5年ぶりの『サディスティックサーカス』観た(Night2, 2024/10/26)
”大人のトラウマ”というキャッチコピーがあった気もする・・・
かつて歌舞伎町の真ん中「新宿FACE」で行われ、「ディファ有明」に移り、どっちにしてもプロレス会場、肉体のフィールド、流血毒霧も受け入れるそこで、
最後!と宣言された後にまた復活したような気もする・・・
そうして、コロナ禍で実に5年ぶりに、復活!したのだという・・・。
というわけで、事実関係は記憶もおぼろなのですが、観たパフォーマンスのいくつかは鮮烈に記憶と身体に残っている。
身体の記憶に残っている、のかもしれない。
真夜中のサーカス、現れては夢のように消え去る、公式サイトの記録も消え去る、そんなサーカスに行ってきた。
↓ 2017の告知VTRがYouTubeに残っている!
野暮な記録。への、野暮な注意。
どうかこんな短文で、何かがわかった気にならないでほしいのです。
(「へえーそんなイベントなんだ」)
ひとのイマジネーションは無限大だが”ブログを読んでるとき”は、その限りではないからだ。
歌舞伎町、ハロウィン前の土曜夜、喧噪と狂騒、常態がコスプレの業態も今は猶更に、そこからビルの七階へ会場へ上がると、出演者かな?という格好の人がうろうろしていて、そして出演者ではなかった。そんな空気。
では、なぜ書くか。
もちろん、自分が思い出せるようにだ。
22:00~
鈴木仁
戦前の少年的風貌、白塗り、竹棒に自転車のフレーム遊び、お手玉、風車・・埃立つ未舗装路のノスタルジアを喚起させる意匠のパフォーマンス。童謡や風の音が鳴るなか開演前から登場して幕開きを飾り、最後に待ちうけるのは刃渡り数十糎の剣呑みとは剣呑な。
実は道後温泉の道後ミュージックで、特別公演時に出演されており、拝見したことがある。通常はストリップ劇場なので通例で写真撮影の時間があり、ひとりひとりに向けて剣を呑んでくだすった。いい人です。
フープ東京 AYUMI
フェティッシュフープ!と呼びこまれて登場したのは巨大な人間で、舞台に上りコートを脱いでわかるのはスティルト(足長、竹馬)を付けた姿。これが映える映える。客席四面が擂鉢状になってなおスティルトの偉容で圧倒し、全然フープに入らないのだがそんなことはどうでもいい。やがて一振りで膝折、着地し、後半は電飾入りのフープ×1~3で残像を演出につけた圧巻のショータイムブラボー。
Chanelle de Mai
読みかた忘れちゃった・・・
二つの羽扇子で身体を包んで登場し、孵化するようにそこからしなやかな足だけを上げ、窃視、ついに登場するバーレスク。客席に見せる表情のいちいちが細かくコケティッシュで、伸びる四肢、振り向いてお尻のタボをちょんちょんとつつく仕草など、日本的陰湿エロス(⇒最後の緊縛参照?)とは対照的な清々しいショー。いやあ楽しかったなぁ。とここで帰宅しても明日から快調。
ストリップこれだけ見てきたくせに何も知らなくて、それじゃストリップの位置取りも覚束ないのだが、バーレスクすごいなあ。
https://www.instagram.com/chanelledemai/
Vicomte Harbourg
また読みかた忘れちゃった・・
バーレスクの次はボーイレスク!と前口上、ヨーロッパ彫像が躍動するような精悍な美とエロチシズム。
https://www.instagram.com/vicomte_harbourg/
23:00~
SUKA OFF
fromポーランド。医療系意匠のフェティッシュSM?ということで、白衣の男性が、四面を鏡張りにした箱を被せられた女性を導く。箱を取ると女の顔は包帯でグルグル巻き、口には強制的に開かせる器具が嵌められている。ところで、男の方も顔は包帯。重低音のBGM、インダストリアルノイズ的な悪夢的空間で服を剥がれ、四方に吊るした血液パックを刺される女。血が滴り落ち、医師はワイングラスで受けては客席に配る(なぜだ!)白衣・包帯・白人の肌の上に、血の赤が描かれる。ちなみにこれは輸血なのか?それとも女から出ている設定なのか?そんなことはどうでもいい。フェチ・世界観・美はそこで焦点を結ばない。
