天気予報
職人の父のこと
朝6時55分と夕方6時55分。
厳しい顔でテレビ画面を睨んでいる。
今は話しかけてはいけない。
父は、外で働く職人なので、仕事の段取りが天気に大きく左右される。
雨が続けばコンクリートが固まらない。壁を仕上げるには、夜の間に作業をしなければならない、といった具合である。
そのため、夕方早く帰ってお酒を飲んでいる日があれば、夕食後にまた出かけて夜遅くまで帰らない日もあった。
5分ほどの天気予報の間に、頭の中で作業段取りを組み立てていたのだろう。
だから、あの緊張感は子どもながらにも伝わった。
今はじゃましてはいけないんだ。
天気なら、アプリで分かるよ。
雨雲レーダーだってあるし。
と伝えたらどうだろう。
「あと20分後に雨がふります」
それはそうかもしれない。
でも、それだけではない気がする。
雨が降ったとして、その後の湿度はどんなふうか、この気温だとタイルが乾く時間はどうなるか。
そういったものは、やはり試行錯誤してきた長い経験があるからこそだと思う。
熟練の勘のようなもので仕事の進め方を決めていたのだとしたら、
アプリ?
そんなもんはいらん。
と言うのかな。
今度跡を継いだ弟にきいてみようか。
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