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気象予報士試験に合格するまでのお話

第59回気象予報士試験にてめでたく合格することができました!
合格までの道のりはなかなか険しく、何度も不合格となり苦戦したので、自分の努力の記録として書き留めておこうと思います。
気象予報士を目指す方の参考になれば嬉しいです。

はじめに

私のバッググラウンドと現在の状況はこんな感じです。

・フルタイムで働く社会人
・育児中(小さい子がいるよ)
・理系大学院修了
・ノートにまとめて勉強するタイプ
・独学+α
・合格までの流れ
 (以前にも受験経験有、一時期中断)
 第57回:一般免除 専門× 実技×
 第58回:一般○ 専門× 実技×
 第59回:一般× 専門◯ 実技○

もう細かい部分の記憶があまりないので省略しましたが、57回試験以前も受験経験があります。学科の合格までは辿り着くも実技の合格に手が届かず…といった状態でした。
57回試験は一般の免除があり専門と実技を受験しましたが全て不合格。一般の免除もなくなり、58回試験でゼロからの再スタートとなりました。

勉強時間

試験までの期間、気象予報士試験の勉強だけに専念できる人は少ないと思います。私ももちろんそうでした。
私の場合は、子どもの寝かしつけが終わってから2〜3時間くらい、土日は夜に加えて日中に1〜2時間というスタイルでした。これよりもっと時間が取れる日もあれば、1時間も勉強できない日もありましたが、時間が取れない日も昼休みや移動中のちょっとした時間に暗記事項を確認するなど、勉強しない日がないように心がけました。

勉強方法について

学科一般

参考書として使ったのは、
・らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト
・一般気象学
の2つです。
らくらく突破シリーズは専門・実技でもメインで使用していました。

一般気象学は「気象学のバイブル」と呼ばれる有名な本ですが、理系の方や学術書に慣れてない方が最初に読むと難しいです。まずは、試験向けに書かれている参考書から読むことをおすすめします。
参考書で試験範囲の内容について理解が進んできたら、一般気象学も併せて読み込んでいくといいと思います。実際の試験では一般気象学に書いてある内容や図が出てくることがあります。
私は理解に時間がかかるタイプだったので、参考書で理解を進めてから一般気象学で細かい部分をインプットするようにしました。

学科試験はマークシート方式なのですが、一般も専門も過去問演習をする時は選択肢を見ないで解くようにしていました。
正誤問題の場合は、一つ一つの文章に対して正か誤か、誤の場合は間違っている箇所と正解を書くようにして、最後に当てはまる選択肢を探すようにしました。自分の作った解答が選択肢にない場合は選択肢を参考にもう一度考え直しますが、その場合は正解しても△にしておいて後で復習するようにしました。

学科一般では計算問題も出題されます。計算問題はわからなかった問題は解き方をきちんと確認して解き直し、使った式を確認するようにしました。特に熱力学のあたりは苦手で、参考書やノートをよく読み直していました。

また、15問中4問は法規関連の問題が出題されています。合格点が大体11点なので、法規問題が合格点の3分の1くらいを占めることになります。
正しく覚えておけば点数が取りやすいところなので、正確に覚えるようにしました。

苦手分野は思い切って捨てるという考えもありますが、個人的にはリスクが高いと思っています。法規で全問正解できないこともありますし、意外と計算問題が過去問の類題で解きやすい時もあります。実際に58回試験の一般は法規で1問落としました…。
苦手なものに取り組むのはなかなかエネルギーが必要ですが、少なくとも過去に出た問題は解き方含めてしっかり理解できるようにしていました。

学科専門

第57回の試験で、専門は過去問も何周もしたし参考書も読み込んだから合格点はいけるはず…と臨んだのですが、あえなく不合格。
敗因は明確で、情報のアップデートができていなかったことでした。
そこで、それまで使っていた参考書をベースにして、そこに含まれていない気象庁HPの情報を追加したノートを作りました。