すごい面白かったのは、医師がマイクスタンドを持ってきて(そのちみっこい動きがもういい感じなのだけど)、女にバースデーケーキを見せる、そこで小さい小さいオルゴールを渡し、脅迫的に何かを促すのである。怯えながら、息も絶え絶えに、小さなオルゴールをマイクに向けて回す女。インダストリアルノイズのなかに、ハッピーバースデーのオルゴールが、フルコーラス鳴って・・・
あれはたしかに美のような気がする。
そのあとローソクの火を押しつけられそうになった女が、拘束具の口からそれを吹き消して、形勢が変わったのだったか。いつしか女は看護師の服を着、男は鏡の箱を被せられ、帰って行ったのだった。
(小休止)
今書いてて、えーっこのあとチャラン・ポ・ランタン!?と思ったのだけど、そうここで休憩時間があったのだった。ちょうど舞台上が汚れている&次は返しモニター設置、などもあったためだろう。
司会・山田広野さんが「手探りでやっております」とも。この時点では何度か挟まりそうだったが、この後、長めの転換時間も明言された休憩はなくブルー照明処理で、お客各自がうまく合間に用を足していた。
チャラン・ポ・ランタン
云わずと知れた、意外と知られてない、アコーディオンとボーカルの姉妹ユニット。派手なフランス大道芸人的衣装で小旗をはためかせ登場。あの『逃げるは恥だが役に立つ』で主題歌となった「進め、たまに逃げても」を含め数曲を披露。なんかのラジオで「みんな『恋』しか覚えてない!」みたいな自虐をかましていた気がするが、どの場へ出ても自分たちの芸を刻印して空気を変えていくパワーはやっぱり圧巻でした。あとあの完璧な衣装はお母さん製作とのことで、怖い一家やで。
24:00~
浅葱アゲハ
天井から吊るした布で空中を舞う、エアリアルの使い手。鍛え上げられた肉体とその技で、まさしく天女が顕現していた。まず日本の神事的な衣装での榊を持った踊りに始まり、鎮めのように舞台を回る段を経て、いよいよ布を下ろし宙へ。そこで舞う姿は天使か天女か、チャラン・ポ・ランタンで拍手の体も暖まった客席からポーズの度毎に拍手が湧く。さらに一旦布を降りたのち、もう一展開が待ちうけ、構成の技にも感銘。最後のポーズと共に、演目の意匠と同様の浄化、カタルシスを受けたのだった。
・・・と、怪しげなレポを書いてますがそもそも『サディスティックサーカス』を知ったのはアゲハさんのおかげで、201〇(マル)年に初めて足を踏み入れたのだった。その前にはストリップに足を踏み入れていたので、アゲハさんのファンになれたのだった。だから上の描写は、もう20周年記念作としての初演を見てるひとが、初見っぽい体裁で書いているのだった。でも本当。何度見てもすごい人や。
Naked Nature ネイキッド・ネイチャー
重低音の鳴るなか、舞台上のひとりと、客席から歩み寄るひとりとの間に結ばれた緊張の糸、にじりより、二人の中のあるものが、それがサスペンション――肉体にフック等を刺し、吊り上げる――に現象していった。
Chanelle de Mai & Vicomte Harbourg
先ほど出演の二人のコラボレーション。純情な青年(めっちゃムキムキだが!)が、思いを寄せる婦人に手玉に取られ・・・という小話バーレスク。笑いと技芸が絡まった一流エンターテイメント。
25:00~
Carnie Carbooze カーニー・カブース
ものすごい手抜きなことに今回下調べをせずに行ったのだけれど、それがこのサプライズを生んだので、よかったかもしれない。
今回のハイライト、メインディッシュなのは間違いなく。
口上「ペイン・ソリューションのDNAを継ぐ!」と聞き、ええ?と驚いたのも束の間、夜会に似つかわしくない陽気な伴奏が流れ、タキシードの司会者が各国語のコンニチハの歌(生歌)で登場した。その後呼び込まれた女性がソロの激しいダンス、「父」という存在への厭悪を表し、舞台に現れた「父」の心臓を抉り出して終わる。そうして舞台上に死体が――と書いててこのイベント見たことないと本当に心臓抉り出してるとまで思う人があるかもしれないがそこまではない――横たわるなか、なんと、厳かなコーラスが流れ出し、十字架を背負ったキリストが登場するのである。そして心臓を男の体に戻し、父は蘇った!
