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妊娠を素直に喜べない私

今日だけを 生き抜くことで 精一杯
それでも私は 明日を待つ

「妊娠していますね。」

その言葉は、淡々としたトーンで告げられた。

そこにはドラマみたいな感動も、温かい「おめでとう」もなかった。


病室の空気はひんやりとしていて、私はただ、「ああ、そうなんだ」と心の中で呟いた。

涙が出るわけでも、笑顔になるわけでもなく、頭の中はぼんやりとしたままだった。


喜べない私


妊娠がわかったら、もっとこう…嬉しい気持ちが自然と湧いてくるものだと思っていた。

涙を浮かべながら「命を授かったんだ」と胸に手を当てる、そんなシーンを勝手に想像していた。


でも、実際の私は、なんとも言えない重苦しさに包まれていた。

つわりはひどいし、体は重いし、仕事は待ったなし。

デスクに座ったまま、「今このまま消えてしまいたい」と思うことすらある。


焦りと罪悪感


職場では、隣の席の同僚が颯爽と仕事をこなしている。

会議で的確な意見を言い、次々とタスクを片付けていく。


「私だってもっとやれるはずだった」

「妊娠していなければ、もっと頑張れたのに」


そんなふうに思ってしまう自分がいる。

そして、すぐに「赤ちゃんには何の罪もないのに…」と自己嫌悪に陥る。


「ありがたいはず」へのプレッシャー


私は高齢出産の枠に入る。

自然妊娠だったことも、世間的には「ありがたいこと」なのだろう。


「感謝しなくちゃ」「幸せだと思わなくちゃ」

そんな思いが頭の中でぐるぐると回る。


でも、感謝しなければならないというプレッシャーが、逆に私を追い詰めている気がする。

心は「ありがたい」と思う余裕すらないほど、ただただ毎日をやり過ごすのに必死だ。


辛さを整理してみる


どうしてこんなに辛いのか、紙に書き出してみた。

1. つわりが辛くても、仕事を休めない。

2. 新しい職場でまだ何も成果を出せていないのに、妊娠で足踏みする焦り。

3. 年齢的に体力が追いつかない。

4. お金の不安。産後も働き続けなければならないプレッシャー。


書き出してみると、どれも「そりゃ辛いわ」と自分で納得してしまった。

それでも、「それでも母になるんだから頑張らなきゃ」ともう一人の自分が責めてくる。


今はまだ楽しめない


周囲の友人たちは、妊娠を「幸せな時間」と言っていた。

「お腹の中で動く瞬間が感動する」とか「母になる喜びを感じる」とか。


でも、私はどうだろう。

今の私は、「今日をなんとかやり過ごそう」と考えるだけで精一杯だ。


妊娠が分かった瞬間に、「お母さんになる覚悟」がすぐに芽生えるわけじゃない。

少なくとも、私にはそのスイッチはまだ入っていない。


「今はこういう時期」と割り切る


楽しめない今の自分を、無理に変えようとしなくてもいいんじゃないか。

「楽しめない」「喜べない」「感謝できない」

そう感じる自分を、責めるのはやめよう。


心が追いつくには、時間がかかるのかもしれない。

焦らず、少しずつ、今日一日をなんとか乗り越える。

それだけで、今は十分なんじゃないかと思う。


おわりに


妊娠を楽しめていない自分に、何度もガッカリする。

「母親失格なんじゃないか」と思うこともある。


でも、誰かが言っていた。

「妊娠中の気持ちは、人それぞれでいいんだよ」と。


だから、私は私なりに、今日を過ごす。

無理に「感謝しなきゃ」と自分を追い込まないように。

無理に「楽しもう」と気を張らないように。


今はただ、「今日を乗り越える」。

それだけで十分だと思う。


おわり。

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