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2024 Season -Vissel Kobe Defense-
こんにちは。
濵田祐太郎です。
今回はヴィッセル神戸の守備についてです。
前回も書きましたが、神戸は守備、特にPressingが非常に面白いチームです。
どのような構造をしているのかを見ていきます。
●Def -Pressingの価値観-
神戸のPressing強度はとても高い。
攻撃時、奪われてはいなくても奪われそうな段階でPressingに移行する。
神戸の選手は背後をケアするよりも相手が背後に配球できないようにボールに強烈なアプローチをかける。そして相手ゴールに近い位置で奪ってショートカウンターで襲いかかる。
仮に突破されても全力でプレスバックをすれば失点は避けられるという流れだ。
この超積極的なPressingを可能にする根幹がある。それは、Pressingはボールを持っていない攻撃であるという考えである。
これはボール被保持時でも相手を支配するために酒井選手をを中心とした海外経験者が神戸の選手に植え付けた価値観である。
ボールを奪うことはゴールを決めることと同じ価値であることを示しているのだ。
●Def -Pressingの構造-
上記の考えをもとに神戸はDFラインから4-2-4、もっと言えば2-4-4でPressingを行う。
役割は以下の通りだ。
まずは前線4枚について。
2FWと2WGで構成される1stプレスラインは相手DFラインとGKにプレスをかける。
特に多い形は以下の通り。
FWが縦関係になり、CBとVOを管理する。
両WGは外切りでジャンプしてFW1枚では見切れないCBへアプローチする。
彼ら4枚は積極的に2度追い、3度追いをかけることができる。
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次に中盤4枚について。
2ndプレスラインは2VOと2SBで構成される。
彼らはまず1stプレスラインのアプローチの方向を認知する。
その角度から空けているパスコースを判断し、相手の狙いを予測して積極的にプレスをかける。
このように2ndプレスラインにはボールが移動するたびに前線4枚が背中で隠していないスペースや人を認知してプレスをかけるという守備の技術が求められる。
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また、注目したいのはSBの位置である。
酒井選手を筆頭とした神戸のSBはPressing時に相手WGを背中で見る。
そうすることで、相手SBへの牽制が可能となり、相手はSBへボールを出しにくい。出してたとしても神戸SBの強烈なアプローチの餌食になる。
これにより神戸WGも背中を気にすることなく積極的にジャンプをすることができるのだ。
仮に背後へ配球されても、そのボールの移動中に全力で戻れば対応することができる。背後に蹴るしかないと神戸SBもわかっているため戻る準備ができているのだ。
これぞまさに駆け引きであり、神戸は常に心理的優位に立って守備をしている。
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最後に最終ラインについて。
彼らの役割はラインをギリギリまで高く保つことである。そこからライン間と背後の両方を管理する。
特にトゥーレル選手はJ1で最も完成されたCBである。隙が全く無い。
最高速度、デュエル総数は神戸で1位、空中戦勝利数は大迫選手に続いて2位となっている。つまり、スピードがあり、競り合いが強く、1on1で負けないというCBで必要な能力をデータから見ても全て兼ね備えているのだ。
山川選手も含めてJ1で最も完成度の高いCBがいるからこそ、神戸の果敢なPressingは可能になっている。
●Def -Near Zone対応-
NearZoneとは以下のスペースを示す。
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僕が映像を見て判断する限り、誰がNZを対応するのか明確な決まりは無いと思われる。なぜなら、NZにCBが出ることもあればVOが戻ってくることもあるからだ。
強いていうなら、山川選手はNZに出ずにVOに戻らせ、トゥーレル選手は自分がNZに出ることが多い。
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ただ、決定機を作られるのはCBがNZに出た場合だ。前期の東京V戦での山口選手のオウンゴールはまさにトゥーレル選手がNZに釣り出されてできたスペースで起こった失点である。
●Def -Cross対応-
神戸のクロス対応は基本的にZoneで守る。
つまり先に重要なスペースを埋めてから、入ってくる人を捕まえるかボールに出て行くかで対応する。
次にどう攻略するかについてである。
Pressingでも触れたがCBの能力が非常に高い。したがってCBと競り合うようなクロスは効果的ではない。
攻撃側はCBが守備の体制を作る前に低くて速いボールを入れたい。
また、神戸のDFは4枚であるため逆SBに数的優位を作ると決定機を作りやすい。後期の広島戦での新井選手の得点がその構造的弱点をついたものである。
これらに加えて、CBの守り方の特徴を押さえておくと決定機を作る可能性が上がるかもしれない。
トゥーレル選手は少し距離をとってマークを見る。
自分のスピードを理解して距離をとった対応にしている。マークのつき方はまず背中を取らせないことで相手に前に走るしかない状況を作る。そしてスピード勝負に持ち込んでクリアをする。
弱点としては、背中を取らせないようにマークしている間に視野外から2人目が前のスペースを使うと反応が遅れる。
山川選手はNZに出ていくトゥーレル選手との距離を気にする。広がらないようにボールサイドに寄ることで背中で叩かれることが多い。
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以上が神戸のざっくりとした守備についてとなります。
何度も言うように神戸のPressingはとても興味深いものとなっています。
守備の考え方、心理的優位性を保つ立ち位置、足音が伝わるほどの強烈なアプローチ。
これらの全てが、今までのJリーグでは体感できなかった「守備強度」というものです。
2025シーズンもJ1を制し、前人未到の3連覇することが出来るのか、非常に楽しみにしています。