学科専門のノート

ノートとしてはなかなかいいものが出来上がったのですが、内容をしっかり覚えきれておらず、58回では惜しくも専門不合格となりました。ノートに書いた内容をしっかり覚えることを意識して勉強した結果、59回試験では15問正解することができました。

必ずしも自作ノートを作る必要はないと思います。時間もかかるし作ることが本質ではないので。でもここ数回の専門の問題を見ていると、気象庁HPはしっかり確認しておいた方がいいなと思います。

専門の過去問を解く時ですが、古い過去問を解くときには正解が変わっている可能性があることに注意が必要です。
専門知識は技術の進歩や新しい情報に5年前くらいの問題でも正解が変わっていることがありました。
そのため、専門の過去問は5年分くらいにして、ノートを暗記する方に力を入れました。本当に知識が定着しているかの確認のためにオンスク.jpの専門を1ヶ月ほど利用しました。
オンスクにはオリジナルの確認問題があったので、そこで細かい部分の見落としや認識違いがないかを確認できました。月額制なので必要な時だけ登録しておくことができるのも使いやすかったです。

実技

なかなかクリアできず最後まで立ちはだかったのが“実技の壁”でした。
過去問演習を繰り返しても、初めて見る試験問題ではなかなか思うように点数が取れずに苦労しました。きっと同じような思いをしている人が他にもいらっしゃるかと思います。
基本的には「過去問を解く」「復習する」の2点を繰り返し行い、隙間時間に天気記号などの暗記をするようにしました。

過去問を解く
57回試験後から59回試験にかけて、過去問は40回まで遡って解きました。9年分を1年かけて1.5周くらいのペースです。(本当は2周するのを目標にしていました)

実技の過去問を解く際は必ず時間を計るようにしました。
夜に勉強をすることが多かったのですが、まとまった時間が常に取れる環境ではなかったので、ストップウォッチ機能を使って解くのにかかった時間を計るようにしていました。途中で中断せざるを得ない時はストップウォッチを止め、その時までにかかった時間を念の為解答用紙の横にメモしていました。
また、本番より少し短めの60分以内で解くことを目標にしていました。60分以内に解けるように練習しておけば、本番では見直す時間に充てられたり、どこかでつまづいても最後まで問題を見ることができると思ったからです。問題を解く際に時間を意識することで、スピード感や各設問に対して使える時間の感覚が身についたように思います。

解き終わったら答え合わせをしますが、その時に間違えた理由がわかる場合はそれも横に書いていました(問題の読み間違いや計算ミス、全くわからなかった…などなど)。
採点も一応していました。が、特に独学の場合は、具体的な点数の配分や採点方式が公表されておらず、正確な採点はできないので、点数そのものにあまり左右されないほうがいいと思います。
私の場合は1回目と2回目でどのくらいできるようになったかを見える化するために点数をつけていましたが、だんだん採点基準が自分の中で厳しくなったのであまり意味なかった気もします…。

講座等を受講されていて質問ができる環境であれば、どんどん講師の方に添削してもらった方がいいと思います。どこまでが許容されるのか、正解となるためにおさえておくべきポイントがどこなのかを知ることは完全な独学では難しく、講座を受講する大きなメリットですので。

復習する
58回試験の後、自分の勉強方法を振り返って感じたのは、復習にかける時間が少ないということでした。そこで、59回試験に向けて復習を重点的に行うようにしました。

間違えた問題だけですが、こんな感じで復習ノートを作っていました。

実技過去問復習ノート
図を貼り付けてるので厚みがすごい

間違えた箇所の問題文、関連する図、模範解答に加えて、どのように考えてその答えに行きつくかをまとめています。まとめる際には、他の人に聞かれた時に説明できるようにすることを意識しました。ポイントになるところや考え方は青ペンで書いたり、解答につながるキーワードとなりそうな部分はラインマーカーで線を引いたりしていました。
また、これとは別に気象現象の仕組みをノートにまとめたりしました。例えば温帯低気圧であれば発生から閉塞までのライフサイクルの特徴、台風であれば構造やCISKのメカニズム、関連する暗記事項などです。教科書にもこう言ったことは書いてあるので、わざわざノートにまとめる必要もないのですが、自分で書いた方が頭に残るタイプだったのでやっていました。