この調子のくだらなさ。
そしてこの、シリアスと余興を行き来する感覚は確かにペイン・ソリューション・・!とシンクロした時、キリストの顔を見れば、それはあのメンバー「THE MANIAC」(ザ・マニアック)その人なのだった。
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上の、2017年告知動画にも出てくるペイン・ソリューション。圧倒的な「痛い」芸をやりながら、キャーやヒャーでなく、スゴーイとアハハを客席に生み出す超一流の集団だった。何度でも、あのステージはすごかったなと思い出す。唇の下の穴にカラビナを通してバケツ吊ってモスコミュール作る序盤の芸とか。いや、それは本題じゃないのだが、ともかく登場からの振舞い・構成、観客を連れて行く興奮曲線のつくり方、すべてすべて見事だったのだ。
(そうなると電撃ネットワークをちゃんと見てこなかったのが悔やまれるが)
サイドショー。というジャンルらしい。「サイドショー」で引くと、余興とか添え物の芸、などふつうに類推できる意味が出てくるが、見世物という意味での使われかたのようだ。本道から、社会から外れたもの、ゲテモノ。
ペインソリューションのインスタ。
2021年12月17~18日ラストショー、とある。知らなかった・・・。https://www.instagram.com/painsolution_sideshow/
元ヘッドマスター、Havve Fjellさんのインスタ。
なんと、Naked NatureのKjærstiさんが恋人のよう。ツーショットがいくつも。
https://www.instagram.com/havvefjell/
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THE MANIACの作った団体が、このカーニー・カブース。
その身体芸(・・「体を張ってる」という言葉の意味が変わること間違いなし)も、意匠も、構成も、変わらず圧巻だった。
とくに驚いたのは、序盤キリストのくだりで手のひらに杭(でか釘)を打ち込む寸劇をやって、そこではフリ止まりで打ち込まないが、最後の(ワークインプログレス中だという)演目にて、注射針を手のひらに打ち込む形でそれを引きとっていたところ。
さらに、そのとき舞台上には赤い風船が三つ浮いているのだけど、それらが登場したときヒモの中間に結ばれていた針は、(これで風船割るのかな?)という”想像を裏切って”MANIACの頬から頬に刺され、最後に出てきた手のひらの注射針によって割られていく。舞台上の要素が、最後に収束する手つきの美しさ。
もうひとつ云えば、これは偶然だけど、風船のヒモの針を頬に貫通させたとき、ちょうどゴキブリコンビナートが客席前を通って楽屋入りしていて、のちの”だんご三兄弟”とこのリンクが、また、美しかった。
あと掃除のおばさんもキュートだった。
演目(うろおぼえ):父殺しダンス、キリストの復活、レゴ歩き、鼻釘、杭寝、コーガン砲丸、ダンス2、追悼の食卓、カフェオレ、風船 など
26:10~
早乙女宏美&中村京子&蓮
切腹でおなじみの早乙女宏美さんがコラボかと思いきや、ただただ一人づつの演目。「昭和エロクロニクル」という括りで紹介されていた。
まず蓮さんによる金粉ショー(全身に金粉を塗って何かするショー)。ガワは昭和だが曲やダンスはポッピンとか意外なイメージで、躍動する肉体が照明を照り返す。はじめはオレンジ系で、金粉の黄金が映えるなあと思ってたがポテンシャルはもっと上、色が増え出してからの躍動×肉体の立体で生じるマーブルの輝きは、エロなのか何なのかわからない未知の世界へ。
