヒントが得られるということ。
それを積みかさねて、真犯人を追いつめるシナリオ展開を見つけていく。
 (『オール・ユー・ニード・イズ・キル』とかそういう)

事件を解決すると、
これまでなかった選択肢が話の中に現れ、さらにいろんな展開がひろがる
ようになっている。
こちらのジャンルはもうミステリーじゃなく、コメディ、オカルト、ショートショート、ミニRPGみたいなのとか。

とにかく、「分岐」「何が起こるやら」ということでとことん楽しませてくれるのだった。

大ヒットしました。


第二章~「2」のうっかり期待外れ~


大ヒットした「1」から4年たち、1998年12月にはPSでの移植版が発売。

このころチュンソフトが「サウンドノベル・エボリューション」として、それまでの三作~『弟切草』『かまいたちの夜』『街』(超名作)~を、PSに移植したのですね。

これが今でもたぶん、いちばん丁度いいバージョンなので、ゲームアーカイブスなどでやってつかあさい。
 ※ミステリー編だけでよければ後述の『×3』に入ってますが。

そして、それからまた約4年後
2002年7月に、『かまいたちの夜2』が発売された。

7月? そう、今度は夏が舞台。

音楽に東儀秀樹さん、パッパラー河合さん、羽毛田丈史(はけた たけふみ)さんを迎え
舞台となる「三日月館」のデザイン(建築設計?)には、映画美術の種田陽平さんを迎え、

中枢であるシナリオは、田中啓文さん、牧野修さん、我孫子武丸さんの三人体制

そしてプラットフォームはPS2に。

おそろしくゴージャスにしつらえてみたが、

期待外れだった!


「期待外れ」というのは実にいい言葉である。
その通り、「期待」のストライクゾーンを外してしまったのだ。
作りこみはすごくて、手を抜いた感じはぜんぜんない。だけど、なんでその方向に全力投球なんだ! ということで
最後の最後のおまけ要素まできっちり、ものすごい。
エンタメの土台に「伝奇」「ホラー」「グロ」「電波」をぶち込んだものランキング”では、不動の一位にはなりましょう。


ミステリー部分(わらべ唄編)は、ほぼ苦労なしで解決までスムーズに進行。謎を解くというより、2時間ドラマを見る感じに。
まず本編をクリアしないとその後の分岐シナリオが解放されないつくりなので、誰でも見られるようにしたかったのだろう。親切。

そして分岐シナリオは多彩
舞台の「三日月島」の謂われ…設定の段階からさまざまに変化させて、伝奇ものの短編小説という趣向に

なるんだけど、基本的にグロい描写を「よし!」とするようで、
人間の心理描写も、精神的に狂っていくというときにしかやる気を出さない感じなのだった。

謎解きを親切に、間口を広くとっておいて、見せるものがコレ!

まあ、ひとの身体には内臓がはいってるんだなあ。ということはよくわかる。親切に教えてくれる。

シナリオごとにもろもろの設定が変わるのも相まって、キャラクターは非常に「物語のコマ」「デク人形」感が強かった。
それはメインシナリオの「わらべ唄編」での人物描写の薄さが根本にある。
パロディとかバリエーションを作る以前に、もともとがしっかり立ってないので。
誰それが実はこんな思惑を持っていた! というのが、意外性を持たない。表の思惑がきちんと、動かしがたく描写されていないから。

分岐のルールに関してもそうで、

選択肢って、主人公がこう動いたらこうなる、という展開が基本だと思うのだが、
「2」では、選択肢を選んだとたん、バックグラウンドのほうも変わってることがけっこう多い。もちろん描写されてない範囲でのことで、選んできた一連の流れの中では矛盾してない……のだけど、プレイヤーはほかの選択肢の時も知ってるので、「分岐していくこの世界」という幹が、やっぱり薄れてる。