この復習ノートにはかなり時間を使ったのですが、模範解答などを見て理解していた頃よりも圧倒的に調べたり考えたりする時間が多くなりました。その結果、問題の意図を捉える、現象をしっかり理解する、というところが強化されたように思います。
こちらの参考書に載っている過去問の解説が、問題の意図を捉えることを意識して説明されていてよかったです。

不合格となった58回試験までの勉強法は、答えを暗記するくらい何度も問題を解くというやり方でした。
問題の傾向や答えの書き方を身につけるという面では良かったのですが、答えをなんとなく覚えてしまって書けるようになっていたのを理解が深まったと勘違いしてしまったのが失敗でした。過去問演習を重ねていくと、解答や問題の流れをある程度覚えてしまうので、きちんと問題の意図や根拠をおさえた上で解答を導き出せるようになることが大切だと思います。

試験当日のこと

気象予報士試験はいろんな文房具の使用が許可されています。人によって使う道具はいろいろですが、私が使っていたのは
・シャープペンシル
・消しゴム
・フリクション2色ボールペン(赤と青)
・定規
・ディバイダー
です。実技試験では天気図を並べて確認することが多いのですが、会場によっては机が結構狭かったりもします。そんな場合に文房具が多いと邪魔になるので、必要最低限に絞って普段から解くようにしていました。どんな文房具を使うにせよ、普段の勉強で使い慣れているものを使った方がいいです。
文房具ではないのですが、無地のマスキングテープも持っていきました。受験票や受験番号カードが落ちないよう、マスキングテープで貼り付けていました。

また、試験の時は以下を心がけるようにしました。

気持ちを強くもつ
試験会場に入ると周りの受験生がすごく頭が良く思えてなんだか自信がなくなってきてしまいます。試験が始まる前に気持ちで負けてはいけません。この半年間誰よりも自分が1番勉強してきた、だから大丈夫!と言い聞かせていました。

問題文をよく読む
本番ではやはり緊張しますし、試験時間があるので焦ってしまいます。焦ると問題文を読み間違えたり、大事なところを見落とす可能性が高くなります。そのため、問題で聞かれていることが何か、解答に含めないといけないもはあるかなど、問題文に線を引いたりして気をつけていました。

聞かれたことだけを答える
実技の答え方のポイントの1つに、聞かれたことに素直に答えるというのがあるように思います。不要なことを記述すると文字数も大きくオーバーすることがありますし、理論的に間違ったことを書いていると不正解となる恐れがあるためです。聞かれてることは何かを確認して余分なことを書かないように意識しました。

文字数をあまり気にしすぎない
記述問題は30字程度でのように文字数が指定されていることがあります。言い回しで多少文字数は前後するので、少し多めに作られている解答用紙のマス目におさまればいいやくらいの気持ちで考えていました。文字数に縛られすぎて書くべきポイントを見失ったり、時間をかけすぎないようにしました。
聞かれたことに答えることを意識していると自然に指定されたくらいの文章になっていくように思います。

実際の実技試験でどうだったかというと、実技1では解き終わって残り5分、実技2は時間が足りずに記述問題を2問ほど空欄で提出しました。実技2は計算間違いをしていたことに気づいて計算をやり直したため、時間がなくなってしまいました。
残りの時間が少ないことに気づいたタイミングで、記述以外の問題を優先しようと思い、最後の方にあった問題を埋めたところで時間切れとなりました。
1点2点の差で合否が分かれることもあるので、『試験終了の合図まで諦めない、できる限り空欄を作らずに書く』の精神で挑みました。
記述でどう書いたか記憶があやふやだったので解答再現はしなかったのですが、最後に埋めたところがいくつか合っていたので、うまく時間を使えたんだなと思います。

独学"+α"の部分

過去問・参考書以外に活用したものをご紹介します。

めざてんサイト
支援センターでは過去5年分の過去問が入手できるのですが、それより過去の問題はこちらで入手しました。過去問は無料で閲覧できます(会員登録が必要)。
過去問の解説(動画は有料)やめざメールというメーリングリストなど、たくさんのコンテンツが揃っています。

