いま、ここで歌う
大学のアカペラサークルで歌っていた頃、周りと比べてばかりだった。
みんなと声を合わせるのはとても楽しく、かけがえのない時間だった。
一方で大所帯の集団の中には、上手い同期も、多才な先輩も、センスが抜群にある後輩もいた。
そんな中で、がむしゃらに活動を続けながらも
「このステージに立っていていいのか」
「自分であることの価値を、はたして提供できているのか」
ということを漠然と考えることがあった。
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あれからしばらくして大学を卒業し、いつのまにか歌うことから遠ざかってしまっていた。なんとなくSNSを眺めていた日に、タイムラインに流れてきたある人の言葉が目に留まった。
わたしが「いま、ここにいる」という紛れもない事実は、他のどんなに優れた人にも覆せない。だから私が歌う意味がある。
それは笑って歌いながらもどこかにもやもやしたものを抱えていた、かつての自分へのアンサーであるようにも思えた。
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アカペラから離れた10年の期間もそれはそれで実り多き日々だったけど、わたしは結局また歌をうたい、ハーモニーを重ねることにした。
「あなたがここで歌っていることが、すでに十分なほど価値を持つんだよ」というメッセージが、あの頃の青いわたしに届けばと思う。
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