「1」「2」のメインシナリオは、「×3」にも収録されている。

自分は「×3」のときにはじめて「2」のメインシナリオをやったのだけど
どうにも先へ読み進めるほどの興味がわかなくて
なんで、先が気にならない話なんだろう・・・
この、先へのドライブ感の生まれなさはなんなんだろう・・・
と、悩んだのを思い出す。
いまも、やるたびにそう思う。

たぶん人物描写のなさ、設定箇条書きだけでやってる感、なのかなあ。



そして『かまいたちの夜×3』へ


「2」の文句を書きすぎた。
本題の『かまいたちの夜×3』
トリプル、と読む。2006年7月発売。PS2。

なにがトリプルかといえば、「1」「2」のメインシナリオも収録されていて、さらに「3」があるから。さっき言った。
「3」の話は「2」の直接の続編で、犯人とかトリックもネタバレありで書かれているので、こんな親切設計になった。
トリプル な要素はほかにもいろいろあるのだけど割愛。

「2」の事件から1年後、生き残った面々は、死者の供養のために再び三日月島をおとずれる。
そこで起きる、新たな悲劇とは・・・。

ゲームシステムは、選択肢による分岐に加え、複数主人公制のザッピングシステム

最初はあるキャラの一人称で読み進めていくが、途中で別のキャラのシナリオも解放。
そちらの選択肢(別キャラの行動)が、こちらのキャラクターにも影響をあたえ・・・

という、これは『街』と同じ(テレビのチャンネルをパチパチ回すザッピングのように、主人公たちを切り替えながら進める)なのだけど、
『街』や『428』が他人同士の「袖擦りあうも他生の縁」「意外なつながり」…を演出していたのに対し、
『×3』は同じひとつの館で行動している同士。

近いときは半径2メートルくらいで、一つの出来事を別視点から読んでいく。

それも、ミステリーで、ですよ?

思わぬ思考をはたらかせているキャラの様子を見たり、別行動しているキャラから意外な事件のヒントを得たり、
そもそも、主人公として行動・思考を読んでいるから安心してるけど、犯人じゃないのか? 本当に?

我孫子さんは叙述トリックだってできるからな。。。

という、疑いはつきない。

それぞれのキャラの心情描写も念入りで、いやあー、ここですよ。

人物がちゃんと立っていて、動かしがたい生きている目的がある。行動の理由がある。ある、ように見えるからこそ、嘘ついてるかもしれない・・・という怖さもある。

謎のばらまき方もうまくって、序盤から「これ何だろう?」という気になる、埋まらないピースがいくつも示される。
それを、別のキャラに切り替えることで解いたり、バッドエンドになってしまっても一つだけ意味が解ったり、

事件の謎が解けた! と思っても、実はまだ第一段階で、牙城は堅かったり。


複数視点・複数の心情・感情・謎の散りばめ・回収・・・・・・

尋常じゃない面倒くさい練りこみをおこなったシナリオ。


謎解きがうまくいったとき、透(主人公)が
「すべてのピースが埋まった」
というのだけど、
このゲームそのもの。


終盤の展開を批判してる感想を読んだけれど、
あれは謎解きが終わった時点でやってるからエピローグみたいなもんで、

それにあの展開は「あの人の戯れ言」としても別にストーリー上なんの問題もなくできている。
後味の良さと、前作で置かれていたオカルトという土台をどこかで引き継ぐ必要があったからだろう。

姫宮麗子もなあ、よかったよなあ。すごいよなあ。


「2」から続けてやると、思いっきり予算規模が縮小していて、画面の派手さも、音楽の派手さも、きっちり縮小している。

最初からこじんまりとする予定だったようだ。
 (『×3』への文句で「ボリューム不足」というのが多いけど、本編のボリュームで充分です!)


「×3」の主人公たちは、前作でぼろぼろになった三日月館を

修繕して

供養のために

ふたたび島を訪れる。


まったく、『かまいたちの夜×3』のシナリオは、

『かまいたちの夜2』の

修繕と

供養

そのものじゃないか・・・!


いいお盆でした。



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