風とカメラとぷかぷかと。−プロローグ−
風とカメラとぷかぷかと。
─NPO法人ぷかぷかで生きる人たちとの交流記─
障がい者福祉ってなんだろう?
知的障がい者の人たちってどんな人たちなんだろう?
その世界にまったく関わってこなかった僕と彼らとの交流、そしてそのときに感じたものを記録したいと思う。
知的障がい者との交流は僕にとって特別だ。
いつかこれが特別じゃなくなる日が来るのだろうか。
─プロローグ─
カメラのファインダーを覗く。
テーブルにはパンとコーヒー。
遠くに笑い声。
そして風。
今日もここには優しい風が吹いている。
知らないことは悪いことなのか?
知らなければいけないことなのか?
はじめに断っておくが僕は障がい者のことをまったく知らない。
分かろうともしてこなかったし、知ろうともしてこなかった。
開き直るわけではないが多くの人がそうであるようになんの接点もなかった、
と言ってしまえばそれまでなのだが、それ以外に言いようがないので仕方がない。
このまま接点を持たずに日々を過ごしていくことも可能だったろう。
しかし何かを感じてしまった。
それは偶然なのか必然なのかわからない。
2019年の夏、初めて横浜市にある「ぷかぷか」というNPO法人にお邪魔したときに理事長さんと話をさせて頂いて、はたして自分はこのままでいいのだろうかと疑問が湧いた。
例えば電車で障がい者と隣り合う。
離れよう。
なぜ?
怖いから。
なぜ?
知らないから。
例えば障がい者の人たちが働いているパン屋さん。
食べて大丈夫かな。
なぜ?
手を洗ったりしてるのかな。
なぜ?
知らないから。
ここで思考が止まる。
知らないのは知ろうとしないから、という単純なことに気づく。
いや、正直に言うと気づいてはいた、と思う。
ではなぜ知ろうとしないのか?
おそらくそこに理由なんかない。
みんなそれぞれの人生を生きていて、他にも気に留めることがある。
知らないことは悪いことなのか?
そんなことはない。
知らなければいけないことなのか?
それもそんなことはない。
ただ、知らないのに怖がったり、嫌がったり、避けたりというのはやめなければと思う。
勉強して、理解して、受け入れて、寄り添って生きなければいけない、などと言うつもりも毛頭ない。
少しでも知ったうえで距離をとるというのもいいだろう。健常者同士だってそうだ。合わない人とは距離を置く。でもそれは相手をある程度知ったうえで離れているはずだ。障がいのある人たちに対してもそうでなければいけないと思う。
まず知ろうと意識する。
そこからだとようやく気づく。
言い方は悪いがふと興味が湧いたのだ。
これから気負わずフラットな状態で「ぷかぷか」にお邪魔して、彼らと、そして自分と向き合いどういう気持ちが生まれるのか、あるいは生まれないのか、そのあたりをあまり重くならないように記録していきたいと思う。
お邪魔するたびに気持ちを綴っていけば、おそらく何かが見えてくると思う。
そしてまわりに流されないためにも自分の考えを見つけたい。
気持ちを正直に書いていきたいので関係者の方には不快な文章になるかもしれません。障がい者福祉とまったく無縁の世界に住む者の一つのリアルな声だととっていただければありがたいです。
※NPO法人ぷかぷかとは・・・横浜市にある、障がい者の人たちが働く「カフェベーカリーぷかぷか」を中心として、地域の人たちに交流の場を開き、障がいのある人たちの生きやすい街づくりを目指す法人。
ベーカリーの他にも、お惣菜屋さん、おかし工房、おひるごはん処、アート工房、農園などもある。
https://www.pukapuka.or.jp/