第3回梗概『闇同人誌を追え、ゴスロリで』

【梗概】

 ヲタロポリスはヲタクの街。当然ヲタク警察がいるし、ヲタクマフィアもいる。その間には探偵も。
 ヲタク探偵ジローの前には、古なじみの顔があった。ジローがかつてヲタク警察だったころに世話になった刑事だ。そいつがジローの事務所に持ち込んだのは、大量の同人誌。企業が定める二次創作規約に大いに抵触した“無許可二次創作《アポクリファ》”の代物だ。
 刑事は言う。
 最近、規約違反の闇同人誌が増えている。このままだとせっかく緩和された二次創作規約がかつてのように二次創作の完全禁止に逆戻りする。だから、原因を内密に調べて欲しい。
「どうします? お姉さま」
 ジローが振り返った先にいるのは、足を組んで座る大女。ゴスロリ・ファッションをばっちりキメたアーミィお姉さまだ。
 お姉さまは閉じた黒フリルの傘で同人誌を指し、縦ロールのツインテールを揺らして頷いた。
「確かにこれは、エレガントではない」

 ジローとお姉さまは闇市を歩く。元警察として面が割れているジローは、お姉さまとそろいのゴスロリをばっちりキメて変装して。
 市場に並ぶ、規約がん無視の同人誌。それらは法外な値段で売られていたが、店先には人が絶えなかった。ヲタクは自分が欲しいものをどこまでも求めてしまうから。
 だから世界は、趣味に惜しみなく金をつぎ込む者を“ヲタク”と定義し、ヲタク資本主義とヲタロポリスが生まれた。企業は資本のためにヲタクを囲い、キャラクター知的財産《IP》を守る。その極限が、かつての二次創作の完全禁止だ。結果、ヲタクは二分された。“聖典《オフィシャル》”を心の安らぎとする警察と、“外典《アポクリファ》”を認めるマフィアに。
 探偵二人は、闇市のマフィアたちと取引をして情報を集める。情報の代わりに要求される物品を、ときにジローのつてで警察の押収品を横流ししてもらい、ときにお姉さまの腕っぷしで解決しながら。

 表通り。情報を元に二人がたどり着いたのは警察の管轄である公式二次創作ショップだった。古なじみの刑事が店長と共に現れてジローに言う。
「お前が警察を離れた理由がわかった。公式が二次創作の許可をだすことのおかしさが。“正しい”を二次創作にまで押しつけるな。俺たちは“間違い”であるべきで、禁止されるべきなんだ。それが逆説的な二次創作の自由だ。そうだろう?」
 刑事は二次創作精神の自由を語った。店長も同じく、再び二次創作の完全禁止を求めていた。闇同人誌は高く売れるからだ。
 その再規制の根拠たる、闇同人誌を収集する凶悪犯役として探偵二人は嵌められたのだ。
 刑事は返事を聞く前に店の奥に去る。残った店長の号令でショップ店員が集まり、二人に襲いかかる。お姉さまが店員たちを抑え、ジローは刑事を追う。
 ジローは、あの時もこうして標的を追っていた。警察を辞めるきっかけとなった瞬間が頭をよぎる。あの時の標的はマフィアの幹部で、そいつはいつだって自分の道は自分で決めていた。“正しい”や“間違い”と誰に言われようとも。その姿には敬意を抱いた。それにくらべて――
「お前は、“間違い”だと公式に決めてもらいたいだけだ」
 追いついた刑事の背に、ジローはそう言い放った。
 刑事は振り向きざま懐から銃を引き抜き俊敏に構えたが、その視界は黒いフリルに埋め尽くされていた。
 ジローが、借りておいたお姉さまの傘を開いて投げつけたのだ。銃の狙いが外れた一瞬にジローは刑事に飛びかかる。
 
 ずたぼろになりながらも刑事を引きずって戻ってきたジローに、うずたかく積まれた店員の山に腰掛ける昔マフィアの幹部だった大女が言う。
「ナイス、エレガント」

文字数 大体1400字

【アピール文】

・先行作品


というわけで、くだらないことをやってみましょうということでした。
とはいえ、梗概でパロディは難しい。根本の物語が存在しないと、ただのお寒い身内ネタになってしまう。
かといって、設定と物語以上のものを詰め込もうとしても、1200字という規定を簡単にオーバーしてしまう。
いや、パロディを詰め込まなくても1200字をオーバーしてしまってるんですがそれは……
とかく、字数も重要ですが、面白さを確保するために本当にもうこれ以上削れない状態なのか? と自問することも重要かとは思います。個人的には(免責)。


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