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雑記 『よつばと!』が”なんかこわい”ことをわかってもらえない 2021/03/06(土)

『よつばと!』の最新刊が出た(2月27日)。15巻。

第1巻が出たのは2003年で、帯にも「読み継がれて18周年」と書いてある。

もう、そんなに!


最初は毎月連載だったのが今では年に3,4回くらいになって、毎回待望の新刊となって幾年月。
『HUNTER×HUNTER』は1998年から連載なので23周年で36巻・・・
と比べても仕方ないが、どちらも「すごい望まれててすっごい出ない」マンガとして屹立しているのは間違いない。
読者の幸せそうな顔は、幸せながらけっこう違うけど・・・。

それで、自分ももちろん好きで全巻読んでいる。
が!

「このところの『よつばと!』は、こわくないか?」

という意見を、一致させてくれる人がいなくて、よつばと好きー、かわいいー。と言われたりして、そのムードはけっこう前に変化しちゃってると思うのだけど、、、
ここまで聞いていかがでしょうか?


具体的に感じたのは、2011年の震災以降に出たコミックスでだったと思う。って、これも、もう10年前。なんだか、
「もうみんな死んじゃってるんじゃないか?」
みたいな気持ちになる、妙なトーンになったなあ、と思ったのだ。もちろん読んでるこちらの気分もあるんですが、トーンは確実にゆっくり変化をしていっている。


そのトーンを、即物的に書けばこんな感じだろう。

・人物の服、背景画が、斜線の影など入れてリアルタッチに変化した
 ・・・にもかかわらず、よつばの顔はあいかわらず均一な線で鼻もないデフォルメのまま
 (でも服には細かい影が落ちてたりして、逆 顔ハメパネルみたいな…)
→周囲からますます浮き立つ

・集中線や、リアクションとしての白目などのマンガ的な記号が減っていった
→よつばの挙動にシンクロしていた演出が、よつばを客観的に見つめるように、距離が離れていった


↑ ふたつめの項目は、たとえばテレビで芸人が叫ぶとき、カメラがグーンとズームしたり揺れたりするのを見たことがあると思います。
「角野卓造じゃねえよ!」
と言うとき、「たくぞうじゃ」でカメラが寄り、「ねぇぇよ!」で大声の振動を感知したかのように、また怒りの覇気を察するように、画面がビリビリ揺れる・・・

あるいはドラマでも、夜道で女性が誰かに後をつけられている、不安、というときは手持ちカメラがゆらゆら揺れていたり・・・
カメラは、防犯カメラがそうですが、固定ポジションで微動だにしないと、ひどく客観的で冷たいものになる。それを避けて色んな感情を、被写体と視聴者をシンクロさせるためにカメラワークをするのですが、、、

って、マンガのカメラは動かせないので、比喩的な意味にはなりますが、、、

後期『よつばと!』では、そういった演出が減って、どんどん、淡々とした切りとり方になっていった。元気な子供を、客観的に落ち着いて見る視点になっていった。

つまり視点が、よつばの目線より、とーちゃんの目線に移っていった・・・・・・


なんてことを思いながら読んだら、15巻でまさにそれが明言されたので、こんなこと書いたってあと出しなわけですが。。。


でも、とーちゃん目線だけでない、死の影もなにか感じる。

よつばの輝きを、やや距離をおいて見つめるそれは、なんか、もうその子が死んじゃったあとで・・・とーちゃんが思い返している・・・みたいな・・・

これから話がそうなる、という意味ではなくて

あの演出から生じるムードって、こっちの気分がおおきくないか? よつばはかわいいなー、というムードじゃない、はっきり。感じるのです。

演出をああしたらそうなる、というのはもちろんわかってやっているのだろうから、よつばのキャラ愛玩マンガではない、ということはもちろん明確で、
よつばはフィルターであって、それを通して普遍的な・・・世界を描く・・・・・・
ある意味、谷口ジローの散歩マンガみたいなことでもあるんだろうけれど。


でもやっぱり、みんな死んじゃってる感じのムードが、あると感じる。なんなんだろうな?
ふつうマンガがくっつけている、その世界を底支えするための、元気(カラ元気?)、みたいなものをとっぱらっちゃった感じ?


わからない。



もっと「『よつばと!』はこわいよねえ」と言い合いたいと思っています。


おわり



※2024年4月10日追記
ここで言っていた よつばに向ける目線、心情は、言われただけでは想像しづらいかとも思います。
今日 観た映画でくらったので、ここに追記しておきます。
『LOVE LIFE』(2022年、深田晃司監督)

むちゃくちゃすごい映画です。


※1

みんな死んじゃってる、というのは別に新規な発想でもなく、あの『ひょっこりひょうたん島』も第一話でみんな死んじゃってる設定、というのがあったとかなかったとか。
その作者の片方である井上ひさしさんは宮沢賢治が好きだから、『銀河鉄道の夜』のイメージもあったかもしれない。って、銀河鉄道のネタバレじゃないか!


※2

これまでの話と全然関係ないけど、15巻の100話で出てくる「石の話にくいつくおじさん」、
おじさんだけ描かれてるコマが、おじさん自身も枠線もなぜかデジタルの画素数が荒くて、ギザギザしている。なんなんだろう。
おじさんこそ、死者の国の使者なのか。

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画像2

おじさんがソロで映っている2コマ。
ギザるおじさん。




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