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セールス電話に心が乱される

 iPhoneが会社から一斉に支給された。全社員の電話番号も登録済みだ。内線の電話交換機のコストを削減する意図があるらしい。

 「いずれ内線はほぼ廃止になるから、社内の連絡はこれでやってくれ」「通話時間は全社員でシェアする契約なので、社員間の通話は携帯回線を使用せずにTeams通話を行うこと」との指示。

 それでも業務の電話はついこれまでのように内線を使ってしまう。これは「社内にいるなら話したいことがある。しかし会議だったり取り込み中だったりするだろうから、わざわざ個人の携帯を呼び出すまではやりたくない」という気分からだ。

 iPhone一斉導入から数カ月。最近はセールス目的の電話がかかってくるようになった。まあ、世間的に名前が通っている企業だ、セールスの狙い目なのだろう。「○○社のみなさまにご案内しているんです」と切り出してくることから、番号リストが流出して手当り次第にかけまくっていることが伺える。

 数年前まではこのテのセールス電話の声には独特の“匂い”があって、第一声から「あ、こりゃ、売り込みだわ」と気づくことができたもの。

 ところが最近はスキルが上がったのか、声色が通常業務と違わない。「お世話になっています。●●の××でございます」と入ってくるから、ついこちらも「あ、お世話になっております」と返答してしまって、セールスとわかるとガッカリする。

 それでも、いきなり「バカヤロー」とガチャ切りしない“作法”が身についているだけに、「あ、すみません、興味ないので・・・」と形だけは丁寧に対応する。たいていの相手はこれですぐに電話を切ってくれるのだが、中には「え、ちょっとお待ちください」「いやいや、これはですね・・・」と食い下がってくる輩もいて、そうなるとさらに「すみません、忙しいので」と重ねなければならない。

 「時間を奪われた」以上のモヤモヤした不愉快さが残る。これはいったい何だろう。

 「電話をかけまくるとか、飛び込みセールスとか、もし自分がこれをやらされたら、ホントにつらいだろうな」「こいつも大変だな。毎日うんざりしているんだろうな」と思うのだ。

 なぜか「俺はこれをやるような商売でなくてラッキーだった!」とスパッと割り切れない。それは「俺はいいけど、自分の息子がこれをやるようなことになったら、それにも耐えられないな」と心配するからかもしれない。

 我ながら「つまらない取り越し苦労だなー」と思う。
(23/1/21)


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