230903 南池袋公園を考える(収益スキーム、建蔽率)(#7)
プロスクのレポートで、南池袋公園の
①事業収益を最大化する知恵
②合意形成や意思決定に関わる知恵
③制度の活用に関わる知恵
を整理したので、一部改変しこちらにも掲載する。
なお、整理にあたっては、『スキーム図解 公民連携パークマネジメント 人を集め都市の価値を高める仕組み』も参考にした。
①については、南池袋公園に関わる単年度収支において、以下の4点で年間収入を得ているため、管理費等の年間経費(約3800万円)と収支がバランスしており、豊島区の負担がない状況である。
年間収入:計3,800万円
(1)変電所(東京電力)の占用料(約1,520万円)
(2)地下鉄(東京メトロ)の占用料 (約350万円)
(3)建物使用料 固定分(約1,230万円)
(4)建物使用料 歩合分(約700万円)
(1)は変電所移転のきっかけがあったとはいえ、その施設をうまく公園の地下に設置し、駐輪場とともに整備することで、都市経営課題でもあった駐輪場の課題とともに解決したのが大きいだろう。
(3)(4)については、固定分の坪単価は1.5万円で周辺の路面店と比較すると安くは設定されているものの、しっかりと使用料をとっており、また、歩合分は月商1,719万円を超えた月に超過分の10%が使用料に加算される、という仕組みをとっており、カフェ・レストランが稼ぐと、その分が公園の維持管理に還元され、相乗効果でエリア価値の向上につながり、税収も増といった好循環になっている。
②については、講義で多く触れられていた部分なので詳細は割愛するが、ホームレスの溜まり場に戻らないように、という意味合いが強く、柔軟なアクションができず、大胆な企画提案ができず、市民の声が届きにくかった、「南池袋公園をよくする会」(構成は、町会代表、学識経験者、豊島区、レストラン事業者、西武造園等)
管理主体が運営を行うと、できるだけ管理しやすいように、となってしまう難しさがあるのである。そこで、新たにグリーン大通の賑わいとセットで青木さんらnestが受けることでうまく運営をしていったのである。公園単体だと豊島区としても説明がしにくいので、道路と一緒に受けたのもポイントである。
③については、建蔽率の問題を工夫してクリアしたのが大きいだろう。
南池袋公園の開園は2016年であり、2017年に都市公園法が改正され、いわゆるPark-PFIが導入される前の開園である。木伏の事例は、Park-PFIを利用することで、建蔽率の制限を2%→12%の緩和を受けていたが、ここではそれを利用することができなかった。
そのため、カフェ・レストランを都市公園2条2項記載でいうところの「便益施設」ではなく、「教養施設」と定めることで、都市公園法施行令第6条2項の10%の緩和を受けているのである。
その結果として、南池袋公園の面積7,811m2に対し、建築面積265m2の実現(建蔽率3.4%)を実現しているのである。
便益施設ではなく教養施設とよむ理屈であるが、建物延床面積のうち教養施設の部分が124m2で全体の半分弱、これに防災備蓄倉庫や公衆トイレなどを加えると公共用途が過半を占めることを持って建物全体を教養施設とみなしたとのことである。
2階の教養施設部分は図書コーナーや食育・環境学習、講義等のワークショップにも使える内装になっている。実態は1階フロアと同様にカフェ・レストランの2階席としての利用がされていることが多い。
建蔽率の読みときにあたっては、講義であったパークシネマの事例のように、行政が覚悟を持って柔軟に法を読みといてこそ実現するな、ということを実感した。
「休養施設、運動施設、教養施設、備蓄倉庫その他応急対策に必要な施設」が10%緩和の主な種類であるが、これらをいかに設置したいカフェ等に導入した上で、行政にも緩和を認めてもらうかが鍵である。
一見これらは規制をクリアするために本来導入する必要ない機能を導入する、とも思われがちだが、私はこれらの施設と読めないか検討することで、単なるカフェではなく、より公共性をおび、公園に設置するのに適したカフェになると考えている。その意味で南池袋公園は非常に良い先駆事例となっていると感じる。
なお、そもそもではあるが、これらの基準は「参酌基準」とされており、地域の実情でにあわせて地方公共団体自らが条例で定められることとしている。大規模な運動施設以外でこの数値を大幅に超えるような緩和の基準が定められた例は多くはないが、いくつかの自治体では緩和を実施している例も存在するようである。
https://www.city.kawasaki.jp/530/cmsfiles/contents/0000122/122054/06shiryo4.pdf