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M-1グランプリ2024審査員の各種構成比分析

M-1グランプリ2024の審査員が発表された。NON STYLE・石田明、アンタッチャブル・柴田英嗣、笑い飯・哲夫、かまいたち・山内健司、オードリー・若林正恭の4名が新規加入。松本人志、山田邦子、サンドウィッチマン富澤の3名が離脱、中川家・礼二、ナイツ塙、海原ともこ、博多大吉の4名が継続。合計9名である。審査員の構成比率を過去と比較してみよう。

2023年は男性5、女性2の合計7名。今回は男性8女性1の合計9名と女性が1名減っている。過去のチャンピオンを審査員にした結果、過去のチャンピオンには男性しかいないからこうなった。ちなみに2024の決勝出場9組は全員男性だ。敗者復活戦に残っている21組のうち、女性は男女コンビ「19人」のゆっちゃんw、1名のみ。THE WはM-1に比べて学芸会みたいで面白くないなんて批判されるけれど、M-1は男性中心社会なのである。

続いて審査員の所属事務所構成比を見てみよう。2023年は吉本4(松本、礼二、ともこ、大吉)、非吉本3(山田邦子、塙、富澤)、吉本比率57%だった。今回は吉本6(礼二、ともこ、大吉、石田、哲夫、山内)、非吉本3(柴田、塙、若林)と吉本比率66%に上昇している。無意識のうちに吉本芸人に対するホームアドバンテージが発生するだろうし、優勝者が吉本で、非吉本が面白くてもファーストラウンドで負けた場合、大会終了後にネットが荒れる確率が高い。

近年で吉本比率が最も高かったのは2016年の第12回大会だ。この時の審査員は5名で、吉本4(松本、巨人、礼二、大吉)、非吉本1と吉本比率脅威の80%である。最終決戦には吉本3組(スーパーマラドーナ、和牛、銀シャリ)が進出し、銀シャリが優勝した。

次に吉本比率が高かったのは、2015年の第11回大会だった。M-1が5年ぶりに復活したこの大会では、歴代チャンピオンが審査員を務めており、吉本7(礼二、フットボールアワー岩尾、ブラマヨ吉田、チュート徳井、NON STYLE石田、パンクブーブー佐藤、笑い飯哲夫)、非吉本2(ますだおかだ増田、サンドウィッチマン富澤)、吉本比率77%である。この時の最終決戦も吉本勢3組(銀シャリ、トレンディエンジェル、ジャルジャル)が進み、トレンディエンジェルが優勝した(M-1の歴史上、最終決戦3組に吉本が残る確率は高い。ただし、近年は非吉本芸人が最終決戦に進み、優勝する機会も多い。非吉本の躍進は、審査員の所属事務所構成比も関係している可能性がある)。

なお2015年の決勝進出9組のうち、非吉本はメイプル超合金、馬鹿よあなたは、ハライチ、タイムマシーン3号の4組だった。非吉本がワースト1、2、3を独占、面白かったタイムマシーン3号も点数が伸びず4位で敗退した。この年の大会は審査員に松本人志がおらず、トレンディエンジェルの優勝に疑問を投げる人がいた。笑い飯の哲夫は、面白くない吉本の漫才に高得点を入れていたとネットで批判されたりもした。

審査員の仕事はただでさえ批判されやすい。自分の芸人の事務所をひいきして多めに点を入れたらネットで批判される。だからそんなことはみんなしないはずだ、特にオードリーの若林は。しかし、審査員の大半は吉本である。若林が自意識過剰にヤーレンズやトム・ブラウンの点数を低めにつけてしまうと、2組の点数は伸びないかもしれない。

最後に関東と関西の構成比を比較してみよう。2023年は関東3(山田邦子、塙、富澤)、関西3(松本、礼二、ともこ)、九州1(大吉)だった。博多華丸大吉、とろサーモン、パンクブーブーなど九州の漫才は大阪の漫才と異なり、地元の面白い人が暴走していくような独特の雰囲気があるため、ここではあえて関西から独立してカウントしてみる。2023年は関東、関西、九州のバランスがいいと言える。一方、2024年は関東3(塙、柴田、若林)、関西5(礼二、ともこ、石田、哲夫、山内)、九州1(大吉)と、関西比率が増えている。しゃべくり漫才、あるいは芸人のニンを活かした漫才に有利な状況と思える。

2024年の賞レースを振り返ってみると、R-1 でしゃべり芸の街裏ぴんくが優勝した。THE SECONDでもしゃべりがうまいガクテンソクが優勝した。キング・オブ・コントでは、最終決戦で構成の巧さより人間のよくわからない魂のぶつかり合いを見せたラブレターズが優勝した。コント有利と言われたTHE Wでも、しゃべくり漫才のにぼしいわしが優勝している。ミルクボーイの爆発以降、近年のM-1では長らく関西系しゃべくり漫才が負けてきたけれど、2024年の賞レースの今までの傾向と、審査員9名の顔ぶれからして、芸達者なしゃべりを披露しつつ、人間としての力強さを見せたコンビが優勝する可能性が高いだろう。そのような予測を裏切って、会場をどっとわかせた芸人が優勝することを願いたい。それはそれで、あっちの方がよかったと論争を呼ぶかもしれないけれど。

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