金曜日の妻たち
80年初頭に東京郊外(神奈川県の田園都市線エリア)の新興住宅地に暮らす夫婦の日本版《セントエルモスファイヤー》。田園都市線のオシャレタウンの並木道の続く白い戸建て住宅に住む数組の夫婦がご近所さん達と仲良く頻繁にテラスでホームパーティーやお茶会やご近所不倫に勤しむドラマ。主婦の不倫は、“金妻” と呼ばれて社会現象になり、視聴率が稼げるので、3シリーズ作られた。当時のスター女優のいしだあゆみ、高橋恵子、篠ひろ子の夫役が必ずしもイケメンではない上、レースのテーブルクロスを敷き詰めたアーリーアメリカン超のテーブルで、紅茶に焼き菓子でどうでもいい会話を延々と続ける主婦生活は退屈でつまらなそうな地獄にしか若い私の目にはうつらず、その後も彼女達の生活に憧れることは全くなかった。寧ろ何処に行くにも車がないと動けない暮らしよりも都心のマンション暮らしの方が楽しいだろう、と悪いイメージしかなかった。
若い頃は家でホームパーティーと言うか飲み会をして、子どもとママ友を呼んでホームパーティをしたけれど、子どもが大きくなった今はもう料理や後片付けが面倒臭くなった。そもそも、食の好みも加齢と共に肉から魚や野菜に変わるのに、BBQで分厚いステーキを噛み切れる中年がどれだけいるんだろう。
金妻後、田園都市線の住民は増え続け、土地も高騰したが、今は老朽化が進んでいる。駅周辺の再開発は進み、駅近マンションの人気は衰えないのに比べて、駅から離れた戸建て住宅が並ぶかつての金妻エリアは、高齢化が進みゴーストタウンへの道を進んでいる。
金妻夫婦は七十代以上。駅から遠く、坂道や階段が多い街は不便の筈。四十年経ち老朽化した家屋は一度は外壁塗装や屋根やテラスの修復はしているだろうけど、家のローンは払い終わっただろが、預金は充分出来たのだろうか?運転免許証を返納した人もいるだろう。スーパーや都心に出るのにはバスを乗り継いでいるのだろうか。
バブルが弾ける前にあの家を手放しているならいいけれど、今では二束三文にしかならないだろうから、売却も難しいだろう。