オンスク.jp
よくわかる気象学の著者、中島俊夫先生によるオンラインの講座です。私は学科専門の確認問題をメインに使っていました。講義の方は、イラストなども交えて説明されていて、初めて気象学を勉強される方も入りやすい内容になっていました。
月額制なのも使いやすかったです。

気象予報士 瀬戸信行の「てるてる風雲録」
気象予報士 瀬戸信行さんのブログです。試験問題の解説があり、こちらも参考にしていました。
ブログの記事になっているので、見たい問題を探すのがちょっと大変でしたが、一問一問丁寧に解説されています。

気象予報士受験支援会 作図対策集
実技試験では前線やトラフ、補助等圧線などいろんな作図問題があります。私は作図問題に全般的に強い苦手意識があったので、総合的な対策をしたくてこちらを購入しました。
質問や添削等はありませんが、解説や採点のポイントなど細かく書かれていてよかったです。

拝啓、予報官X様
TeamSABOTENさんのYouTube動画シリーズです。100本以上あるので59回試験までに全部は見れなかったのですが、息抜きも兼ねていくつかの動画を視聴しました。1本15〜20分くらいなので、隙間時間に見れてたくさんの事例に触れることができました。

勉強仲間
私にとって一番大きかったのが勉強仲間の存在です。57回試験前後からSNSで同じ目標を目指す勉強仲間が増えました。みんなが勉強している様子をみて「自分も頑張らないと!」という気持ちになりましたし、勉強時間をゲーム感覚で競うことで、毎日ちょっとの時間でも勉強する習慣が身につきました。
また、誰かが疑問を持って投げかけ、そこに別の人が答え、議論していく様子を見るのも勉強になりました。私は本を読んだり説明されたりすると納得してしまうタイプなので、誰かの疑問で自分がきちんと理解していないことに気付いたり、そこで新しく知識を得たりすることができました。

以下は59回試験が終わってから合格発表までの間に取り組んだことです。

南気象予報士事務所 天気図解析初心者コース
南気象予報士事務所さんのYouTube動画(無料)です。59回試験の後、日頃から天気図を見る習慣をつけて次の試験に備えようと思い、天気図解析の動画を視聴しました。天気図のどこに注目するか、どうやって解析をしているかの参考になりました。

はじめての天気図解析<前線解析>
TeamSABOTENさんの前線解析の有料講座です。59回試験でも前線解析が出題され、やっぱり前線解析が苦手だわ…と思い受講しました。手元を映したカメラで天気図を解析している様子を見ることができ、また前線以外の話も含まれており勉強になりました。
TeamSABOTENさんは他にもいろんな講座があります。テーマを絞ったものもあるので、気になる方は見てみてください。

短期予報解説資料
気象庁が発表している情報で、短期予報の着目ポイントと解説が書いてあります。天気図と併せて見ると予報官がどこに注目しているかがわかりますし、ちょっと独特な気象の言い回しにも慣れることができます。
ただ、ある程度実技の勉強をやりこんだ人向けかなと思います。上で紹介した「拝啓、予報官X様」の動画が、短期予報解説資料を見ていくものなので、そちらを先に視聴する方がいいかもしれません。

おわりに

難易度の高い試験だからこそ、合格したときは大変嬉しかったですし、やればできるという強い自信につながりました。
気象予報士試験の勉強は多くの場合長期戦となります。そのため、自分に合った勉強法で無理なく積み重ねていくこと、そして最後まで諦めないことが大事だと思います。
私にとって気象予報士は憧れの資格でした。諦めきれませんでしたし、心の中の安西先生に「諦めたらそこで試合終了ですよ」と何度も言われて走り続けて今に至ります。心が折れそうになるときもあるかと思いますが、どうか最後まで諦めないでください。

長文となりましたが、少しでも参考になれば幸いです。読んでくださった皆さんが合格されるよう陰ながら応援しております!

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