https://mobile.x.com/bh_ren_
中村京子さんは、女相撲。これ神事では全然なく、バブル期に新宿の大ビアガーデンで余興に開催されてたとかなんとか。キャットファイト系か。誘導受付をしていたお姉さん2人もまわしを締めて登場、二方を固めているなか、京子さんが四股で土俵入りし、完了。
https://www.youtube.com/@nakamurakyoko
トリの早乙女宏美さんは、もう伝統芸。
野暮なことを言えば、ガチ流血がむしろマジョリティのこのイベントで、血糊の演目があるのは大切なこと。
劇団ゴキブリコンビナート
高身長高学歴高収入の3K、ではなく、
キケン!キタナイ!キツイ! と紹介。今回は犬ぞりで始まる。ミュージカルなので♪犬ぞり~犬ぞり~ ♪ワンワンワ~ン みたいな感じで、犬役の何人もが四つ足で引き、鞭を持った男が乗っている。客席前を、ときにぶつかりつつステージへ。飼い犬たちへロクにエサも与えず、ぶん殴る男。そして一匹のメスだけ贔屓して他所(客席前)へ連れていき、たらふく・・・いや無理やり、バナナや何やを口にねじ込んでいく。これも客席に飛ぶ(二人くらい逃げていった!)。そしてメス犬のオムツを脱がせ、糞便にかぶりつく男!男はこのメス犬のスカトロが大好物だったのだ!♪うまいうまい~
凌辱を止めようとしたオス犬は一斗缶で殴られて昏倒してしまった・・と思いきや、正気に戻り、おれは人間か?となる。
そう、ここで実は「犬」役ではなく「犬をやらされてる人間」役なのだった!とわかるのだ。演劇の妙!
(スカトロシーンも客席北側に寄っているので、本ステージ上では一匹の犬がうっかり死んでしまうというくだりが進行している。飽きさせない)
そしてみんなを一斗缶で殴り、正気に(人間に)戻った犬たち。互いが恋人や家族だったことを思い出し、
「お前とおれは、兄弟だったじゃないか!」
絆をたしかめよう!と、おなじみの長い針金針が持ち込まれ、三人の頬を串刺しに(やってることは同じでも客席から悲鳴多めになるのが、カーニー・カブースと好対照)し、
だんご三兄弟を歌い踊って大団円だ。
・・・と書いてきたが、序盤は声が伴奏に負けててなに言ってるかよくわかんなかったよ!
27:10~
奈加あきら&紫月いろは
縄師&緊縛モデル。長い夜の最後は緊縛が締める。締めに締める。
紫月さんの姿は緊縛映えするなあ、なぜだろう、とあれこれ要素をピックアップしていったら、壇蜜になってしまって、はぁやっぱり壇蜜は和風エロスの超一流だったんだなぁ、映えていたのだな、とか、縄が通されていく間、重低音を聴きながら――今夜何度目の重低音なのだろう――考えていた。舞台に置いてある縄はすべて使われるだろう。新しい縄が袋から出てきたりもする。項垂れたモデルを、Sが縛り、吊り上げた。しかし最後に吊りから降ろした後は抱きしめ、羽織をかけ、お客様にお辞儀をするんだよ、と肩を抱きながら促していく関係性が、心に入った。
山田広野
やまだ ひろのさん。司会。自作の映画に自分で活弁をつけるスタイルを確立したりしている。もともと独特だが、転換を繋ぐためなのか、間が、さらに独特になっていた気がする。
気がする・・・
だらけの・・・
幻のような夜だった・・・・・・
また・・・
有ってほしいですね・・・
有ると・・・
有り難い・・・ですね・・・・・・
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