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資本コストとは何か(2):資本コストと経営者の意思決定

前の投稿で、資本コストは投資家にとっての機会費用だという説明をしました。

資本コストが機会費用であるという定義には、CAPMを必要としませんが、概念説明として分かりやすいのでCAPMの証券市場線(SML)を使って説明します。
まず、この線は資本市場線から導出されるものですから、分散投資をしている株式市場全体を代表する抽象的な「投資家」を前提にしています。それ故に株式市場全体で一つの線を共有していることになります。
言い換えるなら、資本コストはマクロ的な現象であって、顔が見える個々の投資家が別々に持っているようなものではないのです。

また、この世界像の中では、投資家と経営者は同じSMLを共有しているはずです。何故なら、経営者にとっても、SMLの下方にあるようなビジネスへの投資プロジェクトは意味がないからです。もし、あるリスクレベルでSMLの下方にリターンが想定されるプロジェクトがあるとします。新規事業で新たなオンラインサービスを立ち上げるプロジェクトかもしれませんし、工場のラインを1つ増設するプロジェクトかもしれません。そのプロジェクトと同じリスクで、SML線上に証券があるわけですから、経営者にとっても当該プロジェクトに投資するよりも同じリスクでよりリターンが高い証券に投資したほうが有利であるのは自明です。それが、その新規事業と同じ業種の企業株式であるならば、その会社を買収したほうが、自社で新規事業を行うよりも有利だというわけです。
これは、その企業の株主から見てもまったく同じ世界が見える訳ですから、株主からも経営者からもSMLの下にあるプロジェクトへの投資は合理化されないのです。

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